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第二章 旅立ち
第三十四話 暇つぶし
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『随分上機嫌だね。何かあったのかい?』
部屋にいた彼は、外から入ってきた彼女に尋ねた。その様子はまるでスキップでもしているかの様に軽やかで、楽しそうだった。
『ええ、そうですね。凄く面白かったです』
彼女は声を軽快に弾ませて、その時の気持ちを伝えようとしている。
『珍しい事もあるものだ。君がそこまで嬉しそうなのは過去にないな。何があったのか教えてくれないか?』
『訂正を要求します。私は君ではなく”サトリ”です。今後はサトリとお呼びください』
今度は事務的な冷たい感じで突っぱねる。
プイッと顔を背け、可愛らしい顔は口を尖らせる。
白い髪がまるで尻尾のように顔を振ったのに合わせて揺れた。
『何だ?突然名前なんか名乗って…我々に名前など意味がないだろう?』
『彼からの贈り物に不必要なものなどありません』
ピシャリと言い放ち、その場を後にしようとする。
『悪かったよ。サトリ…だったな。ところで、彼とは誰の事かな?』
サトリは振り向いて”それ”がいるであろう場所を見つめる。しばらくそのまま動かなかったが、突然、気が変わったように口を開いた。
『教えません。私だけの秘密です』
サトリはキャミソールで裸同然の胸元に手を添えて、胸が一杯だと浸っている。
『その体もその者の趣味というわけか?人間に焦がれても、我等にはほんの一時、あるかないかの間を生きる矮小な存在。サトリの勝手だからこの辺にするけど、忠告はしとくよ?』
『これを言うのは何ですが、余計なお世話です。貴方の方こそあのおもちゃの手入れをしてた見たいですが、かなり年代物ですよね。骨董品は捨てて、新しいのに代えては如何です?』
『やけに突っ掛かるじゃないか?クラシックを馬鹿にするのは良くないな…それにその骨董品を傷物にしたのはどこの誰かなぁ?』
一触即発の空気だが、実はそうでもない。
彼らは喧嘩や遊びなどの、感情に飢えている。
彼らは”創造主”と呼ばれ、永劫の時を生きる神と称される存在である。
自分達で創造した、生き物や景観、概念などを自慢してみたり、戦わせてみたり、鑑賞したり、様々な事で日々を過ごしている。
『貴様ら…何をしている』
そんな中、この二柱の間に割り込んでまたも”創造主”が顔を出す。といってもサトリ以外は概念の存在で、形を保っていないのだが…
『君か…聞いてくれよ。サトリが虐めるんだ』
『サトリ?貴様、何故名前を…』
『別に良いでしょう?単なる気まぐれです。良ければ貴方たちも名乗ればどうです?お互い呼びやすいですよ?』
サトリは身を翻し、踊っているように動く。
体を久々に形成した為か、素足の感触を楽しんでいる様だった。
『貴様如きと一緒にするな…貴様は和を乱し、世界を混乱に導いている。”創造主”として何か言いたい事は?』
『和を?乱す?何の話でしょう?皆目見当がつきませんが?』
それだけ言って部屋から出て行こうとするが、
『貴様の作った出来損ないの件だ』
そこで、ピタッと止まる。
停止したのは何となくではない。
自身の創造物を馬鹿にされたからだ。
『出来損ない?私の創造物が?』
『貴様の創造物が見境なく暴れたせいで、我らの最高傑作が傷ついたと聞いたが?』
その言葉を聞いて、サトリのみならずもう一方も鼻で笑った。
『最高傑作?何の話だい?君さ…考えてもみなよ、改良の余地はいくらでもあるだろう?』
『まるでお話になりませんね、封じ込めの為の見張り係に対して、傑作呼ばわりとは、これだから新しいものが生まれないんですよ』
呆れが生じるため息を綯交ぜにした、明らかな見下しが感じ取れる。
『なっ!貴様まで…我らの飛竜だぞ!完璧な存在だ!!なのにあんなたかが一魔族が…』
『我らの…ね。確かに君の助力がなければ創造できなかっただろう。だが、知性を植えたのは誰だ?力を与えたのは?君だけでは創造できない。だからこそ完璧と言いたいのは理解できる。しかし、現に負けたじゃないか。完全敗北だ。それもサトリが生み出したたった一体にね…』
その一言に黙る。複数の創造主が寄ってたかって創造した生物より、一柱が創造した一生物の方が強いとあっては完璧の名折れだ。
『君に作れるのかい?あれを超える生物を…』
彼の言葉には嘲笑と諦めが含まれていた。その中には自分でも無理だと考えている部分が見え隠れしていた。
サトリは多くを語らずそのまま部屋から出て行く。
その顔は誇らしげで、笑顔が絶えなかった。
『…何のつもりだ?あれの肩を持つのか?』
『事実を言ったまでだろう?何か間違いでも?』
その言葉と同時に気配が消える。
彼もこの場所を後にしたのだろう。
後からやって来た神は悔しさにいきり立つ。
『このままでは済まさんぞ…』
とは言うが、限界も確かに存在する。
指摘された通り、今すぐどうのというのは無理な話なのだ。結果こそ今すぐ手に入れたいが、試行回数に差が生じる現段階では、完全に周回遅れだ。
サトリが今まで創造してきた生物を並べれば嫌でも目に付く。自分との格差という奴が。
そこで気づく、その器がないのなら呼び出せばいい何も一から創造するのにこだわる必要はない。多次元には多くの生物が存在し、それに力を与えれば簡易的な無敵生物を作れる。
前にもやった事だ。その結果は…置いておこう。
