「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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9章

102、エクスルト

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「……え?は?荷馬車が到着した?」

 エクスルトの町長は意味が分からなくて頭が真っ白になった。あり得るはずがないからだ。
 アラムブラドからエクスルトまでの距離を荷馬車で踏破しようと思ったら死の谷を抜ける他ない。それはつまり死を意味する。期日内に到着したなど全く以って冗談にしか聞こえない。

「じ、事実です。任務クエストを受けた女性です。指定した商品とピッタリ一致しますし、割り符も持っていますのでステラ=ナーバスで間違いありません」

 そこまで聞いて町長がビクッと肩を跳ねさせた。

「不味いっ!どこかに近道があるのではないか!?我らの知らない死の谷以外の近道があったら屍竜王様に供物を捧げることが出来なくなるぞ!」
「ちょ……町長……そ、それが……」
「町長。死の谷以外の近道はあり得ません。マッピングは更新し続けていますので、それに疑いはありません。そして問題なのは今来ている荷馬車は死の谷のコースから来たということです」
「何だとっ!?」
「は、はい。常識では考えられませんが、屍竜王様の脅威から何とかして脱したか、あるいは……」
「……あるいは?」
「……滅ぼしたか?」
「あり得んわ!魔導局が新たな魔法で荷馬車を空に飛ばしたと言われた方がまだ納得出来る!」

 事態をよく知る町長たちはとにかく謎めいた状況に理由をつけようと躍起になっていた。
 冒険者の連中はいつものように旅半ばで死ぬか、遅れてくるかのどちらかだろうと高を括っていたせいで成功報酬を用意しておらず、お金を今から奔走して掻き集める必要があった。しかも期日以内に荷物を無傷で届けたために賠償金は少量たりとも発生しない。

「町長っ!冒険者が責任者に会いたいと求めていますがどうなさいますか?!」
「ぐぬぬっ……私が時間を稼ぐ。その間に金集めに駆けずり回れ」
「し、支払うのですか?」
「もしもの時のためだ。今回の件では賠償金は取れん。私が出ていろいろ難癖を付けてくる。バカなら金を支払う必要がなくなるか、少額で済ませられる。もし暴力で訴えてくるけだものなら正式に抗議の形が取れるからな。その時のための用意だ。ちゃんと報酬を払う用意があったことでこちらに正当性が生まれ、冒険者ギルドと運送ギルドの両方に抗議し、損害賠償と言う形で今回の報酬の倍はふんだくれるという寸法だ」
「おぉ……!」
「ふっ……間に合う者が出たことには驚愕したが、これはつまり潮時だという兆候。もうそろそろこの任務クエストでの発注は限界だと思っていたところだし、多分向こうも今回が最後の受注だと考えているはず。暴力や暴言が飛べば、正式な抗議で冒険者ギルドと運送ギルドを罪の意識で縛れ、新たな任務クエストの発注も断れまい」
「完璧だ!」
「さすが町長!」

 町長の思い付きを称賛し、エクスルトの上役たちはコソコソと裏口から役場を離れてお金作りに奔走する。町長は乱れた髪を整え、身嗜みをチェックしてステラ=ナーバスの元へと急いだ。



 レッドたちは荷馬車の荷物を運び出し、指定された倉庫に運び入れる。その際、ライトは数人の職員を呼び出して一箱ずつ中身を確認させた後、慎重に運び入れた。

「ず、ずいぶん慎重なのですね……」

 ステラはライトの細やかさに少し引きながら運び入れた荷物を見やる。

「ええ。彼女とこの町が共犯だとするとどんな難癖を付けられるか分からないので念のために」

 サラサラと何かのメモを取りながら周りを見渡してステラに渡す。走り書きながら見やすい文字を書くライトに感心しつつ中のメモ内容を確認すると、どの箱に何が入っていて、それをどの職員たちと確認したか名前まで記載されていた。箱の構造までつぶさに観察して書かれていることを思えば、どれほど警戒しているか分かる。ステラがメモ用紙を見ながら眉を潜めていると、ようやく町長のお出ましとなった。

「ようこそいらっしゃいました。ええっとナーバス運送のステラさんでお間違い無いでしょうか?」
「あ、はい。私がステラです」
「おやぁ?こんな若いお嬢さんが運送の代表ですか?ふぅむ……失礼ですけど経歴は?」
「え、えっと……父が運送の代表でして、体の不調で私が代行を……一緒に仕事をしてきましたので経歴は今年で8年目かと」
「はぁ。家族で営まれているのですね。……う~ん、見たところあなた以外は冒険者ですか。他に従業員もいないようですねぇ……」

