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第八十一話 魔王の所在
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「ええ!?こんな奴が?」
勇者は現魔王を見て驚きのあまり目を真ん丸にしている。
「なるほど、原住民に紛れ込む事で復活の時を待っていたと言う事ね」
赤毛は冷静に事の成り行きを見ている。
ナルルは春田が魔王だと看破したとはいえナルル自身も驚きを隠せなかった。
(……だとしても気配だけというのはおかしい。こいつは本当に魔王なのか?)
生まれ変わったのだから、見た目が違っても別段おかしくない。性別も同じであると限らなかったので、探すのは一苦労だと思っていたくらいだ。
そんなことより、この男からは力を感じない。本来内包されているはずの魔力が一切感じられないし、ヒョロイ体からは腕力も無いように思える。投げナイフに反応できていない上に、常にあった余裕も自信も感じられない。
「……待てよ……」
擬態か、もしくは操り人形か、魔王本人がここにいないという可能性もある。ヤシャが逃げるよう指示していたがそれもブラフだというのも否定できない。ヤシャを知る人物なら腹芸などできないことくらいすぐさま看破できるが、関わりが薄かったための弊害がここで起こっていた。
ここで一瞬の間が空いたのを確認したポイ子はガバッと体を大きく開いて、ナルルに一気に詰め寄る。ポイ子は物理攻撃が無効でバッドステータスを付与することもできる。ナルルレベルともなれば、簡単に抵抗できる程度の毒だが、意表を突くには完璧なタイミングだ。
しかしそれもナルルが一人だったらの話。その間に入って来たのは不可視の壁。魔法を滑り込ませたのは赤毛である。
「熱っ!!」
バヂッという音とともに弾かれたポイ子は大きく仰け反る。その瞬間を逃さず赤毛は光弾を飛ばす。ポイ子は一切対応できずパァンッと頭が吹き飛んだ。
「……ポイ子!?」
春田はそれを見て絶句する。敵の無駄のない動きは一瞬にして魔族を亡きものにできる。だがポイ子の頭はあくまでも作り物であり、そこまで深刻なダメージではない。よろよろと後退してまた頭を再生させる。
「ご安心を。この程度ではポイ子は死にません」
とはいえ、久々のダメージ。弱小魔族のポイズンスライムには勇者の側近は荷が重い。
「ポイ子!聖也を連れて逃げろ!ここは私たちでなんとかする!!」
「え~……私たちって~うちも入ってるの?」
マレフィアはとぼけたことを言うが既に臨戦体制である。マレフィアならポイ子にダメージを負わせないことも可能だったが、そのソースをあえてヤシャの強化に費やしていた。ヤシャに付与された強化は以下の通り。筋力増強、敏捷性の向上、弱体耐性の抵抗力向上、攻撃魔法反射(3回)、飛び道具(物理)に対する完全耐性。
これにヤシャの基本能力が加わり気分は完全無欠である。
「ようやく出番か!いくぞ!!」
と勇者も意気込む。ここに小規模ではあるが魔族VS人類の戦いが始まった。
「ちょちょちょ……ちょっと待て!!」
それに対して春田が大声を上げる。
「何考えてんだ!この世界は元の世界とは全く違うんだぞ!?やりあうんなら他所でやれ!他所で!」
ヤシャが階段下のアスファルトを掘り返し、ガードレールを曲げたのと同じ場所で今度はクレーターを作る恐れもある面子がやりあおうとしている。
「へぇ……魔王ってこの世界が好きなんだ。じゃ抵抗せずにその命を差し出してよ。この世界が無茶苦茶になる前に!」
どこぞの悪役が言いそうな言葉だが、言っているのが人類側の勇者だというのだからお笑い草だ。それほどまでに恨みが深いと言える。一度殺しておきながら、転生先までやってきて殺そうだなんて殺意高すぎて笑えない。
「そう焦るでない。わらわは魔王と少し話がしたいのじゃ」
投げナイフまで出してきて突如話をしたいなど白々しいナルル。しかし矛を収めてくれるのなら願ってもない申し出だ。
「いの一番に攻撃したナルル様に魔王様とお話しする権利などあるはずがないでしょう。この場でヤシャ様に叩きつぶされるか、マレフィア様のお力で元の世界にお帰りいただくか二つに一つです」
ポイ子はいつものニコニコとした仮面を取り、敵意むき出しで相対する。春田から見れば、ヤシャが来た当初もかなり警戒していたが、今この時ほどではなかった。ポイ子は春田の為なら死すら厭わない。
