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第3部 第104話 「蜜花アート――食卓を彩る新しい芸術」
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◆計画の始動
蜜花祭りが成功し、王都の経済に華やかな風を添えたその直後。
陽介と紬は新たな打ち合わせの場にいた。今度の相手は美術大学と魔法大学の代表者たちだ。
「蜜花は嗜好品として確立しました。次の一歩は、芸術としての価値を高めることだと考えています」
陽介が切り出すと、若い美術教授が目を輝かせた。
「つまり……“食べられるアート”ですか?」
紬は頷き、花びらを模した小皿を机に並べた。
「蜜花は彩りも豊かで、形も繊細。芸術の題材に最適です。ただ飾るだけじゃなく、“鑑賞したあとに味わう”という体験を提案したいの」
________________________________________
◆アートと魔法の融合
魔法大学の研究者が手を挙げる。
「光の魔法で蜜花の色を変化させる実験があります。展示空間を虹色に変えることも可能です」
「さらに、温度魔法で花びらをほんのり温めれば、香りがより強く立ち上るでしょう」
美術学生のひとりがスケッチを広げる。
「花びらを組み合わせて“食べられるステンドグラス”を作りたいんです。会場の光を透かして、その場で食べられる……そんな作品を!」
「なるほど。芸術と料理、両方を兼ね備えた展示会か」
陽介が感心すると、紬は微笑みを浮かべた。
「見た人の記憶に残るだけじゃなく、味覚や香りでも記憶に刻める。これ以上ないアート体験になるわ」
________________________________________
◆計画の骨子
議論の末、次のような計画がまとまった。
1. 蜜花アート展を王都の美術館で開催。
2. 美術大学の学生が蜜花を素材に彫刻や装飾品を制作。
3. 魔法大学は光・香り・温度の演出を担当。
4. 来場者は展示を鑑賞したあと、その作品の一部を実際に食べられる。
「食と芸術の境界をなくす――これが我々の新しい挑戦です」
教授たちの目が輝いた。
________________________________________
◆陽介と紬の手応え
打ち合わせを終えた帰り道。
陽介は肩をすくめて笑った。
「まさか農業から“アート革命”に発展するとはな」
「ふふ、でも蜜花だからこそよ。嗜好品は“楽しさ”と結びつくから、どんな方向にも広がれるの」
紬の声には確かな自信が宿っていた。
二人の頭にはすでに、観光客が美術館で蜜花のアートを鑑賞し、最後に花を口にして感嘆する姿が浮かんでいた。
蜜花祭りが成功し、王都の経済に華やかな風を添えたその直後。
陽介と紬は新たな打ち合わせの場にいた。今度の相手は美術大学と魔法大学の代表者たちだ。
「蜜花は嗜好品として確立しました。次の一歩は、芸術としての価値を高めることだと考えています」
陽介が切り出すと、若い美術教授が目を輝かせた。
「つまり……“食べられるアート”ですか?」
紬は頷き、花びらを模した小皿を机に並べた。
「蜜花は彩りも豊かで、形も繊細。芸術の題材に最適です。ただ飾るだけじゃなく、“鑑賞したあとに味わう”という体験を提案したいの」
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◆アートと魔法の融合
魔法大学の研究者が手を挙げる。
「光の魔法で蜜花の色を変化させる実験があります。展示空間を虹色に変えることも可能です」
「さらに、温度魔法で花びらをほんのり温めれば、香りがより強く立ち上るでしょう」
美術学生のひとりがスケッチを広げる。
「花びらを組み合わせて“食べられるステンドグラス”を作りたいんです。会場の光を透かして、その場で食べられる……そんな作品を!」
「なるほど。芸術と料理、両方を兼ね備えた展示会か」
陽介が感心すると、紬は微笑みを浮かべた。
「見た人の記憶に残るだけじゃなく、味覚や香りでも記憶に刻める。これ以上ないアート体験になるわ」
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◆計画の骨子
議論の末、次のような計画がまとまった。
1. 蜜花アート展を王都の美術館で開催。
2. 美術大学の学生が蜜花を素材に彫刻や装飾品を制作。
3. 魔法大学は光・香り・温度の演出を担当。
4. 来場者は展示を鑑賞したあと、その作品の一部を実際に食べられる。
「食と芸術の境界をなくす――これが我々の新しい挑戦です」
教授たちの目が輝いた。
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◆陽介と紬の手応え
打ち合わせを終えた帰り道。
陽介は肩をすくめて笑った。
「まさか農業から“アート革命”に発展するとはな」
「ふふ、でも蜜花だからこそよ。嗜好品は“楽しさ”と結びつくから、どんな方向にも広がれるの」
紬の声には確かな自信が宿っていた。
二人の頭にはすでに、観光客が美術館で蜜花のアートを鑑賞し、最後に花を口にして感嘆する姿が浮かんでいた。
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