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第17話
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「あっ!」
ポコポコは俺を見つけるなり、駆け寄ってきた。
「あたし置いて、どこ行くつもり?」
「加工屋」
「え? 是明さぁ、ズルくない?」
なんだ?
わけわかんねぇ。
「は? 何言っちゃってんだお前?」
「是明の時間はあたしの物。是明のお金もあたしの物、あたしの物はぜぇ~んぶあたし」
「おいおい、そんなん知らねぇ」
イカれたのは、拉致られたからか?
「ちょっと……!」
在香は少し腰を引いてドン引きだ。
存子の眼が渦を巻く。
「え? 是明さま、借金あるんですか?」
「ねぇよ!! どこ聞いてんだお前」
なんだ、なんなんだコイツらは。
「あたしも行くの当然じゃん?」
「はい、はい。素直に一緒に行きたいっていえよなぁ」
まったく素直じゃねぇよな。
在香は少しニヤリと。
「まだ子供ね、ふっ」
ポコポコはそこで勝ち誇る。
一体どうした?
「ねぇねぇ。あたしと是明こんなにラブラブなの。もしかしてくやしいぃ?」
抱きつくより、腕にぶら下がってるんだが?
はあ、めんどくせぇ。
在香も大きくため息をつく。
まあ、そうだろうな。
空気よんだのか、存子は鼻歌混じりだ。
「にく肉、お肉~」
随分と愉快だな。
ってかお前食えねぇじゃん。
「な、食えねぇのになんで?」
「是明さまがおいしく食べてる姿がおいしいのです」
「肉じゃなくても同じじゃね?」
「お肉はですね。ちょっと違うんです」
「そういうもんか?」
「ええ、そういうものです」
点と棒線が作る嬉しそうな表情だ。
いつもより楽しそうにみえるな。
なんだこりゃ。
加工屋につくと。隣接する飯屋は一見普通だ。
さて、何肉にすっかー。
「いらっしゃいませ。3名様ですか?」
「ああ3名な。席ある? あと討伐数これな」
魔導具に徴税官の紋章をかざす。
「これは素晴らしいですね。どうぞこちらへ」
丸テーブルに着き、特別メニューの肉を眺める。
「特別メニューになります。“神肉”“天使肉”は銘柄でして、素材は高位魔獣です。お決まりになりましたらお声がけください」
天使と神どっちにすっかな。
ん?
この違いなんだ?
「存子、これ違いわかるか?」
俺は、天使200と神500と書かれた場所を指す。
「これはですね、『討伐ポイント』の数です。数が多いほど、能力覚醒が高いです。
神肉は能力覚醒寄り、天使肉は“肉体系”の覚醒寄りです。もちろん美容にも」
「回収課が差し押さえで持ってきた新鮮なやつですね。天使も神も、あの高級魔獣はきっちり確保しているので」
「要するに“神肉500なら500ポイント以上もっているヤツが食える”ってことか?」
「そうです。肉集めは回収課の仕事ですね。おかげで美味しい肉が食えますね」
「そっか。俺は魔獣も消すからな」
「鮮度と損傷なしで捕らえるのは難しいです」
俺たち三人は最初に見た一番鮮度の高そうなヤツを頼んだ。
◇
ポコポコは俺の体を人差し指でなぞる。
「是明さぁ。あたしと一緒に食べられて良かったしょ?」
「なんだよいきなり」
「あたし、ほら可愛いぃし、あんたといい感じだし。眼福じゃん? ねぇ?」
「お前の才能はな」
「え? 何それ?」
「マジでお前最高だからな」
「な、なんで褒めんの!?
やめろし! そゆの不意打ち禁止っ!!」
「お、おぅ…?」
(小声)「……っ、でも……あの……ありがと」
「い、今の無しっ!! 忘れろバーカ!!」
なんだ?
