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第5部 第2話 初代王の記録――眠れる水の書
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🌌 記録庫の扉
分水連合が正式に発足してから三か月。
王都の北端にある「王立記録庫」には、古の時代から続く王家の文書が眠っていた。
その最深部――普段は王と特定の学者しか立ち入りを許されない「禁閲区画」に、
ライナルトは特命を受けて足を踏み入れていた。
「初代王の記録……“水の書”と呼ばれる文書を探してほしい」
そう頼んだのは陽介自身だった。
十五年前、異世界から来たという初代王の伝承を思い出し、
“やり残したこと”の鍵がそこにあるのではないか――そう考えたのだ。
________________________________________
📜 古びた羊皮紙
薄暗い地下室。
壁を覆う棚には無数の巻物と古書が並び、蝋燭の炎が揺れている。
ライナルトは慎重に一冊ずつ開き、筆記体の文字を読み取っていく。
政治記録、交易の年譜、王の詔勅、戦の報告――どれも貴重だが、探しているものではない。
そして、奥の棚の裏に、黒い革の表紙に銀の糸で縫われた一冊を見つけた。
表紙には古い文字でこう刻まれていた。
――《水ノ書》。
開いた瞬間、空気が変わった。
まるで時の流れそのものが止まったかのように、
部屋の蝋燭の火が一斉に小さく揺れた。
________________________________________
💧 初代王の手記
書の中は、古代語と日本語が混ざっていた。
そして、ページをめくるごとに、初代王の心の記録が綴られていた。
「私は平成という時代から来た。歴史を愛し、平和を夢見た一人の人間だった。」
「この国は、戦と飢えに苦しむ土地だった。だが、知識と信頼で人は変わると信じた。」
「王になり、家族を得たとき、私はもう一度あの夢を見た――“やり残したことがある”と。」
「その声の主は、私自身だったのかもしれない。」
ライナルトの指が止まる。
次の行に、見慣れない印が描かれていた。
それは、分水国の旗の中央にある“流れる水”と同じ紋だった。
「私のやり残したこと――それは“世界を繋ぐ道”を完成させること。
この地の人々が争わず、互いに支え合う仕組みを作ることだ。
それが叶ったとき、異世界の扉は再び開くだろう。」
________________________________________
🌠 ライナルトの動揺
ライナルトは震える手で書を閉じた。
胸の奥が高鳴る――初代王の「やり残したこと」は、
まさに陽介と紬が今進めている“平和の国づくり”そのものだった。
「……もしこれが本当なら、先生たちは――」
その瞬間、記録庫の奥の壁が微かに光った。
石壁に刻まれた古代文字が浮かび上がり、青い光が波のように広がっていく。
ライナルトは驚きの声を上げた。
「……反応している? “水の紋”に……!」
その光は彼の持つ“水ノ書”に吸い込まれ、
一行の新たな文字が浮かび上がった。
「現世とこの世界――二つの流れを結ぶ者、いずれ現れる。」
________________________________________
🌙 報告の夜
その夜、ライナルトは陽介と紬に報告した。
机の上に「水ノ書」を置き、緊張した声で読み上げる。
「……初代王は、“世界を繋ぐ道”を完成させることを夢見ていたようです。
そして、“その志を継ぐ者”が現れると。」
陽介は静かにその書を見つめ、やがて小さく頷いた。
「やり残したこと――つまり、まだ俺たちの役目は終わっていないということか」
紬は微笑を浮かべながらも、少しだけ視線を落とした。
「でも、“現世とこの世界を結ぶ者”って……誰のことを指しているのかしら」
陽介はゆっくりと天井を仰ぎ、答えた。
「それは……もしかしたら、俺たち自身かもしれない。
あるいは、この国を受け継ぐ誰かが“次の扉”を開く時が来るのかもな」
________________________________________
🌅 黎明の予兆
翌朝、分水城の塔から見下ろすと、十の領地から煙が立ち上っていた。
それは工場の煙であり、暖炉の煙であり、人々の営みの印。
陽介は手にした「水ノ書」を見つめながら、静かに呟いた。
「初代王……あなたの夢は、今も流れ続けています。
この分水の大地が、それを証明してみせる」
朝日が昇り、青い光が水の紋章を照らした。
その光はまるで、二つの世界をつなぐ“目覚めの光”のようだった。