そしてそれはポイ子だけでは無い。ヤシャは春田を隠すように立ち、指の骨をボキボキ鳴らして牽制する。マレフィアは何もしていないように見えて、さり気なくヤシャの隣に立つ。その3人の忠誠心は目を見張るものがあり、春田自身感動しているが正直なところ今は都合が悪い。
「……交渉できるのか?」
春田の率直な気持ちだ。
「聖也!?」「聖也様!?」「……聖ちゃん……」
三者同様に驚く。マレフィアは若干呆れている。ここで完膚なきまでに叩けば、今後この世界に来る奴らも減る。後々の事を考えれば、脅威となるべきものは先に排除すべきだ。これでは相手の思う壺である。
「まぁ聞け。俺は戦わないに越した事はないと考えている。何度も言うが俺は目立ちたくないんだ」
自分が弱い事は伏せて、話し合いでの解決を望む春田。こうすることで、突然襲われる事は無いだろう。
「話し合いだって?面白くないよ!」
「アーちゃん駄目よ?周りの空気は読まなきゃ……」
「つ~ま~ん~な~い~!!」
勇者は駄々をこね、赤毛が落ち着かせようとする。こんな好戦的な奴だと知っていればあそこでお喋りに興じる真似はしなかったのに。
「目立ちたくないじゃと?あの魔王が?」
その言葉にナルルは懐疑的である。魔王は人一倍目立ちたがり屋で、一秒で壊滅できる村々を回っては小一時間持論を垂れ流し、その村に魔王がきた証として多くの家の壁に落書きをした後、魔法で銅像を建てて帰るような面倒臭い奴だった。強いから何もいえず、器物損壊などの被害はあるが傷害はなく、かと言って無視できない天災のような男だった。
そんな男が隠居?死ぬまで考えを変えなかったのにどういう風の吹き回しか。
「ナルル=エンプレス!俺に用があるならサシで来い!」
春田は現状の収束にナルルを指名する。赤毛と勇者がナルルの言う通り客だと言うなら座るところとお菓子を与えれば大人しくなりそうだ。
「……ふん。願っても無い」
ナルルはニヤリと笑ってそれに応える。
「馬鹿な!こんな危険なやつと二人っきりなんて絶対ダメだ」
「ヤシャ様がいなければ死んでいるんですよ?」
「……無謀すぎる」
この案に真っ向から対立するのはポイ子他3人。
「……すまん。確かに俺も考えなしだった……話し合いの場にはポイ子を加えてもいいか?」
勇者は現魔王を見て驚きのあまり目を真ん丸にしている。
「なるほど、原住民に紛れ込む事で復活の時を待っていたと言う事ね」
赤毛は冷静に事の成り行きを見ている。
ナルルは春田が魔王だと看破したとはいえナルル自身も驚きを隠せなかった。
(……だとしても気配だけというのはおかしい。こいつは本当に魔王なのか?)
生まれ変わったのだから、見た目が違っても別段おかしくない。性別も同じであると限らなかったので、探すのは一苦労だと思っていたくらいだ。
そんなことより、この男からは力を感じない。本来内包されているはずの魔力が一切感じられないし、ヒョロイ体からは腕力も無いように思える。投げナイフに反応できていない上に、常にあった余裕も自信も感じられない。
「……待てよ……」
擬態か、もしくは操り人形か、魔王本人がここにいないという可能性もある。ヤシャが逃げるよう指示していたがそれもブラフだというのも否定できない。ヤシャを知る人物なら腹芸などできないことくらいすぐさま看破できるが、関わりが薄かったための弊害がここで起こっていた。
ここで一瞬の間が空いたのを確認したポイ子はガバッと体を大きく開いて、ナルルに一気に詰め寄る。ポイ子は物理攻撃が無効でバッドステータスを付与することもできる。ナルルレベルともなれば、簡単に抵抗できる程度の毒だが、意表を突くには完璧なタイミングだ。
しかしそれもナルルが一人だったらの話。その間に入って来たのは不可視の壁。魔法を滑り込ませたのは赤毛である。
「熱っ!!」
バヂッという音とともに弾かれたポイ子は大きく仰け反る。その瞬間を逃さず赤毛は光弾を飛ばす。ポイ子は一切対応できずパァンッと頭が吹き飛んだ。
「……ポイ子!?」
春田はそれを見て絶句する。敵の無駄のない動きは一瞬にして魔族を亡きものにできる。だがポイ子の頭はあくまでも作り物であり、そこまで深刻なダメージではない。よろよろと後退してまた頭を再生させる。