両手で頭抱えて。
何かを必死に抑えている感じなんだが。
……ほんと、こういう時のこいつは可愛いんだよな。
「なぁ、是贋の調子みてくれねぇか?」
「はぁはぁ。いいよ」
なんでそこで息が粗いんだ。
まあ、ジタバタしているポコポコは面白れぇな。
「お前」
「何よ」
「可愛いな」
「はぁああああああああああ?」
「事実だろ?」
「……っ! は? はぁ?
急に褒めんじゃねぇよ……心臓に悪ぃんだよバーカ……」
「……(もっと言えよ)」
「メンテこれから任せていいか?」
「メンテ道具なら、是明の部屋に持ち込んでるし」
そっぽを向きながらいうのもかわいらしいな。
珍しく照れてんのかコイツ。
「なあ店いいのか?」
「しばらくお休みって書いたし」
「救出された日にもう貼ったし。
戻って店番なんてやってたら……
……是明がまたいなくなるし」
(小声)「そんなの、やだし」
「お前さ、はぁ。店開かねぇと金かせげねぇだろ?」
「うん、そうだけど?」
「だったらよお、俺の部屋から――」
「違うしぃ」
「は?」
「毎夜さぁ……是明が腕回してくんの。
離さないのは“そっち”でしょ?」
「……ひとりで寝ると、また……あの時みたいに嫌な夢見るし」
「ん?」
「な、なんでもないし!! 今の無し!!」
「誤解されるようなこというな? な?」
「呼ばれたらすぐ来れるように
枕元に工具置いてんの」
「置くなよ」
「置くし」
ポコポコはほんの僅か、目をそらしたな。
強がってるの丸わかりだろ。
(小声)「……衛生的に最悪ね、それ」
在香は何か一瞬気配変えたよな?
「なんか言ったか?」
「いいえ、何も言ってないわ」
ポコポコは、そんなに口を膨らませんなよ。
はぁ。
「んでな、そろそろ店な――」
「無理」
「は?」
「絶対一緒に――」
「一緒に?」
「寝るし」
「いやなんで俺と寝る前提なんだ?」
「え? 事実じゃん。それに知ってんだから」
「何が?」
「毎夜くっついてくるの、是明のほうでしょ?
……あたし知ってんだからね?
こっそり“密着度”上げてくるの。……あれも、でしょ?」
(小声)「……ほんとは、その……嬉しいし……」
「って、違うし!? 今の忘れろ!! バーカ!!」
「誤解されるようなこというな!?」
「ふーん? じゃあ誤解じゃないって証明してみ?」
マジこいつ、めんどくせぇ。
……でも、こうして騒いでる顔見ると安心すんだよな。
それにな……。
昔からこいつ、一人じゃ寂しがってたからな。
あんな嬉しそうなツラされたら。
まぁ、しゃーねぇーのか?
俺自身……こいつがいた方が、なんか落ち着くしな。
部屋に着くと、すぐに是贋を渡す。
「これな、またすぐに使うから急ぎ頼めるか?」
「パッと見大丈夫そうね。わかった“一緒に寝る”までに直しておく」
いそいそと工作部屋に入った。
は?
なんでまだ一緒なんだ?
――いや、待て。
なんか……。
この部屋、もう“ポコポコ仕様”になってねぇか?
俺の部屋……いつの間に乗っ取られた?
