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第138話 襲来
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勇者ヴェイン。
魔王ヴァルタゼアを葬り、世界に平和をもたらした人類の救世主。神に愛され、底知らずの能力を持ち、世界最強の名を欲しいままにする英雄。
多くの女性に言い寄られていたのでハーレムも形成できたのに、共に旅をして来た愛する幼馴染みと結婚して無事娘を出産。実直なところまで完璧な超人は、平和な世の中で幸せに暮らすことが出来ていた。
正に「めでたし、めでたし」を字で行く物語の主人公だった。娘を持つまではーー。
ヴェインが目を開けると、そこは見慣れぬ寂れた建物の前。
「これは……?」
現世から異世界に転移して初めて目にしたのが寂れた建物だったので少し困惑したが、気を取り直して振り向く。
「おおっ!」
目の前に広がった建物に驚きの声が上がる。近くに見える家や遠くにそびえ立つビル。遠くでもよく見える看板に信号機の明かり、下には何やら流線型の箱が馬が引いてないのに自走している。
自然が少なく、元の世界と比べると灰色に近い風景なので違和感は相当だ。この世界にニーナとアリシアが来て、行方知らずなのだと考えると不気味に見えてくる。
「くっ……魔王め……!」
ギリッと歯を食い縛る。不滅の魂である魔王はいずれ蘇ることが確定していた。どう復活するのかは不明だったが、上手くいけば赤子の様な力の無い状態で生まれてくる可能性があった。周りにモンスターが居なければ守る盾もない。万が一強いまま復活してもやはり周りに部下がいない方が何かと都合が良い。だからこそモンスターを世界の境界線と呼ばれる逢魔に追いやり、魔王を復活と同時に殺す算段を立てていた。
(甘かった……)
別の世界で復活されるとは想定外だ。そして自分を置いて大切な家族が勝手に魔王討伐を掲げて世界を跨ぐなど夢にも思わない。今すぐにも魔王を討ち滅ぼし、家族と共に元の世界に帰るのだ。
辺りをぐるっと見渡すと目を閉じた。地理は全く分からないが幸いにも良く知る家族の気配が分かる。それと同時に魔王の気配も感じ取った。というより魔王の気配の方が色濃い。
「……やはり魔王に捕まっていたか……しかしニーナにしては不用心だな。助けを呼べないほど魔力に余裕がなかったのか、あるいは今も睨まれて隙がないのか……」
アリシアはヴェインの若い頃と似ていて猪武者なところがある。あの魔王に何も考えずに突っ込んで捕らえられたのは簡単に想像できた。しかし、ニーナは慎重なところがあるので危ないと思った時にはすぐにSOSを出すだろう。昔と違って魔力を使い切るヘマも考え難い。
聞いた話だとナルル=エンプレスというダークエルフと一緒に行ったらしい。一度も戦った事はなかったが一応四天王だということだ。信用させておいて背後から刺したみたいなことがあってもおかしくない。
そんな危ない奴と一緒に行くとなるとすぐにも助けを呼ばないのは疑問が残る。
「……いずれにしてもまず助けるのが先、か」
この小高い丘の出入り口はガタガタの石段。金属の手すりを持ってそっと降りていく。
「整備がなってないな。なんだこの階段は……」
上に盛り上がっているものがあれば逆に凹んでいるところがあったりと大小様々な変化がある。元の世界では魔法で石を切り出して綺麗に整えている。こういった階段一つでこの世界の技術力や性格が図れるというもの。
(あまり知的な生き物は居ないかもしれないな……いや、しかし……)
だが階段に比べると金属の手すりはかなり正確に配置されている。まるでチグハグな感じに混乱する。
(文明のレベルが測れないな……ん?この地面は?)
