「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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17章 龍球王国 前編

304、実のある話し合い

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「天征十一将の会合じゃねぇんだから堅っ苦しい言葉は無しにようやシズク~。まどろっこしいぜ」

 アキマサはニヤニヤと笑いながらシズクを煽る。

「ちょっ……! 師匠っ!? いきなり何を……っ!」
「この2人と俺らは利害が一致している。必要なのはお前さんが心を開くことだぜ?」

 あわあわするモミジと面倒臭そうなアキマサを見てシズクは首を小さく横に振った。

「……ふぅ。近道は良くないよアキマサ。こういう話し合いで相手がボロを出すか、こちらがしくじるかっていう駆け引きが楽しいんだよ。でも、そうだね。確かにまどろっこしい。……ごめんね2人とも。あたしのことはシズクって気軽に呼んでよ。こっちもレッドさんとグルガンさんって呼ぶから」

 急に砕けたシズクは年相応の雰囲気を出す。緊迫感が薄れた室内に誰かしらの安堵のため息が漏れた。

「……いや、警戒は当然のこと。知り合いが連れてきたとはいえ、我らもまた外なる侵略者に数えられていたことは想像に難くない。心中は察するに余りある」

 グルガンの言葉にシズクは薄目を開けて少々驚いた顔を見せる。

「初対面には敬語を使用し、相手に不快感を与えないよう丁寧に接するのは常識では? いや、失敬。こちらの常識と他国では違うこともあるかと思うので、一概に常識と語るのは間違いですね」
へりくだることはない。客への対応に何ら間違いはないのだからな。我が言いたいのは貴公の所作そのものにある。アキマサとモミジ殿の手前、帯刀こそしていないがいつでも反撃出来るように軸足に重心が寄っていた。気付かれない程度に常に半身で立ち、正座の状態からすぐに立てるようにつま先を立てて様子を伺っているな? その着物でどれほど動けるのかは分からぬが、警戒心が強いことだけは見て取れる。我の考えすぎであれば良いのだが……」

 ピリッとした空気が流れる。ほんの少しの動きすら見逃さないグルガンの観察眼は驚きを通り越して気持ちの悪さすら感じた。

(怖っ……ヤバすぎでしょこの人……出会って間もないのにそこまで見てるの?)

 モミジの純粋な心の中の感想は、この場ではアキマサを除く全員が同意出来るものだった。

「いやぁ~っ参った参ったっ! グルガンが味方で本当に良かったぜっ! 敵に回したら知らない内に完封されてたかもなっ!」

 アキマサは羊羹を頬張りながら高笑いする。

「……確かにその通りかも。寒イボが立っちゃうくらいはゾッとしたよ。ここまで見透かされたことは今まで無かった。……いや、多分これからも無いかな」
「我はそれほど大した者ではない。多少目が良いくらいのものだ。レッドに比べれば全然……」

 グルガンはフンッと鼻を鳴らして何でもないように応えた。自慢にも聞こえる応え方にレッドは呆然とする。グルガンに比べたら自分こそ大したことのない人間だと思っているから。
 すぐに否定しようとしたが、シズクの目は既に静観していたレッドに向いていた。

「……本当?」
「あ、いや、ほんのジョークで……」

 グルガンを腹芸に持ち込もうとした少女と舌戦なんて出来るわけがない。レッドはすぐに自分を卑下しようとしたが、アキマサが鷹揚に頷いた。

「確かも確か~っ! その目は200間先を見通し、ホウヨクの剣とコジュウロウの体術を初見で見破った動体視力っ! 俺たちじゃ及びもよらねぇ眼力を持ってるぜっ!」

 事実である。
 観察眼という形ではグルガンに全く勝てる気はしないが、遠くの物や動いてる物を判別する目は持っている。これを否定することは出来ない。
 レッドはうんともすんとも言わず、黙って俯いた。

「……ふーん、なるほどね。やけに自信満々にあたしの元に連れてきたと思えば、既に3人に会ってたの? 実力を測るつもりでいたけど、3人が証明するならあたしは無条件で信じるよ」

 シズクは肩を竦めてニッコリ笑った。それにはモミジが驚く。

「えっ?! で、でもまだ会って間もない方々ですよっ?! 師匠が大袈裟に言ってるだけかもしれませんよっ!?」
「うん。アキマサだけならあたしも考えたけど、冗談めかして喋る師匠の言葉を弟子が一切ツッコまないからね。その真剣な眼差しを見れば疑いようもないよ。ほら、『目は口ほどに物を言う』って言うでしょ?」

 つまりモミジが観測者としてシズクに説得力を与えていた。
 グルガンは深く頷いた。

「素晴らしい判断力だ。優秀という前評判に偽りなしだな」
「あなたに言われると恐縮しちゃうけどね。さて、アキマサ。あたしとグルガンさんたちとの仲を取り付けるためだけにここに来たわけじゃないよね? 目的はニシキ様で間違いないかな?」

 シズクがアキマサに視線を送ると同時にグルガンもまさかという顔でアキマサを見た。

「まぁバレるよな……その通りだ」
「やっぱりね。狗?」
「そうだ」
「むぅ……まさか既に尾行が居たとは……」
「『走狗』っていう敵の乱波師どもだ。コジュウロウの部下とは違ってそれほどでもないが、とにかく人数が多いんだよ」
「同じ時に出発? それともバラバラ?」
「バラバラ。で、時間ずらして合流」
「なるほど……」

 グルガンとアキマサとシズクは急に3人だけの世界で会話に入る。そのため、事情を知るモミジには多少なりとも理解出来るが、レッドとオディウムにはちんぷんかんぷんであった。

「おいっ。お前らだけで会話してんなよなっ」

 たまらずオディウムが口を挟んだが、そのことでシズクの気を引いた。

「え……あ、喋れるんだ。不思議な生物を連れてるとは思ってたけど……」
「あ、伝え忘れてました。オディウムって言います。気難しい奴なんで無視して大丈夫です」
「ちょっ?! おま……っ! 酷ぇ言い草だなこの野郎っ!」

 漫才のような掛け合いにシズクはクスッと笑ってしまう。

「アキマサ、レッドさんたちへ解説よろしく……それじゃ駕籠が全部到着次第出発ってことで。あたしも準備があるからここでお茶でも飲んでゆっくりしててね」

 そういうとシズクはスッと予備動作もなく立ち上がる。グルガンが指摘した通り、即座に動けるようにしていたようだ。
 シズクが部屋を後にし、レッドはようやくお茶を手に取った。

「あ、うまっ……」

 お茶の味に感激し、お茶請けに期待を寄せるのだった。
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