まあ、こいつがいると賑やかで悪くねぇけどよ。
◇
ほどなくして、ポコポコが是贋を持って戻ってきた。
「はい、これ」
ポコポコから差し出されたそれを受け取り装着する。
以前と何ら変わりねぇ。問題ねぇな。
「何か問題あったか?」
「是明にしちゃ、ちゃんと扱っているわ。どこも問題なし」
たった一枚、存在証明を燃やせばいい。
それで使えるコイツは手放せねぇ。
是界ほどのバカげた極大の力はない。
是零掌ほど単発の力でもない。
甲から伸びる光の刃と世界を置いていく速度。
圧倒的な速度がつえぇ。短時間だけどな。
もちろん、こいつを使って、存在証明も抜き出せる。
俺じゃメンテが出来ないのは弱点だけどな。
まぁ、そこはポコポコに任せればいいか。
ひとまずはこれで、心置きなくいつでもやれる。
ああ、そういや――
連絡するの忘れてたな。
エリザの依頼、完了したけどよ。
あの後、神族の奴らは消えまくっただろうからな。
あいつ焦ったんじゃねぇか。
納期まではまだ十分だが、どうすっか。
エリザは気持ちわりぃんだよな。
まあ考えるまでもねぇか。
ベルを取り出そうとした時。
在香は言う。
「是明、それ外でした方がいいんじゃない?」
「ああ、確かにそうだな」
忘れてたぜ。
ヤツの言うことが本当なら鳴らした場所にきちまう。
「ちょっと行ってくらぁ」
「私もいくわ。何かあってもいいようにね」
「そうか? 助かる」
ちょうど、俺たちの執務室前の外が何もねぇ。
ただ開けた状態だ。
夕日の赤い日差しが差す。
試しに鳴らすか。
言われたとおり、3度鳴らす。
ドドドドドドドドッド!
地鳴りか?
異様な視線が近づくな。
なんだこの感覚は。
「是明さまー!」
おいマジできやがった。
しかもまた、赤いふんどしで真っ裸で黒い蝶ネクタイ。
今日はそんなに暑くねぇぞ?
しかも全力疾走。
大げさすぎやしねぇか?
俺の前までくるとピタリと止まった。
息せききってもいねぇ。
なんなんだコイツ。
「依頼の品だ。確認してくれ」
「ははー。ありがたき幸せ」
跪き手を掲げて受け取る。
袋を開けて数を確認。
「確かに間違いなくございます」
「白紙の存在証明の残りは約束どおりもらうからな、あとはそれを入れる袋もな」
「もちろんですとも。私のことを囲ってくれてもかまいません」
「は?」
「有能なつもりでございますが、お気に召しませんか?」
「ベル返す」
「受け取れません。何か御用の際に、お呼び出しいただけたらと存じます。どこにでもまいります」
「恐れ入ります。一つお伝えしておきたく」
「なんだ?」
「天使領域、14区で勇者と小競り合いがございます。
存在証明も肉を得るのも、適切な場所かと思いまして。お耳にいれさせていただきました。
もちろん脱税天使も複数おりますゆえ、大義名分がたつのではないかと存じますが」
「脱税か……」
「どうでしょう。私のこの能力。是明さまに得はさせても損はさせない所存です」
「いらねぇよ」
「左様でございますか。では、また近い内に天使案件か女神案件でご相談にうかがわせていただきたく存じます」
「もう、くんなよ」
「ええ、もちろんでございます。通り過ぎるついでにうかがう所存です」
こいつは、だめだな。
めんどくせぇのに絡まれたな。
今の所は利害が一致してるが。
いずれ裏切られるじゃねぇか。
まあ今はいい。
「お前を消す。俺が裏切ったと思ったらな」
「承知しました。是明さまを裏切るなんて、そんなことが出来るわけもありません」
「だといいがな」
「それでは、またのご機会に。くれぐれも14区は今が旬ですのでお早めにご賞味ください。それでは失礼します」
45度にお辞儀をし、その姿勢のまま跳躍して後退した。
変わらず、変態的な動きだぜ。
……ああいうタイプが一番危ねぇんだよな。
でもな、14区うますぎんだろ。
「是明……ほんとに、また行くの?」
在香が不安そうに見つめる。
「ああ、脱税犯は締めねぇとな」
俺は空を見上げる。
――どうせ、またろくでもねぇ奴らが待ってる。
だが……悪くねぇ。
「お肉、おーにく。おニク、お~にく~」
隣で存子が、相変わらず妙な歌を口ずさんでやがる。
……ったく。緊張感ねぇな。
でもよ――
ああ、いくしかねぇよな。
やっぱよぉ。
だろ?
