異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

第4部 第22話 復旧作業――協働の力

⚒ 再建の始まり
　豪雨の被害を調べた翌日、荒野の空はうそのように澄み渡っていた。
　だが畑や水路は無惨に壊れ、放っておけば再び飢えに直結する。
「さあ、始めるぞ」
　陽介の一言で復旧作業が始まった。
　農場騎士団が資材を運び、村人が鍬を振るい、十人の学生がその間を走り回る。
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👥 協力の輪
　セリアは村の女性たちと一緒に残った作物を仕分けし、保存できる分を工夫して干し始めた。
「こうして備えれば、次の雨まで持ちこたえられるわ」
　トマスは力のある村人と組み、崩れた石を積み直す。
「俺一人じゃ無理です！　一緒にお願いします！」
　その素直な声に、村人が笑って肩を貸した。
　カティアは子供たちと一緒に泥をかき出し、彼らに歌を教えて作業を楽しくしていた。
「歌えば元気になる！　せーの！」
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📜 学びの共有
　エリナとライナルトは記録板を手に、どこが脆く、どこが持ちこたえたのかを調べた。
「この部分は水の流れが集中して崩れた」
「では、排水口を二つに増やす設計を試みましょう」
　オルフェンは村人に簡単な測量方法を教え、次の災害に備える知識を広めていった。
「数字で示せば、誰でも強い水路を作れます」
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🕊 人を繋ぐ言葉
　夕方、フェリクスは市場から取り寄せた塩と油を抱えて戻ってきた。
「収穫の一部を売って買ったんです。これで保存食を増やせます」
　その現実的な提案に村人たちは目を丸くし、やがて大きな拍手が起こった。
　ノアは一軒一軒を回り、泥にまみれた顔で村人に声をかけた。
「今日の仕事で疲れていませんか？ 皆さんが支えてくれるから、僕たちも頑張れます」
　小さな言葉に、村人たちの心が温かくほどけていった。
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🌌 陽介と紬の視線
　広場から見渡すと、村人と学生が入り混じり、笑いながら作業する姿があった。
　陽介は静かに呟いた。
「……これが本当の意味での協働だ。領主と民、貴族と農夫――境を越えて共に働いている」
　紬はその横で微笑み、目を細めた。
「彼らがいるなら、この荒野は必ず国になるわ」
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🌅 復旧の光
　夕陽が沈む頃、仮設の水路が完成し、残った畑に再び水が流れ込んだ。
　人々の頬に安堵の笑みが広がり、学生たちは泥まみれのまま抱き合った。
「俺たち、やり遂げたんだな」
「まだ始まりにすぎない。でも、乗り越えられるって分かった」
　分水国の旗が風に揺れ、泥に汚れたその布が、確かな誇りの証のように輝いていた。