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だが、その日の午前11時。
部長が顔面蒼白で会議室に現れた瞬間、空気が凍った。
「……ごめん。会社、今日で……終わりました。あの、全員、2時間以内に荷物まとめて……ください……」
「えっ!? えっ、うそっ!? ドッキリじゃなくて!? えっ!?」
隣の席の経理・藤本さん(独身・貯金ゼロ・ペット複数)が椅子ごと倒れそうになる。
「ねえこれエイプリルフール!? いま何月!? 誰かGoogleで確認して!」
「11月っすよ、藤本さん……」
彼は周囲の騒ぎを横目に、ひとつ深呼吸した。
「……終わったのか」
ぼそっと呟いて、自分のPCをシャットダウン。USBメモリをそっと抜く。キーボードの埃を軽く拭く。なぜか、丁寧だった。
「……えっ、落ち着きすぎじゃない? なんでそんな悟り顔なの?」
と藤本さん。
「まあ……10年書いた“幸せ日記”が、今朝ついに1万個目を迎えたからね……なんか、もういいかなって。」
「それ人生のエンディング台詞!?」
そんな中、スマホが震えた。画面には“まいこ”の文字。彼女からだった。
「おっ、奇跡の逆転劇スタートか? 慰め電話? 同棲のお誘い?」
画面をタップし、メッセージを開く。
《ごめん。無職の人とは付き合えない。わたしの人生、計画があるから。》
……既読スピードが速すぎる。
「お、おい、どした?」
「うーん……」
彼はスマホを伏せて、ぽつりと呟いた。
「ゲームで言うと……ラスボス戦前に装備ぜんぶ失った感じ。」
「いやもう、“裸一貫で世界救ってこい”ってやつだよそれ!」
職場の空気が、泣き笑い混じりのカオスと化す中、彼だけは妙に静かだった。
虚しさはあった。あったけど――
「……まあでも、これはたぶん“フリ”だな。」
「は?」
「マンガでよくあるやつ。どん底に落ちた次のページで“宝くじ当選!”とか“異世界転移!”とか来るやつ。」
「何その前向きスキル!?」
荷物をまとめながら彼は、小さな幸せ日記を胸ポケットに戻す。
人生は、どうやら次のフェーズに入ったらしい。
しかも、かなり派手なやつに。
最後までお読みいただきありがとうございます🌷
「面白かった」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひ【お気に入り登録】や【感想】で応援いただけると励みになります!
あなたのひと言が、次のお話を書く力になります✨
部長が顔面蒼白で会議室に現れた瞬間、空気が凍った。
「……ごめん。会社、今日で……終わりました。あの、全員、2時間以内に荷物まとめて……ください……」
「えっ!? えっ、うそっ!? ドッキリじゃなくて!? えっ!?」
隣の席の経理・藤本さん(独身・貯金ゼロ・ペット複数)が椅子ごと倒れそうになる。
「ねえこれエイプリルフール!? いま何月!? 誰かGoogleで確認して!」
「11月っすよ、藤本さん……」
彼は周囲の騒ぎを横目に、ひとつ深呼吸した。
「……終わったのか」
ぼそっと呟いて、自分のPCをシャットダウン。USBメモリをそっと抜く。キーボードの埃を軽く拭く。なぜか、丁寧だった。
「……えっ、落ち着きすぎじゃない? なんでそんな悟り顔なの?」
と藤本さん。
「まあ……10年書いた“幸せ日記”が、今朝ついに1万個目を迎えたからね……なんか、もういいかなって。」
「それ人生のエンディング台詞!?」
そんな中、スマホが震えた。画面には“まいこ”の文字。彼女からだった。
「おっ、奇跡の逆転劇スタートか? 慰め電話? 同棲のお誘い?」
画面をタップし、メッセージを開く。
《ごめん。無職の人とは付き合えない。わたしの人生、計画があるから。》
……既読スピードが速すぎる。
「お、おい、どした?」
「うーん……」
彼はスマホを伏せて、ぽつりと呟いた。
「ゲームで言うと……ラスボス戦前に装備ぜんぶ失った感じ。」
「いやもう、“裸一貫で世界救ってこい”ってやつだよそれ!」
職場の空気が、泣き笑い混じりのカオスと化す中、彼だけは妙に静かだった。
虚しさはあった。あったけど――
「……まあでも、これはたぶん“フリ”だな。」
「は?」
「マンガでよくあるやつ。どん底に落ちた次のページで“宝くじ当選!”とか“異世界転移!”とか来るやつ。」
「何その前向きスキル!?」
荷物をまとめながら彼は、小さな幸せ日記を胸ポケットに戻す。
人生は、どうやら次のフェーズに入ったらしい。
しかも、かなり派手なやつに。
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