魔王復活!

大好き丸

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第二十六話 買い物

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スーパー”ハピネス”。

歩いて15分の所にある、24時間365日開いている便利なスーパー。ボストに行くのが面倒な時や、部屋で過ごしたい時などに、弁当を求めて買いに行く。総菜も充実しているので、たまに使う。

今日は一から作る事を考えて、材料を買いに来た。

カレーと言えば、玉ねぎ、ニンジン、じゃがいも、肉、カレー粉である。スーパーを一回りすれば、すべてが揃う。一通りそろえた後、ふとファミリーパックのお菓子でも買おうと、お菓子コーナーを覗く。

「あれ?」

そこには特徴的な髪形の東高校の制服に身を包んだ女子高生がいた。もうとっくに帰って、私服になってもいいくらいなのに……。速めに学校が終わったからって町で遊んでいたのだろうか?

その時、カバンにお菓子を入れているのを目撃する。いわゆる万引きという奴だ。

(こいつ……手慣れてやがる……)

女子高生の手際はかなり経験を積んだものだと、春田の目にはそう見えた。あまりに躊躇なくカバンに滑り込ませていたので、初めてではない事は明白。

暮らすのにも不自由するような酷い環境ならともかく、そうでもないこのご時世、盗みは裁かれるべき事柄だ。ともあれ大ごとにはしたくないので、ちょっと小声で声をかける。

「……おい」

ビクッとなった女子高生は恐る恐るこっちを見た。

黒色で肩口まで伸ばし、針のように尖った髪。160cmちょうどくらいの中肉中背。シャツをスカートから出してだらしない印象を受ける。スカートは織り込んでいないのか、膝丈の通常より長め。この世を憂いている様な光が濁った瞳を向けてくる。

素朴な顔立ちで、俗にいう陰キャという奴だろう雰囲気を漂わせる。

「……何よ……」

顔立ちから想像が難しい若干低めの声で返答してくる。当然だが敵意剥き出しである。

「カバンを寄こせ」

「……見たの?」

春田はコクッと頷く。同時に、女子高生は走り出そうと身構えた。それを予期していた春田は咄嗟に腕を掴む。

「は……はな……」

「離せ」という前に、春田が先手を打つ。

開いたカバンにさっと手を突っ込み、お菓子を取り出す。そして、今日買う手筈のカゴに放り込む。

「……え?」

「ちょっと、君たち何してるの?」

レジで様子を窺っていた店員が話しかけてきた。女子高生は観念した顔で俯いた。

「いや、なんでもないっす。なっ!」

春田は女子高生の肩をたたく。

「痛った……」

店員はその様子を見て、二人を交互に見やった後「失礼しました」と言って下がっていった。

「た……助けたつもり……?」

「ああ、助けた。誰だか知らねーけど、こんなことは止めとけ。店員の即時対応といい、マークされてんぞ?」

ため息をつきながら春田はファミリーパックのお菓子コーナーに移動する。

「ちょ……ちょっと、それ……」

さっき女子高生が万引きしかけたお菓子の箱を指し示す。春田は一言「おごりだ」と言ってファミリーパックのチョコに手を伸ばした。

「もちろんレジについてきてくれるよな?どっかの誰かさん?」

買い物を済ませた二人は店外に出ると、そのまま駐車場を横切り、店の死角まで歩く。その際、逃がさない様に手をつないでいた。春田は後ろなどを確認した後、手を放し、買い物袋からお菓子を渡した。

「……迷惑……なんだけど」

悪い事をしていたという自覚はあれど、春田の自己満足気味に助けられた現在の状況は、何とも言い表せない複雑な心境を彼女に抱かせた。

「そうだな……何で助けたんだろ。ほっとけなかったっつーか……」

頬を掻きながら何でか考えてみた。するとすぐにも理由が浮かぶ。ヤシャが引き金となったニュースを見たせいか、何らかの犯罪からの逮捕が自分の境遇と重なった為だと認識する。バレればおしまいという状況が春田に見て見ぬふりをさせなかった。

「お前みたいなやつは、警察にでも突き出せば良いんだろうけど……まぁ、老婆心ってやつだ。素直に受け取れ。じゃあな!」

歩いていた方と逆の方角に向かって走っていく。
その後ろ姿を見てつぶやく。

「……バーカ……」
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