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第七十話 こみゅこみゅ
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「こみゅですか?ええ、やってますよ」
昼休憩に滝澤に会いに行くと、菊池と教室で座っていた。
菊池はしゅんっとしていて、春田と目を合わせようとしない。
「実はさっき竹内から教えてもらって……良かったら登録したいなって……」
「春田さんから登録のお誘いなんて……素直に嬉しいです。どうぞ登録してください」
春田の携帯を手でさす。
「えっと……滝澤さんの携帯は?」
さっきの虎田たちの方法では携帯同士で登録しあっていた。本体がないとどうしようもないだろう。
「ん?わたくしのアドレスを登録されてますよね?それをそのまま使用していただければ……て、初心者でしたね」
掌を上にして春田の携帯を貸す様に無言で指示する。春田がその意を汲んで携帯を渡す。
「この友達追加画面でアドレス帳を引用すれば……はい、これで申請完了です」
慣れた手つきでササッと友達登録をする。「ほえ~」という間抜けな声を出して携帯を受け取ると、尊敬の目で滝澤を見る。
「いや~、凄いな……こういうのも出来ちゃうんだ……」
「ふふ、何でも聞いて下さい。こみゅは東グループのアプリですから、裏技とかもありますよ?」
「え!あっそうなんだ。知らなかった……なんか納得した……」
感心していると、菊池がようやく声を発した。
「詩織様は多趣味で、大抵の事は一度は触れているお方だ。東グループのものでなくともこのくらいは当然だ」
自分の事のように誇らしげにしている。さっきまで小さく丸まっていた菊地が少し大きく見えた。主人が誉められて嬉しいと見える。
「菊地はやってないのか?」
「は?もちろんやっている。詩織様と連絡を取り合うからな」
「じゃあ……」と携帯を掲げる。
「……私とこみゅを?」
「え?ダメか?」
困惑した菊地に春田は当然のように登録を促す。菊地は滝澤に確認するようにチラリと見る。
「……?どうしたの菊池。貴女が答えるのよ」
その言葉は菊池にとって了承の言葉と同様だった。菊地は顔を赤くしながら携帯を取り出す。
「それじゃいくぞ菊池。こうしてこうして……」
「ああ……待て待て。違うぞ、この項目を押して、ここから……」
というやり取りが始まり、無事に菊池の登録が完了した。
「春田さんはもうお昼は済ませたんですか?」
「いや、まだ。先に登録してこいって虎田がうるさくて…」
その名を聞いて「あ、ふ~ん」と気付いたような意味深な顔をする。
「……なに?」
「……いえ、もしや虎田さんとお付き合いされていたりは……」
なんとも安易な考え方だ。滝澤も普通の女学生であると言う事だろう。
「付き合ってないよ。第一、俺みたいなのと付き合いたくないだろうし……」
「なんでそう思うのです?」
「いやだって、俺みたいな暗い奴と付き合いたくないでしょ」
滝澤が立ち上がり、春田の顔を覗き込む。
「暗いですか?打てば響きますし、包容力ありますし、わたくしは春田さんとなら全然平気ですけど?」
恥ずかしい事を平気で言ってくる滝澤に青い顔の菊池。春田は言われて嬉しいのは確かだが、社交辞令である事は明白なので話半分に留めておく。
「それはどうも……あ、そうそう。飯にしようぜ。俺の事情で遅くなって申し訳ない」
「……そうですね、行きましょうか」
春田の返答と何事もなく終わった会話の流れからホッとする菊池。
「じゃ、また屋上で」
と教室を後にする。春田が背中を見せた時、すぐにお弁当を用意し始める菊池。出て行く後ろ姿を見送る滝澤。姿が見えなくなってぼそりとつぶやく。
「……いけずなお方……」
「ん?何かおっしゃられましたか?」
「ただの独り言です。行きましょうか」
………
屋上に着くと、高橋がいつもの場所を確保していた。
「なんだ?今日は早いなお前」
「先輩方をお待たせするのは後輩として駄目っしょ?めぐはデキる後輩なんっす!」
「えっへん」と胸を張り、アピールする。小柄な体躯に似合わない大きな胸がツンと前に出る。(そこらの女子よりでかくないか?)春田はちょっと鼻の下が伸びる気持ちになるが、頭を振ってそれを追い出す。竹内は高橋のそれに対し「あっそ」と冷たい。
「……って、おい竹内……あんまりじゃないか?」
「竹さんがもしここで感激でもしたら、それこそヤバいっすよ」
高橋がケラケラ笑って足を崩す。その拍子にスカートが乱れる。
「ちょちょちょ!高橋さん!スカートスカート!」と焦りながらも声を落として周りを気にしつつ、虎田は注意する。
「ええ?大丈夫っすよー。そんな事もあろうかと見せパン履いてるんでー」
高橋は恥じらいもなくスカートをめくる。確かにスポーツ用っぽい黒のショートパンツを履いている。下着を見せているわけではないという安心感からか、何の抵抗もない。これには虎田もあきれ顔だ。
「……高橋、恥じらいを持てと虎田は言っているんだ」
「う?まぁそうっすね。虎田先輩すいません。めぐを考えて言って下さったんですよね。竹さんとばっかつるんできたから、そういうの慣れてないもんで……」
竹内は高橋に肩パンする。ドッという音がここまで聴こえる。前回と違って平気そうな顔をしているのであまり痛くはないのだろう。春田はキョロキョロと周りを見渡し、一拍置いた後、高橋に向き直る。
