一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
98 / 718
第三章 勇者

第二十三話 人類の敵

しおりを挟む
この日、”王の集い”の緊急召集があった。

急な召集にも関わらず、全会員が集まる。

召集をかけたドワーフ族の王、”鋼王”は厳しい顔の下に満足な心を隠し、一同を見渡す。

「皆、よくぞ集まってくれた!疑問もなく集まってくれた事、心より感謝する」

胸に手を当て、軽く会釈する。

『我らは云わば一つの集合体。感謝なんぞ不要』

妖精種フェアリーの王、”四大王しだいおう”は鋼王を一瞥すると、それだけ言って黙ってしまう。フェアリーは世界の四元素を司り、魔力により崩れてしまった世界の均衡を戻すべく人類に加担した。エルフとの繋がりが一番強い種である。

『左様。一丸となる事こそ”集い”の本懐。誠心誠意、民の為に尽くすまでよ…』

一角人ホーンの王、”刃王じんおう”はこれに賛同する。ホーンは人に水晶の角が生えた種族だ。

大体のホーンは額から角が生え、その角は魔力を蓄積する特別な器官であり、死した後でも魔力を発生させ続ける。その為、魔法使いが多い。下手な金属よりよっぽど硬いので角を武器としても使用している。

海王や国王は椅子にもたれかかり、この空気を敬遠している。森王も鋼王の様子を窺う姿勢で声も出さない。
公爵は何かの資料を食い入るように読み、”集い”に参加しているかも怪しい。獣王は公爵の態度を気に入らず睨みつけている。

『まぁまぁ、慰め合いはその辺にして、本題に入ってくれないかしら?』

翼人族バードの女王、”空王くうおう”は長い爪を机に立てる。勢いよく指を振り下ろしたため、コツンッと甲高い音がこの場を制した。
バードは魔鳥人に近いが、アニマンと同じく別の進化を遂げた個体であり、人の背中に羽根があるのが特徴とされる。

魔鳥人と似ていて、目が非常に良く空域の偵察などで効果を発揮する。制空権を魔力消費なしで取れる事から、重宝されている。

「…空王の意見、もっともである…。既に聞いていると思うが、ゴブリンの丘の襲撃事件について儂から話がある」

『ゴブリンの丘と言えば、ゴブリン印の武器ですな…彼の有名な武器の産地が襲われたとあって、心苦しい想いに身を馳せておりましたよ…』

国王は口をはさむ。
今回の襲撃事件はヒューマンにとっても痛手だった。それを知る鋼王は顔を怒りで紅潮させる。

「…黙れ国王。貴公には一度、物申したいことがあったのじゃ…海王の件も公爵の件もそうじゃが、ヒューマンは図に乗っとりはせんか?」

現在、ヒューマンがゴブリン印の剣に対し多額の投資を行い、輸出入に関して独占状態にあった。

流通する際はヒューマンの里からじゃないと、購入できない。市場に出回る際は、それなりの相場となっており購入も難しい。そして、技術流出を防ぐ政策を行っているので、ドワーフの介入はおろか、施策を行ったヒューマンも介入していない。

結果、技術はゴブリンの独占となっているのだが、最近キングにこの事で鋼王が書状を送った際は「丘に全てを任せている」との返事が返ってきた。

当のゴブリンたちですら、この素晴らしい技術を軽視している事に失望した。

技術の衰退を危惧した鋼王は何とか吸い上げようと努力したのだが、結果は見ての通り…。

ヒューマンがやってきた罪は重い。

『…何をおっしゃりたいか、よく分かりませぬな』

「儂に全てを言わせるつもりか?欲の皮が突っ張った金狂いの銭ゲバ王」

それは明確な悪口だった。
ドワーフは器用だが、頭の中で一度精査するというかそう言う事が出来ない種族だ。感情的になれば突如何を言い出すか分かったものではない。

長らく国交をしてこなかったが故のいわばコミュニケーション不足と言う奴だ。

しかし外交の場でそんな事が許されるわけではない。ピリッとした空気が流れる。

ここでいつもなら森王の叱責が挟まれるが、声が出ない。ドワーフとの関係をこじらせることを恐れてか、はたまた別の理由か。

この空気を換えたのは言われた当人だった。

『いやはや、手厳しいですなぁ…鋼王は私が嫌いと見える。しかし、勘違いなさらんで欲しいですな。これは単に予期せぬ出来事が重なったいわば不運。嫌っていただいて大いに結構ですが…私は、敵ではありませんよ?』

