異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅

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第3部 第137話 「広がる雇用――町と農村の新しい日常」

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🏭 工場の朝
 工場の汽笛が夜明けを告げると、町の広場から人々が歩いてくる。
 腰に工具袋を下げた若者、検査札を抱えた年配の女性、荷車を引く農夫の姿もある。
「今日は私、検査ラインよ」
「俺は物流だ。昨日は川向こうの市場まで出荷に行ったんだ」
 日によって仕事が変わり、皆が笑顔で語り合っている。農繁期以外に仕事が少なかった農民にとっても、安定した収入源となっていた。
________________________________________
🌾 農村の変化
 村の家では、夕餉の食卓に変化が見え始めていた。
「工場で働いた給金で、屋根を葺き直したんだ」
「うちは子どもに学校の本を買えた」
 農繁期には畑、閑散期には工場。二つの柱が生活を支えることで、人々の表情は明るくなり、子どもたちも未来を語るようになった。
________________________________________
🛍 町の賑わい
 工場帰りの人々が、直売所や商店で買い物をするようになり、町は夕方になると賑やかになった。
「今日は新しいカップを二つ買ったの。お土産に持って帰るわ」
「俺は給金で甘い蜜花菓子を……嫁に怒られるかな」
 酒場には工場仲間で一杯やる人々が集まり、歌声が夜の路地にこぼれていた。
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📚 大学と工場のつながり
 ミズノ農業大学の学生たちも、工場に実習に出向いていた。
「温度管理の新しい方法、うまくいきました!」
「次は農村ごとに調整できる小型成型機を考えてみたいです」
 学問と実務が交わる現場に、若者たちの熱気が満ちる。
________________________________________
🌅 陽介と紬の言葉
 夕暮れ、工場の屋根の上。陽介と紬が並んで街を眺める。
 遠くには煙突から白い蒸気が立ち上り、その下で人々が笑い合っている。
「……暮らしが変わってきたな」陽介がぽつりと呟く。
「ええ。食べること、燃料、工業製品、そして働く場所。全部が繋がって、町も村も支え合ってる。やっぱり工場を増やして、産業にしていくことが大事なんだね。」紬の声は穏やかだった。
 陽介は拳を握る。
「次に進もう。まだやれることは山ほどある」
「そうね。ここまで来たんだもの――次もきっと、乗り越えられるわ」
 二人の背中に、工場の灯火が温かく揺れていた。

【作者より】
ここまで、読んでいただきありがとうございました。油芋プラスチック編は、ここでいったん一区切り。
この後もまだまだお話は続きます。
この後異世界での社会をよくするため、現生に戻った時に現生でも役立つものを広げるため、人々を笑顔にするため、2人は今までの経験や仲間との絆をもとに、頑張りながら現生に戻る方法を模索していく様子を描いていきたいと考えています。
引き続きお付き合いいただければ幸いです。
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