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第131話 ひとときの休息
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「……それでわたくしは言ったんです。おじ様が期待している事柄は単なる机上の空論であり、皮算用であると」
「えぇ……超キツい言い方だな。そのおじ様は怒らなかったの?」
「ええ。「これは一本取られた」って大喜びしてました」
「マジか、すげぇ心の広い人だな……」
滝澤の部屋で二人で会話を楽しんでいた。ちょっと前まで気まずい雰囲気だったが、滝澤の方から話を振っていき、様々な話題で盛り上がった。
今は菊地のお爺さんと滝澤 詩織のある時の会話を聞いていた。滝澤は口を湿らすためにお茶のおかわりをしようとポットに手を掛けた。ふと時計に目がいく。
「あら?もうこんな時間でしたか……時が経つのは早いですね」
時刻は22時を回っていて、この部屋に来て既に一時間以上の時を過ごしている。
「ほんとだ。そろそろ寝ないと明日起きられないぜ」
カップに残ったお茶を一気に飲み干し、ソーサーに置くと立ち上がった。春田は意気込んで手をスリスリ擦り合わせた後、柏手を打って尋ねる。
「よし!それじゃ俺の部屋に案内……いや、自分で行くからどの部屋か教えてくれ」
その問いに滝澤は目をぱちくりさせた。
「春田さんの部屋はここですよ?」
その答えに春田の方も目をぱちくりさせた。
「……ここは滝澤さんの部屋……ですよね?」
この部屋に案内された時に「バレました?」なんておどけていたし、綺麗に整頓されているが趣味に関わる物が見え隠れしている。もし滝澤の部屋でなくとも誰かの部屋であることは確実だ。
「わたくしの部屋です。と同時に春田さんの部屋でもあります」
(ん?あっ!はは~ん。これは引っ掛けか……)
滝澤はこの部屋を自分の部屋であり春田の部屋でもあるという。春田の予想は友達であるなら部屋を使用しても良いという事だろう。もう寝ようという時に小賢しい真似を。
「ともあれ、まずはお風呂に入りましょう。自慢の大浴場がありますのでそこで一日の汗を流しませんと」
部屋の話から大浴場の話にすり替えられた。しかし大浴場と言われた時に少々興奮した。家族旅行も行かず、学校行事くらいでしか外泊することの無い春田にとって高級旅館のようなこの場所で、さらに大浴場とくれば楽しくなってしまうのも無理はない。そんなワクワクしている気持ちがバレるのは恥ずかしいので、悟られない様に静かに返答する。
「大浴場……そ、そうですね。入って綺麗になんないと寝られないですし、丁度入りたいと思ってたんですよ」
「ふふふ……そんなに楽しみにして頂けるとこちらも用意のし甲斐があります」
滝澤はソワソワする春田を見てすぐに楽しみにしている事を見抜いた。スッと立ち上がると、机にあった呼び鈴を持ってチリンチリンと綺麗な音を奏でる。その音に10秒もしないくらいで扉が開かれる。そこにいたのは菊池妹だ。
「お呼びでしょうか?」
「菊池。お風呂の用意は出来ていますか?」
「はい、抜かりなく。脱衣所にタオルも用意しておりますのでいつでもお入りいただけます」
滝澤の質問に即座に答える。すぐに噛みつく躾のなってない犬のイメージだったので、キリッとして賢そうな表情をされると一瞬混乱する。が、普段がこっちなのだろう。
最近変な奴が現れて滝澤が勝手に気に入ったせいで色々しんどい事になっているのかもしれない。多分自分のせいだろうなぁと思いつつ同情する。この気持ちを打ち明けたら多分キレるから絶対言えない事は確かだ。
「では先に春田さんを先にお連れして。わたくしも後から入るので」
「え?俺が先で良いんですか?」
「ええ、着替えなどでお時間掛かるのでお先にどうぞ」
若干悪い気になりながらも心はルンルン気分で部屋を後にする。菊地は滝澤の言葉に妙な引っ掛かりを覚えたが、春田の受け答えで有耶無耶となり、気のせいだと思って案内する。
「そういえば菊地っていつ食事してるんだ?」
さっき食べているときはメイドとお付きは後ろで控えていた。主人が食べるのに同席する使用人はいないが、それならちゃんと食べているのか気になる。
「本来であればお嬢様の後で頂くのだけれど、今回は裏格闘大会もあったし先に食べたわ。大会はいつも熾烈を極めて日が変わるギリギリとかになりがちだから……そういえば今回は早かったような……」
多分本来なら試合時間一杯まで戦って休憩とか挟むのだろう。今回はヤシャと会長が大会を荒らしたので、休憩なしで一気にやったからすぐ終わったのだ。
「しっかし裏格闘なんて良くやるぜ。今は娯楽も充実してるってのに……」
「だからだと思うわ。だって娯楽を楽しみ尽くしたような方々よ?血沸き肉踊る様な凄まじい戦いを見たくなるのも頷けるもの」
それはそうかもしれないが、格闘技を見る程度なら表で十分事足りる。何故裏にまで行ってそれを見る必要があるのか?
