一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
62 / 718
第二章 旅立ち

第二十三話 変化

しおりを挟む
初めての体験だった。

ぶちのめされたり、斬られたり、抉られたり、剥がされたり、突き刺されたり。

生き物なら、およそ死ぬ攻撃を受けてきたが、正確に急所を射抜かれたのは今回が初めてだ。

普段は血を摂取した後、心臓に血を溜める。

団長との戦いでは何度か心臓部分を突かれたが、別の場所に心臓を移動させていたおかげで、正確な位置がバレず、血が減ることは無かった。

しかし、今回の人狼ワーウルフの攻撃は一度、鳩尾みぞおちをかち上げられ、心臓の逃げ場を無くしてしまった為に、凄まじい一撃がクリーンヒットし行動不能まで追い込まれる事態となってしまった。

ミーシャの攻撃は規格外すぎて、直接急所に入らずとも、堪えきれずに血を流す結果となったわけだが、それを差し引いても今回のダメージは大きい。

ぐったりとして血の泡を噴くベルフィア。
目の前が暗くなり、世界が黒く塗りつぶされる。

暗い闇の中、ふと目の前に小さな光が見える。

その光が徐々に大きくなるにつれ、自分のいる場所が何処なのかと分からなくなった。

ここはアルパザとかいう町だった筈だが、何故か、目の前に人狼ワーウルフはいなくなり、見馴れぬ町並みもなく、魔鳥人も人間ヒューマンもいない。

そこに見えたのは見馴れた場所。
見馴れた顔。吸血鬼一族が立っていた。

『何をしておル…ベルフィア。そちは何故ここにおルノじゃ?』

「母上?皆々も何故ここに…死んだはず…」

そこはかつて吸血鬼が最後に住んでいた霧の谷、名を”ブラッドスモッグ”。かつての里。かつての仲間たち。そして肉親。里は滅び、血族は絶えた。だからこそ疑問だった。何故ここにいるのか?

言葉を発したはずが、空気に溶ける様に霧散し、見知った顔の耳に届くことはない。ベルフィアを無視する形で話が進行する。

『そちは役に立タぬ、帰ルノじゃ』

『嫌じゃ母上!わらわならやれル!』

聞きなれない声が聞こえてくる。
それが自分の声である事は、すぐに分かった。
これは過去の映像である。
何故ならこの事をよく覚えているのだ。

その日はある作戦の為、有能な部隊の面々が集合していた。

今の状況は自分がどれ程有用で、同行したかったかを、頑張ってアピールしている。活躍しなければ認められなかった。

だが、他の同胞に比べ、ベルフィアはそこまで有用というわけでは無かった。仲間の中でも下位に位置付けられる程に信頼がなく、手柄を上げようと、もがいても、他の仲間の方がもっと良い成果を上げる始末。

万が一にもベルフィアが同行できるのは数合わせくらいだった。詰まる所、今回の作戦には必要ない。

最早、見向きもせず部隊はベルフィアから離れる。

『母上!母上!!』

無様に叫び続ける過去の自分。
何度も繰り返し、ただその場で動く事もなく。

今なら分かる。あの頃の自分がどれ程、情けなく、そして、どうしようもない存在だったのか、仲間たちは何故連れていかなかったか、どれ程、自分が無能で使えなかったか。

去っていく仲間たちの後ろ姿は、この後起こる最悪の事態を予見していた。

何も出来ずに、ただ見ているだけの木偶の坊。今も昔も変わらない。

わらわはタだノ案山子に過ぎぬ」

そのシーンを最後に記憶は途絶えた。
光が別の場所を写し、元の見馴れぬ町が目に飛び込んできた時、人狼ワーウルフの顔や、人間ヒューマンたちと魔鳥人たちの姿が見える。意識が戻った。景色があまり変わってない。一瞬だけ気絶していたらしい。吸血鬼で気絶など、後にも先にも自分だけだろう。

悲しい事など無い。だが、辛い記憶だ。他の生物より圧倒的に強くても、同胞には下に見られていた事実。

そして、それが自他共に認める、真実である事も。

胸の中央に埋まるジャックスの右腕を掴む。
この手がベルフィアに過去の情景を照らし出した。
懐かしさと同時に、辛い記憶を掘り起こし、嫌な気にさせてくれた。

「ヌッ!クソ!コイツッ!!」

黒目にすぐ様、赤い瞳が戻る。
それを確認した時、やはり無駄だったと絶望の淵に立つジャックス。この化け物は軽く捻るだけで枯れ枝のようにポキリとこの腕を折る。

まだ無事だった方の腕が折られるのは勘弁願いたいが、腕を持たれた段階では諦めざるをえない。腕を犠牲に逃げれば、まだ命はある。だが、利き腕の無いモンクが果たしてこの人魔大戦の最中、命があると言えるのか?

