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第二十八話 お泊り
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「やっぱ無いよなぁ…」
ヤシャの着る服がない。買ってくるか悩むところだが、もう夜も更けて、服飾専門店は閉まっている。遅くまで開いているのは一駅先だ。今から買いに行くのは面倒。
とにかく、春田のシャツが伸びようが、この際どうでもいいから一番大きめの、着れそうな服を出す。
下着に関してはトランクスで諦めてもらおうと自分の下着を一枚出す。既にシャワーを浴びるヤシャは鼻歌交じりに熱湯を浴びている。
「ヤシャ―。着替えここに置いとくぞー」
浴室の扉越しから声をかける。「んー」という返事が聞こえたので、そそくさとリビングに戻る。そこにはジトッとした目で見ているポイ子の姿があった。
「…なんだよ?」
「なんか~、甲斐甲斐しく世話するなって思いまして…」
春田はカーペットの上に身を投げ出すと、肘をついてポイ子を見る。
「言いたいことは分かるが、今だけは我慢してくれ。ヤシャにこの世界の生活は正直厳しい。今日は遅いからこのまま泊めるが、明日帰ってもらうよう説得するつもりだ。お前もマレフィアに伝えろ」
ヤシャはこの世界で暴れすぎた。容認できる範疇を越えている。というのは建前で、ヤシャの食費に関して、春田に養える力はない。
元魔王、元上司の誇りを捨て去って、土下座してでも帰ってもらわねば私生活に支障をきたす。
「承りました。それはそうですよね~。オーガという種族柄、この世界では、異端という他ないですから」
ポイ子は自分を棚に上げて、オーガの容姿に言及する。(種族的にはお前も異端だろ…)と思いながら否定はしない。変身能力を持ち、水分だけでも生きていけるポイ子は現在の春田にとって、いても問題の無い存在だ。
いや、むしろ春田の精神安定の為にいてほしいくらいだ。
ヤシャの好意は嬉しいが、やらかした行為については反省してもらう必要があるのと、たまに顔を見せるくらいに来てくれればと思っている。しかし、それを面と向かって言うとなれば、相応の覚悟がいる。
「だから目くじらを立てずにヤシャには優しく…」
「ヴァルタゼア。これじゃ小さすぎるぞ?もっと大きいのはないのか?」
浴室から出たヤシャは用意した着替えに身を包んで立っていた。190cm筋骨隆々。レスラー並みの体躯は春田のシャツを引き裂かんばかりだ。春田のトランクスも隙間なくパンパンに張り、女性ものの下着のようだった。
春田はその扇情的な見た目に耐えられず、目を逸らして伝える。
「俺の服で一番でかい肌着がそれだよ…。きついならバスタオルでも捲いたらどうだ?」
肩や胸の部分がかなり苦しそうになっている。あの伸びきった繊維じゃもう着れないなと思った。
「そうするか…」
浴室に引っ込んでいく。
「あ、新しいのは棚の一番上にあるから。それ使え」
三人使用してないのに、今日で三枚のバスタオルが使用される。すぐ洗濯しようと心に決める。ビビィイッと繊維が悲鳴を上げる独特の音が聞こえた。
「すまん。破れた」
それを聞いた春田はため息をついた後、質問する。
「…どっちが?」
「どっちも」
「じゃあ、バスタオル二枚使え。下と上に一枚ずつ。とりあえず、大事なとこを隠せりゃいいんだから」
今日でバスタオル、ストック分含めて全部使用した。そして、肌着を破壊。ヤシャの体躯も能力も春田には桁違いである。もし今後、旅行がてらヤシャがやって来る時には、着替えを用意しなければならない。ヤシャを食わせて行く事を思えば安いものだと思い、必要経費と割り切る。
「これでどうだ?上々だろう」
胸と下半身をタオルで覆っただけの原人スタイルでニコニコ出てきた。
「ああ、上々だ。後は激しい動きは控えて、局部を晒さない様にな」
「当然だな。私とて恥じらいはある。お前とて、そう簡単に見れるとは思わんことだな!」
偉ぶりながら、胸を張る。(注意してるのは俺だよな?)と思いつつツッこまない。
「んもー。そういうとこですよヤシャ様。突起見えてますから」
「んな!?」
と焦って胸を隠す。ヤシャは春田をジトっとした目で見る。
「…見えてないよ。そうそう今日は俺ここで寝るから、ヤシャは俺のベッド使え」
「ええ!?いいな~…」ポイ子は羨望の眼差しを向ける。
「何を言う。私がここに寝るから、お前は自分の寝床で寝ろ」
「そういうわけには…」という問答が何度か繰り返され、
結局はヤシャがリビングで寝る事になった。春田はクローゼットに仕舞っていた掛け布団を取り出し、ヤシャに手渡す。
「腹が冷えたらなんだからこれ使え」
「すまないなヴァルタゼア」
態度と言いテレビに向かって座っている恰好といい、まるで一家の大黒柱だ。
