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第98話 ミアの里帰り

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 夕食の時間となり、アリアが起こしにやって来た。

「樹さま、夕食のお時間です」

 だいたい3時間ほど寝たであろう。

「分かった、今行くよ。ありがとう」

 そう返事をすると樹はリビングへと向かった。

 リビングでみんなで食事をする。
この食卓も随分と賑やかになったものだと感じる。

「あの、よろしいですか?」

 夕食を終えた頃、ミアが樹に声をかけてきた。

「おう、どうかしたか?」
「学園も夏休みに入りますし、一度、オリエンス王国に戻ろうかと思うのです」
「ああ、もう夏休みなのか。早いもんだな。いいんじゃないか」
「それで、その……」

 ミアは手をモジモジとさせていた。

「ん? 何かあるのか?」
「その、樹さんも一緒に来てくれませんか?」

 頬を紅くしながらミアは言った。

「それは護衛ってこと?」
「それもありますが、是非、お父様に紹介したいと思いまして」
「なるほどな。俺も、ヤツの件でお世話になったし、挨拶に行きたいと思うよ」

 ヤツとは人身売買組織のボスのことである。

「あ、ありがとうございます」
「いや、いいって。姫さんが頭下げることないんだよ」

  そう言うとミアは頭を上げた。

「それで、いつ出発するんだ?」
「はい、一週間後を予定しています」
「そうか、それまでに俺たちも色々準備しなきゃな」
「俺たち?」 

 ミアは不思議そうな顔を浮かべた。

「俺が行くってことはアリアも行くだろ? 違うのか?」
「い、いえ、そうですよね。アリアさんも……」

 ミアはなぜかガッカリしたような表情を見せた。

「アリア、いいか?」

 樹はアリアの部屋の前に立ち、扉をノックした。

「ええ、どうぞ」

 その言葉を聞き、アリアの部屋の扉を開けた。

「す、すまん!!」

 樹は勢いよく扉を閉めた。
アリアは何と下着姿の着替え中であった。

「何をそんなに驚いているのですか?」

 アリアの声が飛んできた。

「着替え中ならそう言ってよ」
「主人に着替えを見られても何とも思いませんよ。それに、私は樹さまを異性としては見ていないのでご安心を」
「何が安心なんだよ!!」
「着替え、終わりましたよ」

 樹は恐る恐る扉を開ける。
どうやら下着姿では無くなったようだ。

「私、意外と大きいでしょ?」

 悪戯っぽい微笑みを浮かべながらアリアは自分の胸に手をやった。

「うるさいよ」
「それで、何か御用があったのでは?」
「ああ、そうだった。ミアが夏休みを利用してオリエンスに帰るって言うんだ。その護衛を俺とアリアでやりたいと思ってだな」
「いいですよ」

 アリアは即答だった。

「え、いいの?」
「はい、一度、オリエンスには行ってみたいと思っていましたし」
「だな、俺も国王陛下に挨拶したかったしな」
「出発はいつですか?」
「一週間後だ」
「では、それまでに準備しますね」
「頼んだ」

 こうして、樹たちはオリエンス王国に行くことを決めた。
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