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第十二話 異変
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春田はクラス委員長を伴って職員室に向かっていた。
だが、事なかれ主義の彼にとって今回の件、出来ればなぁなぁで済ませてしまいたい。
毎度当てられるとは言っても現国の時間だけだし、教師は生徒に成績を与える上位者。不和を起こすのは間違いだと認識している。
委員長の目を不審者から逸らす為の方便だったとは言え、少し後悔していた。
(あれは確実にポイ子だった……!)
自宅待機を言い付けて出てきたってのに、抜け出したらしい。一瞬、鍵を開けたまま来たかと思ったが、相手は不定形。ドアの隙間から出るのもお手の物だし、ポイ子に限って防犯を第一に考えないはずがない。(……多分)
この辺は後で聞く必要があるが、今はどうやって合流するか。そこで春田は今現在の状況の打開から手を打つ。
そのいち、職員室に行くことの阻止。ふっと立ち止まって後ろについてくる委員長に振り向く。
「あのさ、委員長」
「な……なに?」
ちょっと警戒されている。若干腰が引けているのは、すぐ動けるようにしていると思われる。さっきの挙動不審のせいだろう。
「俺、腹痛くなってきたからトイレ行くわ。教科書持って理科室行っといてくれないかな?」
「え……あ、ああそう?それじゃ持って行っとくね」
快く承諾してくれた。生理現象なら仕方ないと踏んでくれたか、それか自分が誘った手前、職員室まで行かなきゃならない事を後悔してか。はたまたその両方か。
変な奴認定されるのはいただけないが、これで、もう話しかけられる事はないだろう。
突然、セクハラまがいの事をする同級生などに近付きたくないはずだ。
「それじゃさっきの件だけど、お昼休憩にする?長い休憩の方が余裕あるし」
律儀な女だった。これは逃げられそうにない。
「……分かったよ。じゃ昼休憩にまた声かけてくれ」
「それじゃね。遅刻しちゃだめだよ?」
委員長は踵を返していってしまう。
「さて……」
今から五分ほどで授業の鐘が鳴る。時間的猶予は後三分。(中庭にいたのを見たな)と思い直行する。
丁度、自分たちのクラスが見える木の場所に行くが移動したのか、影も形もない。
(いや、相手は不定形生物。どこにいてもおかしくはない)10分程度の短い休みに中庭に出ている奴なんて少数だし今は幸運にも見当たらない。春田はウィスパーボイスでポイ子を呼ぶ。
「ポイ子。ポイ子やー。返事しろ」
犬や猫を呼ぶようにチッチ、チッチ言いながら、ポイ子に語り掛ける。
「ちょっと魔王様。ここで何をなされているのですか?」
木の陰からそっと顔を出すポイ子。
「……やっぱここにいたか…つーかそれは俺のセリフだ。マンションにいろって言ったろ?」
呆れて怒る気にもなれない。
「あの子はどうしたんです?いい雰囲気でしたね」
ニヤニヤしながらこちらを見ている。野次馬根性をのぞかせたいやらしい笑みだ。
「関係ねぇだろ。俺の質問に答えろ」
「私は最弱となってしまった魔王様をお守りする為に常にお近くで見守っております。何かあればすぐに駆けつけますので何なりと……」
色々ツッコミたい事満載だが、時間が全くない。春田は腕時計を確認して、これ以上居れない事を悟ると
「もういい。来ちまったもんはしょうがねぇ。悪いけど、もう行くぞ。あっそれから、余計な事はするなよ」
と念押しして理科室に走る。建物内に入ったところでチャイムが鳴り始める。
ポイ子はふと自分より学校を優先した春田に対して嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちが芽生えた。(変わったなー魔王様……)と思いつつ感慨に浸る。
とその時、この世のものではない、強大で、とてつもない力の波動を感じた。
「むっ!これは……まさか!!」
ポイ子は驚いて木から飛び降りる。物理無効のこの肉体は驚くほど柔軟で、降りた衝撃を吸収し、俊敏に波動のもとへ急ぐ。
間違っていなければ、この世界は大変な事になる。急ぎ現場へ、急行するのだった。
だが、事なかれ主義の彼にとって今回の件、出来ればなぁなぁで済ませてしまいたい。
毎度当てられるとは言っても現国の時間だけだし、教師は生徒に成績を与える上位者。不和を起こすのは間違いだと認識している。
委員長の目を不審者から逸らす為の方便だったとは言え、少し後悔していた。
(あれは確実にポイ子だった……!)