ポコポコは俺を見つけるなり、駆け寄ってきた。
「あたし置いて、どこ行くつもり?」
「加工屋」
「え? 是明さぁ、ズルくない?」
なんだ?
わけわかんねぇ。
「は? 何言っちゃってんだお前?」
「是明の時間はあたしの物。是明のお金もあたしの物、あたしの物はぜぇ~んぶあたし」
「おいおい、そんなん知らねぇ」
イカれたのは、拉致られたからか?
「ちょっと……!」
在香は少し腰を引いてドン引きだ。
存子の眼が渦を巻く。
「え? 是明さま、借金あるんですか?」
「ねぇよ!! どこ聞いてんだお前」
なんだ、なんなんだコイツらは。
「あたしも行くの当然じゃん?」
「はい、はい。素直に一緒に行きたいっていえよなぁ」
まったく素直じゃねぇよな。
在香は少しニヤリと。
「まだ子供ね、ふっ」
ポコポコはそこで勝ち誇る。
一体どうした?
「ねぇねぇ。あたしと是明こんなにラブラブなの。もしかしてくやしいぃ?」
抱きつくより、腕にぶら下がってるんだが?
はあ、めんどくせぇ。
在香も大きくため息をつく。
まあ、そうだろうな。
空気よんだのか、存子は鼻歌混じりだ。
「にく肉、お肉~」
随分と愉快だな。
ってかお前食えねぇじゃん。
「な、食えねぇのになんで?」
「是明さまがおいしく食べてる姿がおいしいのです」
「肉じゃなくても同じじゃね?」
「お肉はですね。ちょっと違うんです」
「そういうもんか?」
「ええ、そういうものです」
点と棒線が作る嬉しそうな表情だ。
いつもより楽しそうにみえるな。
なんだこりゃ。
加工屋につくと。隣接する飯屋は一見普通だ。
さて、何肉にすっかー。
「いらっしゃいませ。3名様ですか?」
「ああ3名な。席ある? あと討伐数これな」
魔導具に徴税官の紋章をかざす。
「これは素晴らしいですね。どうぞこちらへ」
丸テーブルに着き、特別メニューの肉を眺める。
「特別メニューになります。“神肉”“天使肉”は銘柄でして、素材は高位魔獣です。お決まりになりましたらお声がけください」
天使と神どっちにすっかな。
ん?
この違いなんだ?
「存子、これ違いわかるか?」
俺は、天使200と神500と書かれた場所を指す。
「これはですね、『討伐ポイント』の数です。数が多いほど、能力覚醒が高いです。
神肉は能力覚醒寄り、天使肉は“肉体系”の覚醒寄りです。もちろん美容にも」
「回収課が差し押さえで持ってきた新鮮なやつですね。天使も神も、あの高級魔獣はきっちり確保しているので」
「要するに“神肉500なら500ポイント以上もっているヤツが食える”ってことか?」
「そうです。肉集めは回収課の仕事ですね。おかげで美味しい肉が食えますね」
「そっか。俺は魔獣も消すからな」
「鮮度と損傷なしで捕らえるのは難しいです」
俺たち三人は最初に見た一番鮮度の高そうなヤツを頼んだ。
◇
ポコポコは俺の体を人差し指でなぞる。
「是明さぁ。あたしと一緒に食べられて良かったしょ?」
「なんだよいきなり」
「あたし、ほら可愛いぃし、あんたといい感じだし。眼福じゃん? ねぇ?」
「お前の才能はな」
「え? 何それ?」
「マジでお前最高だからな」
「な、なんで褒めんの!?
やめろし! そゆの不意打ち禁止っ!!」
「お、おぅ…?」
(小声)「……っ、でも……あの……ありがと」
「い、今の無しっ!! 忘れろバーカ!!」
なんだ?
