「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

文字の大きさ
179 / 338
13章 新たなる大陸へ

179、侵入者

しおりを挟む
 レッドたちはアルバトス公国から魔導戦艦に戻って来た。

「何か居た~?」

 戻って早々にルイベリアは下の様子を確認する。グルガンが返答しているのを横目にレッドはオリーの元に行く。

「おかえり。2人とも無事なようで何より。」
「ただいまオリー。」
「オリーさん。心配してくれてありがとう。」

 常に同行してくれていたオリーは今は魔導戦艦の操舵手。寂しくならないようにとレッドは必ず挨拶に行くよう心掛けている。
 この後は一緒に降りられなかったディロンやウルラドリス、そしてスロウにも挨拶に行くつもりだ。
 魔法契約でそういった感情を読み取れるオリーにとって、レッドの優しさは主従関係以上の気持ちを生まれさせるのに一役買った。
 3人で笑っているとライトの供回りであるハル、コニ、フィーナ、エイナの4人が集まってきて出迎えてくれる。賑やかこの上ない。

「へぇ~。皇魔貴族なのにダンジョンを持つことも出来ずに洞窟暮らしとは……ウチのとは全然違うんだねぇ~。」
「ホームレスでおじゃるか? 少しくらいなら援助しても良いでおじゃるよ?」
「金銭感覚のおかしい貴公が援助するとどうなるのか気になるところではあるが、それは心配ない。アノルテラブル大陸から我らの大陸へと移動させておいた。一応フィニアスとロータスの2人に詳細を伝えておいたから問題はないさ。」
「あっさりね。ここに未練はないのかしら?」

 ルイベリアの反応にグルガンは頷く。

「それほどまでに競争の激しい大陸ということだ。」
「ところでその魔族たちを移動させたっていうのは、もしかして例の?」
「うむ。そういうことだ。」
「はぇ~便利ねぇ~。」

 グルガンから報告を聞いたルイベリアは感心しながら髪をかき上げた。是非ともグルガンの持つ魔剣の解読がしてみたいと目を光らせる。
 グルガンは好奇心旺盛な瞳に気付いて首を横に振る。真意を読まれたルイベリアは唇を尖らせ、顔を反らしつつ腕を組んだ。
 タイミングを見計らっていたライトはここで口を開く。

「時間が押している。早い所帝国に行こう。」
「ライトってば下に降りた時に何か聞いてきたの?」
「ああ。帝国には『剣神』と呼ばれる最強の存在が居るらしい。噂通りの腕前なら人類屈指の戦力と言って過言じゃない。何が何でも協力をお願いし、人類共通の敵と一緒に戦ってもらおうって魂胆さ。」
「なるほど~。今は魔物の手も借りたい勢いだもんね。」

 今後のことを見据えたライトの発言により、このまま帝国の都心を目指すことに決まった。
 船が動き出し、しばらく雲の流れを追っていたレッドは艦橋を後にした。スロウに会いに部屋を目指す。
 広い廊下を一人歩いていると背後から声を掛けられた。

「レッド。どうだった? 下の様子は?」
「あ、シルニカさん。えっと……特に何かあったってわけじゃないっていうか……。なんか昔、俺たちの大陸からここに渡って来た皇魔貴族の方が居たっていうか……。色々話してましたけど信憑性の無い話ばかりで要領を得ないというか……。とにかくこれから帝国に行くことが決定した様です。」
「……相変わらず要領を得ない説明ね。まぁでも帝国か。地図の上ではここからだと神都パラディスが一番近いけど、エルフ至上主義の王国なんて行っても協力なんて得られなさそうだし帝国で正解かな。」
「あ、それアルバトスさんも言ってたな。神都は行くだけ無駄だって。そんなに有名なのか。でも、本当に無駄なんでしょうか?」
「私たちの国にもハーフエルフは居るでしょ? 彼らはその昔に神都パラディスから差別されて追い出されたって話よ。純血のエルフたちって自分たちが神の御使いだと信じてるらしくて、別の種族をゴミ扱いするっていう噂があるの。もし仲間に引き入れたら目の前の命よりも足の引っ張り合いを始めるかも? そういうのってなんて言うか知ってる? 潜在的な敵って言うのよ。」

 シルニカの弁舌に舌を巻くレッド。
 人類共通の最強の敵が現れ、世界征服を進行中だというのに本当にそんなことをするのだろうかと疑問に感じるが、自分よりも頭が回るシルニカの自信ある言葉に気圧されて質問する気を失う。
 それによく考えてみればライトたちも神都のことは頭から排除していたし、元より期待していないのは明らか。エルフのことは一旦忘れてスロウを優先することにした。

「ちょっと。どこ行くのよ?」
「え? あ、スロウさんのところに。」
「なんかさ~魔族と懇意にしすぎじゃない? 魔族にでもなるつもりなの?」
「違いますよ。俺は人間ですし、人間以外にはなれませんって……。あ~……でも、よくよく考えたら俺って魔族の一員なのか……じゃあ、あながち間違ってはないのか?」
「何ぶつぶつ言ってんのよ。ちゃんとこっち見て話してよね。」

 シルニカはぶつくさと文句を言いながらもレッドの後について来た。
 オリーが操舵手となってからは一緒に行動する人が居なかっただけに内心嬉しくもあり窮屈にも感じる。

(昔はあんなに一緒に冒険したいって思ってたのになぁ……。)

