魔王復活!

大好き丸

文字の大きさ
134 / 151

第133話 取り合い

しおりを挟む
「あ"あ"~……」

のぼせた春田の体は茹で上がったタコのように真っ赤になっていた。

あの後、美女3人に囲まれて湯船に浸からされた上、3人が3人とも春田を取り合って肌の密着までしてきた。男にとって夢のような事態に立たされた結果、倒れてしまったのだった。
自分でも情けないと思いながらも体は動かず、ヤシャに運ばれて滝澤のベッドに寝かされた。気絶直前だったため当然自分で下着を着れる状態になく、ナルルがせっせと世話をしていた。
替えの下着をあらかじめ滝澤の方で用意してくれていたので、スムーズに事が済んだ。

「春田さん、お加減はいかがでしょうか?」

滝澤は困り顔で心配してくれた。結局全てを見られた春田は恥ずかしさと情けなさでこのまま溶けて消えて失くなりたかったが、そんな事は出来ない。泣くくらいしか出来ない。

「お、おい大丈夫か?して欲しい事があったら何でも言えよ?」

ヤシャはオロオロしながら春田を看る。ナルルも側で春田の額を触ったり頬を撫でたりと一番スキンシップが激しい。ただ、ひんやりとした冷たい手で触っているので火照った体を冷やすのに丁度良い。さっきまで一緒に風呂に入っていたとは思えないほどだ。きっと魔法か何かだろう。

「まぁそう慌てるでない。聖也は単に湯でのぼせただけにすぎん。ここで涼んでおればすぐにも回復しよう」

ぼんやりした頭でナルルの言葉を聞く。このまま意識を飛ばして寝てしまいたかったが、そうもいかない言葉が聞こえてくる。

「後はわらわに任せて二人は部屋に行くが良い」

「あ、大丈夫です。わたくしにお任せください。ここはわたくしの寝室ですし、一晩中看護致します。どうぞお二人はお休みいただいて……」

「バカな。聖也がこの調子なのに休んでいられるか。私が側にいる。聖也がいてここで寝られないと言うなら私の部屋に移動させるぞ」

3人は春田の看護を自ら買って出て、且つ一人で看護したいと春田を取り合った。

「わらわはそれこそ完璧に春田を看護し、回復に導く手立てを持っている。お前らにそれがあるのかい?」

「ぬっ……私は回復に特化していないが……でも一緒にいることは出来る!」

「ナルル様は先程ただのぼせただけで安静にしていれば治ると仰ったではないですか?それにわたくしは人体の構造にも詳しく、体を冷やす手立てならございます。春田さんの事はどうかわたくしにお任せ願えませんか?」

3人は一歩も引かない。言葉と思いでバチバチ争う。

「まあまあ、お三方とも矛をお納めください」

そこに突然生えてきたポイ子が宥め始めた。

「何だお前は!突然やって来てしゃしゃり出るな!」

ナルルは3人の間に立ち諫めようとするポイ子に怒鳴り上げる。

「し~……もう夜中ですよ?もう少し声を落としてください。聖也様にも迷惑になりますよ?」

怒りに任せて手が出そうになっていたナルルも春田の名前を出されたら弱い。春田をチラリと見た後ぐぬぬっと歯を食いしばって声を抑える。滝澤はポイ子の突然の登場に驚いて思わず閉口してしまう。扉を開けた音も聞こえなかったし、この場所を教えたわけでもない。他の2人はまるで最初からいるように接しているが、これに驚かない人間はいないだろう。

「で?何の用だポイ子」

ヤシャは腕を組んでポイ子を見下ろす。

「聖也様はあなた方に任せるべきでないと判断いたしました。とはいえ私が代わると言えば戦争になるでしょう。なので、この私に良い考えがあります」

「……それはなんじゃ?勿体ぶらずに言え」

ポイ子は部屋の入り口付近を指す。

「ここは菊池のお兄さんにお任せするのです。男同士であれば間違いが発生する事も無いでしょう」

それを聞いて3人の顔が変わる。

「何を間違えるというんだ?」

「そうですよ。間違いだなんて……」

「わらわを何だと思うておるのか」

ポイ子が見透かしたような目で3人を見た後説明に入る。

「何故3人とも協力しようとしないのでしょうか?聖也様を看護するだけなら独り占めする理由などないでしょう?」

答える事が出来ない。正に図星という奴だ。そんな中ナルルだけが焦って声を上げる。

「なっ……さ、3人もいたら邪魔じゃろうが!看護だけなら1人で良いし……」

「はぁ……ナルル様、見苦しいとは思いませんか?どさくさ紛れに既成事実を作ろうなど愚の骨頂です。あなたの私欲を満足させるための時間ではありませんよ?重要なのは聖也様の健康だと言う事をお忘れなく」

ポイ子の良い方はキツいものがあったが、その通りだと言わざるを得ない。これには滝澤も何も言えない。呼び鈴を持ってチリンチリンと鳴らした。綺麗な鈴の音に誘われ、やって来たのは菊池妹だ。

「お呼びでしょうか?」

「すいません菊池さん。お兄さんの方に用があるので呼んで来ていただけないでしょうか?」

ポイ子が進んで質問に答える。菊池妹が滝澤を見るとコクリと一つ頷いた。

「……お呼びいたします」

スッと礼をして下がる。菊池兄がやって来るその間も3人が牽制しあい、到着と同時にその波も治まった。菊池兄妹が事情を知り、担架を持ってきたことで別の部屋への移動が決定した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

処理中です...