 ジロジロと嫌な目線を向けてくる町長。レッドとオリーは仕事が終わったからか気が抜けていて特に会話に参加することはなかったが、ここでライトがスッと前に出た。

「何か問題でも?」
「い、いや問題とは言ってないでしょう?……ったく冒険者というのは血の気が多くて……」

 ぶつぶつと聞こえるように呟きながら神経を逆撫しようとするが、チラチラと視線を送ってもライトは乗ってこない。当てが外れた町長はムスッとしながらステラに焦点を当てる。

「申し訳ないのですが、中身をひとつずつチェックさせていただても構わないでしょうか?どうも私は心配性でして……」
「あ、そ、それなら先ほど職員の方にチェックしていただきました。全て問題ないと言っていただきましたので大丈夫かと……」
「はぁ?それは誰ですか?全くその辺の1人や2人のチェックで威張られても困りますねぇ」
「い、いえいえ!ここに来てくださった6……いや7人が一緒に見てくださったので間違いありません!リ、リストアップしたのでどうぞ!」

 ステラはライトに手渡されたメモ用紙を町長に渡す。そこに書かれた職員の名は確かに見覚えがあり、すぐに今日出勤している職員たちだと気付いた。死の谷を越えて来たのではという噂と、期日以内に間に合った最初の配達人ということもあって物珍しさから野次馬で集まったことが窺い知れる。きっと好奇心から真剣に確認したに違いない。この全員のお墨付きとあらば本来文句はないのだが。

「うぐぅ……はっ!いやいや、私が確認したいと言っているのですよ。ダブルチェックです」
「でしたらどうぞ」

 ステラに案内されてすぐ側の荷物に近づく。その際、ステラの背後に回り込み、躓いたと見せかけて彼女の背中を押して荷物にダイブさせることを考えたが、足をわざともつれさせた瞬間にライトがサッと町長を抱えた。

「おっと、大丈夫ですか?」
「え?あ、ああ。……すいません……」

 背後から気配を消してついて来ていたようで、完璧なタイミングで抱き止められた。荷物を盛大に壊す算段は不発。軽く謝罪しながら会釈をしてライトに離してもらうと、ステラが慎重に荷物を開けているのを目にした。暴力を振るわれることもなく、商品を傷つけないように最新の注意を払っていることから冒険者と配達人の態度に難癖を付け辛い。
 開けられたはこの中の果物に防腐魔法が施されていることや、緩衝材が適切に使われて商品に傷がつかないいつもの配慮を見れば、運送ギルド相手に抗議は送れないし、このことで難癖を付ければ逆にケチを付けられかねない。
 商品を1つずつ取り出して果物に爪痕でも残そうかと思ったが、ライトが睨みを利かせていて下手に動けないという事態。町長の目論見はライトの過剰とも言える警戒によって崩される。それもこれも屍竜王ウルウティアとエクスルトとの裏の関係性が十分すぎるほどに物語っていた。
 ダブルチェックも不本意ながら無事に終わり、町長は苦虫を噛み潰したような顔で倉庫から出て行った。

「ん?何か問題ありましたか?」

 レッドが町長の苛つきを確認して不思議に思い確認する。ライトは首を横に振ってにこりと笑った。ステラは縮こまってため息をついた。

「や、やっぱり男でないと信用がありませんかね?父の時はこんなに慎重に商品を確認されること無かったですし、前回は商品を買い叩かれちゃいましたし……」
「今回のは特別です。男女関係なく厳重に確認されたことでしょう。この様子だと期日内に持ってくることを想定していなかった可能性すらありますので、今のこれは時間稼ぎだと思われます。こちらは波風を立てずに粛々と待つことにしましょう」
「……ありがとうございます……」

 ライトは警戒しすぎとも取れたが、今回に限ってはこれが正解なのだと思い知らされる。自分の警戒心のなさを恥じながらさらに縮こまる。その様子にライトは鼻を鳴らした。

「それでは食事でもしますか?」
「え?でも……」
「最高責任者である町長のチェックも済みました。ステラさんの仕事はこれで終わりましたので、あとはお金を受け取るだけです。気長に待ちましょう」

 ライトの提案で倉庫を離れ、誘われるがままに食事処に向かった。
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