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第二十七話 カレー
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「美味い!」
その料理に舌鼓を打つのはヤシャだ。帰ってからすぐに支度したものの、少し時間がかかってしまった。辺りはすっかり暗くなり、お腹が空いていた。
空腹は最高の調味料というが、本当だと思える。
「カレーってのは作り方さえ間違えなけりゃ、誰でもうまく作れんのさ」
久々の手料理、食べさせる相手のいなかった春田にとって、新鮮な気持ちが心から湧き上がり、とてもむず痒い。
「カレーはこうしてご飯にかけちゃうんですね。元の世界だと分けて出されそうな料理なのに不思議ですね」
ポイ子も人らしくスプーンを使い、一口ずつ食べている。
「俺も最初は驚いたぜ?母親には最初、文句を言ったくらいだ」
会話をしながらなんていつ振りか、春田は肉親と離れていたところで特に何も感じていなかったが、長い休みには田舎に帰るのも悪くないと考える。この二人が来ていなければ、こんなことも思わなかっただろうと感慨に浸っていた。
ヤシャは一皿目をぺろりと平らげ、寂しそうな顔をした。
「ん?なんだヤシャ?おかわりならまだあるんだ。たらふく喰えよ」
「…いいのか?」
ヤシャは遠慮がちに聞く。
「せっかく来てくれたんだ。ご馳走って程じゃないが、今日は二人の為に作ったカレーなんだぜ?気にせずどんどん喰えよ」
ヤシャはパァッという擬音が付きそうな程の笑顔で、台所にいそいそと向かう。ふと、天井に着きそうなほどでかいヤシャを見て、腹が満たされるのか心配になった。「いざとなればお菓子がある」と自分に言い聞かせ、ヤシャの体躯を見ないようにする。
ポイ子はニコニコ笑っている。
「……なんだ?なんかいい事でもあったか?」
「幸せを感じています」
春田はポイ子と台所から帰って来たヤシャを交互に見て、確かにその通りだと「ふっ」と笑う。
長い間、孤独を感じていた。永い間、つらく泣きたい時もあった。この17年はこの二人に合う為の我慢の期間だったのだ。
空腹は最高の調味料。そういう事だろう。
「どうした?ふたりとも」
「なんでもないよ」
スプーンでカレーを口の中に一気にかきこんだ。春田もおかわりに台所に向かった。
ポイ子と春田はそれぞれ二杯ずつ。ヤシャはそれでは足りず、ご飯を炊き直して、5合半一人でぺろりと平らげた。一日置いたカレーは美味いのだが、鍋はすっからかんになっていた。
春田の勘は当たっていたのだと、もしボストに行っていたらと思うと恐怖を感じる。
「ご馳走様」
「お粗末様ってか?」
皿を水につけ、シンクに放置する。汚れを取りやすくするため、洗うのは風呂から上がってからだ。
「ちょっと風呂入るわ」
「あ!私も私も!!」
ポイ子は意気揚々とスキップで来る。
「お前には必要ないだろ……そもそも、新陳代謝という概念があるのか?」
「なっ!?あ……ありますよ!ほらぁ!」
ポイ子は頭から汗の様な雫を垂らす。
「それ、自分で出したろ?そういえば体液を操作できるんだったな……」
ポイ子はうなだれて、定位置に戻る。
「お?なら、私と風呂に入るか?」
ヤシャはニヤニヤしながら春田を見る。春田は顔を赤くして、「冗談はよせ」と恥ずかしがる。自分との反応の違いで、ポイ子は多少、嫉妬をする。
「そんなでかい体じゃ、風呂場に入れないですよ~」
ポイ子は口をとがらせて、ヤシャをいじる。
「なに!?入れるだろ?ヴァルタゼア!私は入れるのか!?」
ヤシャは一応、汗をかき、ポイ子の体液まみれにされたことを考え、風呂場で、洗い流すくらいはしたかった。春田と一緒に入る入らない以前に、風呂場にすら入れないのは嫌だった。
「まぁ、そんなに広くないからキツイかもしれんが、入れるだろ……」
そこまで言って気付く。(こいつまさか今日泊まるつもりか?)