国王は笑顔を崩さず、あくまで冷静に対応する。
この態度は鋼王の気持ちを逆撫でするが”待った”をかけたのは獣王だった。

『チッ…残念ダガ、ソノ通リダ。鋼王ヨ、貴公ノ意見ニハ全面的ニ賛成スルガ、議題トハ関係ナイ。緊急招集ノ本題ヲ続ケテクレ』

『随分と嫌われてるなぁ…』と軽口をたたく国王を尻目に鋼王は咳ばらいを一つして、冷静さを取り戻す。

「失礼した。それで本題じゃが、儂はこの件を広くおおやけに情報提供する。みなごろしの…いや、ラルフ一行を全国的に指名手配し、生死を問わず懸賞金をかける。勿論、懸賞金は儂らドワーフ国が持つ。逃げ道を塞ぎ、小動物一匹這い出る隙を与えぬ!」

その名を聞いた公爵は資料から目を外し、ようやく顔を上げる。彼の目には喜色と憎悪の混じった何とも言えない感情がにじみ出ている。

『賛成いたします鋼王。その際は是非、私からも資金を回させていただきます。必ず彼奴等を亡き者にしてやりましょうぞ』

公爵は一も二もなく賛成の意志を見せる。
「おおっ!」と鋼王も喜ぶ。

『馬鹿な…相手はみなごろしと言う事をお忘れか?幾ら犬を放っても、戻ってくるのは死臭のみ。まさか公爵が忘れたなどと言う事はないでしょう』

国王はこの提案を馬鹿げたものと見ている。

『それはどうでしょうか国王。疲弊も立派な戦略。とにかく、いついかなる時もお前たちに休息はないと、知らしめてやる事も手ではありませんか?』

海王はそう言うと『私も賛成です』と公爵に続く。
獣王はこれに首を振る。

『俺ハ反対ダ。追イ詰メラレタ獲物ハ何ヲシデカスカ分カラネェ…機ヲ待ツベキダ』

ダンッと鋼王は机を叩く。

「違う!機を待ったからこうなったんじゃ!機会ならここにある!今ここなんじゃ!!国が落とされてからでは遅いじゃろうが!!」

言ってる事は正論だが、それは強さに比例しない。戦争ではこの名が出るだけで撤退を余儀なくされる上、エルフ族の調査からその力が真実であると立証されてしまっている。感情だけではこの決定に対して賛同出来ない。

賛成の二人は頷きで鋼王を肯定する。

公爵は別にして、海王は最初から被害がない事を加味しての賛成だから、厳密に言えば「陸の事は陸にお任せします」という関係が薄いスタンスで頷いている。会議を無視はしないが、海王こそ本題に参加しているかどうか怪しい。

『森王。アンタハ、ドウ思ウ?』

埒が明かなくなった空気を換えるべく、獣王は最終手段として森王に答えを求めた。こうなると森王に注目が集まる。

元々この意見には反対という考えが森王にはある。それというのも国王と同意見だからだ。賞金稼ぎを放ったところで勝ち目はないし、獣王の言葉通り、わざわざ隠れているものをつついて出すなど愚の骨頂。

魔族同士で同士討ちするなら待つ事こそ寛容だ。
しかし、事はそう単純ではない。

『…私も鋼王に賛成する』

一同に動揺が走る。森王はこの意見を否定すると思っていたからだ。長らく秩序を保ってきたのは危険な橋に手をかけなかったのが要因だからであり一旦、見に回るのと思われていた。
しかし、そうではなかった。森王はみなごろしに対し、宣戦布告する事を良しとしたのだ。

こうなると、四大王は森王に続く。

『我も賛成しよう』それを皮切りに、刃王、空王と続き、渋りに渋って獣王が賛成する。最後まで賛成しなかったのは国王だけだ。

だが、過半数を大きく上回ったこの意見は通り、ラルフ一行は…特にラルフは一介のヒューマンでありながら、金貨千枚という破格の懸賞金を懸けられた。

金はほとんどの場合、大商人の間でしか取引がないあまり流通していない上、相場的に見れば、銀貨十枚分で金貨一枚と等価であり銅貨に至っては百枚分と等価である。さらに、世界で広く使われているのは銅と亜鉛を混ぜた真鍮。俗に黄貨おうかと呼ばれる一番下の硬貨があり、これなら千枚と等価だ。

以上を踏まえれば、金貨千枚というお金の価値がいかに破格か理解できる。人類史上、最も高い懸賞金である事は言うまでもない。

これが世界に流れるのはこの会議から三日後。
本日より三日の後、ラルフは世界を股にかける大犯罪者となる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...