一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
11 / 718
第一章 出会い

第十話 一方そのころ…

しおりを挟む
白い壁、赤い絨毯じゅうたん
ちり一つ無い廊下を5人の騎士たちが早足で進む。

使用人たちが道を開け、道の端でこうべを垂れる。
それに対し挨拶もなしに通りすぎる。

急ぎ足で歩む5人の騎士たちは揃いの黒い鎧を装備しているが、中央で率先して歩く騎士の鎧は独特の紋章が付き、赤いマントまでしている。
傍から見ればリーダーの風格がある。

その上、他4人の騎士たちが顔をフルフェイスの兜で隠す中、一人だけ顔を晒していた。

髪は後ろに流しているが、整髪料などでガチガチに固めず軽く後ろになでただけの、甘めのオールバックといった印象。

前髪はカチューシャで止めて、邪魔にならないように視界を開いている。ただ止めが甘いのか、ファッションか、前髪が左右の端に二本垂れている。切れ長で猛禽類のように鋭い眼光、鼻筋も通っていて端正な顔立ちの青年。眉毛が太く凛々しい。

精巧な作りの扉の前に立ち、呼吸を整える。
もちろんこの程度で疲れたわけでは無い。
今回の要請は興奮冷めやらぬ話だったからだ。
事の真相を知るまでは落ち着くのは難しい。

呼吸を整えるわずかな時間に、青年の左右に整列が完了した。
左右に目配せをして状況を確認すると、扉をノックする。

その数秒後、女使用人が扉をわずかに開けて騎士たちを確認する。

「黒曜騎士団団長ゼアルだ。召集を受け参上した。公爵は中に?」

「…少々お待ちくださいませ」

女使用人は一旦扉を閉めて、中にいる主に確認を取りに行く。
このちょっとの時間がしきたりとはいえ、まどろっこしい。
すぐに扉を開けて中に入り、詰め寄りたいところだが…。

はやる気持ちを抑え込み、女使用人を待つ。
いつもより早く扉が開き

「失礼いたします。お待たせいたしました。どうぞ中へ…」

扉を開けると、応接室となっていて3人掛けのソファ、大きめの机とそれを挟んで1人用のソファが2脚、その奥に作業用ではあるが黒い重厚な机が置いてある。

そこに座る男性がここの主。
口髭を立派に生やし綺麗に切りそろえている。
肩幅が広くがっしりとした体格、姿勢もよく歳であることを感じさせない。若いころからあまり変わらない体つきは今でも訓練をかかしていないからだろう。いつまでも若々しいが目元や口元、手のすじに至るシワは経た年月を感じさせた。

イルレアン国の第一騎士団将軍でこの館の主、ジラル=ヘンリー=マクマイン公爵。

人類の国家で軍事力最強と謳われたイルレアン国。
その国の事実上、最高権力者だ。

「よく来たゼアル団長。入り給え」

マクマイン公爵は渋く重い声で、ゼアル団長を呼ぶ。
顔を上げず書類に目を通していて、こちらをチラリとも見ないが、職務中、それも部下に対してはいつものことだ。

「失礼します」

マクマイン公爵からも、直接の許しを得て中に入る。
観葉植物が置いてあり、一応絵画なども飾ってはいるものの煩わしくない程度の無名画家の風景画一枚だったり、調度品も白の陶器の皿に青い文様で装飾された目にうるさくないものが一枚。琥珀色の福の神をかたどった小さな像が5つ。どれも見るからに安い。

調度品は実用的な棚の上にぽつぽつと置かれている。
唯一オルゴールだけは精巧なもので高価なものだと思われる。

実はこの部屋、応接室とは名ばかりの公爵お気に入りの部屋で書斎があるにもかかわらずここで仕事をしている。

きちんと応接室は別室に存在し、そこで王や各国の大臣たちを持て成している。

「そちらも職務中だというに、わざわざ呼び出してすまんな」

全員が入室し、所定位置に立ったところで、顔を上げる公爵。
丁度仕事がひと段落したと見える。

「…もったいなきお言葉」

ゼアル団長は一礼して答える。

「さて呼び出したのは他でもない…なんとも度し難い情報を聞きつけてな…」

そのセリフにのどが渇く。
聞いた噂が本当ならと思うと焦りを抑えられない。
つばを飲み込みたい衝動に駆られるが、ここで尊敬する上官に無様は晒せない。
静まり返った部屋に書類の音が鳴る。