「…その姿で胡坐は止めろ」
こうして、激動の一日は過ぎて行った。
ヤシャの着る服がない。買ってくるか悩むところだが、もう夜も更けて、服飾専門店は閉まっている。遅くまで開いているのは一駅先だ。今から買いに行くのは面倒。
とにかく、春田のシャツが伸びようが、この際どうでもいいから一番大きめの、着れそうな服を出す。
下着に関してはトランクスで諦めてもらおうと自分の下着を一枚出す。既にシャワーを浴びるヤシャは鼻歌交じりに熱湯を浴びている。
「ヤシャ―。着替えここに置いとくぞー」
浴室の扉越しから声をかける。「んー」という返事が聞こえたので、そそくさとリビングに戻る。そこにはジトッとした目で見ているポイ子の姿があった。
「…なんだよ?」
「なんか~、甲斐甲斐しく世話するなって思いまして…」
春田はカーペットの上に身を投げ出すと、肘をついてポイ子を見る。
「言いたいことは分かるが、今だけは我慢してくれ。ヤシャにこの世界の生活は正直厳しい。今日は遅いからこのまま泊めるが、明日帰ってもらうよう説得するつもりだ。お前もマレフィアに伝えろ」
ヤシャはこの世界で暴れすぎた。容認できる範疇を越えている。というのは建前で、ヤシャの食費に関して、春田に養える力はない。
元魔王、元上司の誇りを捨て去って、土下座してでも帰ってもらわねば私生活に支障をきたす。
「承りました。それはそうですよね~。オーガという種族柄、この世界では、異端という他ないですから」
ポイ子は自分を棚に上げて、オーガの容姿に言及する。(種族的にはお前も異端だろ…)と思いながら否定はしない。変身能力を持ち、水分だけでも生きていけるポイ子は現在の春田にとって、いても問題の無い存在だ。
いや、むしろ春田の精神安定の為にいてほしいくらいだ。
ヤシャの好意は嬉しいが、やらかした行為については反省してもらう必要があるのと、たまに顔を見せるくらいに来てくれればと思っている。しかし、それを面と向かって言うとなれば、相応の覚悟がいる。
「だから目くじらを立てずにヤシャには優しく…」
「ヴァルタゼア。これじゃ小さすぎるぞ?もっと大きいのはないのか?」
浴室から出たヤシャは用意した着替えに身を包んで立っていた。190cm筋骨隆々。レスラー並みの体躯は春田のシャツを引き裂かんばかりだ。春田のトランクスも隙間なくパンパンに張り、女性ものの下着のようだった。
春田はその扇情的な見た目に耐えられず、目を逸らして伝える。
「俺の服で一番でかい肌着がそれだよ…。きついならバスタオルでも捲いたらどうだ?」
肩や胸の部分がかなり苦しそうになっている。あの伸びきった繊維じゃもう着れないなと思った。
「そうするか…」
浴室に引っ込んでいく。
「あ、新しいのは棚の一番上にあるから。それ使え」
三人使用してないのに、今日で三枚のバスタオルが使用される。すぐ洗濯しようと心に決める。ビビィイッと繊維が悲鳴を上げる独特の音が聞こえた。
「すまん。破れた」
それを聞いた春田はため息をついた後、質問する。
「…どっちが?」
「どっちも」
「じゃあ、バスタオル二枚使え。下と上に一枚ずつ。とりあえず、大事なとこを隠せりゃいいんだから」
今日でバスタオル、ストック分含めて全部使用した。そして、肌着を破壊。ヤシャの体躯も能力も春田には桁違いである。もし今後、旅行がてらヤシャがやって来る時には、着替えを用意しなければならない。ヤシャを食わせて行く事を思えば安いものだと思い、必要経費と割り切る。
「これでどうだ?上々だろう」
胸と下半身をタオルで覆っただけの原人スタイルでニコニコ出てきた。
「ああ、上々だ。後は激しい動きは控えて、局部を晒さない様にな」
「当然だな。私とて恥じらいはある。お前とて、そう簡単に見れるとは思わんことだな!」
偉ぶりながら、胸を張る。(注意してるのは俺だよな?)と思いつつツッこまない。
「んもー。そういうとこですよヤシャ様。突起見えてますから」
「んな!?」
と焦って胸を隠す。ヤシャは春田をジトっとした目で見る。
「…見えてないよ。そうそう今日は俺ここで寝るから、ヤシャは俺のベッド使え」
「ええ!?いいな~…」ポイ子は羨望の眼差しを向ける。
「何を言う。私がここに寝るから、お前は自分の寝床で寝ろ」
「そういうわけには…」という問答が何度か繰り返され、
結局はヤシャがリビングで寝る事になった。春田はクローゼットに仕舞っていた掛け布団を取り出し、ヤシャに手渡す。
「腹が冷えたらなんだからこれ使え」
「すまないなヴァルタゼア」
態度と言いテレビに向かって座っている恰好といい、まるで一家の大黒柱だ。
「…その姿で胡坐は止めろ」
こうして、激動の一日は過ぎて行った。
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