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第十五話 渾身の一撃
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(ふむ……あの光は余に有害であることは間違いないであろうな……)
グラシャラボラスは近付くのは危険と判断。様子見も兼ねて羽根を飛ばす。グワッと羽を持ち上げた時、じっとこちらを見ていた女が悪魔人間に何かを囁いた。その瞬間悪魔人間は周りの女たちにも聞こえる声で命令する。
「……遠距離攻撃だ、散れ」
バサッ
羽根の一斉射撃。亜音速の羽根の弾丸が雨のように降り注ぐ。しかし、リョウの言う事を聞き入れたアークの隊員たちはすぐに行動を開始し、既にそこにはいなかった。
ズガンッ
『むっ?』
この行動速度。後から合流した女共は悪魔人間とは元々仲間だったと見るのが妥当だろう。それにしても思ったより練り上げられた人間が多い。
(チッ……面倒な。そもそもこの体で戦う事が最大のハンデよな……)
本来であれば何も考える必要もないのだが、不完全に召喚されたこの体。不安が過るのも無理からぬ事。
だがどれだけ身体能力が高かろうと、聖なる力が湧き上がろうと、こちらに攻撃を与えられなければ敵がどれほど強くても意味はない。この世界で制空権を持つというのは無敵であることと同義だ。
飛び道具さえなければ。
パァンッ
破裂音が辺り一面に木霊し、光の弾が飛んでくる。無限光によって強化された光の弾丸。
アークの隊員は近距離と遠距離の武器を両方持たされる。アシュリーを例に挙げればナイフと拳銃だ。アルファチームの隊長ならライフルとダガーを提げていた。火を吹いたのは隊長のライフル。曳光弾のように軌道が見えやすいが、当たればダメージもデカイ。
『ふんっ』
その聖なる弾丸を右手に持つジャマダハルで凪ぎ払う。
パキィンッ
『むっ!?』
弾丸とぶつかると相殺した。お気に入りのジャマダハルが砕け散った。
『まさかこれもか……!?』
自分の体だけではない、持つ武器ですら弱体化の対象となっていた。
「あ、いける。一斉射撃!!」
隊長は手を振って撃つように指示する。それぞれの武器を構えてすぐさま撃つ。
パパァンッパンパァンッ
暗闇に光の筋が多量に引かれる。全てグラシャラボラスに向かって伸びる。しかし、素早く動けるのは何も人間側だけではない。
ボッ
瞬間その場所から消えるように避ける。同時にアークの隊員の一人に向かって突撃した。完全に見失っている。
(とりあえず一体……)
ジャマダハルを掲げて切りつけようと構えた。
「……やっと降りてきたな……」
『?!』
光に一瞬照らされた瞬きの中でリョウはグラシャラボラスの姿を捉えた。
ゴンッ
拳はグラシャラボラスの顔面にめり込む。聖骸布のレプリカは顔を焼き、その勢いを保ったまま吹き飛ぶ。
ザザザッバサッ
地面に掠りながらも最後まで落ちる事なく空に飛ぶ。暗闇に入り込んで姿を消した。
「チッ……また隠れやがった……」
アークの隊員は自分が守られた事実に驚きを隠せない。リョウはその驚きを無視して空を眺める。
『……よくも……よくもよくも余の顔を!!』
痛みから叫び散らすも、何らかの攻撃はない。隠れて攻撃する戦闘スタイルだけにダメージには耐性がないのだろう。その為に攻撃が遅れる。悪魔の性格が見えてきた。
一対一なら既にやられたかもしれないが、アークを出汁に攻撃まで入れられたのは大きい。
「……このままコイツらを餌に潰してやるか……」
「つかなんで私を使わないの?さっさと済ませりゃ良いのに」
頭の口が助言した。しかしその意味深な提案には首を振る。
「……嫌だね……」
………
アシュリーは街中を走っていた。時計塔を目指して突き進むんでいると、目の前にアークの隊員が見えた。
(ブラボーチーム?)