分水連合が正式に発足してから三か月。
王都の北端にある「王立記録庫」には、古の時代から続く王家の文書が眠っていた。
その最深部――普段は王と特定の学者しか立ち入りを許されない「禁閲区画」に、
ライナルトは特命を受けて足を踏み入れていた。
「初代王の記録……“水の書”と呼ばれる文書を探してほしい」
そう頼んだのは陽介自身だった。
十五年前、異世界から来たという初代王の伝承を思い出し、
“やり残したこと”の鍵がそこにあるのではないか――そう考えたのだ。
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📜 古びた羊皮紙
薄暗い地下室。
壁を覆う棚には無数の巻物と古書が並び、蝋燭の炎が揺れている。
ライナルトは慎重に一冊ずつ開き、筆記体の文字を読み取っていく。
政治記録、交易の年譜、王の詔勅、戦の報告――どれも貴重だが、探しているものではない。
そして、奥の棚の裏に、黒い革の表紙に銀の糸で縫われた一冊を見つけた。
表紙には古い文字でこう刻まれていた。
――《水ノ書》。
開いた瞬間、空気が変わった。
まるで時の流れそのものが止まったかのように、
部屋の蝋燭の火が一斉に小さく揺れた。
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💧 初代王の手記
書の中は、古代語と日本語が混ざっていた。
そして、ページをめくるごとに、初代王の心の記録が綴られていた。
「私は平成という時代から来た。歴史を愛し、平和を夢見た一人の人間だった。」
「この国は、戦と飢えに苦しむ土地だった。だが、知識と信頼で人は変わると信じた。」
「王になり、家族を得たとき、私はもう一度あの夢を見た――“やり残したことがある”と。」
「その声の主は、私自身だったのかもしれない。」
ライナルトの指が止まる。
次の行に、見慣れない印が描かれていた。
それは、分水国の旗の中央にある“流れる水”と同じ紋だった。
「私のやり残したこと――それは“世界を繋ぐ道”を完成させること。
この地の人々が争わず、互いに支え合う仕組みを作ることだ。
それが叶ったとき、異世界の扉は再び開くだろう。」
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🌠 ライナルトの動揺
ライナルトは震える手で書を閉じた。
胸の奥が高鳴る――初代王の「やり残したこと」は、
まさに陽介と紬が今進めている“平和の国づくり”そのものだった。
「……もしこれが本当なら、先生たちは――」
その瞬間、記録庫の奥の壁が微かに光った。
石壁に刻まれた古代文字が浮かび上がり、青い光が波のように広がっていく。
ライナルトは驚きの声を上げた。
「……反応している? “水の紋”に……!」
その光は彼の持つ“水ノ書”に吸い込まれ、
一行の新たな文字が浮かび上がった。
「現世とこの世界――二つの流れを結ぶ者、いずれ現れる。」
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🌙 報告の夜
その夜、ライナルトは陽介と紬に報告した。
机の上に「水ノ書」を置き、緊張した声で読み上げる。
「……初代王は、“世界を繋ぐ道”を完成させることを夢見ていたようです。
そして、“その志を継ぐ者”が現れると。」
陽介は静かにその書を見つめ、やがて小さく頷いた。
「やり残したこと――つまり、まだ俺たちの役目は終わっていないということか」
紬は微笑を浮かべながらも、少しだけ視線を落とした。
「でも、“現世とこの世界を結ぶ者”って……誰のことを指しているのかしら」
陽介はゆっくりと天井を仰ぎ、答えた。
「それは……もしかしたら、俺たち自身かもしれない。
あるいは、この国を受け継ぐ誰かが“次の扉”を開く時が来るのかもな」
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🌅 黎明の予兆
翌朝、分水城の塔から見下ろすと、十の領地から煙が立ち上っていた。
それは工場の煙であり、暖炉の煙であり、人々の営みの印。
陽介は手にした「水ノ書」を見つめながら、静かに呟いた。
「初代王……あなたの夢は、今も流れ続けています。
この分水の大地が、それを証明してみせる」
朝日が昇り、青い光が水の紋章を照らした。
その光はまるで、二つの世界をつなぐ“目覚めの光”のようだった。
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