「これを見ろ」

書類を2枚抜粋し、ゼアル団長に差し出す。

それをうやうやしく受け取ると、内容を確認する。

「!…これは…」

克明こくめいに書かれた書類は、噂の度合いを大きく超えて衝撃を与えた。

「まさかとは思っていたが、ここまでとは…な…」

マクマイン公爵は過去の戦争で見た恐ろしき怪物を思い浮かべ、当時のことを思い、哀愁にふける。

ゼアル団長は震えながらもはっきりと内容を言葉にした。

の竜が…魔族に堕ちた」

部屋に動揺が走る。ここに揃うは黒曜騎士団の精鋭。
滅多なことでは身じろぎ一つしない信用たる4人が、その鎧をこすらせ動揺から声まで発してしまう程だ。

「ああ…あの化け物は何でもやってのける。我らが思うすべての事柄で、そのすべてを上回る。あの時もし撤退しなかったらと思うと、私はここにはいまい…いや、ただ命をながらえただけか…」

いつもの堂々とした公爵が少し小さく見えた。そんな公爵に言えることなど何もない、部下と使用人の顔も曇る。空気を換えるためにも書類の2枚目を見る。

「!?…まさか…我らはこのために?」

そこに書かれていた驚きの内容は、先ほどの公爵が打って変わってニヤリと顔に余裕を出す。

「そう、その通りだ。奴らは判断を誤った。人類存続の危機が一転我らの勝利につながる一手となりえる」

もったいぶった言い方に書類を見ることの出来ない部下一同は「気になって仕方がない」「その後を聞かせろ」といった風な催促が聞こえてくるほど身を乗り出し、耳をそばだてる。

しかしこれに関してはしもの団長も公爵さえ叱責はできない。
気になるのは当たり前だからだ、公爵に至ってはむしろこの状況を楽しんですらいる。

「魔族間で反乱があった。第二魔王が裏切りにより半死半生と…」

ゼアル団長は部下一同に聞こえるよう、その一文を口に出す。

どよめく。

魔族同士の裏切りは過去にもあった。今回が初めてではないし、他のいざこざも、領地争いでぶつかる事も多々あった。人類が生き延びられたのは、人類との戦争以外にも魔族同士で勝手に争っていたのも大きい。

魔族同士の争いの末、漁夫の利により、人類が生存圏を得たというのも過去、2例存在する。

ただ魔王が反乱により半死半生とは過去に例がない。

魔王に据えられるにあたって重要なのは力である。魔族は力を重視する傾向にあり、最も強き者が上に行く。頭脳派の例外もいるようだが、多くの場合その国の最強が王となっている。
下々の魔族が魔王を相手に生き残るのは難しいし、国を転覆に追いやる行為など、魔族にとっても害でしかない。

「この事態は我らにとって最大の好機、見逃す手はない」

マクマイン公爵は机に両手を置き、ゼアル団長を見据える。

「…第二魔王の討伐…」

「うむ…彼奴きゃつを殺しきれ、半死半生は人類史の一生に一度のチャンスだ」

「…マクマイン公爵。無知な私にお教えいただきたいのですが、この第二魔王…何者なのでしょうか?殺しきることに異論は一切ないのですが、裏切られる程度の魔王をそれほどまで持ち上げられる理由とは?」

黒曜騎士団はマクマイン公爵のお抱え騎士団。
最強の戦闘集団を個人的にも所有したい目的で、無茶を承知で組織された、200余名からなる精鋭揃い。

この騎士の団長という栄誉を賜るゼアルは第二魔王がの竜を堕としたことに一番貢献したであろうことは察している。しかし分からない。公爵が恐れをなし、”人類史の一生に一度”と言わしめた魔王とは?

「貴様も聞いたことがあろう…”みなごろし”の伝説を…」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...