「……まだ滝澤さんも来てないし、今がチャンスだな。高橋。こみゅしようぜ」
昼休憩に滝澤に会いに行くと、菊池と教室で座っていた。
菊池はしゅんっとしていて、春田と目を合わせようとしない。
「実はさっき竹内から教えてもらって……良かったら登録したいなって……」
「春田さんから登録のお誘いなんて……素直に嬉しいです。どうぞ登録してください」
春田の携帯を手でさす。
「えっと……滝澤さんの携帯は?」
さっきの虎田たちの方法では携帯同士で登録しあっていた。本体がないとどうしようもないだろう。
「ん?わたくしのアドレスを登録されてますよね?それをそのまま使用していただければ……て、初心者でしたね」
掌を上にして春田の携帯を貸す様に無言で指示する。春田がその意を汲んで携帯を渡す。
「この友達追加画面でアドレス帳を引用すれば……はい、これで申請完了です」
慣れた手つきでササッと友達登録をする。「ほえ~」という間抜けな声を出して携帯を受け取ると、尊敬の目で滝澤を見る。
「いや~、凄いな……こういうのも出来ちゃうんだ……」
「ふふ、何でも聞いて下さい。こみゅは東グループのアプリですから、裏技とかもありますよ?」
「え!あっそうなんだ。知らなかった……なんか納得した……」
感心していると、菊池がようやく声を発した。
「詩織様は多趣味で、大抵の事は一度は触れているお方だ。東グループのものでなくともこのくらいは当然だ」
自分の事のように誇らしげにしている。さっきまで小さく丸まっていた菊地が少し大きく見えた。主人が誉められて嬉しいと見える。
「菊地はやってないのか?」
「は?もちろんやっている。詩織様と連絡を取り合うからな」
「じゃあ……」と携帯を掲げる。
「……私とこみゅを?」
「え?ダメか?」
困惑した菊地に春田は当然のように登録を促す。菊地は滝澤に確認するようにチラリと見る。
「……?どうしたの菊池。貴女が答えるのよ」
その言葉は菊池にとって了承の言葉と同様だった。菊地は顔を赤くしながら携帯を取り出す。
「それじゃいくぞ菊池。こうしてこうして……」
「ああ……待て待て。違うぞ、この項目を押して、ここから……」
というやり取りが始まり、無事に菊池の登録が完了した。
「春田さんはもうお昼は済ませたんですか?」
「いや、まだ。先に登録してこいって虎田がうるさくて…」
その名を聞いて「あ、ふ~ん」と気付いたような意味深な顔をする。
「……なに?」
「……いえ、もしや虎田さんとお付き合いされていたりは……」
なんとも安易な考え方だ。滝澤も普通の女学生であると言う事だろう。
「付き合ってないよ。第一、俺みたいなのと付き合いたくないだろうし……」
「なんでそう思うのです?」
「いやだって、俺みたいな暗い奴と付き合いたくないでしょ」
滝澤が立ち上がり、春田の顔を覗き込む。
「暗いですか?打てば響きますし、包容力ありますし、わたくしは春田さんとなら全然平気ですけど?」
恥ずかしい事を平気で言ってくる滝澤に青い顔の菊池。春田は言われて嬉しいのは確かだが、社交辞令である事は明白なので話半分に留めておく。
「それはどうも……あ、そうそう。飯にしようぜ。俺の事情で遅くなって申し訳ない」
「……そうですね、行きましょうか」
春田の返答と何事もなく終わった会話の流れからホッとする菊池。
「じゃ、また屋上で」
と教室を後にする。春田が背中を見せた時、すぐにお弁当を用意し始める菊池。出て行く後ろ姿を見送る滝澤。姿が見えなくなってぼそりとつぶやく。
「……いけずなお方……」
「ん?何かおっしゃられましたか?」
「ただの独り言です。行きましょうか」
………
屋上に着くと、高橋がいつもの場所を確保していた。
「なんだ?今日は早いなお前」
「先輩方をお待たせするのは後輩として駄目っしょ?めぐはデキる後輩なんっす!」
「えっへん」と胸を張り、アピールする。小柄な体躯に似合わない大きな胸がツンと前に出る。(そこらの女子よりでかくないか?)春田はちょっと鼻の下が伸びる気持ちになるが、頭を振ってそれを追い出す。竹内は高橋のそれに対し「あっそ」と冷たい。
「……って、おい竹内……あんまりじゃないか?」
「竹さんがもしここで感激でもしたら、それこそヤバいっすよ」
高橋がケラケラ笑って足を崩す。その拍子にスカートが乱れる。
「ちょちょちょ!高橋さん!スカートスカート!」と焦りながらも声を落として周りを気にしつつ、虎田は注意する。
「ええ?大丈夫っすよー。そんな事もあろうかと見せパン履いてるんでー」
高橋は恥じらいもなくスカートをめくる。確かにスポーツ用っぽい黒のショートパンツを履いている。下着を見せているわけではないという安心感からか、何の抵抗もない。これには虎田もあきれ顔だ。
「……高橋、恥じらいを持てと虎田は言っているんだ」
「う?まぁそうっすね。虎田先輩すいません。めぐを考えて言って下さったんですよね。竹さんとばっかつるんできたから、そういうの慣れてないもんで……」
竹内は高橋に肩パンする。ドッという音がここまで聴こえる。前回と違って平気そうな顔をしているのであまり痛くはないのだろう。春田はキョロキョロと周りを見渡し、一拍置いた後、高橋に向き直る。
「……まだ滝澤さんも来てないし、今がチャンスだな。高橋。こみゅしようぜ」
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