30 / 30
30話:匂いは門を指す
しおりを挟む
「塔にしちゃ、でかいな」
これまで記憶にある中では一番大きい。
城かと思うほどの円柱の幅で、雲よりも高い気がする。
「これほどの大きさだと、相当高度な実験をしていそうですね」
レジーネはどこか感心した様子。
「例えばどんななんだ?」
「そうですね。多重転移を用いた高高度移動や高高度から下降実験などができますね」
「とんだ先でまたすぐに飛ぶとかか?」
「ええ、そう思っていただくとよいと思います」
うん。よくわからん。
それが必要なのかもふくめてだ。
とくに施錠もされていない扉は木製で、押せば見開きで中に入れた。
何か防犯的な仕掛けもない。
誰かがあさるなんて想定していないんだろうな。
まぁ俺たちがきても、何がどうなっているんだかわからん。
奴らの記憶の一部だとこの上のフロアにヒントがある。
帝都エドにつながる転移門があるはずだ。
とは言っても見てわかっても、動かしかたや飛ばせても定員人数までわからん。
「転移系はですね。その昔賢者ラフィが作ったともいわれています。なので、ここにある帝都エドへの転移門も同じ系統を組んでいるのではないかというのが私の予想です」
さすが専門家。
俺にはさっぱりだが、系統が同じなら操作性も同じになるのは俺でも理解できる。
「その前に少しまってくれ」
俺の残存稼働時間が30分を切っている。
予備はまったくない。
【レジーネ稼働残:23時間5分20秒】
【製作】偽命(5分1秒)→ 破棄:集中-
【製作】偽命(42分38秒)→ 破棄:集中-
【製作】偽命(20時間39分17秒)→ 予備1へ
【製作】偽命(2分31秒)→ 破棄:集中-
【製作】偽命(7時間45分10秒)→ 予備2へ
ひとまず、これでいいか。
思ったより、数値が高い命が作れるな。
リリの持つ、「灯りの巣」並みだ。
なんでだ? 場所か?
まあいい。先を急ぐか。
まずは目的の場所の確認だ。
他には目も触れず、すぐに上段への階段をみつけ上がる。
上の階についた途端、目を奪われた。
一瞬で空気が変わりやがった。
塔の中だろ? なのに、雲が流れるし、風が吹き抜けるって変じゃねぇか。
光だって、どこから差しているのか、わかんねぇしよ。
それでもな、草木のざわついて、柑橘のような甘い匂いが鼻をくすぐる。
な、わけわからん。
「どうして……自然がここにある?」
俺の声と同時に、地面がうねった。
黒い影がいくつも割れて――牙がのぞく。
「魔獣……!?」
次の瞬間、風が裂けた。
牙と爪が、空そのものを切り裂いて迫ってくる。
「マジか……思考加速」
レジーネが息を詰めた。
「永久凍土!」
「いくよ!釘神」
「どう~にでも、な~れ~」
出た!リリの適当魔法。
どうしても俺には、そのように聞こえる。
でも効果は絶大だ。
ミミやレジーネの傷が瞬く間に回復。
もちろん俺も回復していく。
「いけー! 喰らいやがれ」
黒顎で目の前の魔獣にくらいつく。
間髪いれず横から飛び出す魔獣は左腕の白顎で対応し喰らう。
思考加速が入らねぇ。
左右の顎を全開にし、正面から。
次に右は黒顎で魔獣の頭を喰らう。
左は、白顎を射出。飛びながら一気にかっさらう。
間に合わねぇやつはけり上げる。
白顎が戻ってきても、減らない。
その分喰らった分の命の秒数はうなぎ上りだ。
おいおいプラス2時間かよ。
喰らった相手の命を換算しても数分が関の山。
ところがここだと数時間。
儲けているけどな。
まったく、でたらめな場所だな。
なんだ、きりねぇぞ。
最初に入ったあの地下迷宮と同じく鶏魔獣と同じであふれてくる。
「悠斗様、減らないです」
「悠斗、なんかやばくない?」
「撤退だ。俺はしんがり。お前ら先に入り口へ」
「悠斗さま――」
「いいから、早く」
入って間もないため、すぐに出てこれた。
途端、魔獣たちは俺たちを見失ったようなそぶりだ。
「なんだ。難易度高くねぇか?」
「いまの沸き方だとキッツって感じ」
「ええ、そうですね。私もかなり消耗しました」
「ちょっと待ってくれ記憶を辿る」
俺はまだ息が落ち着かない。
見た感じなら、この出入口を潜り抜けると存在を検知するみたいだな。
待てよ。俺が吸い取ったラフィのコピーのヤツらの記憶は偽物ってことはあるのか?