結界を張るように指示を受けた隊員たちだ。現在結界を張る為に祈りを唱えている。
「待って下さい!まだ結界を張らないで!!」
アシュリーは大声で止めるが、結界を張り始めたらもう止められない。
バッシュゥゥゥッ
光の壁が凄い勢いで張り巡らされる。時計塔を中心に半径5kmの距離を囲う結界が張られた。
「ん?なんだ……って、アシュリー?!」
ギリギリだった。結界が張られるほんの少し前に滑り込みで結界の中に入ることができた。
「ハァハァ……セーフ」
「セーフじゃない!!何考えてんの?!ホワイト次官が来るまで結界は解けないんだよ!?」
アシュリーは振り向いて頭を下げる。
「すいません!後で罰は受けます!今は許してください!!」
バッと踵を返して時計塔を目指して走る。
「待ちなさい!!せめてここにいてホワイト次官を……!!」
だが、まったく意に返すこともなく走り去った。
「……もう!!」
隊員は地団駄を踏んだ。その時後ろから走る足音が聞こえる。
「おい!アシュリーを見なかったか!?」
デルタチームの隊長とジューンがやって来た。
「はい……既に結界の内側に入ってしまいました。結界を張る瞬間に滑り込まれたので止めることができず……」
「そうか……チッ、仕様のない事だ」
結界の内側を覗く。時計塔には暗闇がドーム状に囲まれているのが見えた。
「何なのだあれは……」
外から見るが何なのかまったく分からない。どんな悪魔なのか、どんな能力なのか。
「あれはねぇ、黒翼の暗殺者の能力だよ」
背後から声が聞こえた。その声に振り向くとぬいぐるみを抱き抱える女の子が立っている。
「リナちゃん!?なんでここに!?」
ジューンは驚き戸惑い、大きな声が出た。リナは手を振って答える。
「うふふっ……ちゃんと召喚出来たのよ?偉いよねぇ、ウロボロスの子達を誉めてあげて」
その口から信じられない言葉が出てくる。デルタの隊長はジューンの前に出てリナを牽制する。
「気を引き閉めろ。あれはただの少女ではない」
「はっ」として身構える。それを見てクスクス笑って楽しそうに小馬鹿に隊員たちを見る。
「どうする?プルソン。私たちを止める気だよ?……うんうん、じゃ殺しちゃおっか!」
結界の外では最悪の存在による一方的な戦いが始まった。
グラシャラボラスは近付くのは危険と判断。様子見も兼ねて羽根を飛ばす。グワッと羽を持ち上げた時、じっとこちらを見ていた女が悪魔人間に何かを囁いた。その瞬間悪魔人間は周りの女たちにも聞こえる声で命令する。
「……遠距離攻撃だ、散れ」
バサッ
羽根の一斉射撃。亜音速の羽根の弾丸が雨のように降り注ぐ。しかし、リョウの言う事を聞き入れたアークの隊員たちはすぐに行動を開始し、既にそこにはいなかった。
ズガンッ
『むっ?』
この行動速度。後から合流した女共は悪魔人間とは元々仲間だったと見るのが妥当だろう。それにしても思ったより練り上げられた人間が多い。
(チッ……面倒な。そもそもこの体で戦う事が最大のハンデよな……)
本来であれば何も考える必要もないのだが、不完全に召喚されたこの体。不安が過るのも無理からぬ事。
だがどれだけ身体能力が高かろうと、聖なる力が湧き上がろうと、こちらに攻撃を与えられなければ敵がどれほど強くても意味はない。この世界で制空権を持つというのは無敵であることと同義だ。
飛び道具さえなければ。
パァンッ
破裂音が辺り一面に木霊し、光の弾が飛んでくる。無限光によって強化された光の弾丸。
アークの隊員は近距離と遠距離の武器を両方持たされる。アシュリーを例に挙げればナイフと拳銃だ。アルファチームの隊長ならライフルとダガーを提げていた。火を吹いたのは隊長のライフル。曳光弾のように軌道が見えやすいが、当たればダメージもデカイ。
『ふんっ』
その聖なる弾丸を右手に持つジャマダハルで凪ぎ払う。
パキィンッ
『むっ!?』
弾丸とぶつかると相殺した。お気に入りのジャマダハルが砕け散った。
『まさかこれもか……!?』
自分の体だけではない、持つ武器ですら弱体化の対象となっていた。