アスファルトが引いてある。石畳と違って切れ目の無いまっ平らな道路に驚く。
「ほう、何と滑らかな……。ここは最近改修されたみたいだな。まだ新しい……」
階段を降りきると、その位置から周りを見渡す。上から見ていた景色とはまた違う風景に感心する。壁が多い。信号機を知らない彼には何のために点いているのか分からない赤く灯った光。目の前を中々の早さで金属の塊が走っていく。人が乗っているのが見えたので乗り物である事は確かだが、無機質な箱に困惑する。異世界の空気はそこまで綺麗ではないなど感じることは様々。
何のためにあるのか分からない柱が何本も立って黒い縄で繋がっている。少し目を細めればエネルギーの往き来を感じ取れた。家と思われる建物に入って行く。この縄が住んでる者達に力を与えているのが見て取れた。
「そうかなるほど。無限の魔力と言われる地脈からエネルギーを吸い上げ、生活に取り入れているのか……とすると我らの文明より遥か上にいるな。興味深い……と、いかんいかん!」
頭を振って勝手に始まっていた考察を切り上げると自分が何をしに来たのか改めて思い直す。家族の救出と魔王討伐。すべて終わってからでもこの世界を知るのは遅くない。
ふと気付く。
「……ん?アリシアがこっちに来ている?」
魔王に捕まっていて動けないと思っていたが、父である自分がやって来て何とか抜け出してきたのかもしれない。
「ふっ……流石俺の娘だ」
我が娘ながら鼻が高い。魔王を出し抜き、合流しようとしている。合流が叶えばアリシアと協力して魔王を打ち倒す事も出来るだろう。ここで待っていれば合流できそうだったのでじっと待つことにする。そんな事を考えているとアリシアの姿がその目に飛び込んできた。
「アリシア―!」
ヴェインは手を振る。最近忙しかったために一週間ほど構えなかった娘との久しぶりの再会に喜びのあまり笑顔になってしまう。アリシアは終始ムスッとしてヴェインの前まで息を切らす事無くやって来た。
「ちょっと父さん、何しに来たの?」
「えっ?」言われた意味が分からず首を傾げる。
「……いや、お前らが全然帰ってこないから心配してやって来たんだ。思った通り魔王に捕まっていたようだから来て正解だったが」
「はぁっ?誰が……ってあたしたち?捕まるわけないじゃん。勘違いだから」
つーんと弾く様に反発するアリシア。かなり前から反抗期の娘だが、こういう所も凄く可愛い。しかしそんな事より重要なのはこの発言だ。強がっているのか、それとも本気なのか。強がっているなら何の事は無い、ニーナの救出と合わせて一緒に戦うだけだ。万が一本気なら、それはアリシアの意志ではない可能性がある。つまり洗脳の可能性だ。本気だが本心ではない。
となれば話は大分変ってくる。ここでアリシアと戦う必要があると言う事。それだけは何としても避けたい。
「そ、そうか。勘違いなら良いんだ。ニーナはどこだ?一緒に帰ろう」
ヴェインが手を差し出すが、アリシアは無意識にその手から遠ざかってしまう。「あっ……」ふいにまだ帰りたくないと行動で示してしまった。
「ご、ごめんなさい……あの、えっと……」
慌てて取り繕うアリシア。
「実はまだちょっと帰りたくなくて、もうしばらくここに居たいなって……思ってて」
「ど、どど、どうしてだ?何かあったのか?」
とても言いづらそうに眼が泳いでおし黙る。手を避けられたショックと拒絶の言葉で我を失いそうになったが、想定していた洗脳の可能性を見出し気を落ち着ける。丁度その時、他の連中がアリシアの後ろからやって来るのが見えた。やってくるのはニーナとオーガと銀髪の魔人。
オーガの方は何度か戦ったことがある。四天王の一人、鬼の姫、赤き猛り、巨拳、二本角の戦闘狂など数多くの二つ名で呼ばれるオーガの頭領ヤシャ。
