「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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3章

29、宝物庫の番人

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 何とか無事にアヴァンティアまで戻ってきた特別部隊。傷の深いものはすぐに病院へと搬送される。

「お疲れローランド。君にばかり負担を掛けてしまって申し訳ない」
「いえいえ、当然のことをしたまでです。……いや、ニールの言う通りですね。私以外にも無事な者が居れば病院に行くこともなかったのでしょうが……」

 司祭プリースト等にあたる神官系魔法使いマジックキャスターは回復や肉体強化などの補助に特化している。
 怪我をした際の回復はもちろん、毒や火傷などの状態異常の回復、恐怖や気落ち気怠さの解消など幅広く効果を発揮する。
 その様子から「歩く病院」と評され、冒険者チームに1人は欲しい職業ジョブとして重宝されている。

「ヘクターまで倒されたのは誤算だった。まさか聖騎士パラディンの攻撃が効かないなんて思いも寄らないよ……」
「ていうかどんな攻撃でも無傷だったように思うわ。これって私の勘違い?」

 プリシラはハウザーとの戦闘を思い出しながら不機嫌そうに尋ねてきた。正直今そこには触れたくなかったニールはハハハ……と苦笑いで応える。

「いや、まぁ確かに服が汚れた程度にしか見えなかったけど、奴も無傷とはいかなかったはずだ。リックの攻撃が奴の心臓を捉えた時、堪らず動きが止まっていた。あれを破壊出来たならあるいは……」
「……ニールの言う通りだ」

 会話に入ってきたのはライト。プリシラはチラッと顔を見た後、ふんっと鼻を鳴らして首を反対方向に向ける。ライトはそんなプリシラを無視して続けた。

「奴は弱点を晒していることを公言していた。間抜けな話だが、嘘偽りなく事実だった。あれを破壊すればおそらく奴は死ぬ。しかしだ。俺たちの実力がある程度知られた今、次に出会った時に奴が心臓を取り出している可能性はゼロだぞ?どうする?」

 ライトの指摘にニールは頷く。

「確かにもう手加減はしてこないかもしれない。でも弱点が分かったんだ。一発逆転の目は僕たちにある。僕らなら勝てるさ」
「……おい、心臓の取り出し方を聞いているんだ。奴の体は硬すぎて刃も魔法も通らない。情けない話だが、心臓を取り出さなければ殺すのは不可能だぞ」
「……よぉ、その際は誰を犠牲にするつもりだ?」

 急に声をかけられたことに驚いたが、ズイッと顔を出したディロンを見て納得した。彼なら誰もが目を背けたくなることに言及するから。
 それ以上に驚いたのは彼自身かなりのダメージを受けていたはずだが、平気そうに立っていることだろう。顔中にあざや切り傷を残すディロンの質問に、困惑しながらもニールたちは眉間にシワを寄せて俯いた。

「ふんっ……ああ、その通りだ。奴に犠牲無く勝てるわけがねぇ。よく分かっているようで安心したぜ。……この街の住人全員の犠牲で等価と呼べる強さだ。ここに誘き寄せる以上、その覚悟はしとかなきゃなぁ。……まぁ、お互い気張ろうぜ」

 不敵に笑ってフラッと立ち去る。

「ん?ディロン!お前その傷!回復していけよ!」
「いらねーよ。俺は俺で治す」

 ライトの言葉に手を振って拒否し、宿屋に戻っていった。

「そういえばルーシーとヘクターはどうしている?」
「ルーシーなら仲間を心配してすぐに病院に入った。ヘクターは……どっか消えたぜ。もしかしたら遠い地の同業者に声を掛けているのかもな。チームの仲間は病院だから1人で逃げてないとは思いたいが……」
「逃げるような方が聖騎士パラディンを名乗って欲しくはないですね。同じ神に仕える身なら威厳を保っていただかないと」
「でもさぁ、逃げたくならない?だって相手が相手だもん」

 特別部隊の面々はアヴァンティアが自分たちの墓場になるのではないかと危惧している。

「僕たちは僕たちの仕事をしないとね。最後の最期まで僕たちは冒険者でいようじゃないか」

 ニールたちは頷き合い解散する。
 ギルドにはまたもこの街の防衛戦があることを伝え、気力の回復にそれぞれの宿屋に散らばっていった。



「ふんっ!!」

 レッドは剣の峰をうちわ代わりに思いっきり扇ぐ。ボワッと凄まじい突風が巻き起こり、辺りに散らばっていた金銀財宝を吹き飛ばした。

「ボフォッ!?」

 霧が寄り集まって形成されたスケルトンキングは奥の壁まで吹き飛び、物質化していた頭と両手が壁に激突して霧散する。
 スケルトンキングは体勢を立て直すために霧散した頭骨を復元し始めた。レッドはその隙を狙って即座に間合いを詰めるために走り出す。
 相手は霧。いや、霧状に見える霊体。
 風に吹き飛ばされるところからそれほど強力な存在でないことは明白だが、最も厄介なのは物理攻撃が効かない点だ。魔法が使えないレッドに勝ち目はない。

(だったら何だ!剣士セイバーにだってお前たちアンデッドと戦う術があるんだ!!)