両手で頭抱えて。
何かを必死に抑えている感じなんだが。
……ほんと、こういう時のこいつは可愛いんだよな。
「なぁ、是贋の調子みてくれねぇか?」
「はぁはぁ。いいよ」
なんでそこで息が粗いんだ。
まあ、ジタバタしているポコポコは面白れぇな。
「お前」
「何よ」
「可愛いな」
「はぁああああああああああ?」
「事実だろ?」
「……っ! は? はぁ?
急に褒めんじゃねぇよ……心臓に悪ぃんだよバーカ……」
「……(もっと言えよ)」
「メンテこれから任せていいか?」
「メンテ道具なら、是明の部屋に持ち込んでるし」
そっぽを向きながらいうのもかわいらしいな。
珍しく照れてんのかコイツ。
「なあ店いいのか?」
「しばらくお休みって書いたし」
「救出された日にもう貼ったし。
戻って店番なんてやってたら……
……是明がまたいなくなるし」
(小声)「そんなの、やだし」
「お前さ、はぁ。店開かねぇと金かせげねぇだろ?」
「うん、そうだけど?」
「だったらよお、俺の部屋から――」
「違うしぃ」
「は?」
「毎夜さぁ……是明が腕回してくんの。
離さないのは“そっち”でしょ?」
「……ひとりで寝ると、また……あの時みたいに嫌な夢見るし」
「ん?」
「な、なんでもないし!! 今の無し!!」
「誤解されるようなこというな? な?」
「呼ばれたらすぐ来れるように
枕元に工具置いてんの」
「置くなよ」
「置くし」
ポコポコはほんの僅か、目をそらしたな。
強がってるの丸わかりだろ。
(小声)「……衛生的に最悪ね、それ」
在香は何か一瞬気配変えたよな?
「なんか言ったか?」
「いいえ、何も言ってないわ」
ポコポコは、そんなに口を膨らませんなよ。
はぁ。
「んでな、そろそろ店な――」
「無理」
「は?」
「絶対一緒に――」
「一緒に?」
「寝るし」
「いやなんで俺と寝る前提なんだ?」
「え? 事実じゃん。それに知ってんだから」
「何が?」
「毎夜くっついてくるの、是明のほうでしょ?
……あたし知ってんだからね?
こっそり“密着度”上げてくるの。……あれも、でしょ?」
(小声)「……ほんとは、その……嬉しいし……」
「って、違うし!? 今の忘れろ!! バーカ!!」
「誤解されるようなこというな!?」
「ふーん? じゃあ誤解じゃないって証明してみ?」
マジこいつ、めんどくせぇ。
……でも、こうして騒いでる顔見ると安心すんだよな。
それにな……。
昔からこいつ、一人じゃ寂しがってたからな。
あんな嬉しそうなツラされたら。
まぁ、しゃーねぇーのか?
俺自身……こいつがいた方が、なんか落ち着くしな。
部屋に着くと、すぐに是贋を渡す。
「これな、またすぐに使うから急ぎ頼めるか?」
「パッと見大丈夫そうね。わかった“一緒に寝る”までに直しておく」
いそいそと工作部屋に入った。
は?
なんでまだ一緒なんだ?
――いや、待て。
なんか……。
この部屋、もう“ポコポコ仕様”になってねぇか?
俺の部屋……いつの間に乗っ取られた?