いや、それはなさそうだな。
明らかに俺が吸いとるのは知らない様子だった。
本当にこの塔か? ん?
この記憶だと別のゲート起動場所があるな。
「1階に別の起動する箇所があるみたいだ」
「えーっ。それは早くいってよー」
「悪い悪い、俺もよくしらなかった」
「でもよかったですわ。悠斗様がご存じなら、解決策はあると思いますの」
息が落ち着いたところで、確認してみるか。
「皆大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。いつでもいけます」
「うん。ダイジョブ」
「ダダさま、いこーいこー」
「んじゃいくか。ついてきてくれ」
俺の知っている記憶は、かなり靄がかかっている。
なんか、濃霧の中を歩く感じなんだよな。
しかも匂いつき。
なんだよ。これクセェよ。
魚を干しているような生臭さだ。
ん? ということは、このクセェのが正解の道順ということか。
「多分な――」
俺は足を止める。
「どうしました悠斗様」
「臭くなる」
「え? 匂いですか?」
「ああ、この先匂いのする方へ向かう。それが答えだ」
1階は天井は高いが目視できる。
複数の通路がいりくんで迷路に感じる。
それでもはっきりしているのは、匂いだ。
「あっちか」
匂う。マジで生魚を干した感じの匂いだ。
これヒントがなければ迷うやつだな。
どんどんきつくなり、鼻が曲がりそうだ。
「キッツゥー」
最初にミミが悲鳴をあげた。
「これは、なかなかですね」
次にレジーネが根を上げ始めた。
俺とリリは言ってもどうにもならないし、言わないのは共通していた。
これはある意味嗅覚をもつ、「人除け」とも言えるな。
まさに耐え忍ぶ。
突き進んだ先に見えてきたのは大きな広間だ。
人の背丈の3倍程度はありそうな、白い八本の石柱が円環に立ち並ぶ。
中心部も円環があり、二十人ぐらいは立っていられそうな感じだ。
ここが例の場所ってわかるんだが、どうやって動かすんだ。
「レジーネわかるか?」
「ええ、少し調べてみます」
操作台かと思われる場所を慎重に触れている。
だが、それほど時間がかからなかった。
というのも、難しい顔つきが笑顔になったからだ。
「わかったのか?」
「ふふ。わかりますか? これ作った人はかなりものぐさかもしれません」
「ものぐさ?」
「はい。おそらく一人で操作して、一人で向かうそんな作られ方です。簡単にできるように作られています」
「転移するには魔石とか必要なのか?」
「この操作台の意味することの理解がただしければ、あと数回はいけます」
「ただ、帝都エドとは書いてないんだろ?」
「これがですね。わざわざ書いてあるんですよ」
「マジで?」
「はい。これは帝都エドで。エンシェント、ファーリング、これはかすれて見えない物と4か所あります」
「帝都エドの名称以外全部知らんな」
「はい。これは、伝記で記された場所です。神々がいたとされる場所ですが実在したんですね」
レジーネは目を輝かせながらいう。よほど興奮しているのは、歴史好きなのか?