驚いたのは一緒に走ってくる銀髪の魔人。彼女も四天王の一人で深淵の魔女や流星などの二つ名持ちであり、魔王の部下で最も厄介な敵、大魔導士マレフィア。
「……そんな馬鹿な……」
アリシアもその視線に振り向く。「ああ……」と理解の色を見せた。ニーナたちが辿り着くと誰より先にヴェインが声を上げた。
「き、貴様……なぜ生きている?受難峠で軍団ごと消し炭に変えたはず……」
それはマレフィアに対して発せられていた。
「ああ、うち?うちはあの時忌引き使って受難峠に居なかったもん。当然生きてるよね」
「……そうか、貴様が……」
何かに納得したように頷くヴェイン。嫌な雰囲気を出している勇者を尻目にぱぁっと明るい声が聞こえる。
「お父さんもこの世界に来たのね。外で話もなんだし、とりあえずどこかでお茶でも……」
ニーナが嬉しそうに近寄ろうとしたが、その言葉を遮るようにすぐ真横を突風が吹き抜けた。
「わっぷ!……え?」
突風を追って振り向くと、マレフィアの左肩から右わき腹にかけてシャツが紅く滲みだす。「ごふっ……」と咳き込むように血が口から噴き出た。唐突に、そして一瞬で斬撃を飛ばしてマレフィアの内臓まで深く傷付けた。それを見たヤシャは膝から崩れるマレフィアを抱きとめる。
「あ、あはは……油断……した」
ブクブクと止めどなく溢れる血を出しながらそれでも何とか声を出す。
「ちょっと!何してるのっ!!」
それはニーナがこの世界に来て初めての叫びだった。急いで回復魔法を用いてマレフィアを治し始める。アリシアも突然の事に頭が追い付かない。ヤシャがそっとマレフィアを地面に寝かせると、いつの間にか剣を抜いたヴェインを睨みつけて唸るように声を出した。
「……殺す」
ヤシャの動き出しを目で追う事はこの世界の常人には不可能だ。しかし相手は別世界の超人。踏み込んで突撃して来る赤い巨人をその目に捉え、剣を構える。
ドパァンッ
ヤシャの攻撃を真っ向から防いだヴェインはヤシャと額を付けるほどの距離で睨み合う。戦いの火蓋は切って落とされた。
魔王ヴァルタゼアを葬り、世界に平和をもたらした人類の救世主。神に愛され、底知らずの能力を持ち、世界最強の名を欲しいままにする英雄。
多くの女性に言い寄られていたのでハーレムも形成できたのに、共に旅をして来た愛する幼馴染みと結婚して無事娘を出産。実直なところまで完璧な超人は、平和な世の中で幸せに暮らすことが出来ていた。
正に「めでたし、めでたし」を字で行く物語の主人公だった。娘を持つまではーー。
ヴェインが目を開けると、そこは見慣れぬ寂れた建物の前。
「これは……?」
現世から異世界に転移して初めて目にしたのが寂れた建物だったので少し困惑したが、気を取り直して振り向く。
「おおっ!」
目の前に広がった建物に驚きの声が上がる。近くに見える家や遠くにそびえ立つビル。遠くでもよく見える看板に信号機の明かり、下には何やら流線型の箱が馬が引いてないのに自走している。
自然が少なく、元の世界と比べると灰色に近い風景なので違和感は相当だ。この世界にニーナとアリシアが来て、行方知らずなのだと考えると不気味に見えてくる。
「くっ……魔王め……!」
ギリッと歯を食い縛る。不滅の魂である魔王はいずれ蘇ることが確定していた。どう復活するのかは不明だったが、上手くいけば赤子の様な力の無い状態で生まれてくる可能性があった。周りにモンスターが居なければ守る盾もない。万が一強いまま復活してもやはり周りに部下がいない方が何かと都合が良い。だからこそモンスターを世界の境界線と呼ばれる逢魔に追いやり、魔王を復活と同時に殺す算段を立てていた。
(甘かった……)
別の世界で復活されるとは想定外だ。そして自分を置いて大切な家族が勝手に魔王討伐を掲げて世界を跨ぐなど夢にも思わない。今すぐにも魔王を討ち滅ぼし、家族と共に元の世界に帰るのだ。
