一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第二章 旅立ち

第一話 調査団

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眠れぬ夜が続いた。

それは未知、それは不安、それは理不尽。

正しい事など分からない。ただ見えるのだ。
忍び寄る影はすぐそこにある。――

「エルフェニア」を出立してから今日で何日が過ぎただろう。旅は行程の半分といった所か、エルフの面々はこの遠征に不安を感じていた。

この遠征は単なる調査と言う事で指揮官以外、その詳しい内容を知らされていない。

故に不信感も湧く。

陛下から賜った任務とは言え、この調査は他種族がやればいいと思っている者は少なくない。

「高貴である我々の代わりに下々の者が行け」と命令を出してくれれば、今ここに自分たちはいない。それこそが最良で正しい。

しかし現実は、「我々が、率先してやるからついてこい」だ。

つまらない意地など捨てて、神の子の誇りを持って、エルフェニアの代表として堂々とまつりごとをしてほしい。と常々思うのは学者肌のグレースの意見だ。

グレースは灰色がかった腰まで届く長い金髪を三つ編みで一つに束ね、薄緑のハットを被り、葉っぱがあしらわれ木の上に隠れやすい緑のケープを羽織っている。

フリルをあしらったノースリーブのシャツを着て、下は短パンで革ブーツの実に動きやすい格好だ。

日焼け防止ともとれる長めの革手袋をはめて、肩掛けのカバンを斜めにかけ、ケープの中に隠すようにしている。

鼻筋の通った美しい顔立ちで、高身長でモデル体型のような美しさだが、女性らしい起伏がなく、肉付きが悪い。エルフの中ではそう珍しくもなく、没個性の女性である。耳が長いことが純正のエルフだと認識させる。

彼女は調査団の一員として参加しているが、内心「なんで自分が…」と後悔していた。

グレースはいわゆるキャリアウーマンという奴で、こういうことに駆り出されたくなかったからこそ研究に没頭してきたつもりが、その努力が評価され、優秀と言う事で上から名指しで推薦があった。

調査団の指揮官でもある幼馴染からも懇願され、動向を余儀なくされた。

東の大陸までは距離があり、今日も寒々しい森で野宿となる。

「今日はここで野営します。一応ここで行程の半分過ぎたくらいですが、少々遅れています。明日からは少し移動速度を速めるので、本日はしっかり休んでください。引き続きよろしくお願いします。」

まだ日も高く、移動に差し支えないが、丁度良い野営地を見つけたので、無理せず止まることにしたのだろう。テントの設営も考えての判断だ。

指揮官は最後尾のグレースまで届く良く通る澄んだ声を張り上げた。

皆、荷物を下ろし、思い思いのグループで語らい合っている所にグレースはようやく追いついた。ハァハァ息づいている幼馴染に指揮官が駆け寄る。

「大丈夫かい?グレース」

「大丈夫ではないわね…なんで平野を行かないのよ…ハァ…馬とか馬車とか巨大トカゲとか乗り物は…一杯あるでしょうに…ハァハァ」

山を越え谷を越え、秘かに移動するいかにも怪しい謎の集団と化していた調査団は、その移動方法から乗り物が使えず、エルフには珍しい運動音痴のグレースには厳しい移動となっていた。

「陛下の判断さ。僕らエルフは生まれながらに希少価値が高いらしいからね。開けた場所では危ないから、住み慣れた森をあえて選んでいるのさ」

幼馴染で指揮官のエルフの男性、名前はハンター。

毛並みが柔らかくサラサラの金髪で肩甲骨まで伸ばした髪を三つ編みで結い、左肩にかけるように乗せている。長い右耳にピアスを付けお洒落を気取る。

鼻筋が通って細面でシュッとしたあご、唇は少し薄いがそれがその顔に合っている。目尻が下がり優しそうな目元で女性を魅了する。エルフから見ても美形な顔立ちは多くの異性から羨望の的となっている。

高身長で手足が長く、弓兵として名をはせる彼は引き絞る矢の距離、放つ強さ、正確性共に一級品である。体格はヒョロッとしていて弱そうだが、戦士特有のただならぬ雰囲気を醸し出す。

巨大トカゲの皮と鱗を軽装鎧に着用し、弓と矢筒を携えて、腰には短剣を二本佩いている。群青色のパンツと革のブーツで締めて、全体的にシックな色の服装は夜半や影に潜むのに適している。

”白の騎士団”に認められる腕前を持っていて、今後、弓兵として推薦される可能性すら秘めていた。

天才であり、努力家の彼は人望も厚い。
その甲斐あって遠出だというのに10人の枠は志願者でメンバーが埋まるくらいだ。

ただ既にグレースが組み込まれていたため、一人分の空きは埋まっていたわけだが。

「ハンターさぁん!良ければ手伝ってくださるぅ?」

「あぁ!分かった!ちょっと待ってて!」

志願者で特に若いグループに呼ばれ答える。
その声に返答された彼女らは嬉しそうにキャイキャイしていた。

「ウチは大丈夫だから、行ってあげて。ファンサービスはちゃんとしないとね」

「やめてよグレース。そんなんじゃないって。これはあくまでも仕事だよ?」

スマートな笑顔を見せた後、ウインクをしてその場を去る。幼馴染みだからだろうか、その行動にウザさを感じる。

才能があった彼には驚かされる事ばかりで、このウザいという感情は子供の頃から比べられてきたからだろう事は分かっていた。それでもこの気持ちを抑えられないのはグレースの我儘だ。

「…もう…帰りたい」

目的地まではまだ遠い。
後何日したら帰れるのか。
グレースは感傷に浸りながら水分を取る。

エルフは木の上にテントを設営する。
魔獣の襲撃を防ぐための安全策である。

ハンターは若い娘達の誘惑をかわしつつ、テキパキと設営をこなす。全員分の設営を手伝ってすぐグレースの元に行く。

「さぁ!あとは君だけだよ。すぐ設営しちゃおう!」

「あなたも律儀よね。ウチなんてほっとけばいいのに」

「そんなことはできないよ。この遠征に誘ったのは僕だし、何より指揮官としての義務さ。気にせず使ってよ!」

ニカッと笑って見せる。
白い歯で光を反射し笑顔がまぶしい。

めんどくさい女と好青年の図ができ、周りの異性に幼馴染が敵視されている事実を知る由もないのだろう。なんせ幼馴染という事でこれだけ気さくに話しかけてくるのだ。里でも大変だったが、隠れる場所のない今はもっと厳しい。

早くどこか行ってほしい衝動がグレースを動かす。

「ちゃっちゃと設営するかなぁ…」

重い腰を上げて、テントセットを取り出す。

「おっ?その意気だよ!早いとこ終わらせてご飯にしようね!」

「まだ夕飯には早いわよ…たく…」

すぐ近くの木に登り、支度を始める。
しかし手際の悪いグレースは結局ハンターにすべてを任せることになり、敵視を超えた殺意に近い負の感情を周りの目から感じることになる。

「…もう…帰りたい…」

皆から見えない死角でポツリとつぶやくのだった。
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