1万個の小さな幸せを集めたら、3億円と家族ができました

谷川 雅

文字の大きさ
2 / 15

しおりを挟む
だが、その日の午前11時。
部長が顔面蒼白で会議室に現れた瞬間、空気が凍った。
「……ごめん。会社、今日で……終わりました。あの、全員、2時間以内に荷物まとめて……ください……」
「えっ!? えっ、うそっ!? ドッキリじゃなくて!? えっ!?」
隣の席の経理・藤本さん(独身・貯金ゼロ・ペット複数)が椅子ごと倒れそうになる。
「ねえこれエイプリルフール!? いま何月!? 誰かGoogleで確認して!」
「11月っすよ、藤本さん……」
彼は周囲の騒ぎを横目に、ひとつ深呼吸した。
「……終わったのか」
ぼそっと呟いて、自分のPCをシャットダウン。USBメモリをそっと抜く。キーボードの埃を軽く拭く。なぜか、丁寧だった。
「……えっ、落ち着きすぎじゃない? なんでそんな悟り顔なの?」
と藤本さん。
「まあ……10年書いた“幸せ日記”が、今朝ついに1万個目を迎えたからね……なんか、もういいかなって。」
「それ人生のエンディング台詞!?」
そんな中、スマホが震えた。画面には“まいこ”の文字。彼女からだった。
「おっ、奇跡の逆転劇スタートか? 慰め電話? 同棲のお誘い?」
画面をタップし、メッセージを開く。
《ごめん。無職の人とは付き合えない。わたしの人生、計画があるから。》
……既読スピードが速すぎる。
「お、おい、どした?」
「うーん……」
彼はスマホを伏せて、ぽつりと呟いた。
「ゲームで言うと……ラスボス戦前に装備ぜんぶ失った感じ。」
「いやもう、“裸一貫で世界救ってこい”ってやつだよそれ!」
職場の空気が、泣き笑い混じりのカオスと化す中、彼だけは妙に静かだった。
虚しさはあった。あったけど――
「……まあでも、これはたぶん“フリ”だな。」
「は?」
「マンガでよくあるやつ。どん底に落ちた次のページで“宝くじ当選!”とか“異世界転移!”とか来るやつ。」
「何その前向きスキル!?」
荷物をまとめながら彼は、小さな幸せ日記を胸ポケットに戻す。
人生は、どうやら次のフェーズに入ったらしい。
しかも、かなり派手なやつに。

最後までお読みいただきありがとうございます🌷
「面白かった」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひ【お気に入り登録】や【感想】で応援いただけると励みになります!
あなたのひと言が、次のお話を書く力になります✨
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...