辺りをぐるっと見渡すと目を閉じた。地理は全く分からないが幸いにも良く知る家族の気配が分かる。それと同時に魔王の気配も感じ取った。というより魔王の気配の方が色濃い。
「……やはり魔王に捕まっていたか……しかしニーナにしては不用心だな。助けを呼べないほど魔力に余裕がなかったのか、あるいは今も睨まれて隙がないのか……」
アリシアはヴェインの若い頃と似ていて猪武者なところがある。あの魔王に何も考えずに突っ込んで捕らえられたのは簡単に想像できた。しかし、ニーナは慎重なところがあるので危ないと思った時にはすぐにSOSを出すだろう。昔と違って魔力を使い切るヘマも考え難い。
聞いた話だとナルル=エンプレスというダークエルフと一緒に行ったらしい。一度も戦った事はなかったが一応四天王だということだ。信用させておいて背後から刺したみたいなことがあってもおかしくない。
そんな危ない奴と一緒に行くとなるとすぐにも助けを呼ばないのは疑問が残る。
「……いずれにしてもまず助けるのが先、か」
この小高い丘の出入り口はガタガタの石段。金属の手すりを持ってそっと降りていく。
「整備がなってないな。なんだこの階段は……」
上に盛り上がっているものがあれば逆に凹んでいるところがあったりと大小様々な変化がある。元の世界では魔法で石を切り出して綺麗に整えている。こういった階段一つでこの世界の技術力や性格が図れるというもの。
(あまり知的な生き物は居ないかもしれないな……いや、しかし……)
だが階段に比べると金属の手すりはかなり正確に配置されている。まるでチグハグな感じに混乱する。
(文明のレベルが測れないな……ん?この地面は?)
アスファルトが引いてある。石畳と違って切れ目の無いまっ平らな道路に驚く。
「ほう、何と滑らかな……。ここは最近改修されたみたいだな。まだ新しい……」
階段を降りきると、その位置から周りを見渡す。上から見ていた景色とはまた違う風景に感心する。壁が多い。信号機を知らない彼には何のために点いているのか分からない赤く灯った光。目の前を中々の早さで金属の塊が走っていく。人が乗っているのが見えたので乗り物である事は確かだが、無機質な箱に困惑する。異世界の空気はそこまで綺麗ではないなど感じることは様々。
何のためにあるのか分からない柱が何本も立って黒い縄で繋がっている。少し目を細めればエネルギーの往き来を感じ取れた。家と思われる建物に入って行く。この縄が住んでる者達に力を与えているのが見て取れた。
「そうかなるほど。無限の魔力と言われる地脈からエネルギーを吸い上げ、生活に取り入れているのか……とすると我らの文明より遥か上にいるな。興味深い……と、いかんいかん!」
頭を振って勝手に始まっていた考察を切り上げると自分が何をしに来たのか改めて思い直す。家族の救出と魔王討伐。すべて終わってからでもこの世界を知るのは遅くない。
ふと気付く。
「……ん?アリシアがこっちに来ている?」
魔王に捕まっていて動けないと思っていたが、父である自分がやって来て何とか抜け出してきたのかもしれない。
「ふっ……流石俺の娘だ」
我が娘ながら鼻が高い。魔王を出し抜き、合流しようとしている。合流が叶えばアリシアと協力して魔王を打ち倒す事も出来るだろう。ここで待っていれば合流できそうだったのでじっと待つことにする。そんな事を考えているとアリシアの姿がその目に飛び込んできた。
「アリシア―!」
ヴェインは手を振る。最近忙しかったために一週間ほど構えなかった娘との久しぶりの再会に喜びのあまり笑顔になってしまう。アリシアは終始ムスッとしてヴェインの前まで息を切らす事無くやって来た。
「ちょっと父さん、何しに来たの?」