それはデスマッチを希望しているからだろう。血しぶきをあげて人が壊れていくのを安全な場所から見るのが楽しいのだ。
事故映像や心霊特番、その他ショッキングなシーンなど、自分が体験すればすぐにでも音を上げるような事柄も他人の事となれば野次馬根性で気になって見てしまう。時にはお金を払ってでも……。
(そのお陰で優勝賞金が手に入ったんだし、悪く言うのはお門違いかな?そういえば優勝賞金はいつ貰えるんだろうか?明日の朝アタッシュケースとかで用意されてたりして……)
満足げに頷きながら案内する菊池妹の後を追いながら、喜びを抑えられずニヤニヤと表情に表れていた。誰にも見られてないのがせめてもの救い。
しばらく歩くと両開きの扉の前で菊池妹が立ち止まる。風呂場に着いたようだ。
「さて、私の案内はここまで。この中が風呂場になっている。タオルもあるから不自由はないと思う」
「了解。久々に足を伸ばせるのか~。楽しみだ」
「えぇ……超キツい言い方だな。そのおじ様は怒らなかったの?」
「ええ。「これは一本取られた」って大喜びしてました」
「マジか、すげぇ心の広い人だな……」
滝澤の部屋で二人で会話を楽しんでいた。ちょっと前まで気まずい雰囲気だったが、滝澤の方から話を振っていき、様々な話題で盛り上がった。
今は菊地のお爺さんと滝澤 詩織のある時の会話を聞いていた。滝澤は口を湿らすためにお茶のおかわりをしようとポットに手を掛けた。ふと時計に目がいく。
「あら?もうこんな時間でしたか……時が経つのは早いですね」
時刻は22時を回っていて、この部屋に来て既に一時間以上の時を過ごしている。
「ほんとだ。そろそろ寝ないと明日起きられないぜ」
カップに残ったお茶を一気に飲み干し、ソーサーに置くと立ち上がった。春田は意気込んで手をスリスリ擦り合わせた後、柏手を打って尋ねる。
「よし!それじゃ俺の部屋に案内……いや、自分で行くからどの部屋か教えてくれ」
その問いに滝澤は目をぱちくりさせた。
「春田さんの部屋はここですよ?」
その答えに春田の方も目をぱちくりさせた。
「……ここは滝澤さんの部屋……ですよね?」
この部屋に案内された時に「バレました?」なんておどけていたし、綺麗に整頓されているが趣味に関わる物が見え隠れしている。もし滝澤の部屋でなくとも誰かの部屋であることは確実だ。
「わたくしの部屋です。と同時に春田さんの部屋でもあります」
(ん?あっ!はは~ん。これは引っ掛けか……)
滝澤はこの部屋を自分の部屋であり春田の部屋でもあるという。春田の予想は友達であるなら部屋を使用しても良いという事だろう。もう寝ようという時に小賢しい真似を。
「ともあれ、まずはお風呂に入りましょう。自慢の大浴場がありますのでそこで一日の汗を流しませんと」
部屋の話から大浴場の話にすり替えられた。しかし大浴場と言われた時に少々興奮した。家族旅行も行かず、学校行事くらいでしか外泊することの無い春田にとって高級旅館のようなこの場所で、さらに大浴場とくれば楽しくなってしまうのも無理はない。そんなワクワクしている気持ちがバレるのは恥ずかしいので、悟られない様に静かに返答する。
「大浴場……そ、そうですね。入って綺麗になんないと寝られないですし、丁度入りたいと思ってたんですよ」
