「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

文字の大きさ
101 / 338
9章

101、踏破

しおりを挟む
(な、何だ?俺は今……どうなっている?)

 長い間空中を彷徨っていたウルエルバは腹の痛みを感じて目を覚ます。あまりの出来事に脳が理解を拒んだのか、一種の記憶喪失状態に陥っていた。
 でも思い出そうと思えばすぐにフラッシュバックする程度の軽微なもので、先ほどドラゴンブレスに匹敵する豪炎滅尽爪ごうえんめつじんそうを放ったところまでを思い出し、ようやく自分が空中浮遊している理由に行き着いた。
 格闘士ファイター系統の職業ジョブではないレッドに蹴り飛ばされ、体内の破壊と気絶を経験した事実にはらわたが煮え繰り返りそうになる。

「……野郎っ!!ぶっ殺してやるっ!!」

 怒りが痛みに勝り、落下しながらレッドを探す。赤い霧に覆われた空間で、本来なら見つけることなど困難な状態なのだが、赤い霧から生み出されたウルエルバにとっては赤い霧など無いも同じ。視界良好でギョロギョロと血走った目を光らせる。そして地面のクレーターからウルアードが必殺の一撃を放ったことを知り、焦燥感に駆られた。

「ぬっ!?ウルアードめ!俺の獲物を取りやがったな?!」

 ウルアードの考えそうなことが瞬時に頭をよぎる。ウルエルバの攻撃のすぐ後に攻撃を繰り出し、美味しいところを掻っ攫ったのだと推測出来た。ウルアードの小狡さは苛つくが、自分がレッドに一撃も与えられなかったことを思えば倒す方法はこれしかなかったのだろう。負けん気の強いウルエルバと冷静なウルエルバがせめぎ合い、ウルアードへの称賛が勝った。

(腐っても竜王か。俺と肩を並べるだけはある。今回ばかりは引き分けといったところだな……)

 地面が近付くにつれてウルアードが地面から這い出てくるのが見えた。レッドの姿が見えないことを思えばあの土の下に死体が埋まっているのだろう。ウルエルバは背中から羽を生やし、ゆっくりと地面に降り立った。

「……生きていたか。しぶといな」
「おぅよ!なかなか良い蹴りをしやがったぜ!あんなにぶっ飛ばされた経験は過去無いからな!」
「もぉ~地形を変えないでよぉ。面倒臭いなぁ……妾の領地が歪になっちゃったでしょぉ?」
「贅沢を言うな。手加減をすれば死んでいたのはこっちだぞ?」
「そうだ!お前何もしないくせに威張りやがって!少しは俺たちに感謝の一つも……ん?おいっ!ウルイリスはどうした?!姿形はおろか気配を感じ無いぞ!?」

 そういえばとウルアードはキョロキョロ目を凝らす。その疑問に答えたのはウルウティアだった。

「あぁ、ウルイリスなら今あの人間に仕留められたよぉ」
「なぁにぃっ?!」

 ウルウティアの発言に待ってましたとばかりにライトがやってくる。最初に見た時と違う印象がウルエルバとウルアードの中に生まれた。

「おいおい、なんか強くなってないか?」
「……ああ、確かに。ウルオガスト以上の風の力を感じる」

 レッドに続く第二の脅威。第一の脅威を取り払ったと思えば即座に次が来たと内心辟易する。

「面倒くせぇ!とっととぶっ殺して終わりにしてやる!」

 ウルエルバは自身を奮い立たせ、ウルイリスの仇を打とうと歩き出す。数歩歩いたところで何らかの違和感を感じて立ち止まった。

(なんだ?こいつは……なんか奥歯に物が引っ掛かったような妙な気分だ……)

 それはウルアードも感じていた。表情筋が死んでいるかのように表情から読みにくいウルアードだが、今回ばかりは訝しんでいるのが顔に表れていた。

 ──ガラァッ

 クレーターを作った際に発生する石つぶてに埋もれていたレッドが顔を上げた音だった。

「「っ!?」」

 2体の故竜王は驚いて後ずさる。確かにウルアードの必殺技を直接は受けていない。しかしながら生き物が受ければバラバラになる衝撃波と弾丸の如き勢いを持って放たれた石つぶてがレッドを襲ったはずである。ライトもウルイリスでさえ防いだというのに、レッドが土に埋もれていたことを思えば真正面から死ぬほどの衝撃波と石つぶてを食らったと推察出来る。

