一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第二章 旅立ち

第十三話 駒

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「お初にお目にかかるハンター殿。グレース殿。私がイルレアン国公爵、ジラル=ヘンリー=マクマインだ」

公爵のテントは他のテントに比べ一際大きく、作戦会議などの話し合いの場でもあるので、今も公爵の部下たちが何人か控えている。

「初めましてマクマイン公爵。武勇は、遠いエルフェニアにも届いております。お会いできて光栄です」

「…は、初めまして…」

挨拶に差はあるものの、敬意をもって振舞う二人に最近見せなかった笑みが戻ってくる。

「そう緊張せずに、公務ではないのでね。ところで、お二方はこれからどちらに?」

「ヒラルドニューマウントに行きます。調査の為、派遣されてきたので」

公爵はそれを聞いて、驚きを隠せない。

「ほう、あの山に…。しかもエルフが自らとは…何の調査かな?」

「それはまだ…森王の意向としか申し上げられません」

公爵は少し考えた後、周りを見渡す。

「外せ」

その一言で隊長他、周りにいた部下全員がエルフ二人を残して出て行く。先程の柔らかい口調から一転、切れ味の鋭い口調で威圧するかのように命令する。
グレースならこの高低差、温度差に一日も我慢できなず、辞めてしまうかもと震える。

「森王…と申したな。あの会議が行われたのか?」

意味深にハンターに聞いている。
その表情は真剣そのもの。
答えを間違えれば殺される勢いだ。

「僕は会議の事は知らないので、それについてお答えできません。今回の遠征で調査団長に任命されただけなので」

そんな中でも飄々とした態度で返答する。
流石は次期”白の騎士団”。
能力に奢ることはないが、下位に見ることもない。
適切と言える自己分析は一つの武器でもある。

そしてこの返答は当然の事だろう。
会議は完全に秘匿され、本当に一部の人間しか知らない。

次期”白の騎士団”のメンバーになら話しても何ら問題ないのだろうが、部外者がいれば話は別だ。グレースを外に出すことも考えたが、そこまでするほど切羽詰まってない状況が公爵を踏みとどまらせた。

「なるほど…しかし調査に行くとして人数が少なすぎるのではないかね?それとも、まだ森に隠れ潜んでいるとか?」

「いえ、僕たちだけです。森王のお達しで急いで向かう所なんです」

公爵は頷きながら一つ提案を持ちかけた。

「我らも先を急いでいてね。奇遇にもアルパザに向かっている。何かの縁だ、一緒に来なさい。安全だし、強行軍で行けるから速いぞ。どうかね?ハンター君」

渡りに船とはこの事だ。断る手はない。
これから騎獣を探すという手間が省けた。
しかし難色を示すハンター。

気になったのは、何故、領土でもないアルパザを目指しているのか、森王と情報の共有が出来ていない事と、公爵自ら向かっている状況の三つ。

視察と言うことでの遠征だとしても公爵を守る盾が少なすぎるのも疑問だった。

私事ではあるが、調査団と別れてすぐ二人きりの状況が破綻した事も精神的に来ている。

「何渋ってんの?これは即答で”宜しくお願いします!”で良いでしょ?速い上に安全なら願ってもないじゃない」

グレースの安全を思えば、これ程良い状況はない。ハンターはグレースの為に了承した。

「分かりました。その強行軍にお供させて下さい」

グレースのせいで思考を放棄したわけではない。
竜の巣に入らねば、卵を取れないように危険に飛び込まなければ得られる物はない。
何が起こっているのかを知るために、敢えて、ハンターは強行軍に参加するのだ。