ならば、道連れにするくらいの気概でぶつかるしかない。ベルフィアの動向を、伺いながら待っていた。

そのまま力を入れられて、胸部から手を捻られるように引き抜いていく。思った通りの凄まじい力に抗う事なくそのまま引き抜かれる。

ベルフィアは目が覚めると同時にさっきまであったダメージが右足以外瞬時に再生する。見た感じだと、皮膚一枚でもくっついていれば、回復するようだが、離れていれば難しいらしい。

この情報を持ち帰る事は無理だろう。ここで、頭でも千切られれば絶命する。極端な話だが、こいつにはそれが出来る。

「そちは強いノぅ…さぞや、ちやほやされとっタんじゃろうなぁ…」

ニヤニヤしながらジャックスを見ている。
だが、その目はイヤらしい感じも蔑みもない。
その目は里で同種族からよく見られた、羨ましさと憧れがあった。

「オ前…一体…」

ブンッと軽々放り投げられる。
体重など関係ない。しかし簡単に着地する。
5mは飛び、間合いが空き、仕切り直しになった。

ジャックスはこの行動は不思議で仕方なかった。

「…何故ダ?」

折ろうと思えば折れる。が、そうはしなかった。
その場で殺してしまえば考える事も減る。
ダメージを入れられたのも余所見していたその隙を狙われただけだし、仕切り直すにしろ何故、怪我を与えてから離さなかったのか?

ベルフィアを注視していると、右足をくっ付ける。
またも瞬時に再生し、その感触を踏みしめつつ確認している。それが終わると、右足をそのままに、左半身を隠し、右半身を前に出す。先にしていた構えとは逆の構えを取る。

さらに、右手を前に突きだし、肘を軽く曲げると掌を上にして、俗に言うモンクの構えをする。今までとは違い、明確に型が存在するかの様なそんな感じだ。明らかに雰囲気が変わった。

本気を出していなかった?
そうとしか思えない。

ジャックスはまた”疾風怒涛”の構えを取る。

「…良イダロウ…来ルガ良イ…」

間合いをジリジリ詰めながら、緊張を高める。
詰め寄りながらもどちらも前に出ない。
どちらも動けないままだが、着実に進行している。

ベルフィアは掌を二度曲げて挑発する。
ジャックスは右拳を握りしめ直す。
ギチッという革を擦る様な音が鳴る。
ジャリッと地を踏み締める。
ベルフィアとジャックスは視線を会わせながら、ぶつかる瞬間を待っていた。

他、一切の戦いを無視して、二人の世界に入っていた。

睨み合いから一転、ベルフィアが動いた。踏み込みからの一撃。右手が延びるように間合いを侵食し、頭をかち割ろうと迫る。まるで先の攻防の事を忘れたような妙な攻撃だった。
カウンターで弾かれた事をもう忘れたのか?ジャックスはその右手に即座に反応し、またもその攻撃を弾く。

さっきと同じだ。まさしく、再現に近い。

しかし、ジャックスは気付いた。その右手の攻撃はさっきとまるで違う。それは体重が乗ってない、所謂、弾かれる為に繰り出したのだと分かる。疑似餌だ。全く思っても見なかった。
魔獣以上に獣同然に動く吸血鬼が、罠を張ろうだなんて。

だが、気付くべきだった。構えを変えた時から警戒すべきだったが、行動が完全に同じだったところから思わず手が出てしまった。
もう止まることはできない。
技は始まってしまったのだ。

振りかぶった右拳はベルフィアの顔面を殴る為に迫る。一度食らった技は余程、力に差がない限り、二度は効かない。ベルフィアはその右拳を避けると、右腕を頭と肩で挟み込み、攻撃を止める。

その程度で止められる程甘くはない。左手の手刀で右足を切り取ろうと、太股に迫るが、その攻撃が当たる瞬間、同じ方向に飛ぶ。右方向に真横になったと同時に蹴りが入る。右腕を捕縛され、左腕を振り抜いたジャックスにこの蹴りを避ける術はない。

ガキャッ

左頬に完璧な蹴りが入る。その蹴りは頬を抜き、牙を二、三本へし折る。それだけにとどまらず、左目を破裂させ、首の筋肉がブチブチ悲鳴を上げ、骨が折れる寸前まで軋んだ。

その一撃に体が吹き飛び、ジャックスは吹き飛んだ先の建物を突き抜けた。左半分、顔が崩壊したジャックスはそのまま動かなくなった。

「技…か。面白いもノじゃノぅ。そちノおかげじゃ…わらわはまだまだ強ぅなれル」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...