「あ、いける。一斉射撃!!」
隊長は手を振って撃つように指示する。それぞれの武器を構えてすぐさま撃つ。
パパァンッパンパァンッ
暗闇に光の筋が多量に引かれる。全てグラシャラボラスに向かって伸びる。しかし、素早く動けるのは何も人間側だけではない。
ボッ
瞬間その場所から消えるように避ける。同時にアークの隊員の一人に向かって突撃した。完全に見失っている。
(とりあえず一体……)
ジャマダハルを掲げて切りつけようと構えた。
「……やっと降りてきたな……」
『?!』
光に一瞬照らされた瞬きの中でリョウはグラシャラボラスの姿を捉えた。
ゴンッ
拳はグラシャラボラスの顔面にめり込む。聖骸布のレプリカは顔を焼き、その勢いを保ったまま吹き飛ぶ。
ザザザッバサッ
地面に掠りながらも最後まで落ちる事なく空に飛ぶ。暗闇に入り込んで姿を消した。
「チッ……また隠れやがった……」
アークの隊員は自分が守られた事実に驚きを隠せない。リョウはその驚きを無視して空を眺める。
『……よくも……よくもよくも余の顔を!!』
痛みから叫び散らすも、何らかの攻撃はない。隠れて攻撃する戦闘スタイルだけにダメージには耐性がないのだろう。その為に攻撃が遅れる。悪魔の性格が見えてきた。
一対一なら既にやられたかもしれないが、アークを出汁に攻撃まで入れられたのは大きい。
「……このままコイツらを餌に潰してやるか……」
「つかなんで私を使わないの?さっさと済ませりゃ良いのに」
頭の口が助言した。しかしその意味深な提案には首を振る。
「……嫌だね……」
………
アシュリーは街中を走っていた。時計塔を目指して突き進むんでいると、目の前にアークの隊員が見えた。
(ブラボーチーム?)
結界を張るように指示を受けた隊員たちだ。現在結界を張る為に祈りを唱えている。
「待って下さい!まだ結界を張らないで!!」
アシュリーは大声で止めるが、結界を張り始めたらもう止められない。
バッシュゥゥゥッ
光の壁が凄い勢いで張り巡らされる。時計塔を中心に半径5kmの距離を囲う結界が張られた。
「ん?なんだ……って、アシュリー?!」
ギリギリだった。結界が張られるほんの少し前に滑り込みで結界の中に入ることができた。
「ハァハァ……セーフ」
「セーフじゃない!!何考えてんの?!ホワイト次官が来るまで結界は解けないんだよ!?」
アシュリーは振り向いて頭を下げる。
「すいません!後で罰は受けます!今は許してください!!」
バッと踵を返して時計塔を目指して走る。
「待ちなさい!!せめてここにいてホワイト次官を……!!」
だが、まったく意に返すこともなく走り去った。
「……もう!!」
隊員は地団駄を踏んだ。その時後ろから走る足音が聞こえる。
「おい!アシュリーを見なかったか!?」
デルタチームの隊長とジューンがやって来た。
「はい……既に結界の内側に入ってしまいました。結界を張る瞬間に滑り込まれたので止めることができず……」
「そうか……チッ、仕様のない事だ」
結界の内側を覗く。時計塔には暗闇がドーム状に囲まれているのが見えた。
「何なのだあれは……」
外から見るが何なのかまったく分からない。どんな悪魔なのか、どんな能力なのか。
「あれはねぇ、黒翼の暗殺者の能力だよ」
背後から声が聞こえた。その声に振り向くとぬいぐるみを抱き抱える女の子が立っている。
「リナちゃん!?なんでここに!?」
ジューンは驚き戸惑い、大きな声が出た。リナは手を振って答える。
「うふふっ……ちゃんと召喚出来たのよ?偉いよねぇ、ウロボロスの子達を誉めてあげて」
その口から信じられない言葉が出てくる。デルタの隊長はジューンの前に出てリナを牽制する。
「気を引き閉めろ。あれはただの少女ではない」
「はっ」として身構える。それを見てクスクス笑って楽しそうに小馬鹿に隊員たちを見る。
「どうする?プルソン。私たちを止める気だよ?……うんうん、じゃ殺しちゃおっか!」
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