まあ、こいつがいると賑やかで悪くねぇけどよ。
◇
ほどなくして、ポコポコが是贋を持って戻ってきた。
「はい、これ」
ポコポコから差し出されたそれを受け取り装着する。
以前と何ら変わりねぇ。問題ねぇな。
「何か問題あったか?」
「是明にしちゃ、ちゃんと扱っているわ。どこも問題なし」
たった一枚、存在証明を燃やせばいい。
それで使えるコイツは手放せねぇ。
是界ほどのバカげた極大の力はない。
是零掌ほど単発の力でもない。
甲から伸びる光の刃と世界を置いていく速度。
圧倒的な速度がつえぇ。短時間だけどな。
もちろん、こいつを使って、存在証明も抜き出せる。
俺じゃメンテが出来ないのは弱点だけどな。
まぁ、そこはポコポコに任せればいいか。
ひとまずはこれで、心置きなくいつでもやれる。
ああ、そういや――
連絡するの忘れてたな。
エリザの依頼、完了したけどよ。
あの後、神族の奴らは消えまくっただろうからな。
あいつ焦ったんじゃねぇか。
納期まではまだ十分だが、どうすっか。
エリザは気持ちわりぃんだよな。
まあ考えるまでもねぇか。
ベルを取り出そうとした時。
在香は言う。
「是明、それ外でした方がいいんじゃない?」
「ああ、確かにそうだな」
忘れてたぜ。
ヤツの言うことが本当なら鳴らした場所にきちまう。
「ちょっと行ってくらぁ」
「私もいくわ。何かあってもいいようにね」
「そうか? 助かる」
ちょうど、俺たちの執務室前の外が何もねぇ。
ただ開けた状態だ。
夕日の赤い日差しが差す。
試しに鳴らすか。
言われたとおり、3度鳴らす。
ドドドドドドドドッド!
地鳴りか?
異様な視線が近づくな。
なんだこの感覚は。
「是明さまー!」
おいマジできやがった。
しかもまた、赤いふんどしで真っ裸で黒い蝶ネクタイ。
今日はそんなに暑くねぇぞ?
しかも全力疾走。
大げさすぎやしねぇか?
俺の前までくるとピタリと止まった。
息せききってもいねぇ。
なんなんだコイツ。
「依頼の品だ。確認してくれ」
「ははー。ありがたき幸せ」
跪き手を掲げて受け取る。
袋を開けて数を確認。
「確かに間違いなくございます」
「白紙の存在証明の残りは約束どおりもらうからな、あとはそれを入れる袋もな」
「もちろんですとも。私のことを囲ってくれてもかまいません」
「は?」
「有能なつもりでございますが、お気に召しませんか?」
「ベル返す」
「受け取れません。何か御用の際に、お呼び出しいただけたらと存じます。どこにでもまいります」
「恐れ入ります。一つお伝えしておきたく」
「なんだ?」
「天使領域、14区で勇者と小競り合いがございます。
存在証明も肉を得るのも、適切な場所かと思いまして。お耳にいれさせていただきました。
もちろん脱税天使も複数おりますゆえ、大義名分がたつのではないかと存じますが」
「脱税か……」
「どうでしょう。私のこの能力。是明さまに得はさせても損はさせない所存です」
「いらねぇよ」
「左様でございますか。では、また近い内に天使案件か女神案件でご相談にうかがわせていただきたく存じます」
「もう、くんなよ」
「ええ、もちろんでございます。通り過ぎるついでにうかがう所存です」
こいつは、だめだな。
めんどくせぇのに絡まれたな。
今の所は利害が一致してるが。
いずれ裏切られるじゃねぇか。
まあ今はいい。
「お前を消す。俺が裏切ったと思ったらな」
「承知しました。是明さまを裏切るなんて、そんなことが出来るわけもありません」
「だといいがな」
「それでは、またのご機会に。くれぐれも14区は今が旬ですのでお早めにご賞味ください。それでは失礼します」
45度にお辞儀をし、その姿勢のまま跳躍して後退した。
変わらず、変態的な動きだぜ。
……ああいうタイプが一番危ねぇんだよな。
でもな、14区うますぎんだろ。
「是明……ほんとに、また行くの?」
在香が不安そうに見つめる。
「ああ、脱税犯は締めねぇとな」
俺は空を見上げる。
――どうせ、またろくでもねぇ奴らが待ってる。
だが……悪くねぇ。
「お肉、おーにく。おニク、お~にく~」
隣で存子が、相変わらず妙な歌を口ずさんでやがる。
……ったく。緊張感ねぇな。
でもよ――
ああ、いくしかねぇよな。
やっぱよぉ。
だろ?
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SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
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転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
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異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
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