異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

第3部 第135話 「黒旗商会の罠――偽造品と世論操作」

🛒 市場に潜む影
　王都・東市場。朝の喧騒の中で、真新しい「油芋プラスチック製品」が並べられていた。
　――はずだった。
「ちょっと待って、この水筒……ヒビが入ってるぞ！」
「この弁当箱、匂いがきつくて食べ物に移っちまう！」
　露店に置かれた“ミズノ印”の製品が、次々と苦情を浴びていた。
　見た目は本物そっくり。しかし、刻印はわずかに歪み、質感も粗悪だ。
「……偽物か」
陽介が現場を訪れ、唇を噛む。
紬はすぐに製品を手に取り、鼻を近づけた。
「添加油が違う。これは……古い獣脂を混ぜてる。腐敗が早いわ」
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📰 流言の広がり
　その日のうちに、王都の酒場や広場では噂が広まっていた。
「ミズノの工房、急ぎすぎて品質落としたらしいぞ」
「国外に売り出したくて、国民には粗悪品を押し付けてるって話だ」
「やっぱり農民上がりが産業なんて無理だったんだ」
　黒旗商会の差し金か、噂は尾ひれをつけてあっという間に広がっていった。
　市民たちの顔には不安と苛立ちが混じり、議会でも「協定の見直し」を求める声が出始める。
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⚖ 学内の対策会議
　ミズノ農業大学の会議室。陽介、紬、レオネル、レオン、そして職人代表が集まった。
「このままじゃ、市場の信頼が崩れます」職人長が顔をしかめる。
「偽物を作られた以上、ただ否定するだけじゃ足りない」紬が静かに言った。
　陽介はチョークを手に取り、黒板に大きく書いた。
『反証の戦い――科学で示す』
「一つ、正規品と偽造品を同条件で実験し、差を数値で示す」
「二つ、公開検証会を開き、市民を直接参加させる」
「三つ、結果はその場で掲示し、誰でも確認できるようにする」
　全員が頷いた。
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🔬 公開検証会
　三日後。王都中央広場に設置された大きな検査台。
　市民や商人、議会の代表まで詰めかけていた。
「これが“正規品”。油芋プラスチック製の水筒です。そしてこちらが市場で見つかった“偽造品”」
　陽介が並べて見せる。
「両方に同じ量の熱湯を入れます」紬が続ける。
　計測器が示したのは――
• 正規品：温度保持率 92％（2時間後）
• 偽造品：温度保持率 41％（2時間後・異臭発生）
　群衆からどよめきが走る。
「さらに弁当箱。正規品は変質なし。偽造品は獣脂が滲み、カビが発生」
　誰もが目で見て理解した。
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🗣 市民の声
　広場の最前列で、主婦が声を上げた。
「これが本当の“ミズノ品”だったのね！」
「偽造を広めた連中を許すな！」
「農場騎士団の製品こそ信用できる！」
　噂は反転し、“黒旗商会”への怒りに変わっていった。
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🤝 ざまぁ展開
　その場に連行されてきたのは、偽造品を流していた闇商人たち。
　王都警備隊が押さえつけ、群衆の前に突き出す。
「黒旗の差金でやった！　金に目がくらんだんだ！」
　涙ながらに叫ぶ姿に、市民から冷たい視線が突き刺さる。
　陽介は静かに言った。
「俺たちは、食と暮らしを守るためにやっている。金のために命を軽んじる者に、未来はない」
　大きな拍手と歓声が広場を包んだ。
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🌅 新たな決意
　その夜、研究塔の屋上で。
　陽介は紬に微笑んだ。
「……信頼は、科学で守れる。あとは前に進むだけだな」
「ええ。次は“工業生産”よ。もっと多くの人に、確かな品を届けるために」
　二人の視線の先には、工房の灯火が揺れていた。