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第3部 第134話 「国外工房設立――協定の署名」
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🏛 王都議事堂にて
王都中心部の大広間。高い天井に王国の紋章が掲げられ、各国の旗が整然と並んでいた。
陽介と紬は並んで席に着き、机の上には分厚い協定文書が置かれている。
「……これが、国外工房設立の第一歩か」
陽介は深呼吸をして、羽ペンを手に取った。
協定の内容は明快だ。
1. 油芋プラスチックの製造拠点を各国に設置
2. ミズノ農業大学より指導員を派遣
3. 生産物は魔獣防衛・生活用品に限ること
4. 品質基準MQSを厳守し、定期監査を受けること
何より重要なのは――「平和目的以外の使用を禁ずる」一文だった。
________________________________________
✒ 署名の瞬間
カルナード代表、ゼラフィード代表、ノア代表……各国の使節が順に署名していく。
緊張が張り詰めた空気の中、紬は小声で呟いた。
「……やっと、ここまで来たわね」
「まだ始まりだよ。でも、これで道は広がる」
最後に陽介が署名を終えた瞬間、拍手が湧き起こった。
協定文書は封印の魔法で固められ、歴史的な契約が成立したのだった。
________________________________________
🧑🏭 技術者たちの決意
会合の後、各国から派遣されてきた若い技術者たちが陽介の前に列を作った。
「必ず学んで、我が国に工房を根付かせます!」
「農業と工業をつなぐ力になるのが夢なんです!」
陽介は頷き、紬が優しく言葉を添えた。
「でも忘れないで。これは“儲けるための道具”じゃなく、“人を守るための技術”。そこを間違えたら、すぐに道を外すわ」
技術者たちは真剣な顔で頭を下げた。
________________________________________
🌒 闇に潜む影
一方、王都の片隅。人気のない倉庫で、黒い外套の集団が集まっていた。
卓上に置かれたのは――油芋プラスチック製品の偽物。質は粗悪で、刻印も歪んでいる。
「……各国が工房を建てれば、我らの利権は失われる」
「“黒旗商会”の名にかけて、必ず揺さぶりをかける」
その中心に座る男の指には、赤い指輪が光っていた。
「奴らの理念とやらを、粉々に打ち砕け。市場に流すのは“恐怖と混乱”だ」
________________________________________
🌅 次の舞台へ
その夜、大学の塔の上。
街の灯りを眺めながら、陽介は紬に言った。
「協定は結んだ。でも――これからは、妨害も本格化する」
「大丈夫。私たちには、仲間も、市民も、理念もある。黒旗の連中には、それがないわ」
二人は夜風を受けながら、未来に向けて視線を交わした。
王都中心部の大広間。高い天井に王国の紋章が掲げられ、各国の旗が整然と並んでいた。
陽介と紬は並んで席に着き、机の上には分厚い協定文書が置かれている。
「……これが、国外工房設立の第一歩か」
陽介は深呼吸をして、羽ペンを手に取った。
協定の内容は明快だ。
1. 油芋プラスチックの製造拠点を各国に設置
2. ミズノ農業大学より指導員を派遣
3. 生産物は魔獣防衛・生活用品に限ること
4. 品質基準MQSを厳守し、定期監査を受けること
何より重要なのは――「平和目的以外の使用を禁ずる」一文だった。
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✒ 署名の瞬間
カルナード代表、ゼラフィード代表、ノア代表……各国の使節が順に署名していく。
緊張が張り詰めた空気の中、紬は小声で呟いた。
「……やっと、ここまで来たわね」
「まだ始まりだよ。でも、これで道は広がる」
最後に陽介が署名を終えた瞬間、拍手が湧き起こった。
協定文書は封印の魔法で固められ、歴史的な契約が成立したのだった。
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🧑🏭 技術者たちの決意
会合の後、各国から派遣されてきた若い技術者たちが陽介の前に列を作った。
「必ず学んで、我が国に工房を根付かせます!」
「農業と工業をつなぐ力になるのが夢なんです!」
陽介は頷き、紬が優しく言葉を添えた。
「でも忘れないで。これは“儲けるための道具”じゃなく、“人を守るための技術”。そこを間違えたら、すぐに道を外すわ」
技術者たちは真剣な顔で頭を下げた。
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🌒 闇に潜む影
一方、王都の片隅。人気のない倉庫で、黒い外套の集団が集まっていた。
卓上に置かれたのは――油芋プラスチック製品の偽物。質は粗悪で、刻印も歪んでいる。
「……各国が工房を建てれば、我らの利権は失われる」
「“黒旗商会”の名にかけて、必ず揺さぶりをかける」
その中心に座る男の指には、赤い指輪が光っていた。
「奴らの理念とやらを、粉々に打ち砕け。市場に流すのは“恐怖と混乱”だ」
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🌅 次の舞台へ
その夜、大学の塔の上。
街の灯りを眺めながら、陽介は紬に言った。
「協定は結んだ。でも――これからは、妨害も本格化する」
「大丈夫。私たちには、仲間も、市民も、理念もある。黒旗の連中には、それがないわ」
二人は夜風を受けながら、未来に向けて視線を交わした。
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