「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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18章 龍球王国 後編

378、龍球最強

 モミジたちはオリジナルの封印石を守るために最初に守っていた祠を捨て、教えられた場所に向かっていた。
 しかし、敵の足止めが激しくなり、完全に停止させられた。

「くっ! このままじゃまた壊されてしまうっ!」
「モミジ、落ち着いて。私たちが焦っても事態は好転しないわ」
「でもアヤネさんっ!」
「ほら来るわよ。舌を噛まないようにね」

 アヤネが紙一重で回避しつつマンティコアやキメラを相手取る。この組の中で最も撃破数の多いモリシゲは額から一筋の汗を流した。

「……流石に数が多い。……一旦退くことも視野に入れなくてはなるまい」
「えっ!? そんなっ!」
「……死んでは元も子もない。……ここで無理をせずとも別の道を探すか、体力を回復せねば……ジリ貧で負けるぞ」

 モリシゲはここまで多くの奥義を出し過ぎ、体力は限界に達していた。受けるので精一杯な彼を見れば、一度撤退する方が効率は良さそうだ。アヤネとモリシゲに比べたらまだまだなモミジは足手纏いとはいかなくても、実力不足なことは否めない。
 オリジナルが1つ壊されたと知らされればもう一刻の猶予もないことは明白。この国の役に立ちたい一心だが、ここは苦渋の決断で撤退を選択する。

退退退けぇいっ!!」

 馬の蹄のように軽やかに、しかし鈍重な牛の如く重い音が背後から聞こえてくる。その音に振り向くと、そこには燃え盛る火のような男が走って来た。

「ホウヨクさんっ!!」

 四臣創王が1人、ホウヨク=オオトリ。この国一番の腕を持つと言われる龍球最強の男。

「このわたくしが来たからには全てを薙ぎ払い全てをぶった斬るっ!! 邪魔をするというなら押し通るっ!!」

 走りながらブンブン振り回す武器は、ホウヨクの鍛え上げられた見事な体を持ってして尚大きく見える。全体が赤いこしらえの巨大な長巻きであり、その名を、神刀『焔羽えんは』。
 五つしか存在しない『天目一箇』級の逸品であり、天下護剣の一つ。
 刀身は赤く燃え、つい今しがた熱した窯から取り出して来たような熱が遠くからでも伝わってくる。

 敵は吠え、退くモミジたちを無視してホウヨクに向かう。

「破ぁっ!!」

 ホウヨクの気合を入れた声と共に放たれた斬撃は目にも止まらぬ速さで振り抜かれ、最初にホウヨクに接敵したキメラを瞬時にバラバラにした。続いてやって来るマンティコアに剣を振り上げた。

紅逸刀流くれないいっとうりゅうっ!!──炎天翔えんてんしょう紅蓮斬羽ぐれんざんぱぁっ!!」

 ──ボッ

 ほぼ同時5連撃による斬撃。神刀『焔羽』によって既に熱を帯びた刃にさらなる熱が加えられる。刀身は急激な温度変化によって青く染まり、マンティコアの体をバラバラに焼き切る。
 モリシゲでも倒すのに苦労したマンティコアも最強の手に掛かれば試し斬りの巻藁程度でしかない。

「……何という力技だ。……まったく恐れ入る」

 ホウヨクは勢いを殺すことなく走り去る。その間にも襲って来る敵を一掃しながら。

「良いじゃない。あの後ろについて楽させてもらいましょう」

 アヤネの案に乗ったモミジとモリシゲは納刀して走るのに集中した。



 それは突然、何の前触れまなく現れた。
 祠の前に陣取り、すぐに戦闘態勢に入れるよう刀を抜いて気を張っていた。
 たとえどのような敵であれ斬り捨てる覚悟を持ってこの場に立っていたはずだったのだが、朱殷しゅあん色をした仰々しい武者の甲冑を着込んだ巨漢が現れた途端にナガヨシは思考が停止した。

「よぉどうしたぁ? 死人でも見たような面して」
「……な、なぜ貴方様がここにいらっしゃるのですか? てっきり私は……」
「俺が死ぬわけねぇだろ? あん時は確かにぶっ飛ばされたが、俺はこの通りピンピンしてるぜ」

 肩を回しながらギラギラした目を向けて来る。ナガヨシは震える手で刀を握る。

「……ほぅ? 俺の邪魔をするつもりか? 良い心がけだなナガヨシ。俺に本当のお前の力を見せてみろ」

 ブワッと押し寄せる敵意、戦意、殺意。これにはタダウチもサッと刀を構えたが、カオルがタダウチの刀の峰にそっと手をかざす。

「?!……カオル殿? な、何をっ!?」
「仕舞いなよ。死にたいの?」

 カオルはいつものニヤニヤとした子供っぽい一面を隠し、凍りつくような目でタダウチに警告する。ヒズミの気を感じて勝てないと悟ったカオルは最初から敵意を見せないように祠から下がる。

「へっ、殊勝な心がけだな。その賢さに免じて見逃してやろう」

 ヒズミは涼しい顔をして祠に向かう。間に刀を構えるナガヨシがいるにも拘らず、散歩の如く何でもないように。
 切っ先が触れるかどうかのところまで寄ってきたが、ナガヨシが刀を振ることはない。ナガヨシは奥歯を噛みしめ、目をぎゅっと瞑り、そのまま膝から崩れ落ちた。
 ヒズミはそれが分かっていたように鼻で笑うと、ナガヨシを素通りして祠の前に立つ。

「俺が壊し損ねた封印石。今度こそぶっ壊してやるよ」

 ヒズミは刀を抜き払い、大上段に構えた。本来、研鑽を重ねた武将の力でさえ封印石には傷をつけることは叶わない。
 しかしヒズミは違う。当時、13ある封印石を9つ破壊した龍球きっての化物。振り下ろされれば確実に封印石は破壊されることだろう。

「あいや待たれいっ!!」

 ──ゴガァッ

 祠を破壊しながらホウヨクがヒズミの前に飛び出した。

 ──ドッ

 ホウヨクは思いっきりヒズミを蹴飛ばし、後方に退かせる。

「やはり生きていたかっ!! 久しぶりだなぁヒズミぃっ!!」
「会いたかったぜホウヨクぅっ!」

 最強同士が睨み合う。
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