「ふふふ……そんなに楽しみにして頂けるとこちらも用意のし甲斐があります」
滝澤はソワソワする春田を見てすぐに楽しみにしている事を見抜いた。スッと立ち上がると、机にあった呼び鈴を持ってチリンチリンと綺麗な音を奏でる。その音に10秒もしないくらいで扉が開かれる。そこにいたのは菊池妹だ。
「お呼びでしょうか?」
「菊池。お風呂の用意は出来ていますか?」
「はい、抜かりなく。脱衣所にタオルも用意しておりますのでいつでもお入りいただけます」
滝澤の質問に即座に答える。すぐに噛みつく躾のなってない犬のイメージだったので、キリッとして賢そうな表情をされると一瞬混乱する。が、普段がこっちなのだろう。
最近変な奴が現れて滝澤が勝手に気に入ったせいで色々しんどい事になっているのかもしれない。多分自分のせいだろうなぁと思いつつ同情する。この気持ちを打ち明けたら多分キレるから絶対言えない事は確かだ。
「では先に春田さんを先にお連れして。わたくしも後から入るので」
「え?俺が先で良いんですか?」
「ええ、着替えなどでお時間掛かるのでお先にどうぞ」
若干悪い気になりながらも心はルンルン気分で部屋を後にする。菊地は滝澤の言葉に妙な引っ掛かりを覚えたが、春田の受け答えで有耶無耶となり、気のせいだと思って案内する。
「そういえば菊地っていつ食事してるんだ?」
さっき食べているときはメイドとお付きは後ろで控えていた。主人が食べるのに同席する使用人はいないが、それならちゃんと食べているのか気になる。
「本来であればお嬢様の後で頂くのだけれど、今回は裏格闘大会もあったし先に食べたわ。大会はいつも熾烈を極めて日が変わるギリギリとかになりがちだから……そういえば今回は早かったような……」
多分本来なら試合時間一杯まで戦って休憩とか挟むのだろう。今回はヤシャと会長が大会を荒らしたので、休憩なしで一気にやったからすぐ終わったのだ。
「しっかし裏格闘なんて良くやるぜ。今は娯楽も充実してるってのに……」
「だからだと思うわ。だって娯楽を楽しみ尽くしたような方々よ?血沸き肉踊る様な凄まじい戦いを見たくなるのも頷けるもの」
それはそうかもしれないが、格闘技を見る程度なら表で十分事足りる。何故裏にまで行ってそれを見る必要があるのか?
それはデスマッチを希望しているからだろう。血しぶきをあげて人が壊れていくのを安全な場所から見るのが楽しいのだ。
事故映像や心霊特番、その他ショッキングなシーンなど、自分が体験すればすぐにでも音を上げるような事柄も他人の事となれば野次馬根性で気になって見てしまう。時にはお金を払ってでも……。
(そのお陰で優勝賞金が手に入ったんだし、悪く言うのはお門違いかな?そういえば優勝賞金はいつ貰えるんだろうか?明日の朝アタッシュケースとかで用意されてたりして……)
満足げに頷きながら案内する菊池妹の後を追いながら、喜びを抑えられずニヤニヤと表情に表れていた。誰にも見られてないのがせめてもの救い。
しばらく歩くと両開きの扉の前で菊池妹が立ち止まる。風呂場に着いたようだ。
「さて、私の案内はここまで。この中が風呂場になっている。タオルもあるから不自由はないと思う」
「了解。久々に足を伸ばせるのか~。楽しみだ」
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