 剣士セイバーの基本技の1つに爪刃がある。これは斬撃を飛ばす唯一の飛び道具なのだが、その仕組みは剣士セイバーの魔法と呼ばれる「剣気」にあった。

 この世界の住人は誰もが少なからず魔力を持っていて、魔力保有量、魔力の放出量の両方が多ければ多いほど魔法使いマジックキャスター系統の適性が高く、一定量に充たなければその他の職業ジョブに振り分けられる。
 つまり剣気とは、剣に魔力を纏わせて攻撃を繰り出す剣士セイバー特有の魔法攻撃。ちなみに他の戦士ウォリアー系の職業ジョブも名前が違うだけでやり方は変わらない。

「決まるか?!これで……!!」

 レッドは床を縫うように這い回り、スケルトンキングの目と鼻の先まで到着した。助走をつけて踏み出したレッドは悠々とスケルトンキングの頭上まで飛び上がる。
 頭骨だけが復元されたスケルトンキングは頭上で剣を振り上げるレッドに黒い煙を吐き出す。
 ポイズンスモッグと呼ばれる特殊攻撃。腐食性の煙に、血液の凝固作用を阻害する出血毒を混ぜた厄介な攻撃。かすっただけでも継続的スリップダメージがあり、回復魔法と解毒魔法を併用しなければ生き延びることは難しい。この距離このタイミングでは直撃は免れない。

 バサッ

 レッドは瞬時にクロークを脱ぎ、全身を包めるように小さく丸まった。クロークを盾に煙から逃れる算段だ。
 この一連の動作は瞬き半分の速度で行なわれ、身体へのダメージを完璧に回避することに成功する。
 本来なら全身を腐食で溶け散らかしながら為す術なく落下していたであろうレッドは、穴だらけになるクロークを捨てつつスケルトンキングを上段から切り裂いた。

「烈刃っ!!」

 それは剣士セイバーの基本技の1つ。根限りの剣気を纏わせ、上段から思いっきり斬りつける必殺の「二の太刀要らず」。
 基本技の「烈刃」にも「爪刃」同様に派生形があり、剣気を研ぎ澄ましてより鋭く切れ味を向上させた「岩斬烈刃」や、剣気を推進力に振り下ろす速度を速めた「閃光烈刃」など用途によって技の形を変化させる。
 レッドはそんな技の数々を使いこなせるほど器用ではないため基本技ばかりで戦うのだが、その威力は人知を超える。

 ボンッ

 霧状のスケルトンキングを斬り裂いたと同時に爆風が吹き荒れた。人間が剣を振り下ろした時に起こった事象だと言っても誰も信じないだろう。

 ボジュウゥゥゥゥ……

 霧状の体が崩れる。
 本来ならすぐにも寄り集まって頭骨や王冠、両手などを形成するのだが、真っ二つに切られた瞬間に発生した爆風に耐え切れずに両壁に吹き飛び散り散りになる。何が起こっているのか全く分からずに回復しようと試みるも上手くいかない。消えゆく体に為す術もない。

「……ォォオオォォ……」

 霊体に効果のある攻撃は魔法。つまり魔法使いマジックキャスター系統でなくとも、「剣気」という魔力を用いて戦う剣士セイバーはスケルトンキングに多少なりダメージを与えることが出来る。
 しかし幾ら何でも一撃で葬り去ることは、神聖魔法を使いこなす聖騎士パラディンにすら出来ぬ偉業である。
 次の攻撃を警戒していたレッドは消滅していくスケルトンキングを見て疑問を抱いた。

(これで終わり?……いや、次の罠が発動するだけだな)

 レッドはすぐさま切り替えて全方位の警戒を始めた。剣を構えてしばらく待ってみたが次なる危険は襲ってこなかった。罠と呼べる仕掛けは宝の番人であるスケルトンキングだけだったようだ。

「……何もなしか。いや、ということはまだ倒せていないのか?……そうとしか思えないな」

 すぐさま踵を返してミルレースの元へと走る。

『やりましたねレッド!信じていましたよ!』
「ああ、ありがとうミルレース。玉はどこかな?すぐにここから出よう」
『玉なら私の足元に……って何を焦るのです?もう倒せたのではないのですか?』
「ゾンビやミイラは肉体を破壊すればいいけど、スケルトンやゴーストに関しては本体が霊体だから神聖魔法でもないと完全に倒しきれない。俺の攻撃で何とか吹き飛ばせたが、すぐに復活するはずだ」

 レッドは眉間にシワを寄せながらキョロキョロと警戒を怠らない。

『え?でも……』

 ミルレースはスケルトンキングが現在進行系で消滅していくのを見る。あれが復活する様を彼女にはどうしても想像出来ない。
 しかし復活を豪語する自信たっぷりのレッドの顔を見てミルレースは考えるのをやめる。

『……いや、はい。じゃあ行きましょうか』

 知を捨てたミルレースはとても澄んだ笑顔で微笑んだ。その顔に神々しさを感じたレッドは(やっぱり女神なんだなぁ……)と感心する。
 そんな噛み合わない2人は黙々と地上を目指した。
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