異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

第3部 第133話 「海外からの視察団――新産業への羨望」

🚢 海外からの訪問者
　王都の迎賓館に、次々と異国の旗を掲げた馬車が到着していた。
　カルナードの砂漠王国、ゼラフィードの海洋都市、北の雪国ノア、そして新興都市国家の使者たち。
「……これほど多くの国が一度に来るとはな」
陽介は控室でため息を漏らす。
紬は資料を整えながら小声で返した。
「油芋プラスチックが“魔獣被害を減らす”と広まったからよ。各国が羨望してるの」
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🏛 謁見の間で
　謁見の間には、国王と議会代表、そして農場騎士団幹部が並ぶ。
　視察団の代表が順に言葉を述べた。
カルナード代表：「砂嵐に強い軽量盾、その製法を我が国にも……」
ゼラフィード代表：「海魔を退ける槍を輸出していただければ、護送路の安全が守れる」
ノア代表：「寒冷地での魔獣に対抗できる装備を……何より、燃料にもなる素材だと聞く」
　視線の熱は、もはや“商談”を超え、国家の命運を背負った願いに近かった。
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🗣 陽介の答え
　陽介は一歩前に出て、ゆっくりと語った。
「油芋プラスチックは、確かに強力な素材です。しかし――これは平和のための道具。
　人と人が傷つけ合うために輸出することはありません。
　使い道は“魔獣防衛”と“生活を豊かにする製品”に限ります」
　場が一瞬ざわつく。だが紬が続けた。
「輸出ではなく、共同研究と技術協定という形を提案します。
　各国に工房を設けるなら、私たちの大学から指導者を派遣します。その代わり――品質基準を守ること。
　守らなければ、ブランドも信頼も崩れます」
　各国の代表は顔を見合わせ、重くうなずいた。
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🐾 魔獣防衛実演
　翌日、王都近郊で防衛実験が行われた。
　農場に現れた訓練用の魔猪に、新素材の盾で立ち向かう騎士団員。
　突進を受け止め、槍で受け流し、盾は大きくしなるが割れない。
「……これは本物だ」
「鉄では無理だった……！」
　視察団の目は驚愕と羨望に満ちていた。
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🍷 宴と裏の駆け引き
　その夜、迎賓館で催された晩餐会。
　表向きは友好と文化交流の場だったが、裏では静かな駆け引きが飛び交っていた。
「王国と独占契約を結べば、我が国に莫大な利益を……」
「いや、農場騎士団を通じた方が現実的だ。陽介卿は金より“理念”を取る人物だ」
　耳に入る言葉の端々に、政治的な思惑が滲む。
　しかし陽介と紬は互いに視線を交わし、小さくうなずき合った。
「……理念を貫くこと。それが一番の武器になる」