最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷

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閑話 アルマ、樹との出会い

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 彼女は毎晩毎晩、違う男性と夜伽をする。
これでもう、何日が経過したのか、彼女は分かっていなかった。
今日も、アルマは遊女になる。

 いつもと変わらず、遊郭の前に座っている。
何人もの男性がアルマを見ては通り過ぎていく。
ここは高級遊郭、そう易々と出せる金額ではない。

「あの人……今日のお相手かな」

 一人の男性がアルマを見て驚いたような表情をした。
冒険者風の装いだが、纏っている雰囲気がどこか他の冒険者とは違う。
きっと、かなりの強者なのであろう。

「旦那、その子が気に入ったかい? 今晩のお供にどうだい?」
「いくらだ?」
「金貨一枚でどうだい?」

 呼び込みのおばさんと冒険者風の男が話しているのが聞こえてきた。
どうやらこの男が今晩の相手で決まりなようであった。

「今晩、夜伽をさせて頂きます鈴と申します」
「ああ、よろしく頼む」

 近くで見ると彼はまだ若い。
二十歳にもなってないのではなかろうか。
しかし、その整った顔立ち、纏っている雰囲気が随分と大人に感じさせられた。

 その翌日、アルマは予想もしていなかったことが訪れるとは知らずにそのイケメン冒険者の相手を務めた。

「異能者が!!」

 両親にそう言われ勘当されたあの日、アルマは遊郭に連れてこられた。
遊郭は最低十年は出られない。
異能を持って生まれたことをどんなに悔やんだだろうか。
しかし、一筋の光がアルマに差し掛かった。

「こちら、お前を身請けしてくれる樹さんだ」

 楼主がそう言ってアルマを座らせた。
そこにいたのは昨日の若いイケメンだった。

「私を身請け……」

 一瞬、何が起こったのか分からなかった。
彼は大金の身請け金を一括であっさりと払ってしまった。
その後、彼に連れられ、屋敷へと向かった。

「本名はなんて言うんだ?」
「アルマと申します」
「俺は綾瀬樹だ。よろしくなアルマ」

 何年振りかに本名で呼ばれたことが嬉しく、危うく涙がこぼれる所であった。
そして、綾瀬樹の名前、アルマはどこかで聞き覚えがあった。

「さあ、着いたよ。中にどうぞ」

 樹に促され、中に入る。

「まずはアルマには謝らないとだな。ステータスを勝手に見てしまったすまん」

 樹がアルマのステータスを見たということはあの能力を知られてしまっているということだ。

 しかし、樹はこの化け物みたいな特殊スキルを『凄い』と言ってくれた。
笑って迎え入れてくれた。
こんなやさしさに触れるのは何年も無かった。

「そんなこと言ったら俺のステータスの方がよっぽど化け物じみてるよ」

 そう言って樹さんはステータスを見せてくれた。

「何、これ……」

 その時、アルマは思い出した。
漆黒の髪に瞳、真っ黒な装い。
この世界最強と呼ばれた冒険者、綾瀬樹の存在を。
目の前にいる彼が他でもない最高ランクの冒険者なのだ。

「屋敷の人たちも皆いい人だから、すぐに馴染めると思うよ」

 樹が言ったようにこの屋敷に異能を持つ者に偏見は無かった。
皆が笑って迎え入れてくれた。

「私はいい人に拾って貰えたな」

 そう思いながらアルマ今日もメイドとして働くのであった。


【あとがき】
 今回はシャル、アリアに引き続き、閑話としてアルマと樹の出会いをアルマの目線で書かせて頂きました。
遊女として売られる前や遊女の期間、彼女には色々な葛藤や悩みがあったことでしょう。
今回はダイジェストのように書かせて頂きましたが、また番外編として深くヒロインたちに踏み込めたらと思っております。
読者の皆様も楽しんでいただけましたら幸いです。
 あとがき失礼しました。
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