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第2話「サッカー部、引退します。え? どうして剣道? 理由は言えません!」
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「え、ミズノ、部活やめるって本気?」
放課後の部室。ユニフォーム姿の友人・佐々木が、目を丸くした。
「うん。本気だ」
「急にどした!? お前、フォワードレギュラーだったじゃん。大会近いし!」
「……色々考えてさ。もっと、違う力をつけたいって思ったんだ」
「なんだよそれ。厨二病かよ」
(いや、厨二病じゃなくて、異世界病なんだけど……)
もちろん本当の理由は言えない。
《25歳で異世界に転移します。なので、剣道を始めます》
なんて言ったら、翌日には保健室経由でカウンセリング一直線だ。
「ま、止めても無駄か。お前そういうとこ頑固だしな」
「ありがとな、佐々木。お前とは良いコンビだった」
「なんか別れの挨拶みたいに言うなよ!? 転校すんのかよ!?」
(いや、転移する)
というわけで、陽介の“異世界転生準備部活改革”が始まった。
*
「――剣道部、か。かっこいい響きじゃん!」
入部届を出すと、剣道部の顧問・鬼塚先生が豪快に笑った。
「オマエ、初心者か?」
「はい!」
「よし、バリバリ鍛えてやる! 魂から叩き直すぞ!」
(魂はもう未来に向かって燃えてます)
「……あとな、お前、農業にも興味あるんだって?」
「あっ、はい。実は農業高校を目指してて」
「ほう、農高志望か! ならば体力は絶対つけとけ。土は人を選ぶぞ!」
(土、人格者かよ)
こうして、陽介の“剣と農の二刀流生活”がスタートした。
*
「水野くん、最近めっちゃ勉強してるよね?」
「テスト前でもないのに、なんで急に目覚めたの?」
「えっ? べ、別に深い理由はないよ?」
クラスメイトたちがざわつくなか、陽介はただ黙々とノートをまとめる。
「社会は現代の歴史を知る=異世界での相対的技術レベルを測る目安になるし、
理科は薬草とか火薬のヒントになりうるし、
家庭科は裁縫や保存食作りの基本。美術も図案化力として重要……!」
もう、すべての授業が「異世界のための予習」なのだ。
「あいつ、ついに“全教科にやる気出す系男子”になったな……」
「これは……受験でも狙ってるのかも……!」
(違う。異世界です)
*
そんなある日の夜。
「ねぇ、陽介」
母が晩ごはんの後に、真顔で言った。
「なんか……最近すごく頑張ってるよね」
「えっ、そ、そう?」
「なんかね、怖い夢でも見たのかって思うくらい」
「…………」
陽介は少しだけ、言葉を選んでから答えた。
「……あと10年で、大事なことがあるかもしれないから」
「ふふ、なにそれ。まるで運命みたいな言い方」
「……うん、まあ、そんな感じ」
母はちょっと寂しそうに笑って、
「10年後、陽介が何してても、応援してるよ」
と言った。
その言葉が、胸の奥にずっと残った。
放課後の部室。ユニフォーム姿の友人・佐々木が、目を丸くした。
「うん。本気だ」
「急にどした!? お前、フォワードレギュラーだったじゃん。大会近いし!」
「……色々考えてさ。もっと、違う力をつけたいって思ったんだ」
「なんだよそれ。厨二病かよ」
(いや、厨二病じゃなくて、異世界病なんだけど……)
もちろん本当の理由は言えない。
《25歳で異世界に転移します。なので、剣道を始めます》
なんて言ったら、翌日には保健室経由でカウンセリング一直線だ。
「ま、止めても無駄か。お前そういうとこ頑固だしな」
「ありがとな、佐々木。お前とは良いコンビだった」
「なんか別れの挨拶みたいに言うなよ!? 転校すんのかよ!?」
(いや、転移する)
というわけで、陽介の“異世界転生準備部活改革”が始まった。
*
「――剣道部、か。かっこいい響きじゃん!」
入部届を出すと、剣道部の顧問・鬼塚先生が豪快に笑った。
「オマエ、初心者か?」
「はい!」
「よし、バリバリ鍛えてやる! 魂から叩き直すぞ!」
(魂はもう未来に向かって燃えてます)
「……あとな、お前、農業にも興味あるんだって?」
「あっ、はい。実は農業高校を目指してて」
「ほう、農高志望か! ならば体力は絶対つけとけ。土は人を選ぶぞ!」
(土、人格者かよ)
こうして、陽介の“剣と農の二刀流生活”がスタートした。
*
「水野くん、最近めっちゃ勉強してるよね?」
「テスト前でもないのに、なんで急に目覚めたの?」
「えっ? べ、別に深い理由はないよ?」
クラスメイトたちがざわつくなか、陽介はただ黙々とノートをまとめる。
「社会は現代の歴史を知る=異世界での相対的技術レベルを測る目安になるし、
理科は薬草とか火薬のヒントになりうるし、
家庭科は裁縫や保存食作りの基本。美術も図案化力として重要……!」
もう、すべての授業が「異世界のための予習」なのだ。
「あいつ、ついに“全教科にやる気出す系男子”になったな……」
「これは……受験でも狙ってるのかも……!」
(違う。異世界です)
*
そんなある日の夜。
「ねぇ、陽介」
母が晩ごはんの後に、真顔で言った。
「なんか……最近すごく頑張ってるよね」
「えっ、そ、そう?」
「なんかね、怖い夢でも見たのかって思うくらい」
「…………」
陽介は少しだけ、言葉を選んでから答えた。
「……あと10年で、大事なことがあるかもしれないから」
「ふふ、なにそれ。まるで運命みたいな言い方」
「……うん、まあ、そんな感じ」
母はちょっと寂しそうに笑って、
「10年後、陽介が何してても、応援してるよ」
と言った。
その言葉が、胸の奥にずっと残った。
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