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第3部 第81話「海水農法の国際会議――潮の香りが運ぶ未来」
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海風が吹き抜ける港町ミズノ。
波止場に面した会議棟では、異国の旗を掲げた帆船が次々と停泊し、各国の代表や技術者が降り立っていた。
「すごい……ここまで集まるとは」
紬は窓辺から港を見下ろし、感嘆の息を漏らす。
船にはカルナード王国、ゼラフィード公国、そして遠海の島国バルディアの紋章が揺れていた。
「今回はうちの農場だけじゃなく、港町全体が会場だ。港の宿も食堂も満員だろうな」
陽介は会議資料の束を脇に抱え、にやりと笑う。
「商人たちも喜んでる。国際会議が観光と交易を同時に呼び込むなんて、現生でもなかなかないぞ」
________________________________________
開会式が始まると、各国代表が順に挨拶し、海水農法の意義と可能性を語った。
だが、その中にはまだ懐疑的な声もあった。
「我が国では真水の灌漑を重視している。海水を混ぜるなど農学的に無謀だ」
「塩分の管理は難しい。失敗すれば農地が死ぬ」
会場がざわつく中、紬が立ち上がった。
「では、実際にご覧ください。これが、海水で育った新種の野菜です」
机に並べられたのは、青々とした葉菜、鮮やかな赤の実、そして黄金色に輝く海水芋。
それらを使った料理が次々と配られると、会場中に潮の香りと食欲をそそる香ばしさが広がった。
________________________________________
「……塩気が野菜そのものの甘味を引き立てている」
「水やりに海水を使うなんて、考えたこともなかったが……これは売れる」
懐疑的だった代表たちの表情が次第に変わっていく。
その様子を、後方で腕を組んで見ていたのは、数か月前に港町で鼻で笑ったマルビーニ伯だった。
自分が協力を拒んだ土地で育った野菜が、今や各国の賛辞を浴びている――その光景は、まさに彼にとって痛烈な“ざまぁ”だった。
________________________________________
閉会後、バルディアの代表が陽介と紬の前に歩み寄った。
「ミズノ伯、ぜひ我が国でもこの農法を導入したい。沿岸部の塩害で耕作できぬ土地が多いのだ」
「もちろん。ただし、現地の農民を軽んじる態度では長続きしません。それが条件です」
陽介の言葉に、代表は真剣な面持ちで頷いた。
こうして、海水農法は港町を出て、各国へと波のように広がっていく。
会議の夜、陽介と紬は港の堤防に座り、星明かりの下で未来を語り合った。
「……この技術、現生に帰るとき、きっと向こうの沿岸部も救える」
「ああ。帰る準備はまだ先になるかもしれないが、やるべきことは見えてきたな」
潮風が二人の頬を撫で、遠くの海鳴りが静かに響いていた。
波止場に面した会議棟では、異国の旗を掲げた帆船が次々と停泊し、各国の代表や技術者が降り立っていた。
「すごい……ここまで集まるとは」
紬は窓辺から港を見下ろし、感嘆の息を漏らす。
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「今回はうちの農場だけじゃなく、港町全体が会場だ。港の宿も食堂も満員だろうな」
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だが、その中にはまだ懐疑的な声もあった。
「我が国では真水の灌漑を重視している。海水を混ぜるなど農学的に無謀だ」
「塩分の管理は難しい。失敗すれば農地が死ぬ」
会場がざわつく中、紬が立ち上がった。
「では、実際にご覧ください。これが、海水で育った新種の野菜です」
机に並べられたのは、青々とした葉菜、鮮やかな赤の実、そして黄金色に輝く海水芋。
それらを使った料理が次々と配られると、会場中に潮の香りと食欲をそそる香ばしさが広がった。
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「……塩気が野菜そのものの甘味を引き立てている」
「水やりに海水を使うなんて、考えたこともなかったが……これは売れる」
懐疑的だった代表たちの表情が次第に変わっていく。
その様子を、後方で腕を組んで見ていたのは、数か月前に港町で鼻で笑ったマルビーニ伯だった。
自分が協力を拒んだ土地で育った野菜が、今や各国の賛辞を浴びている――その光景は、まさに彼にとって痛烈な“ざまぁ”だった。
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閉会後、バルディアの代表が陽介と紬の前に歩み寄った。
「ミズノ伯、ぜひ我が国でもこの農法を導入したい。沿岸部の塩害で耕作できぬ土地が多いのだ」
「もちろん。ただし、現地の農民を軽んじる態度では長続きしません。それが条件です」
陽介の言葉に、代表は真剣な面持ちで頷いた。
こうして、海水農法は港町を出て、各国へと波のように広がっていく。
会議の夜、陽介と紬は港の堤防に座り、星明かりの下で未来を語り合った。
「……この技術、現生に帰るとき、きっと向こうの沿岸部も救える」
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