「どうやっていくんだ?」
「この歯車を行きたい名称に合わせて、あとはこの大きな石を押すだけです。メモリをみると手を10回たたいたあとぐらいに転移される様子です」
「ざっくり10秒ってところか」
「再度同じ場所にいくには、この石がもとの位置にもどってから押せばいけます」
レジーネが装置を操作し、円環の魔法陣が輝きを帯び始める。
「円環の中に先に行ってくれ、押したらすぐいく」
「わかりました」
小走りにレジーネは円環に入り、あとは俺だけだ。
「よし――押すぞ」
悠斗が中央の石へ手をかける。
全員が円環の中へ入る。魔法陣が振動を始める。
「行くぞ。みんな準備は――」
その瞬間。
「うわっ!」
足元のケーブル状の管に足を取られ、悠斗は見事に転倒。
石の上にあった手が、ガンッと滑るように強く押し込まれる。
「ちょっ、押しすぎです悠斗様!?」
「え? いや、今のは――」
床の魔法陣が眩く輝く。
光がうねり、空気が裂ける。
「待て! まだ俺――っ!」
レジーネの声、ミミの悲鳴、リリの小さな叫び。
彼女たちの姿が、光に吸い込まれていく。
悠斗は床を蹴って駆け寄る――が、間に合わない。
「悠斗様、手を――」
届かない。光に飲まれながら、レジーネの指先が宙に溶けた。
「くそっ、待て、まだだ!」
光が収束し、音が止んだ。
そこに残っているのは――悠斗ひとり。
魔法陣の中心には、微かに焦げた“命の結線”の紋が残っている。
【命の結線 切断】
「……レジーネ」
声が出ない。
胸の奥の冷たい穴が、心臓の音を吸い込んでいく。
「しまった……」
静寂の中で、円陣の石からかすかに脈動が走る。
レジーネが言っていた言葉が、ふと蘇る。
「メモリをみると手を10回たたいたあとぐらいに転移される様子です」
「再度同じ場所に行くには、この石が元の位置にもどってから押せばいけます」
「……そういうことか」
悠斗は拳を握る。
膝をついたまま、息を整えた。
「待ってろ。今、すぐに行く」
掌を石の上に置く。
再び、魔法陣が輝きを取り戻す――。
――続く。
悠斗は――? レジーネは? リリは? そして、暗躍するミミの行き先は。
点在する帝都エド、ラフィの影、失踪する人々。
すべての針が、ひとつの“秤”へと集まる。
帝都エド編、始動。
「……終わらせる。――影層、展開」
これまで記憶にある中では一番大きい。
城かと思うほどの円柱の幅で、雲よりも高い気がする。
「これほどの大きさだと、相当高度な実験をしていそうですね」
レジーネはどこか感心した様子。
「例えばどんななんだ?」
「そうですね。多重転移を用いた高高度移動や高高度から下降実験などができますね」
「とんだ先でまたすぐに飛ぶとかか?」
「ええ、そう思っていただくとよいと思います」
うん。よくわからん。
それが必要なのかもふくめてだ。
とくに施錠もされていない扉は木製で、押せば見開きで中に入れた。
何か防犯的な仕掛けもない。
誰かがあさるなんて想定していないんだろうな。
まぁ俺たちがきても、何がどうなっているんだかわからん。
奴らの記憶の一部だとこの上のフロアにヒントがある。
帝都エドにつながる転移門があるはずだ。
とは言っても見てわかっても、動かしかたや飛ばせても定員人数までわからん。
「転移系はですね。その昔賢者ラフィが作ったともいわれています。なので、ここにある帝都エドへの転移門も同じ系統を組んでいるのではないかというのが私の予想です」
さすが専門家。
俺にはさっぱりだが、系統が同じなら操作性も同じになるのは俺でも理解できる。
「その前に少しまってくれ」
俺の残存稼働時間が30分を切っている。
予備はまったくない。
【レジーネ稼働残:23時間5分20秒】
【製作】偽命(5分1秒)→ 破棄:集中-
【製作】偽命(42分38秒)→ 破棄:集中-
【製作】偽命(20時間39分17秒)→ 予備1へ
【製作】偽命(2分31秒)→ 破棄:集中-
【製作】偽命(7時間45分10秒)→ 予備2へ
ひとまず、これでいいか。
思ったより、数値が高い命が作れるな。
リリの持つ、「灯りの巣」並みだ。
なんでだ? 場所か?