「ご安心を。この程度ではポイ子は死にません」
とはいえ、久々のダメージ。弱小魔族のポイズンスライムには勇者の側近は荷が重い。
「ポイ子!聖也を連れて逃げろ!ここは私たちでなんとかする!!」
「え~……私たちって~うちも入ってるの?」
マレフィアはとぼけたことを言うが既に臨戦体制である。マレフィアならポイ子にダメージを負わせないことも可能だったが、そのソースをあえてヤシャの強化に費やしていた。ヤシャに付与された強化は以下の通り。筋力増強、敏捷性の向上、弱体耐性の抵抗力向上、攻撃魔法反射(3回)、飛び道具(物理)に対する完全耐性。
これにヤシャの基本能力が加わり気分は完全無欠である。
「ようやく出番か!いくぞ!!」
と勇者も意気込む。ここに小規模ではあるが魔族VS人類の戦いが始まった。
「ちょちょちょ……ちょっと待て!!」
それに対して春田が大声を上げる。
「何考えてんだ!この世界は元の世界とは全く違うんだぞ!?やりあうんなら他所でやれ!他所で!」
ヤシャが階段下のアスファルトを掘り返し、ガードレールを曲げたのと同じ場所で今度はクレーターを作る恐れもある面子がやりあおうとしている。
「へぇ……魔王ってこの世界が好きなんだ。じゃ抵抗せずにその命を差し出してよ。この世界が無茶苦茶になる前に!」
どこぞの悪役が言いそうな言葉だが、言っているのが人類側の勇者だというのだからお笑い草だ。それほどまでに恨みが深いと言える。一度殺しておきながら、転生先までやってきて殺そうだなんて殺意高すぎて笑えない。
「そう焦るでない。わらわは魔王と少し話がしたいのじゃ」
投げナイフまで出してきて突如話をしたいなど白々しいナルル。しかし矛を収めてくれるのなら願ってもない申し出だ。
「いの一番に攻撃したナルル様に魔王様とお話しする権利などあるはずがないでしょう。この場でヤシャ様に叩きつぶされるか、マレフィア様のお力で元の世界にお帰りいただくか二つに一つです」
ポイ子はいつものニコニコとした仮面を取り、敵意むき出しで相対する。春田から見れば、ヤシャが来た当初もかなり警戒していたが、今この時ほどではなかった。ポイ子は春田の為なら死すら厭わない。
そしてそれはポイ子だけでは無い。ヤシャは春田を隠すように立ち、指の骨をボキボキ鳴らして牽制する。マレフィアは何もしていないように見えて、さり気なくヤシャの隣に立つ。その3人の忠誠心は目を見張るものがあり、春田自身感動しているが正直なところ今は都合が悪い。
「……交渉できるのか?」
春田の率直な気持ちだ。
「聖也!?」「聖也様!?」「……聖ちゃん……」
三者同様に驚く。マレフィアは若干呆れている。ここで完膚なきまでに叩けば、今後この世界に来る奴らも減る。後々の事を考えれば、脅威となるべきものは先に排除すべきだ。これでは相手の思う壺である。
「まぁ聞け。俺は戦わないに越した事はないと考えている。何度も言うが俺は目立ちたくないんだ」
自分が弱い事は伏せて、話し合いでの解決を望む春田。こうすることで、突然襲われる事は無いだろう。
「話し合いだって?面白くないよ!」
「アーちゃん駄目よ?周りの空気は読まなきゃ……」
「つ~ま~ん~な~い~!!」
勇者は駄々をこね、赤毛が落ち着かせようとする。こんな好戦的な奴だと知っていればあそこでお喋りに興じる真似はしなかったのに。
「目立ちたくないじゃと?あの魔王が?」
その言葉にナルルは懐疑的である。魔王は人一倍目立ちたがり屋で、一秒で壊滅できる村々を回っては小一時間持論を垂れ流し、その村に魔王がきた証として多くの家の壁に落書きをした後、魔法で銅像を建てて帰るような面倒臭い奴だった。強いから何もいえず、器物損壊などの被害はあるが傷害はなく、かと言って無視できない天災のような男だった。
そんな男が隠居?死ぬまで考えを変えなかったのにどういう風の吹き回しか。
「ナルル=エンプレス!俺に用があるならサシで来い!」
春田は現状の収束にナルルを指名する。赤毛と勇者がナルルの言う通り客だと言うなら座るところとお菓子を与えれば大人しくなりそうだ。
「……ふん。願っても無い」
ナルルはニヤリと笑ってそれに応える。
「馬鹿な!こんな危険なやつと二人っきりなんて絶対ダメだ」
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