異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

第4部 第12話 初めての現場授業――荒野の洗礼

🌅 出発の日
　十名の第一期生は、まだ新品の旅装を身にまとい、緊張した面持ちで大学の門に立っていた。
　陽介と紬は、分水国の旗を掲げた馬車の前に並び、彼らを迎える。
「これから行くのは、荒野の実験地だ。机上で学んだ知識が、実際の土地でどう通用するかを体で確かめてもらう」
　陽介の声に、若者たちの瞳が一斉に輝いた。
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🏜 荒野の景色
　数日をかけて荒野に入ると、広がるのは乾ききった大地と、遠く霞む水源草の群れ。
　容赦なく照りつける日差しと風に、学生たちの顔から早くも余裕が消えていく。
「……本当に、ここで人が暮らせるのですか」
　セリアが呟く。
　紬は優しく微笑み、器の並ぶ方向を指した。
「だからこそ学ぶのよ。机の上では分からなかった“現実”を」
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⚒ 課題の提示
　現場に着くと、農場騎士団が待ち構えていた。
　荒野の水路は昨夜の雨で一部が崩れ、畑にはまだ水が届いていない。
「第一の課題だ」
　陽介は真剣な声で告げる。
「この水路を一日で復旧し、水を畑に流せ。材料も人手も限られている。どう役割を分け、どう完成させるかはお前たち次第だ」
　十名は顔を見合わせ、すぐに動き出した。
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👥 若者たちの奮闘
　ライナルトが図を描き、ユリウスが班を組み分け、カティアが率先して土砂を運んだ。
　トマスは体力の限界を押しながら石を積み、マリアは声を張り上げて士気を鼓舞する。
　年少のエリナは冷静に水流を観察し、流れを変えるべき場所を指摘した。
「急ぐだけでは崩れる！　一度、ここを締めて流れを制御しろ！」
「いいぞ、その通りだ！」
　汗と泥にまみれながら、十名は必死に取り組んだ。
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💧 成功の瞬間
　夕暮れ。最後の石が置かれ、水路がつながった。
　静かな瞬間の後、勢いよく水が畑へと流れ込み、干からびた土が潤っていく。
「……やった！」
　学生たちから歓声が上がり、互いに泥だらけの手を叩き合った。
　陽介はその姿を見つめ、静かに呟く。
「知識を現実に変えられる者――それが領主の資質だ」
　紬も頷き、学生たちに微笑みかける。
「今日の疲れと達成感を忘れないで。これが“荒野に国を築く”ということなのよ」
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🌌 旗の下で
　夜、篝火の周りに集まった十名の若者は、泥だらけの服のまま笑い合っていた。
　その頭上には分水国の旗が揺れ、炎と星明かりに照らされていた。
　陽介は旗を見上げ、心の中で強く誓う。
「――この中から必ず、未来を託せる者を見つける」
　荒野の夜風は冷たかったが、その笑い声と炎の温もりは、確かに国の始まりを告げていた。