異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

第4部 第23話 水源草の植え付け――未来への備え

 植え付けの決断
　豪雨の爪痕がまだ生々しく残る荒野で、陽介は学生たちと騎士団、村人を集めた。
「次にいつ雨が来るか分からない。だからこそ、いま備える。――水源草を植え付けるんだ」
　これまでも分水国では水源草を利用していた。幹に蓄えた水を切り出せば、飲料や灌漑に使える便利な植物。
　しかし、今回の豪雨で明らかになった。
　「一株ごとの貯水量では足りない。もっと広く、もっと強く植えねばならない」
　陽介の言葉に、十人の学生は真剣に頷いた。
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⚒ 被害を免れた畑へ
　指示は単純ではなかった。
　「被害に遭った場所だけでなく、無事だった畑にも植えること」
　理由を問う学生たちに、陽介は答えた。
「今回は運よく助かっただけかもしれない。次に来る豪雨がどこを襲うかは分からない。だから、全域で備えるんだ」
　村人たちはその言葉に目を見開き、やがて頷いた。
「確かに……あの雨じゃ、誰も安全じゃない」
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👥 学生たちの役割
• ライナルトは、植え付け間隔を計算し、効率的に水を蓄えられる配置図を描いた。
• セリアは村人を班に分け、作業手順を整理した。
• トマスは泥に足を取られながらも、誰よりも多くの株を運んだ。
• ユリウスは声を張り上げ、全体の士気を高めた。
• マリアは女性たちと共に苗を植え、歌を口ずさみながら作業を和ませた。
• エリナは雨季・乾季の記録を照らし合わせ、成長に適した場所を選んだ。
• オルフェンは土質を調べ、粘土質と砂質で植え方を変える提案をした。
• カティアは力仕事で大きな穴を掘り、次々と苗を植え付けた。
• フェリクスは苗の数と配布を管理し、無駄が出ないように調整した。
• ノアは一軒一軒の家を回り、住民に植え付けの意義を説明した。
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🌌 紬の眼差し
　作業に汗を流す若者たちを見つめ、紬は心の中で語りかける。
（この子たちは、ただの学生じゃない。私と陽介が未来を託す存在……。
　血を分けなくても、彼らは私たちの子供たちそのものだ）
　彼女は泥で汚れたトマスの手を取り、水袋を渡して微笑んだ。
「よく頑張ってるわね。無理しすぎないで」
　その一言に、少年の顔は子供のように緩んだ。
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🌅 終わりと始まり
　夕陽が荒野を赤く染める頃、数百株の水源草が整然と植えられていた。
　風に揺れる若葉は、まだ小さな命ながらも確かな希望を宿していた。
「これで終わりじゃない。成長を見守り、根付かせ、やがて荒野全体を潤す仕組みにする」
　陽介の声に、学生も村人も一斉に頷いた。
　分水国の旗はその光景を見守るように揺れ、荒野に確かな未来の兆しを告げていた。