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第二十五話 とりあえず
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考えるのもしんどくなった春田は、一旦問題を棚上げし、とりあえず夕飯にしようと立ち上がる。
「どこに行く?」
「あっ」と、なんとも間抜けな声が出た。ヤシャを部屋に連れてきたのはいいが、(この後こいつどうする気なんだろう……)と頭に過ぎったからだ。ポイ子は変身能力があるからいいとして、ヤシャはこの為りな上、ニュースで大々的に宣伝しまくったから、このままじゃ置いとけない。
「あ、ああ。飯にしようかと思ってな……」
「飯か……そういえば長らく食べていなかったな……」
逢魔に閉じ込められ、欲を満たせない魔族は恒久的に飢えている。ヤシャも例外ではない。マレフィアはこっちに来ているそうなので、ちょいちょい発散させているのだろうが、ヤシャは不満だらけの状態にある。
今は魔王との再会が胸を熱くさせ、欲を一瞬飛ばせたが永久ではない。
「ファミレスですか?」
ポイ子は昨晩の事を思い出し、魔王に聞く。
「なんだそれは?」
「ファミリーレストランっていって家族の食事の場ってところです。美味しいですよ。ねー魔王様」
ヤシャを外に連れ出せないこの現状で好奇心をくすぐる真似は不味いと思い、口に出すのを憚っていた事を考えなしに言ってしまう。
「いや……今回は魔王様直伝のカレーという奴を作ろうかな……なんて……」
もし”ボスト”に行けたとして、どれだけ喰うか分からん奴を連れていけるほど金銭的余裕などない。宅配しようにもどれも高い金がかかる。とりあえず、どれだけ喰うのか確認の必要も兼ねて、手料理を振舞う事にした。料理は自信がないが、カレーなら誰でも作れる。
「なんと!?お前が直々に作るというのか?それは楽しみだな!」
「私も食べてみたいです!」
ヤシャもポイ子もウキウキで目を輝かせる。こうまで楽しみにされては面倒だが、嫌な気はしない。
「まぁ焦んな。ちょっと買い物行ってくるから、お前らここで待ってろよ」
「む?買い物か、興味があるな…」
ヤシャは顎に手を当てて春田をチラチラ見ている。
「……連れていけないぞ?大体、ニュースになってただろ?ヤシャが捕まることはないけど、俺は拘束されちまうよ……」
「何を恐れる?私が助けてやろうではないか!任せろ!」
根本がまるで分かっていない。
「ヤシャ様。我々はこの世界においてはイレギュラーであり、表舞台に出てはいけない存在なのですよ。だから私が変身し、ヒューマンとして過ごしているんです。角の隠せないオーガがこの世界に闊歩していたらおかしいんですよ」
ポイ子の意見は半分当たっている。
「ついでに付け加えるなら、姿かたちのみでなく、能力も関係する。つまり特異な能力は存在しないから、珍しさもあるんだ。桁外れの腕力とかな」
「うむむ……私は全てに該当するというのか……」
腕を組んで唸る。
「残念ながらな。つーわけで、二人とも待機しとけ」
ヤシャはうなだれて了承するが、ポイ子には心外だった。
「は?お待ちください!私は変身能力があり、外に出ても何の問題も……!!」
「姿かたちはな。毒持ちのお前に食品を触らせるつもりはない」
これから行くのはスーパーだ。そこら中ベタベタ触って、食中毒や最悪、死亡事故があってもおかしくない。
「この世界に住みたいと思うのは勝手だ。だけど、お前らには住みにくい世界だと知っといてくれ」
17年住んだ元ファンタジー民の言葉は重い。でも、ただ待たせるのも悪いと思った春田は、ゲームや映画、アニメや漫画を教えて、留守番を任せた。
「あっ、そうだ。俺は鍵を持って出るから、ノックやインターホン押されても応じるなよ。居留守で隠れて過ごしてくれな」
「分かった」「はーい」という了承を得て外に出る。
(スーパーか……)部屋を借りてすぐの頃、張り切って自分のご飯を作ってみたが、面倒臭いの一言だった。二人以上居ないとやりがいがないものだ。
