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18話:勇者の贄
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「妙だな。何も現れないって奴は」
切り刻まれた大蛇の亡骸を通り抜け、生臭さが消えた頃だった。
どういうわけか、一匹も現れない。
俺たちは休憩後、通路を道なりに歩き続けていた。
あの常に脳裏に届いていた太鼓の音も聞こえず、魔獣も現れない。
今までにあったか? こんな静けさは。
どう考えても、不気味でしかない。
妖精のリリの勘。
途中枝分かれしている道は、それを頼りに進んできた。
俺たちとは違って、何かしら感じるものがあるだろうと思ったからだ。
カランカラン。
思わず、何かがつま先にぶつかった。
「何だ、これ?」
手で拾い上げると木炭のような――骨だ。
大腿骨と思えるほど太い。
見渡すと所狭しと骨が転がる。
頭骨もいくつもあるところを見ると何かここであったのか?
「ダダ様これ大変だよ?」
「まあ、何かがあったんだろうけどな。検討がつかねぇな」
レジーネはしゃがみ込むと古びたネックレスを神妙な顔をして覗き込んでいた。
「悠斗様、これは贄です」
「こんなところまで歩いてくるのか?」
「ええ、当時はこのような状況ではなかったかと思います」
ミミもしゃがみ金属と繋がれた何かを見つけた。
ところが悠斗を見るとなぜかニヤリとする。
「ねね悠斗。これって、罪人じゃないの? この足枷」
俺は再び大腿骨だと思われる骨に目を落とした。
古びた金属の輪に太めの骨が通る。どう見ても足だな。
「ああ、そういうことか」
多分、罪人を贄として捧げていた儀式か習慣があったんだろう。
なんだか胸糞ワリィ……。
だけどな、この世界の風習には口出すつもりはねぇ。
ふと、俺の残り時間を意識するとあれから経過していた。
【稼働残 1時間52分34秒|予備①:58分11秒|予備②:3時間50分41秒】
今はこねても仕方ねぇな。
レジーネは俺の様子に気がつかず、真剣にペンダントを眺めていた。
それぞれの思惑で作業をして時間がすぎていくと、必然と俺は焦ってくる。
「なあ、つまり贄ってことはさ、ここに何かヤバイ奴がいるんか?」
俺はレジーネに尋ねて見るが反応が芳しくない。
どちらかというと、答えに困っているというようにも見える。
「ええ。私自身は聞いたことしかない話ですが、勇者に捧げていると聞きます」
「え? 勇者だって? それって人を守る側なんだろ?」
「少し違うみたいなんです。私も詳しくは知らないのですが。それ以上の話は噂に尾鰭がつき、何が真実かは誰もわからない状態です」
「少なくとも、勇者並の敵対者が現れると、そういうわけか」
「だと思います」
マジなのか?
仮にそうだとして、一体なんのためか気になる所だ。
それに、界人とならずに勇者になる違いってなんなんだと、俺は頭の中で勇者という言葉が駆け巡り始めた。
そもそもここにきた人らをどうしているのか、それ自体が意味不明だ。
まずは、〈鐘胆録(しょうたんろく)〉という石盤を見つけ出す。
次に、『無鳴(むめい)の針』を得てそれを使い視写符(ししゃふ)に写す。
その針は、「音を食う獣(けもの)の巣に刺さっている」と言っていたな。
なんだ、それ。
なんで詳しく、あの時聞かなかったのか俺にもよくわからない。
どこか行けばわかる的な雰囲気で飲まれていたのも事実。
「今は向かうしかねぇだろ? 行こうぜ」
「そうですね」
「そう来なくっちゃ。式神で対抗していくよ」
「私も頑張るー」
ここに散らばる遺骨はそのままにして、俺たちは道なりに進む。
道中異様なほど静かだ。ただ、次第に空気はひんやりするどころか、蒸し暑くなってきた。
一本道を道なりに進むと、大きな広間に出てきた。
ところどころに円柱の石柱が天井を支えるようにして、林立する。
ズン・ドン・ドン|ズン・ドン|ズン・ドン
ズン・ドン・ドン|ズン・ドン|ズン・ドン
3泊、2泊、2泊のリズム。これはあのシャチ頭がでた時の音だ。
辺りに響き渡る声が、悠斗たちを襲う。
「俺は、勇者だ」
声だけ聞けば、日本語のように聞こえる。
だが、視界に捉えているのは、どう見てもシャチの体表のように、ぬらぬらと濡れており、
体系は人型。頭は一回り小さく、人の頭のサイズほどのシャチの顔が俺たちを捉えていた。
あの剣を構えている。俺が前回戦利品で得た奴だ。
「なあ、言葉が通じるなら『無鳴の針』がどこにあるか知っているか?」
相手が名乗り、言葉が通じるならだめもとで聞いてみた。
「何故?」
お、ちゃんと反応がきた。見た目はいかついし、人ではないが、話が通じるなら少しでも情報を得て起きたい。
「魔女の依頼だよ。音を食う獣の巣を探している」
俺は、嘘でもなく、本当のことでもなく、全てを語るつもりもさらさらない。
「この先しばらくいった先にいる。だが俺はお前が信用できないと勘が告げている」
「なあ、見ろよ。この丸腰の俺にそんなこと言っても意味がないぜ?」
両方の手のひらをシャチ頭に見せながら、俺はゆっくりと近づいた。
直前で止まると、俺の手を覗き込む。
今だ――。
俺は魔法袋に入れている戦利品の剣を刃先を向けたまま射出すると、脳髄をあっけなく貫いた。
そのまま仰向けに倒れると痙攣したのち、動かなくなった。
ミミが息を呑む音だけが、広間に浮いた。
レジーネは目を伏せ、長い睫毛が一度だけ震える。
「な、お前の勘は、正しかったな。もう気付きようがねぇだろうけどよ」――言ってから、舌の奥が鉄の味になる。
万が一をなくすため、首から上を切り落とし、頭部も縦に真っ二つに切り捨てる。
思いつきで試した方法が思いの外うまくいった。
今回も前回と変わらず、単体でしか現れない。
なんなんだ。ここは一体。
そもそも生贄ってなんの為にして、勇者は何をしていたんだ?
わからないことが多すぎる。
待てよ。そもそもレジーネ本人はまともに見えても、やっていることが異常な行為だとしたらどうなんだ。
そのあたりは俺は何もまだ見つけていない。
「先を急ぐぞ」
奴の言っていたこの先へと進む覚悟を決めた。
しばらく道なりに進むと今度は、リリが大きな声を上た。
「あっ! ダダ様! ダダ様の絵!」
「ん? なんだ?」
再び現れた先の半分ほどの広間には肖像画が複数飾られており、色はあせていないどころか、まだ真新しくさえ見える。
教会でみた俺そっくりな奴の肖像画が一枚。他はなぜか顔だけが削られている肖像画がいくつかあった。
俺にそっくりな奴以外はすべて顔の部分が意図的と言えるほど削らており、体つきから性別しかわからない程度の状態だ。
なんなんだここは。
不気味さと、俺の知らない俺に似た奴がここでも描かれている君悪さに身震いがした。
その時、誰もいるはずのないこの場所の奥の一角にある扉が開かれた。
切り刻まれた大蛇の亡骸を通り抜け、生臭さが消えた頃だった。
どういうわけか、一匹も現れない。
俺たちは休憩後、通路を道なりに歩き続けていた。
あの常に脳裏に届いていた太鼓の音も聞こえず、魔獣も現れない。
今までにあったか? こんな静けさは。
どう考えても、不気味でしかない。
妖精のリリの勘。
途中枝分かれしている道は、それを頼りに進んできた。
俺たちとは違って、何かしら感じるものがあるだろうと思ったからだ。
カランカラン。
思わず、何かがつま先にぶつかった。
「何だ、これ?」
手で拾い上げると木炭のような――骨だ。
大腿骨と思えるほど太い。
見渡すと所狭しと骨が転がる。
頭骨もいくつもあるところを見ると何かここであったのか?
「ダダ様これ大変だよ?」
「まあ、何かがあったんだろうけどな。検討がつかねぇな」
レジーネはしゃがみ込むと古びたネックレスを神妙な顔をして覗き込んでいた。
「悠斗様、これは贄です」
「こんなところまで歩いてくるのか?」
「ええ、当時はこのような状況ではなかったかと思います」
ミミもしゃがみ金属と繋がれた何かを見つけた。
ところが悠斗を見るとなぜかニヤリとする。
「ねね悠斗。これって、罪人じゃないの? この足枷」
俺は再び大腿骨だと思われる骨に目を落とした。
古びた金属の輪に太めの骨が通る。どう見ても足だな。
「ああ、そういうことか」
多分、罪人を贄として捧げていた儀式か習慣があったんだろう。
なんだか胸糞ワリィ……。
だけどな、この世界の風習には口出すつもりはねぇ。
ふと、俺の残り時間を意識するとあれから経過していた。
【稼働残 1時間52分34秒|予備①:58分11秒|予備②:3時間50分41秒】
今はこねても仕方ねぇな。
レジーネは俺の様子に気がつかず、真剣にペンダントを眺めていた。
それぞれの思惑で作業をして時間がすぎていくと、必然と俺は焦ってくる。
「なあ、つまり贄ってことはさ、ここに何かヤバイ奴がいるんか?」
俺はレジーネに尋ねて見るが反応が芳しくない。
どちらかというと、答えに困っているというようにも見える。
「ええ。私自身は聞いたことしかない話ですが、勇者に捧げていると聞きます」
「え? 勇者だって? それって人を守る側なんだろ?」
「少し違うみたいなんです。私も詳しくは知らないのですが。それ以上の話は噂に尾鰭がつき、何が真実かは誰もわからない状態です」
「少なくとも、勇者並の敵対者が現れると、そういうわけか」
「だと思います」
マジなのか?
仮にそうだとして、一体なんのためか気になる所だ。
それに、界人とならずに勇者になる違いってなんなんだと、俺は頭の中で勇者という言葉が駆け巡り始めた。
そもそもここにきた人らをどうしているのか、それ自体が意味不明だ。
まずは、〈鐘胆録(しょうたんろく)〉という石盤を見つけ出す。
次に、『無鳴(むめい)の針』を得てそれを使い視写符(ししゃふ)に写す。
その針は、「音を食う獣(けもの)の巣に刺さっている」と言っていたな。
なんだ、それ。
なんで詳しく、あの時聞かなかったのか俺にもよくわからない。
どこか行けばわかる的な雰囲気で飲まれていたのも事実。
「今は向かうしかねぇだろ? 行こうぜ」
「そうですね」
「そう来なくっちゃ。式神で対抗していくよ」
「私も頑張るー」
ここに散らばる遺骨はそのままにして、俺たちは道なりに進む。
道中異様なほど静かだ。ただ、次第に空気はひんやりするどころか、蒸し暑くなってきた。
一本道を道なりに進むと、大きな広間に出てきた。
ところどころに円柱の石柱が天井を支えるようにして、林立する。
ズン・ドン・ドン|ズン・ドン|ズン・ドン
ズン・ドン・ドン|ズン・ドン|ズン・ドン
3泊、2泊、2泊のリズム。これはあのシャチ頭がでた時の音だ。
辺りに響き渡る声が、悠斗たちを襲う。
「俺は、勇者だ」
声だけ聞けば、日本語のように聞こえる。
だが、視界に捉えているのは、どう見てもシャチの体表のように、ぬらぬらと濡れており、
体系は人型。頭は一回り小さく、人の頭のサイズほどのシャチの顔が俺たちを捉えていた。
あの剣を構えている。俺が前回戦利品で得た奴だ。
「なあ、言葉が通じるなら『無鳴の針』がどこにあるか知っているか?」
相手が名乗り、言葉が通じるならだめもとで聞いてみた。
「何故?」
お、ちゃんと反応がきた。見た目はいかついし、人ではないが、話が通じるなら少しでも情報を得て起きたい。
「魔女の依頼だよ。音を食う獣の巣を探している」
俺は、嘘でもなく、本当のことでもなく、全てを語るつもりもさらさらない。
「この先しばらくいった先にいる。だが俺はお前が信用できないと勘が告げている」
「なあ、見ろよ。この丸腰の俺にそんなこと言っても意味がないぜ?」
両方の手のひらをシャチ頭に見せながら、俺はゆっくりと近づいた。
直前で止まると、俺の手を覗き込む。
今だ――。
俺は魔法袋に入れている戦利品の剣を刃先を向けたまま射出すると、脳髄をあっけなく貫いた。
そのまま仰向けに倒れると痙攣したのち、動かなくなった。
ミミが息を呑む音だけが、広間に浮いた。
レジーネは目を伏せ、長い睫毛が一度だけ震える。
「な、お前の勘は、正しかったな。もう気付きようがねぇだろうけどよ」――言ってから、舌の奥が鉄の味になる。
万が一をなくすため、首から上を切り落とし、頭部も縦に真っ二つに切り捨てる。
思いつきで試した方法が思いの外うまくいった。
今回も前回と変わらず、単体でしか現れない。
なんなんだ。ここは一体。
そもそも生贄ってなんの為にして、勇者は何をしていたんだ?
わからないことが多すぎる。
待てよ。そもそもレジーネ本人はまともに見えても、やっていることが異常な行為だとしたらどうなんだ。
そのあたりは俺は何もまだ見つけていない。
「先を急ぐぞ」
奴の言っていたこの先へと進む覚悟を決めた。
しばらく道なりに進むと今度は、リリが大きな声を上た。
「あっ! ダダ様! ダダ様の絵!」
「ん? なんだ?」
再び現れた先の半分ほどの広間には肖像画が複数飾られており、色はあせていないどころか、まだ真新しくさえ見える。
教会でみた俺そっくりな奴の肖像画が一枚。他はなぜか顔だけが削られている肖像画がいくつかあった。
俺にそっくりな奴以外はすべて顔の部分が意図的と言えるほど削らており、体つきから性別しかわからない程度の状態だ。
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