自宅待機を言い付けて出てきたってのに、抜け出したらしい。一瞬、鍵を開けたまま来たかと思ったが、相手は不定形。ドアの隙間から出るのもお手の物だし、ポイ子に限って防犯を第一に考えないはずがない。(……多分)
この辺は後で聞く必要があるが、今はどうやって合流するか。そこで春田は今現在の状況の打開から手を打つ。
そのいち、職員室に行くことの阻止。ふっと立ち止まって後ろについてくる委員長に振り向く。
「あのさ、委員長」
「な……なに?」
ちょっと警戒されている。若干腰が引けているのは、すぐ動けるようにしていると思われる。さっきの挙動不審のせいだろう。
「俺、腹痛くなってきたからトイレ行くわ。教科書持って理科室行っといてくれないかな?」
「え……あ、ああそう?それじゃ持って行っとくね」
快く承諾してくれた。生理現象なら仕方ないと踏んでくれたか、それか自分が誘った手前、職員室まで行かなきゃならない事を後悔してか。はたまたその両方か。
変な奴認定されるのはいただけないが、これで、もう話しかけられる事はないだろう。
突然、セクハラまがいの事をする同級生などに近付きたくないはずだ。
「それじゃさっきの件だけど、お昼休憩にする?長い休憩の方が余裕あるし」
律儀な女だった。これは逃げられそうにない。
「……分かったよ。じゃ昼休憩にまた声かけてくれ」
「それじゃね。遅刻しちゃだめだよ?」
委員長は踵を返していってしまう。
「さて……」
今から五分ほどで授業の鐘が鳴る。時間的猶予は後三分。(中庭にいたのを見たな)と思い直行する。
丁度、自分たちのクラスが見える木の場所に行くが移動したのか、影も形もない。
(いや、相手は不定形生物。どこにいてもおかしくはない)10分程度の短い休みに中庭に出ている奴なんて少数だし今は幸運にも見当たらない。春田はウィスパーボイスでポイ子を呼ぶ。
「ポイ子。ポイ子やー。返事しろ」
犬や猫を呼ぶようにチッチ、チッチ言いながら、ポイ子に語り掛ける。
「ちょっと魔王様。ここで何をなされているのですか?」
木の陰からそっと顔を出すポイ子。
「……やっぱここにいたか…つーかそれは俺のセリフだ。マンションにいろって言ったろ?」
呆れて怒る気にもなれない。
「あの子はどうしたんです?いい雰囲気でしたね」
ニヤニヤしながらこちらを見ている。野次馬根性をのぞかせたいやらしい笑みだ。
「関係ねぇだろ。俺の質問に答えろ」
「私は最弱となってしまった魔王様をお守りする為に常にお近くで見守っております。何かあればすぐに駆けつけますので何なりと……」
色々ツッコミたい事満載だが、時間が全くない。春田は腕時計を確認して、これ以上居れない事を悟ると
「もういい。来ちまったもんはしょうがねぇ。悪いけど、もう行くぞ。あっそれから、余計な事はするなよ」
と念押しして理科室に走る。建物内に入ったところでチャイムが鳴り始める。
ポイ子はふと自分より学校を優先した春田に対して嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちが芽生えた。(変わったなー魔王様……)と思いつつ感慨に浸る。
とその時、この世のものではない、強大で、とてつもない力の波動を感じた。
「むっ!これは……まさか!!」
ポイ子は驚いて木から飛び降りる。物理無効のこの肉体は驚くほど柔軟で、降りた衝撃を吸収し、俊敏に波動のもとへ急ぐ。
間違っていなければ、この世界は大変な事になる。急ぎ現場へ、急行するのだった。
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