「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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17章 龍球王国 前編

300、龍虎

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 アキマサがこの壁の責任者に取り次いでもらうよう話を付け、しばらく待っているとホウヨクに近い長身の全身鎧の武者が部下を連れて降りてきた。

「おぅっ! ヒビキっ! さっきぶりっ!」
「忙しないなアキマサ。またここに来るとは思わなかったぞ。それで? 自分に合わせたいというのはその者たちか?」
「あ、俺はレッド=カーマインです」
「グルガンだ。呼び捨てで構わない」
「レッド殿にグルガン殿か。自分の名はヒビキ=セイリン。以後お見知りおきを」

 スッと頭を下げるヒビキにつられてレッドも「あ、こ、こちらこそ」と頭を下げた。
 四臣創王が一つ、セイリン家当主ヒビキ=セイリン。その実力は龍球の中でも上位。
 堅実で実直な精神を見込まれ、龍球王国の王であるコウカク家のニシキより防衛将に任命された外からの敵襲を防ぐ防衛の要。

「相変わらず堅っ苦しい挨拶だなぁ。少しホウヨクを見習った方が良いんじゃないか?」
「別に問題はないだろう? 貴様こそもう少し真面目にしたらどうだ?」
「おぉっと、こいつは手厳しい」

 憎まれ口を叩き合うが決して険悪なムードはなく、仲良い者同士の掛け合いを感じる。
 ホウヨクの家での振る舞いや今の会話を聞いて、アキマサはかなり信頼されていると見て良い。

(凄いなぁアキマサさん。きっと会う人みんなと友達になれたりするんだろうな。どうやったらあんなに人当たりが良くなれるんだろう……)

 レッドはボンヤリ思いに耽る。ヒビキとその部下を一瞥し、ふとキョロキョロと周りを見始めた。
 物珍しいからというよりも何かを探している風だった。

「……おい何だよレッド。何を探してるんだよ? ったく、急にキョロキョロすんなっ」

 先ほどまで特に喋ることもなく黙っていたオディウムは、『目立つな』という意味合いも込めてレッドにコソッと話し掛ける。

 ここまで空気に徹していたのは単に面倒くさいからというのもあるが、2~3頭身しかない現在の姿に威厳が全くないからだ。
 街中で大きいままだと悪目立ちするので、レッドの命令によってこのサイズにさせられたのだ。不本意極まりないが、モラクスがレッドに与えた鎖の効果で逆らうことは不可能。
 ならば敢えて小さくなってやってると思うことにした。オディウムの心の小さな抵抗で、何とか体裁を保つことに成功したのだ。……っと自負している。

「いや……別に何でもないんだけど、白い長髪の人が見当たらないと思って……」
「はぁっ? それが何だってんだよ?」
「さっきここを見た時にさ、その人を囲んでるみんなが緊張してる風だったから結構偉い人なんだろうなって思ってたけど……挨拶に来てくれないから忙しい人なんだろうなって……」

 レッドがボソッと口にするとヒビキがいきり立つ。

「さっきだとっ!? レッド殿と言ったなっ?! その者はどのような人物だったっ?!」
「え……し、白い髪を後ろに結ってる人で、ずっと苛立ってるような怖そうな雰囲気の……」
「どこだっ! どこで見かけたんだっ!? まだこの場所に居るのかっ?!」

 ずんずん詰め寄ってくるデカい鎧武者を前にすると縮み上がってしまうが、レッドは何とか声を出した。

「い、いや、その……さっきって言ってもまだ国内に入る前のことでして、つい今ってわけじゃなくて……!」

 あたふたしながら言葉を紡ぐレッドにヒビキは安堵する。

「むっ!?……なんだそういうことか。そいつはトガノジョウ=トウダといって……」
「待てヒビキ」

 そこでアキマサが割って入る。

「国内に入る前にこの壁の上の状況が見えたというのか?」
「えっと……全体ってわけじゃなくて壁際で頭を出してた人しか見えてませんけど……まぁ、はい……」
「ちょっといいか?」

 アキマサはレッドたちを壁際まで連れて行く。

「おいおい。部外者が入っているぜ?」
「防護壁は機密事項だろ……大丈夫なのか?」

 すれ違う部下たちはレッドたちを見ながら口々に心配事を口にする。居たたまれなくなってきたレッドだったが、アキマサもヒビキも無視して壁際まで歩いた。

「モミジ。どこで彼らと合流した?」
「えっと……あそこです」

 開けた大地にぽつぽつと木々が立ち並ぶ場所。モミジは弓の的にならないように唯一の遮蔽物に隠れながらレッドたちを案内していた。
 モミジが到着する頃に合わせてアキマサがトガノジョウを止めるという打ち合わせでいたので、案内中はアキマサが成功したのを信じて身を曝すしかなかったのだが、結果は言うまでもない。

「……あんなところから?」

 グルガンとオディウムを除く全員が訝しい目でレッドを見つめる。レッドは責められているような気持になって委縮した。その様子を見て嘘を吐いていると思うものも少なからずいる。

「そんなはずはない。ここで一望を見渡せる我らでも望遠鏡が無ければ人を正確に判別することが出来ぬというのに、100間……いや200間は先の人物を裸眼でなどと。見分けることなど到底出来ますまい」
「自己を大きく見せようとアキマサ殿から聞きかじった人物を出したのでしょうな。恥知らずも良いところです」

 壁際に立って聞いていた兵士の指摘に周りからクスクスと堪え切れずに出た笑いがレッドを嘲る。しかしこのセリフにアキマサは心胆が冷えるような感覚を感じた。

「いや、俺はトガノジョウの話をレッドはおろかグルガンにも話していない。出したとしても『聞き分けのない奴』程度だ。まして白い長髪なんて特徴を話すわけがない」

 チラッとモミジを見ると彼女も首を横に振った。

「この件を知っているのは限られる。モミジも伝えてないとなるとレッドの出鱈目か、本当にその眼で視認したかのどちらかになるなぁ。なら後者だった場合は……」
「超すげぇ視力を持ってるってこった」

 ヒビキの背後から聞こえてきた声に皆が注目する。いつからそこに居たのか、ビャクガ家当主、コジュウロウ=ビャクガが顔を覗かせた。

「そこに居たかコジュウロウ」
「慌ただしく入って来てる連中がいるんで何かあったのかと聞き耳を立てていれば、だ。よぉアキマサ、そいつらが例の連中か?」
「ああ。全員ってわけじゃないがな」
「知ってる。魔導戦艦とやらから降りてくるのを見たぜぇ。錚々たるメンツをな。しかしこいつらは俺たちが大立ち回りをしている間に入った連中の2人だろ? まだ情報が薄いんだよなぁ……」

 ジロジロと遠慮なく見回すコジュウロウ。その目で見る限りではグルガンはただならぬ気配を感じるが、半面レッドには全くと言って良いほどに凄みが感じられない。長年培ってきた経験則から見てもレッドはおまけ程度の存在にしか映らなかった。

「なぁ、あんたレッドってんだろ? 俺様と一勝負しねぇか?」
「勝負?」
「そそ。勝負だよ」

 コジュウロウはニヤニヤしながら背中に提げた刀の柄を掴む。

「アキマサが上機嫌で連れて来た連中がどんなもんか試したくてこちとらウズウズしてたんだよ。その超人的な視力の他に何を持ってんのか見定めさせてもらおうか?」
「えぇ……?」

 急な申し出にレッドは困惑した。
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