エルフは反省し、今後の糧としたわけだが、今こそ復活させる。”異世界召喚”を…。
『貴様らはミスを犯した…この私に決定的な一線を越えさせるんだ。全部、貴様らのせいでな』
部屋にいた彼は、外から入ってきた彼女に尋ねた。その様子はまるでスキップでもしているかの様に軽やかで、楽しそうだった。
『ええ、そうですね。凄く面白かったです』
彼女は声を軽快に弾ませて、その時の気持ちを伝えようとしている。
『珍しい事もあるものだ。君がそこまで嬉しそうなのは過去にないな。何があったのか教えてくれないか?』
『訂正を要求します。私は君ではなく”サトリ”です。今後はサトリとお呼びください』
今度は事務的な冷たい感じで突っぱねる。
プイッと顔を背け、可愛らしい顔は口を尖らせる。
白い髪がまるで尻尾のように顔を振ったのに合わせて揺れた。
『何だ?突然名前なんか名乗って…我々に名前など意味がないだろう?』
『彼からの贈り物に不必要なものなどありません』
ピシャリと言い放ち、その場を後にしようとする。
『悪かったよ。サトリ…だったな。ところで、彼とは誰の事かな?』
サトリは振り向いて”それ”がいるであろう場所を見つめる。しばらくそのまま動かなかったが、突然、気が変わったように口を開いた。
『教えません。私だけの秘密です』
サトリはキャミソールで裸同然の胸元に手を添えて、胸が一杯だと浸っている。
『その体もその者の趣味というわけか?人間に焦がれても、我等にはほんの一時、あるかないかの間を生きる矮小な存在。サトリの勝手だからこの辺にするけど、忠告はしとくよ?』
『これを言うのは何ですが、余計なお世話です。貴方の方こそあのおもちゃの手入れをしてた見たいですが、かなり年代物ですよね。骨董品は捨てて、新しいのに代えては如何です?』
『やけに突っ掛かるじゃないか?クラシックを馬鹿にするのは良くないな…それにその骨董品を傷物にしたのはどこの誰かなぁ?』
一触即発の空気だが、実はそうでもない。
彼らは喧嘩や遊びなどの、感情に飢えている。
彼らは”創造主”と呼ばれ、永劫の時を生きる神と称される存在である。
自分達で創造した、生き物や景観、概念などを自慢してみたり、戦わせてみたり、鑑賞したり、様々な事で日々を過ごしている。
『貴様ら…何をしている』
そんな中、この二柱の間に割り込んでまたも”創造主”が顔を出す。といってもサトリ以外は概念の存在で、形を保っていないのだが…
『君か…聞いてくれよ。サトリが虐めるんだ』
『サトリ?貴様、何故名前を…』
『別に良いでしょう?単なる気まぐれです。良ければ貴方たちも名乗ればどうです?お互い呼びやすいですよ?』
サトリは身を翻し、踊っているように動く。
体を久々に形成した為か、素足の感触を楽しんでいる様だった。
『貴様如きと一緒にするな…貴様は和を乱し、世界を混乱に導いている。”創造主”として何か言いたい事は?』
『和を?乱す?何の話でしょう?皆目見当がつきませんが?』
それだけ言って部屋から出て行こうとするが、
『貴様の作った出来損ないの件だ』
そこで、ピタッと止まる。
停止したのは何となくではない。
自身の創造物を馬鹿にされたからだ。
『出来損ない?私の創造物が?』
『貴様の創造物が見境なく暴れたせいで、我らの最高傑作が傷ついたと聞いたが?』
その言葉を聞いて、サトリのみならずもう一方も鼻で笑った。
『最高傑作?何の話だい?君さ…考えてもみなよ、改良の余地はいくらでもあるだろう?』
『まるでお話になりませんね、封じ込めの為の見張り係に対して、傑作呼ばわりとは、これだから新しいものが生まれないんですよ』
呆れが生じるため息を綯交ぜにした、明らかな見下しが感じ取れる。
『なっ!貴様まで…我らの飛竜だぞ!完璧な存在だ!!なのにあんなたかが一魔族が…』
『我らの…ね。確かに君の助力がなければ創造できなかっただろう。だが、知性を植えたのは誰だ?力を与えたのは?君だけでは創造できない。だからこそ完璧と言いたいのは理解できる。しかし、現に負けたじゃないか。完全敗北だ。それもサトリが生み出したたった一体にね…』
その一言に黙る。複数の創造主が寄ってたかって創造した生物より、一柱が創造した一生物の方が強いとあっては完璧の名折れだ。
『君に作れるのかい?あれを超える生物を…』
彼の言葉には嘲笑と諦めが含まれていた。その中には自分でも無理だと考えている部分が見え隠れしていた。
サトリは多くを語らずそのまま部屋から出て行く。
その顔は誇らしげで、笑顔が絶えなかった。
『…何のつもりだ?あれの肩を持つのか?』
『事実を言ったまでだろう?何か間違いでも?』
その言葉と同時に気配が消える。
彼もこの場所を後にしたのだろう。
後からやって来た神は悔しさにいきり立つ。
『このままでは済まさんぞ…』
とは言うが、限界も確かに存在する。
指摘された通り、今すぐどうのというのは無理な話なのだ。結果こそ今すぐ手に入れたいが、試行回数に差が生じる現段階では、完全に周回遅れだ。
サトリが今まで創造してきた生物を並べれば嫌でも目に付く。自分との格差という奴が。
そこで気づく、その器がないのなら呼び出せばいい何も一から創造するのにこだわる必要はない。多次元には多くの生物が存在し、それに力を与えれば簡易的な無敵生物を作れる。
前にもやった事だ。その結果は…置いておこう。
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