今は自分の手料理を楽しみにしている奴らがいる。
カレーという簡単な料理だが、料理の意欲に心が浮立っていた。
「どこに行く?」
「あっ」と、なんとも間抜けな声が出た。ヤシャを部屋に連れてきたのはいいが、(この後こいつどうする気なんだろう……)と頭に過ぎったからだ。ポイ子は変身能力があるからいいとして、ヤシャはこの為りな上、ニュースで大々的に宣伝しまくったから、このままじゃ置いとけない。
「あ、ああ。飯にしようかと思ってな……」
「飯か……そういえば長らく食べていなかったな……」
逢魔に閉じ込められ、欲を満たせない魔族は恒久的に飢えている。ヤシャも例外ではない。マレフィアはこっちに来ているそうなので、ちょいちょい発散させているのだろうが、ヤシャは不満だらけの状態にある。
今は魔王との再会が胸を熱くさせ、欲を一瞬飛ばせたが永久ではない。
「ファミレスですか?」
ポイ子は昨晩の事を思い出し、魔王に聞く。
「なんだそれは?」
「ファミリーレストランっていって家族の食事の場ってところです。美味しいですよ。ねー魔王様」
ヤシャを外に連れ出せないこの現状で好奇心をくすぐる真似は不味いと思い、口に出すのを憚っていた事を考えなしに言ってしまう。
「いや……今回は魔王様直伝のカレーという奴を作ろうかな……なんて……」
もし”ボスト”に行けたとして、どれだけ喰うか分からん奴を連れていけるほど金銭的余裕などない。宅配しようにもどれも高い金がかかる。とりあえず、どれだけ喰うのか確認の必要も兼ねて、手料理を振舞う事にした。料理は自信がないが、カレーなら誰でも作れる。
「なんと!?お前が直々に作るというのか?それは楽しみだな!」
「私も食べてみたいです!」
ヤシャもポイ子もウキウキで目を輝かせる。こうまで楽しみにされては面倒だが、嫌な気はしない。
「まぁ焦んな。ちょっと買い物行ってくるから、お前らここで待ってろよ」
「む?買い物か、興味があるな…」
ヤシャは顎に手を当てて春田をチラチラ見ている。
「……連れていけないぞ?大体、ニュースになってただろ?ヤシャが捕まることはないけど、俺は拘束されちまうよ……」
「何を恐れる?私が助けてやろうではないか!任せろ!」
根本がまるで分かっていない。
「ヤシャ様。我々はこの世界においてはイレギュラーであり、表舞台に出てはいけない存在なのですよ。だから私が変身し、ヒューマンとして過ごしているんです。角の隠せないオーガがこの世界に闊歩していたらおかしいんですよ」
ポイ子の意見は半分当たっている。
「ついでに付け加えるなら、姿かたちのみでなく、能力も関係する。つまり特異な能力は存在しないから、珍しさもあるんだ。桁外れの腕力とかな」
「うむむ……私は全てに該当するというのか……」
腕を組んで唸る。
「残念ながらな。つーわけで、二人とも待機しとけ」
ヤシャはうなだれて了承するが、ポイ子には心外だった。
「は?お待ちください!私は変身能力があり、外に出ても何の問題も……!!」
「姿かたちはな。毒持ちのお前に食品を触らせるつもりはない」
これから行くのはスーパーだ。そこら中ベタベタ触って、食中毒や最悪、死亡事故があってもおかしくない。
「この世界に住みたいと思うのは勝手だ。だけど、お前らには住みにくい世界だと知っといてくれ」
17年住んだ元ファンタジー民の言葉は重い。でも、ただ待たせるのも悪いと思った春田は、ゲームや映画、アニメや漫画を教えて、留守番を任せた。
「あっ、そうだ。俺は鍵を持って出るから、ノックやインターホン押されても応じるなよ。居留守で隠れて過ごしてくれな」
「分かった」「はーい」という了承を得て外に出る。
(スーパーか……)部屋を借りてすぐの頃、張り切って自分のご飯を作ってみたが、面倒臭いの一言だった。二人以上居ないとやりがいがないものだ。
今は自分の手料理を楽しみにしている奴らがいる。
カレーという簡単な料理だが、料理の意欲に心が浮立っていた。
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