「……なぁ、ヤシャ……お前はあっちに帰るよな?」
「何を言う。私は帰るつもりはないぞ。せっかく会えたのだからな」
カカッと笑って、膝を打つ。ポイ子も頷いて「ですよね~」と他人事である。
「……マジかよ……」
ヤシャやポイ子には聞こえない様にぼそりとつぶやく。借りている部屋は広く、部屋数もあるので、泊まるだけなら問題はない。しかし、今後こいつらを仕送りで養うのか?とか、ストレスや自由の喪失など、今後の事を考えれば、キツイこと請け合いだ。
そういえばヤシャは半裸である。シャワーを浴びた後の着替えはどうするのか?どうすればいいか分からないまま、とりあえず風呂場にこもった。
その料理に舌鼓を打つのはヤシャだ。帰ってからすぐに支度したものの、少し時間がかかってしまった。辺りはすっかり暗くなり、お腹が空いていた。
空腹は最高の調味料というが、本当だと思える。
「カレーってのは作り方さえ間違えなけりゃ、誰でもうまく作れんのさ」
久々の手料理、食べさせる相手のいなかった春田にとって、新鮮な気持ちが心から湧き上がり、とてもむず痒い。
「カレーはこうしてご飯にかけちゃうんですね。元の世界だと分けて出されそうな料理なのに不思議ですね」
ポイ子も人らしくスプーンを使い、一口ずつ食べている。
「俺も最初は驚いたぜ?母親には最初、文句を言ったくらいだ」
会話をしながらなんていつ振りか、春田は肉親と離れていたところで特に何も感じていなかったが、長い休みには田舎に帰るのも悪くないと考える。この二人が来ていなければ、こんなことも思わなかっただろうと感慨に浸っていた。
ヤシャは一皿目をぺろりと平らげ、寂しそうな顔をした。
「ん?なんだヤシャ?おかわりならまだあるんだ。たらふく喰えよ」
「…いいのか?」
ヤシャは遠慮がちに聞く。
「せっかく来てくれたんだ。ご馳走って程じゃないが、今日は二人の為に作ったカレーなんだぜ?気にせずどんどん喰えよ」
ヤシャはパァッという擬音が付きそうな程の笑顔で、台所にいそいそと向かう。ふと、天井に着きそうなほどでかいヤシャを見て、腹が満たされるのか心配になった。「いざとなればお菓子がある」と自分に言い聞かせ、ヤシャの体躯を見ないようにする。
ポイ子はニコニコ笑っている。
「……なんだ?なんかいい事でもあったか?」
「幸せを感じています」
春田はポイ子と台所から帰って来たヤシャを交互に見て、確かにその通りだと「ふっ」と笑う。
長い間、孤独を感じていた。永い間、つらく泣きたい時もあった。この17年はこの二人に合う為の我慢の期間だったのだ。
空腹は最高の調味料。そういう事だろう。
「どうした?ふたりとも」
「なんでもないよ」
スプーンでカレーを口の中に一気にかきこんだ。春田もおかわりに台所に向かった。
ポイ子と春田はそれぞれ二杯ずつ。ヤシャはそれでは足りず、ご飯を炊き直して、5合半一人でぺろりと平らげた。一日置いたカレーは美味いのだが、鍋はすっからかんになっていた。
春田の勘は当たっていたのだと、もしボストに行っていたらと思うと恐怖を感じる。
「ご馳走様」
「お粗末様ってか?」
皿を水につけ、シンクに放置する。汚れを取りやすくするため、洗うのは風呂から上がってからだ。
「ちょっと風呂入るわ」
「あ!私も私も!!」
ポイ子は意気揚々とスキップで来る。
「お前には必要ないだろ……そもそも、新陳代謝という概念があるのか?」
「なっ!?あ……ありますよ!ほらぁ!」
ポイ子は頭から汗の様な雫を垂らす。
「それ、自分で出したろ?そういえば体液を操作できるんだったな……」
ポイ子はうなだれて、定位置に戻る。
「お?なら、私と風呂に入るか?」
ヤシャはニヤニヤしながら春田を見る。春田は顔を赤くして、「冗談はよせ」と恥ずかしがる。自分との反応の違いで、ポイ子は多少、嫉妬をする。
「そんなでかい体じゃ、風呂場に入れないですよ~」
ポイ子は口をとがらせて、ヤシャをいじる。
「なに!?入れるだろ?ヴァルタゼア!私は入れるのか!?」
ヤシャは一応、汗をかき、ポイ子の体液まみれにされたことを考え、風呂場で、洗い流すくらいはしたかった。春田と一緒に入る入らない以前に、風呂場にすら入れないのは嫌だった。
「まぁ、そんなに広くないからキツイかもしれんが、入れるだろ……」
そこまで言って気付く。(こいつまさか今日泊まるつもりか?)
「……なぁ、ヤシャ……お前はあっちに帰るよな?」
「何を言う。私は帰るつもりはないぞ。せっかく会えたのだからな」
カカッと笑って、膝を打つ。ポイ子も頷いて「ですよね~」と他人事である。
「……マジかよ……」
ヤシャやポイ子には聞こえない様にぼそりとつぶやく。借りている部屋は広く、部屋数もあるので、泊まるだけなら問題はない。しかし、今後こいつらを仕送りで養うのか?とか、ストレスや自由の喪失など、今後の事を考えれば、キツイこと請け合いだ。
そういえばヤシャは半裸である。シャワーを浴びた後の着替えはどうするのか?どうすればいいか分からないまま、とりあえず風呂場にこもった。
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