「えっ?」言われた意味が分からず首を傾げる。
「……いや、お前らが全然帰ってこないから心配してやって来たんだ。思った通り魔王に捕まっていたようだから来て正解だったが」
「はぁっ?誰が……ってあたしたち?捕まるわけないじゃん。勘違いだから」
つーんと弾く様に反発するアリシア。かなり前から反抗期の娘だが、こういう所も凄く可愛い。しかしそんな事より重要なのはこの発言だ。強がっているのか、それとも本気なのか。強がっているなら何の事は無い、ニーナの救出と合わせて一緒に戦うだけだ。万が一本気なら、それはアリシアの意志ではない可能性がある。つまり洗脳の可能性だ。本気だが本心ではない。
となれば話は大分変ってくる。ここでアリシアと戦う必要があると言う事。それだけは何としても避けたい。
「そ、そうか。勘違いなら良いんだ。ニーナはどこだ?一緒に帰ろう」
ヴェインが手を差し出すが、アリシアは無意識にその手から遠ざかってしまう。「あっ……」ふいにまだ帰りたくないと行動で示してしまった。
「ご、ごめんなさい……あの、えっと……」
慌てて取り繕うアリシア。
「実はまだちょっと帰りたくなくて、もうしばらくここに居たいなって……思ってて」
「ど、どど、どうしてだ?何かあったのか?」
とても言いづらそうに眼が泳いでおし黙る。手を避けられたショックと拒絶の言葉で我を失いそうになったが、想定していた洗脳の可能性を見出し気を落ち着ける。丁度その時、他の連中がアリシアの後ろからやって来るのが見えた。やってくるのはニーナとオーガと銀髪の魔人。
オーガの方は何度か戦ったことがある。四天王の一人、鬼の姫、赤き猛り、巨拳、二本角の戦闘狂など数多くの二つ名で呼ばれるオーガの頭領ヤシャ。
驚いたのは一緒に走ってくる銀髪の魔人。彼女も四天王の一人で深淵の魔女や流星などの二つ名持ちであり、魔王の部下で最も厄介な敵、大魔導士マレフィア。
「……そんな馬鹿な……」
アリシアもその視線に振り向く。「ああ……」と理解の色を見せた。ニーナたちが辿り着くと誰より先にヴェインが声を上げた。
「き、貴様……なぜ生きている?受難峠で軍団ごと消し炭に変えたはず……」
それはマレフィアに対して発せられていた。
「ああ、うち?うちはあの時忌引き使って受難峠に居なかったもん。当然生きてるよね」
「……そうか、貴様が……」
何かに納得したように頷くヴェイン。嫌な雰囲気を出している勇者を尻目にぱぁっと明るい声が聞こえる。
「お父さんもこの世界に来たのね。外で話もなんだし、とりあえずどこかでお茶でも……」
ニーナが嬉しそうに近寄ろうとしたが、その言葉を遮るようにすぐ真横を突風が吹き抜けた。
「わっぷ!……え?」
突風を追って振り向くと、マレフィアの左肩から右わき腹にかけてシャツが紅く滲みだす。「ごふっ……」と咳き込むように血が口から噴き出た。唐突に、そして一瞬で斬撃を飛ばしてマレフィアの内臓まで深く傷付けた。それを見たヤシャは膝から崩れるマレフィアを抱きとめる。
「あ、あはは……油断……した」
ブクブクと止めどなく溢れる血を出しながらそれでも何とか声を出す。
「ちょっと!何してるのっ!!」
それはニーナがこの世界に来て初めての叫びだった。急いで回復魔法を用いてマレフィアを治し始める。アリシアも突然の事に頭が追い付かない。ヤシャがそっとマレフィアを地面に寝かせると、いつの間にか剣を抜いたヴェインを睨みつけて唸るように声を出した。
「……殺す」
ヤシャの動き出しを目で追う事はこの世界の常人には不可能だ。しかし相手は別世界の超人。踏み込んで突撃して来る赤い巨人をその目に捉え、剣を構える。
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