まあいい。先を急ぐか。
まずは目的の場所の確認だ。
他には目も触れず、すぐに上段への階段をみつけ上がる。
上の階についた途端、目を奪われた。
一瞬で空気が変わりやがった。
塔の中だろ? なのに、雲が流れるし、風が吹き抜けるって変じゃねぇか。
光だって、どこから差しているのか、わかんねぇしよ。
それでもな、草木のざわついて、柑橘のような甘い匂いが鼻をくすぐる。
な、わけわからん。
「どうして……自然がここにある?」
俺の声と同時に、地面がうねった。
黒い影がいくつも割れて――牙がのぞく。
「魔獣……!?」
次の瞬間、風が裂けた。
牙と爪が、空そのものを切り裂いて迫ってくる。
「マジか……思考加速」
レジーネが息を詰めた。
「永久凍土!」
「いくよ!釘神」
「どう~にでも、な~れ~」
出た!リリの適当魔法。
どうしても俺には、そのように聞こえる。
でも効果は絶大だ。
ミミやレジーネの傷が瞬く間に回復。
もちろん俺も回復していく。
「いけー! 喰らいやがれ」
黒顎で目の前の魔獣にくらいつく。
間髪いれず横から飛び出す魔獣は左腕の白顎で対応し喰らう。
思考加速が入らねぇ。
左右の顎を全開にし、正面から。
次に右は黒顎で魔獣の頭を喰らう。
左は、白顎を射出。飛びながら一気にかっさらう。
間に合わねぇやつはけり上げる。
白顎が戻ってきても、減らない。
その分喰らった分の命の秒数はうなぎ上りだ。
おいおいプラス2時間かよ。
喰らった相手の命を換算しても数分が関の山。
ところがここだと数時間。
儲けているけどな。
まったく、でたらめな場所だな。
なんだ、きりねぇぞ。
最初に入ったあの地下迷宮と同じく鶏魔獣と同じであふれてくる。
「悠斗様、減らないです」
「悠斗、なんかやばくない?」
「撤退だ。俺はしんがり。お前ら先に入り口へ」
「悠斗さま――」
「いいから、早く」
入って間もないため、すぐに出てこれた。
途端、魔獣たちは俺たちを見失ったようなそぶりだ。
「なんだ。難易度高くねぇか?」
「いまの沸き方だとキッツって感じ」
「ええ、そうですね。私もかなり消耗しました」
「ちょっと待ってくれ記憶を辿る」
俺はまだ息が落ち着かない。
見た感じなら、この出入口を潜り抜けると存在を検知するみたいだな。
待てよ。俺が吸い取ったラフィのコピーのヤツらの記憶は偽物ってことはあるのか?
いや、それはなさそうだな。
明らかに俺が吸いとるのは知らない様子だった。
本当にこの塔か? ん?
この記憶だと別のゲート起動場所があるな。
「1階に別の起動する箇所があるみたいだ」
「えーっ。それは早くいってよー」
「悪い悪い、俺もよくしらなかった」
「でもよかったですわ。悠斗様がご存じなら、解決策はあると思いますの」
息が落ち着いたところで、確認してみるか。
「皆大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。いつでもいけます」
「うん。ダイジョブ」
「ダダさま、いこーいこー」
「んじゃいくか。ついてきてくれ」
俺の知っている記憶は、かなり靄がかかっている。
なんか、濃霧の中を歩く感じなんだよな。
しかも匂いつき。
なんだよ。これクセェよ。
魚を干しているような生臭さだ。
ん? ということは、このクセェのが正解の道順ということか。
「多分な――」
俺は足を止める。
「どうしました悠斗様」
「臭くなる」
「え? 匂いですか?」
「ああ、この先匂いのする方へ向かう。それが答えだ」
1階は天井は高いが目視できる。
複数の通路がいりくんで迷路に感じる。
それでもはっきりしているのは、匂いだ。
「あっちか」
匂う。マジで生魚を干した感じの匂いだ。
これヒントがなければ迷うやつだな。
どんどんきつくなり、鼻が曲がりそうだ。
「キッツゥー」
最初にミミが悲鳴をあげた。
「これは、なかなかですね」
次にレジーネが根を上げ始めた。
俺とリリは言ってもどうにもならないし、言わないのは共通していた。
これはある意味嗅覚をもつ、「人除け」とも言えるな。
まさに耐え忍ぶ。
突き進んだ先に見えてきたのは大きな広間だ。
人の背丈の3倍程度はありそうな、白い八本の石柱が円環に立ち並ぶ。