「ふぅ……あっぶねー。クロークがなかったら死んでたな……ウルウティアさんが欲しがってたら終わってた」

 レッドは穴だらけになったクロークを確認する。ほとんどビリビリに裂けて無残な姿になったクロークに感謝を込めてギュッと握りしめた。

「また新しいクロークを買わなきゃ」
「……ふ、ふざ……ふざけるなぁっ!!」

 その声は寡黙だったウルアードの口から発せられた。あまり声を出すことがないからか、叫んだ拍子に声が上ずっている。聞いたことがない声にウルエルバもウルウティアも驚いて目を丸くしている。

「そんな布切れ一枚で何が変わると言うのか!我が必殺の一撃に耐えられる存在などこの世に居ようはずがないっ!!死ねよ貴様っ!!ちゃんと死ねよっ!!」
「えぇ……?そん、そんなこと言われても……」

 レッドはキンキン声で叫ぶウルアードに困惑しながら後頭部を掻いた。一触即発の雰囲気の中、ウルウティアがパンパンッと柏手を打った。

「やめやめぇ。もう終わりにしましょぉ~」
「はぁっ!?何を言い出すんだ!!これで終われるはずがないだろうが!!」
「そうだウルウティア!こっちはウルオガストもウルイリスをもやられているんだ!!その上、我が必殺の一撃でさえ……絶対に許せん!!」
「おうよ!1人でもぶっ殺さなきゃ気が晴れないぜ!!」

 牙を剥き出して怒りを吐き出すウルアードとウルエルバ。しかしウルウティアには響かない。

「ふぅ……あなたたちじゃぁ天地がひっくり返っても勝てないわぁ。だってレッドの言う通り、偽物ですものぉ」

 故竜王たちはウルウティアに向き、信じられないと言った顔を向ける。

「ふざけるな。では何のために……」
「ごめんごめぇん。でももぉ良いから帰ってぇ」

 仲間割れすら起きそうな空気が流れ始めた時、ウルウティアの目が赤く光を放った。

 キィィィンッ

 耳に刺さる音。またも耳鳴りが濃霧全域に広がり、頭痛から目を閉じる。耳鳴りが終わって痛みが引き、目を開けると赤かった景色は白く濁った色に変わっていた。そこに故竜王たちの姿はなく、赤い景色と共に消え去っていた。

「あれ?……どこに行った?」
「……何のつもりだ?ここまで戦わせといて急に攻撃をやめるなんて」

 消えた故竜王たちの所在に困惑するレッド。ライトはウルウティアの敵意殺意が消えたことに警戒を強めた。

「あなたたちの実力はよく分かったわぁ。妾の負けよぉ」
「何だと?自ら負けを認めるのか?」
「ええ。レッドに妾の力を偽物だって言われて意固地になっちゃってたけどぉ、確かにその通りだなって気付かされちゃったからぁ……」
「あ、え?気にされて……?あっいや、それは……その……」
「ううん、良いのぉ。だって事実だもん。あれら全ては記憶の影よぉ。妾の能力”逢魔時おうまがとき”は妾の知るあの子たちの生前一番輝いていた時を反映させる力なのぉ。うん。偽物っちゃぁ偽物なのよねぇ……でもぉだからかなぁ。本当のことを言われて傷ついちゃったぁ。そう、妾の全てを否定されたような気になっちゃってさぁ……」

 ウルウティアの信じる最強の仲間たちを虚仮にされた挙句に倒された事実。強いことが確定したレッドだけでなく、路傍の石程度に考えていたライトにまで上回られたことは誤算も誤算。ウルアードが発狂したのも相まって、これ以上記憶の仲間が汚れる姿を見たくなかったのが本音である。

「ウ、ウルウティアさん……すいません。俺そんなつもりじゃ……」
「ふっ……もう戦う意思はないわぁ。先に行きなさい。エクスルトはすぐそこだからぁ」

 アンデッドドラゴンの玉座に座ったままパイプ煙草を吹かして哀愁を漂わせるウルウティア。厄介な敵ではあったが、フローラの助力でライトがさらに強くなったことは重畳ちょうじょう。オリーによって完璧に守られた馬と荷馬車に乗り込むと、挨拶もそこそこにエクスルトに向けて出発する。
 ただレッドたちが通り過ぎる瞬間にウルウティアはチラリと不穏な一言を放つ。

「……妾の心の傷ぅ、埋めてもらわないと気が治まらないわぁ。ねぇ……責任とってよぉ」

 もうとっくの昔に亡くなってしまった仲間たちを思う執着心こそが彼女の力の源であり強さなのだろうが、同情していたらいつまでもここに囚われそうな気になり、急いでウルウティアから離れた。
 いつまでも絡みつく濃霧に焦って昼夜問わず馬を走らせたからか割とすぐに濃霧を抜け、死の谷を無事に踏破することに成功する。馬の休憩に丸一日を費やすこととなったが、期日まで2日も残してエクスルトに到着したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...