 誰からも拒絶され、会話すらまともにしてもらえない寂しかった頃を懐かしく思う。

「なにニヤついてんのよ。」
「えっ?!そそ、そんなニヤついてなんか……!」

 焦ったレッドは自然に零れ出た笑みを隠すようにノックもせずにスロウの部屋に入る。
 女の子の部屋に断りもなくいきなり入ると起こるのは大きく分けて3つ。ラッキースケベか、普通に対応されるか、不在のどれかだ。いずれにしても怒られるのは避けられないだろう。

 しかしそのどれとも当てはまらないケースが存在した。

 レッドとシルニカの目の前には大の男がスロウを肩に担ぎ上げていた。スロウは気絶しているのかぐったりしていて、極戒双縄きょっかいそうじょうもピクリとも動いていない。
 男はピタリと体に吸い付くようなピチピチの衣装を身にまとい、その上からゆったりとした上着を羽織っている。背中からは真っ白な翼が生えていて天使と見まごうほどの清廉な雰囲気を発しているが、体のゴツさと人攫いの様相を鑑みれば聖なる者とは程遠い。
 まさか開くと思っていなかった扉の方に振り向き、レッドと目が合った男は急いで開いた窓から踏み出した。折りたたまれていた大きな羽を広げ、焦って外に飛び出す様は、家主の許可なく食事にありついていた鳥のようだ。

「待てぇっ!!」
「ちょっ……レッド?!きゃあっ!!」

 レッドはスロウを取り返すべく、その身を空中に投げ出した。その勢いは凄まじく、踏み出した魔導戦艦が横に大きく揺さぶられるほどである。
 先に飛び出し、あっという間に離したはずの距離は空気を切り裂くレッドの速度に瞬時に追いつかれ、天使と思しき男は汗をかきながら振り返る。左肩に担いだスロウをレッドから遠ざけるように体を捻ると、いつの間にか右手にラッパを握り締めていた。

「酩酊の前奏曲プレリュード!!」

 ──プワァァ……ァンッ

 ラッパっから放たれた音は衝撃波を発生し、レッドに襲い掛かる。全身に隈なく行き渡る音による振動は常人ならば意識が持っていかれていたことは想像に難くない。これにはレッドもダメージを受けたのか、目を固く閉じて痛みに耐えるような動きを見せる。
 だがそれもほんの一瞬。レッドは固く閉じていた目をカッと見開いて剣を抜いた。相手の攻撃を認識して反撃を繰り出そうとしている。

(不味いっ!)

 自慢の攻撃に揺らぐことなくすぐさま反撃に移れる敵の予想外の堅牢さに恐怖し、男は思わずスロウを肩から脱落させてしまう。

「っ!?……しまったっ!」

 地面へと真っ逆さまに落ちるスロウ。男はすぐに身を翻して体制を整えようとするが、レッドの方が早い。

「スロウっ!!」

 ──ドゥンッ

 レッドは空気を蹴り、衝撃波を発生させながらスロウに迫る。男はあまりの勢いに吹き飛ばされ、得意なはずの空で目を回している。
 その隙にレッドはスロウを難なく抱きかかえ、そのままの勢いで地面へと落下した。

 落下の衝撃は隕石の如く。
 地面がめくれ上がり、液状化しながら波打つ姿は土の津波と言える。

 その衝撃で近くに生息していた魔物たちは踏ん張ることも絶えることも許されずに吹き飛ぶ。放物線を描いて吹き飛んだ先に魔物の群れがわらわらと集まっていて、石同士がぶつかったようなゴツンゴツンという音と共に多くの命が消える。群れはあまりの事態に驚愕し、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 爆心地の中心部分にレッドがスロウを抱えて立っている。心配そうに覗き込んでいると猫のように全身を伸ばして目を開けた。

「あれ~? レッドだ~。んぅ? ここはどこ~?」

 先ほどまでベッドで寝ていたはずのスロウは外に居ることに疑問を持つ。そんなこと以上に周りの惨状から何が起こったのか気になるところだろうが、彼女にとってはそこは重要なポイントではない。

「……良かった。特になんともなさそうで……。」

 レッドがほっと胸を撫で下ろしたところで極戒双縄がバッと首を上げる。

「はわぁっ!? 姫様っ!? 良かった無事かぁ……。」
「お、おいレッド!あの男はどこに行ったっ!? あの野郎俺たちに何しやがったんだっ!?」

 スロウののんびりとした態度とは一転、忙しなく動き回りながら周りを見渡す。
 この様子から分かることはラッパを持った男がスロウの就寝中に窓から侵入し、極戒双縄を何らかの方法で眠らせて連れ去ろうとしていたということだろう。
 レッドが空を見上げたがそこには男の姿はなく、雲一つない満点の青空が広がっていた。誘拐が失敗してさっさと逃げたと思われる。
 それを伝えると極戒双縄は足でもあれば地団太を踏む勢いで怒りをあらわにしたが、ぶつける先がなかったので我慢することになった。

 土がめくれ上がったために丘になってしまった地面を上ると、広大な大地が広がっていた。
 果てしない大地に冒険心をくすぐられるが、魔導戦艦に戻らなければいけないことを思い出してまたも空を見上げる。
 航行する魔導戦艦はレッドに向かって飛んできている。ひとまず一安心といったレッドにスロウが声をかけた。

「ねぇレッド。あれって……なんだと思う?」

 スロウの指さした場所には金属の乗り物と思われる残骸が転がっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです

桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

処理中です...