中心部も円環があり、二十人ぐらいは立っていられそうな感じだ。
ここが例の場所ってわかるんだが、どうやって動かすんだ。
「レジーネわかるか?」
「ええ、少し調べてみます」
操作台かと思われる場所を慎重に触れている。
だが、それほど時間がかからなかった。
というのも、難しい顔つきが笑顔になったからだ。
「わかったのか?」
「ふふ。わかりますか? これ作った人はかなりものぐさかもしれません」
「ものぐさ?」
「はい。おそらく一人で操作して、一人で向かうそんな作られ方です。簡単にできるように作られています」
「転移するには魔石とか必要なのか?」
「この操作台の意味することの理解がただしければ、あと数回はいけます」
「ただ、帝都エドとは書いてないんだろ?」
「これがですね。わざわざ書いてあるんですよ」
「マジで?」
「はい。これは帝都エドで。エンシェント、ファーリング、これはかすれて見えない物と4か所あります」
「帝都エドの名称以外全部知らんな」
「はい。これは、伝記で記された場所です。神々がいたとされる場所ですが実在したんですね」
レジーネは目を輝かせながらいう。よほど興奮しているのは、歴史好きなのか?
「どうやっていくんだ?」
「この歯車を行きたい名称に合わせて、あとはこの大きな石を押すだけです。メモリをみると手を10回たたいたあとぐらいに転移される様子です」
「ざっくり10秒ってところか」
「再度同じ場所にいくには、この石がもとの位置にもどってから押せばいけます」
レジーネが装置を操作し、円環の魔法陣が輝きを帯び始める。
「円環の中に先に行ってくれ、押したらすぐいく」
「わかりました」
小走りにレジーネは円環に入り、あとは俺だけだ。
「よし――押すぞ」
悠斗が中央の石へ手をかける。
全員が円環の中へ入る。魔法陣が振動を始める。
「行くぞ。みんな準備は――」
その瞬間。
「うわっ!」
足元のケーブル状の管に足を取られ、悠斗は見事に転倒。
石の上にあった手が、ガンッと滑るように強く押し込まれる。
「ちょっ、押しすぎです悠斗様!?」
「え? いや、今のは――」
床の魔法陣が眩く輝く。
光がうねり、空気が裂ける。
「待て! まだ俺――っ!」
レジーネの声、ミミの悲鳴、リリの小さな叫び。
彼女たちの姿が、光に吸い込まれていく。
悠斗は床を蹴って駆け寄る――が、間に合わない。
「悠斗様、手を――」
届かない。光に飲まれながら、レジーネの指先が宙に溶けた。
「くそっ、待て、まだだ!」
光が収束し、音が止んだ。
そこに残っているのは――悠斗ひとり。
魔法陣の中心には、微かに焦げた“命の結線”の紋が残っている。
【命の結線 切断】
「……レジーネ」
声が出ない。
胸の奥の冷たい穴が、心臓の音を吸い込んでいく。
「しまった……」
静寂の中で、円陣の石からかすかに脈動が走る。
レジーネが言っていた言葉が、ふと蘇る。
「メモリをみると手を10回たたいたあとぐらいに転移される様子です」
「再度同じ場所に行くには、この石が元の位置にもどってから押せばいけます」
「……そういうことか」
悠斗は拳を握る。
膝をついたまま、息を整えた。
「待ってろ。今、すぐに行く」
掌を石の上に置く。
再び、魔法陣が輝きを取り戻す――。
――続く。
悠斗は――? レジーネは? リリは? そして、暗躍するミミの行き先は。
点在する帝都エド、ラフィの影、失踪する人々。
すべての針が、ひとつの“秤”へと集まる。
帝都エド編、始動。
「……終わらせる。――影層、展開」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
構造理解で始めるゼロからの文明開拓
TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。
適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。
だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――!
――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる