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13章 新たなる大陸へ
180、天からの使者
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「はいはい、ゆっくり下ろしてー。」
元ラッキーセブンで回復を担当していた聖職者のハルはレッドが抱えて来た重体患者をベッドに寝かせる様に指示を出す。
手足は折れてあらぬ方向を向き、所々から血が吹き出している。痛みや出血で意識が飛んでいるが辛うじて息をしている危篤状態。見つけるのが後少し遅れていたら二度と目覚めることは出来なかっただろう。
「はーい。ありがとねー。あとは任せてー。」
「あの……この人助かりますか?」
「大丈夫大丈夫。死んでなきゃ安いものよ。てかレッドも冒険者なんだから分かるでしょ?」
「あ、その……俺こんなにボロボロになった人見たことなかったんで、それで……。」
「あ~……まぁ、うん。大丈夫だから。」
ハルは手慣れた様子で回復魔法をかけ始める。肺に穴が開いていたのかヒューヒューと空気が抜ける音がしていたが、すぐに正常な呼吸へと変わり、ほんの少しだが顔色も良くなっている。
ハルの隣で吟遊詩人のエイナは桶に入れた水を布に染み込ませて怪我人の顔を拭う。
「あれ? ハル~。この人誰だっけ?」
「あ~ごめん。今顔見れないわ。」
「う~ん?……どっかで見たことあるんだよねぇ……。」
エイナは首を傾げながら記憶を探る。それにはすぐに答えが出た。死霊使いのコニは怪我人の顔を覗き込み、目を丸くして口を押さえながら後ずさった。
「はっ?!ちょ……嘘でしょっ?!何でこの大陸にっ?!」
「あんた分かるの? 誰だっけこの人?」
「バ……あんたねぇ。この人はエデン正教の枢機卿よっ!」
「「「はっ?!」」」
その言葉にはエイナだけでなく傍で聞いていたシルニカも、ついでにハルも凝視した。
「いや、あんたは治しなさいよ。死なせたらヤバイでしょ?」
「……あ、そっか!」
「ね~ね~。そんなに凄いの? その人。」
「凄いなんてもんじゃないですよスロウさん!エデン教っていうのは人族の大半が信仰している最大規模の宗教です。そこのナンバー2の立場の一人ですよ? いわば天上に住まわれるお方です!」
「へ~そうなんだ~。」
「……あんまりピンときてないか……まぁとにかく凄いお方なんですよ!」
コニの必死の訴えも虚しくスロウから気が抜けた様な声が漏れる。
「そんな大物がこの大陸で魔物に襲われるなんて前代未聞ね。この話面白そうだしエイナ歌ったらどう? 良いネタじゃない?」
そこに魔物使いのフィーナが顔を出す。
「なんか分かったの?」
「足跡や狩りの方法から分かったけど、残虐で狙った獲物を遊び殺す二足歩行の魔獣『スカルクラッシャー』の仕業ね。丁度群れの移動中に巻き込まれて攻撃を受けたんだと思うわ。せっかくの護衛も……ったく、損壊が激し過ぎて見てられないったら……。」
フィーナは疲れた様にため息をつき、両手を上げて呆れ返った様な仕草を見せる。現場検証をして精神的にかなり消耗したことが分かる。その手を自然に握り、ライトがニコリと笑った。
「ありがとうフィーナ。助かったよ。」
「ああんっ!ライトぉっ!!」
発情した猫の様な声を上げながらフィーナはライトの手を握り返す。そんなフィーナを恨みがましい目で見る3人を差し置いてグルガンが部屋に入る。
「枢機卿か。何とも都合が良い。」
「確かイアン=ローディウスという名前だったな。いつぞや立ち寄った街のイベントで顔を見たことがある。こんな形で会うことになるとは夢にも思わなかったが……。」
「あ、私もその名前聞いたことあるよ。確かウチの島で一番偉い人じゃなかった?」
「え? アヴァンティアの王様よりも?」
その質問にシルニカは頷く。エデン教が世界のほとんどを占める宗教である以上、権威の上では小さな国の王様など比べるべくもない。
「うむ。聖王国に行った折にこの恩を返してもらうとしよう。この出会いに感謝という他ない。……しかしだ。その発端が誘拐事件とはな。それもスロウを狙うとは命知らずな……。」
「レッドのおかげで助かったよ~。この子たちも寝かされるなんて初めてのことだったから驚いちゃった~。」
「あり得ない話だ!俺たちは普通とはまるで違うってのにさぁ!」
「まったくだよ。……今回ばかりは助けられた。ありがとうレッド。」
普段はレッドを目の敵にしている極戒双縄も素直に頭を下げる。レッドはいつもの様に大したことはないと謙遜するが、隕石の衝突痕の様な地面を目の当たりにしたらレッドの中の大したこととは一体何なのか気になるところだ。
「おいレッド。オメー何つったかな? その誘拐犯の特徴。」
「あ、えっと……羽ですよ。真っ白な。背中に2枚の羽がこう、わっと生えた奴です。結構ガッチリした体格の奴でしたよ。」
レッドが身振り手振りを添えて伝える。
「おもしれぇじゃねえか。そんだけ目立てば次は見逃さなくて済みそうだぜ。今度侵入なんてしやがったらタダじゃおかねぇ。」
「本当そうですよ!……でもスロウが無事だったから俺はそれだけで満足だよ。」
レッドは心から安堵した顔をスロウに向ける。スロウは恥ずかしそうに髪を触り始めた。それを目撃したハルやフィーナたちは一様に茶化し始める。
「「「ふぅ~~っ!」」」
「めっちゃ良い雰囲気~!」
「レッドも隅に置けないねぇっ!」
年頃の乙女たちは恋愛模様に敏感だ。いずれは自分もと思いながらも目の前の誰かの恋を祝福せずにはいられない。でもシルニカは違った様だ。1人ムスッとしてそっぽを向いていた。
「でもまさかここまで大胆にスロウさんを狙ってくるなんて思いも寄らなかったなぁ。」
「完璧に安全ってわけじゃないことくらい覚悟してきているけど、これじゃ外も中も変わらないかなぁって……。」
そういいながらフィーナはライトをチラリと見る。
「スカルクラッシャーは戦士の鎧だって造作もなくかみ砕く。それが群れで居る外と誘拐犯の侵入じゃ釣り合わないよ。にしてもどう思うグルガン。デザイアとは他の勢力が動いているなんて考えたくもないが……。」
「え? お父さんがやったんじゃないの? だって私のみーちゃんとひーちゃんが……。」
「ああ、スロウの意見も一理ある。第三勢力が居るかどうかはまだハッキリとはしないだろう。」
「だがデザイアという超級の化け物がこんな姑息な真似をするとは思えないんだ。それに俺たちの戦艦にスロウが乗っていると認識していないと出来ない行動だったんだぞ?」
「ううむ。確かにその通りだが、デザイアが噛んでいない可能性を考慮するのなら部下の主人に対する気遣いの可能性も出てくる。これは一旦棚上げしよう。分からないことが多い以上、この問題に時間を取られるわけにはいかないからな。」
腑に落ちない状況だが、情報の当てがない以上は不毛である。
スロウが狙われたことだけが確かなことなので、とりあえず寝室を余所に移すことで幕引きとなる。
戦艦の進路は変わらず帝国へと直行する。
*
天使は羽を広げて滑空する。男は結局目的の物を手に入れることが出来なかった。
邪魔者のせいでこれから集まる会合は気が重い。
木々が鬱蒼と萌え茂る山の上。男の無表情はしかめっ面へと変わり、仲間の元へと辿り着いた。
「……それで? 彼女をどこにしまったのかな?」
「やめろ。皮肉なんて沢山だ。」
「はははっ!なぁんでぇ? 真剣に聞いているのに何でそんなこと言うのぉ?」
女性と思しき影は男を嘲笑う。男はため息をつきながら首を横に振る。
「隠すつもりなんてない。失敗だ。スロウを攫うことは出来なかった。」
「いきなり強引な手を使ったのはミステイクだったねぇ。ま、もちょっと慎重にやるべきってのが分かっただけでも拾いものかぁ。」
「……誰の提案だったかは忘れていないぞ?」
「なぁんのことかなぁ? それよりもさ、失敗は失敗だよね? てことでここでは君が3で決定。僕は1。彼は2ってことで。」
「最初からそれが目的だったのか? 何が最高のタイミングだ。全く呆れた奴だな。」
駄弁っているといつもの調子が出てきたのか、男は腕を組んで見下した様な態度を見せた。
「ちょっと遊びが過ぎるんじゃないか? 主の勅命を後回しにするほどではない様に思えるのだが?」
「なぁに言ってんのよドス。トレイが接敵したおかげで魔神並の戦力が彼女を守っていることが証明されたわけじゃないの。」
「ドス? トレイ? と言うことは貴女はウノとでも言うつもりかな?」
「そゆこと。」
「名前なんてどうでも良い。それより何よりレッド=カーマインの存在だ。この私の力を瞬時に解除した。あれは……人間ではない。」
トレイと呼ばれた大男にウノと名乗る女が顔を寄せる。
「生物学上は人間よ。魔神と呼ばれる連中と肩を並べる強さを持っていようとも、人間であることに変わりはないさ。僕らのマスターも知らないイレギュラー。……もちろんデザイアもね。この世界どうなってんのやら……。」
「イレギュラーから生まれた娘を手に入れなければならないとは何の因果か……。」
「ミルレース様が全ての元凶。言わせないでよ。僕あの方のこと好きだったんだから。それを消滅させたレッド=カーマインは許せないけど、今回の目的は違うから仕方なく見逃しましょう。」
「……戦っても勝ち目はないと思うがな。」
天使たちに沈黙が流れる。ウノのため息が普通よりも大きく感じた。
「とりあえずは一旦様子見ってことで。良いね?」
「……いつまでだ?」
「様子見は様子見さ。僕の一存でタイミングを決めるから待ってなよ。もちろん文句を言わずにね?」
天からの使者はその存在のあり方に逆行する様に影に潜む。
舌舐めずりをしながらじっくりと丁寧にことを運ぶ様に……。
元ラッキーセブンで回復を担当していた聖職者のハルはレッドが抱えて来た重体患者をベッドに寝かせる様に指示を出す。
手足は折れてあらぬ方向を向き、所々から血が吹き出している。痛みや出血で意識が飛んでいるが辛うじて息をしている危篤状態。見つけるのが後少し遅れていたら二度と目覚めることは出来なかっただろう。
「はーい。ありがとねー。あとは任せてー。」
「あの……この人助かりますか?」
「大丈夫大丈夫。死んでなきゃ安いものよ。てかレッドも冒険者なんだから分かるでしょ?」
「あ、その……俺こんなにボロボロになった人見たことなかったんで、それで……。」
「あ~……まぁ、うん。大丈夫だから。」
ハルは手慣れた様子で回復魔法をかけ始める。肺に穴が開いていたのかヒューヒューと空気が抜ける音がしていたが、すぐに正常な呼吸へと変わり、ほんの少しだが顔色も良くなっている。
ハルの隣で吟遊詩人のエイナは桶に入れた水を布に染み込ませて怪我人の顔を拭う。
「あれ? ハル~。この人誰だっけ?」
「あ~ごめん。今顔見れないわ。」
「う~ん?……どっかで見たことあるんだよねぇ……。」
エイナは首を傾げながら記憶を探る。それにはすぐに答えが出た。死霊使いのコニは怪我人の顔を覗き込み、目を丸くして口を押さえながら後ずさった。
「はっ?!ちょ……嘘でしょっ?!何でこの大陸にっ?!」
「あんた分かるの? 誰だっけこの人?」
「バ……あんたねぇ。この人はエデン正教の枢機卿よっ!」
「「「はっ?!」」」
その言葉にはエイナだけでなく傍で聞いていたシルニカも、ついでにハルも凝視した。
「いや、あんたは治しなさいよ。死なせたらヤバイでしょ?」
「……あ、そっか!」
「ね~ね~。そんなに凄いの? その人。」
「凄いなんてもんじゃないですよスロウさん!エデン教っていうのは人族の大半が信仰している最大規模の宗教です。そこのナンバー2の立場の一人ですよ? いわば天上に住まわれるお方です!」
「へ~そうなんだ~。」
「……あんまりピンときてないか……まぁとにかく凄いお方なんですよ!」
コニの必死の訴えも虚しくスロウから気が抜けた様な声が漏れる。
「そんな大物がこの大陸で魔物に襲われるなんて前代未聞ね。この話面白そうだしエイナ歌ったらどう? 良いネタじゃない?」
そこに魔物使いのフィーナが顔を出す。
「なんか分かったの?」
「足跡や狩りの方法から分かったけど、残虐で狙った獲物を遊び殺す二足歩行の魔獣『スカルクラッシャー』の仕業ね。丁度群れの移動中に巻き込まれて攻撃を受けたんだと思うわ。せっかくの護衛も……ったく、損壊が激し過ぎて見てられないったら……。」
フィーナは疲れた様にため息をつき、両手を上げて呆れ返った様な仕草を見せる。現場検証をして精神的にかなり消耗したことが分かる。その手を自然に握り、ライトがニコリと笑った。
「ありがとうフィーナ。助かったよ。」
「ああんっ!ライトぉっ!!」
発情した猫の様な声を上げながらフィーナはライトの手を握り返す。そんなフィーナを恨みがましい目で見る3人を差し置いてグルガンが部屋に入る。
「枢機卿か。何とも都合が良い。」
「確かイアン=ローディウスという名前だったな。いつぞや立ち寄った街のイベントで顔を見たことがある。こんな形で会うことになるとは夢にも思わなかったが……。」
「あ、私もその名前聞いたことあるよ。確かウチの島で一番偉い人じゃなかった?」
「え? アヴァンティアの王様よりも?」
その質問にシルニカは頷く。エデン教が世界のほとんどを占める宗教である以上、権威の上では小さな国の王様など比べるべくもない。
「うむ。聖王国に行った折にこの恩を返してもらうとしよう。この出会いに感謝という他ない。……しかしだ。その発端が誘拐事件とはな。それもスロウを狙うとは命知らずな……。」
「レッドのおかげで助かったよ~。この子たちも寝かされるなんて初めてのことだったから驚いちゃった~。」
「あり得ない話だ!俺たちは普通とはまるで違うってのにさぁ!」
「まったくだよ。……今回ばかりは助けられた。ありがとうレッド。」
普段はレッドを目の敵にしている極戒双縄も素直に頭を下げる。レッドはいつもの様に大したことはないと謙遜するが、隕石の衝突痕の様な地面を目の当たりにしたらレッドの中の大したこととは一体何なのか気になるところだ。
「おいレッド。オメー何つったかな? その誘拐犯の特徴。」
「あ、えっと……羽ですよ。真っ白な。背中に2枚の羽がこう、わっと生えた奴です。結構ガッチリした体格の奴でしたよ。」
レッドが身振り手振りを添えて伝える。
「おもしれぇじゃねえか。そんだけ目立てば次は見逃さなくて済みそうだぜ。今度侵入なんてしやがったらタダじゃおかねぇ。」
「本当そうですよ!……でもスロウが無事だったから俺はそれだけで満足だよ。」
レッドは心から安堵した顔をスロウに向ける。スロウは恥ずかしそうに髪を触り始めた。それを目撃したハルやフィーナたちは一様に茶化し始める。
「「「ふぅ~~っ!」」」
「めっちゃ良い雰囲気~!」
「レッドも隅に置けないねぇっ!」
年頃の乙女たちは恋愛模様に敏感だ。いずれは自分もと思いながらも目の前の誰かの恋を祝福せずにはいられない。でもシルニカは違った様だ。1人ムスッとしてそっぽを向いていた。
「でもまさかここまで大胆にスロウさんを狙ってくるなんて思いも寄らなかったなぁ。」
「完璧に安全ってわけじゃないことくらい覚悟してきているけど、これじゃ外も中も変わらないかなぁって……。」
そういいながらフィーナはライトをチラリと見る。
「スカルクラッシャーは戦士の鎧だって造作もなくかみ砕く。それが群れで居る外と誘拐犯の侵入じゃ釣り合わないよ。にしてもどう思うグルガン。デザイアとは他の勢力が動いているなんて考えたくもないが……。」
「え? お父さんがやったんじゃないの? だって私のみーちゃんとひーちゃんが……。」
「ああ、スロウの意見も一理ある。第三勢力が居るかどうかはまだハッキリとはしないだろう。」
「だがデザイアという超級の化け物がこんな姑息な真似をするとは思えないんだ。それに俺たちの戦艦にスロウが乗っていると認識していないと出来ない行動だったんだぞ?」
「ううむ。確かにその通りだが、デザイアが噛んでいない可能性を考慮するのなら部下の主人に対する気遣いの可能性も出てくる。これは一旦棚上げしよう。分からないことが多い以上、この問題に時間を取られるわけにはいかないからな。」
腑に落ちない状況だが、情報の当てがない以上は不毛である。
スロウが狙われたことだけが確かなことなので、とりあえず寝室を余所に移すことで幕引きとなる。
戦艦の進路は変わらず帝国へと直行する。
*
天使は羽を広げて滑空する。男は結局目的の物を手に入れることが出来なかった。
邪魔者のせいでこれから集まる会合は気が重い。
木々が鬱蒼と萌え茂る山の上。男の無表情はしかめっ面へと変わり、仲間の元へと辿り着いた。
「……それで? 彼女をどこにしまったのかな?」
「やめろ。皮肉なんて沢山だ。」
「はははっ!なぁんでぇ? 真剣に聞いているのに何でそんなこと言うのぉ?」
女性と思しき影は男を嘲笑う。男はため息をつきながら首を横に振る。
「隠すつもりなんてない。失敗だ。スロウを攫うことは出来なかった。」
「いきなり強引な手を使ったのはミステイクだったねぇ。ま、もちょっと慎重にやるべきってのが分かっただけでも拾いものかぁ。」
「……誰の提案だったかは忘れていないぞ?」
「なぁんのことかなぁ? それよりもさ、失敗は失敗だよね? てことでここでは君が3で決定。僕は1。彼は2ってことで。」
「最初からそれが目的だったのか? 何が最高のタイミングだ。全く呆れた奴だな。」
駄弁っているといつもの調子が出てきたのか、男は腕を組んで見下した様な態度を見せた。
「ちょっと遊びが過ぎるんじゃないか? 主の勅命を後回しにするほどではない様に思えるのだが?」
「なぁに言ってんのよドス。トレイが接敵したおかげで魔神並の戦力が彼女を守っていることが証明されたわけじゃないの。」
「ドス? トレイ? と言うことは貴女はウノとでも言うつもりかな?」
「そゆこと。」
「名前なんてどうでも良い。それより何よりレッド=カーマインの存在だ。この私の力を瞬時に解除した。あれは……人間ではない。」
トレイと呼ばれた大男にウノと名乗る女が顔を寄せる。
「生物学上は人間よ。魔神と呼ばれる連中と肩を並べる強さを持っていようとも、人間であることに変わりはないさ。僕らのマスターも知らないイレギュラー。……もちろんデザイアもね。この世界どうなってんのやら……。」
「イレギュラーから生まれた娘を手に入れなければならないとは何の因果か……。」
「ミルレース様が全ての元凶。言わせないでよ。僕あの方のこと好きだったんだから。それを消滅させたレッド=カーマインは許せないけど、今回の目的は違うから仕方なく見逃しましょう。」
「……戦っても勝ち目はないと思うがな。」
天使たちに沈黙が流れる。ウノのため息が普通よりも大きく感じた。
「とりあえずは一旦様子見ってことで。良いね?」
「……いつまでだ?」
「様子見は様子見さ。僕の一存でタイミングを決めるから待ってなよ。もちろん文句を言わずにね?」
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