「うむ。よかった。此方としても戦力が欲しくてね…君のような実力者ならお連れ共々歓迎だよ。早速、移動を開始するが、準備はいいかね?」

ハンターはグレースと目を合わせて、手荷物などを確認した後

「僕たちは大丈夫です。すぐ行けます」

「よろしい。それでは移動を開始しよう」

公爵が簡易椅子から立ち上がり、
出ていこうと促す。

「その前に森王に通信をしようと思います。
先に行っててもらえますか?」

公爵はピクッと眉を動かす。
その変化をハンターは見逃さない。
何かあることは明白だ。

グレースは「えぇ…今?」といった顔だ。
何かあった時の対策として、常に情報を更新していく事で、身の保証、延いては、安全を確保できる。

遠征をする上で何処にいて何をしていたかというのは救助を必要とした時、早く発見されるかどうかで
命が助かるかもしれない。情報の共有は安全上必須であり、常識である。

だが、これを切り出したのは公爵の反応を見るためでもあった。森王との情報共有を是とするか、それとも否定して、疑惑を増大させるか。

「…うむ、それは確かに必要なことだな。良ければ私も参加させてもらおう。森王には私からも伝えたいことがある」

ハンターは選択しないだろう四番目くらいの回答をもらった気がして少々驚く。

「グレース、すまない。そういうことだからちょっと外してもらうよ」

グレースは「先出てるわね」と言ってテントを後にする。外には隊長が待っていた。

「ん?公爵とハンターさんは?」

事情を説明すると、すぐさま納得し騎獣の元に案内される。そこには巨大蜥蜴の大群が鎮座していた。
人類の特に人間ヒューマンは馬を愛用していると、聞いていたのでこの様子は驚きだった。

「そこいらで調達した地走蜥蜴だ。コイツらは人懐っこくて飯さえあれば飼うことも出来るから便利でいいよな」

「馬以外にそういうのも使うのね。人間ヒューマンが使うのは馬だと思ってたわ」

隊長は別方向に指を指す。そこにいたのは草を食む馬の姿だ。

「もちろん、ここまでの移動は馬だよ。ただ公爵からの要望でもっと速い手段を使わざる終えないのが現状さ。もしかして蜥蜴はダメなのかい?」

「いいえ、そういうわけではなくて、単なる知識の中のあなたたちの事を指したの。ウチは外に出ることが滅多にないから…」

「そうなのかい?しかし幾ら森王の命令とは言え二人だけの調査だなんてあんまりじゃないか?エルフはそんなに数が少ないのかい?」

まだハンターが来る気配はない。
そのまま話を弾ませることにした。

「そういうわけではないの。最初こそ10人くらいで来てたけど、状況が変わって、今朝二人だけで旅になっただけで…」

それを聞いて、隊長は考えるように黙ってしまう。
少しの間の後、口を開いた。

「ううん…まぁとにかく、君たちはお客さんだ。一緒に行くんだし、仲良くしよう」

最後には笑顔まで見せてくれるが、何を考えていたのか気になった。

「え?ちょっと…今考えたのはなんだったの?気になるんだけど…」

隊長ははぐらかそうとするが、グレースは気になると夜も眠れないタイプだ。ぐいぐい来るグレースに圧され「気を悪くしないでくれよ」といって話し出した。

「他にもいたってのが気になってね。そのエルフたちが特別無能って訳じゃないなら選別されたのかと思っただけさ」

つまり、グレース程度なら替えはきくという事を言っている。気を悪くするなと言う方が間違っているがグレースが尋ねた以上、文句は言えない。

そしてその答えこそ、現状にピッタリだと認識する。ハンターは気づいているのだろうか?多分気づいているだろう。

ハンターは戦士や兵士と言う国の為なら命を差し出す役職に就いている。使い捨てにされる事も承知の上だろう。

とはいうが、ハンターほどの実力者なら、一人でも生きて帰ることが出来る。情報はハンターが持ち帰れば良いわけだしグレースが生きて帰らなくても、
大丈夫なわけで…

黙ってしまったグレースに隊長は自分の発言は間違いだったと後悔する。

「あぁ…すまない。傷つけるつもりはなかったんだ。不快な思いをさせて大変申し訳ない」

隊長はあわてふためいて陳謝する。
聞いたのは自分だし、質問に答えなければ差別すらしていただろう自分を鑑みて、隊長の言葉を責められるハズがない。

「良いんです。むしろスッキリしたので。何故ウチだったのか分かった気がしたから」

自分は替えのきく駒だった。
学者だから無縁だと思っていたが、どの役職でも変わらない。

どころかハンターに肩入れできる事が分かって、不思議と嫌じゃなかった。

(まぁ、重要度は雲泥の差なのだろうけど…)

「…任せてくれ。俺たちは軍人だ。一般人を守ることこそ使命。君の安全は保証するよ。ハンターさんもいるし問題ないとは思うけど、便りにしてくれ!」

ドンと胸を叩く。
空元気にも聞こえたが、こう言ってもらえるのは
素直に嬉しかった。

「頼みますよ、軍人さん」

もうすぐ出発する。
この先の不安もあるが、人間ヒューマンとの出会いがグレースにはこの旅の一番の支えとなっていた。
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