一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
132 / 718
第四章 崩壊

第二十三話 解放

しおりを挟む
ーー地獄の門が開かれた。

封印された藤堂源之助の監獄。万が一にも監獄が破られた場合、看守が目を覚ます。

奴らに気取られるな、死ぬまで追ってくるぞ。

奴らに見つかるな、魂を抜かれるぞ。

奴らに捕まるな、地獄に堕ちるぞ。

逃げて、隠れて、やり過ごせ。

看守は囚人を求め解き放たれる。

看守は邪魔するものに容赦がない。

看守は慈悲を与えない。

逃げて、隠れて、やり過ごせ。ーー

氷の大地”ゼロ”。

永久凍土とも呼ばれるこの場所は生き物が生息できない不毛の大地。

何者も寄せ付けなかったこの地に妖精種フェアリーが侵入した。別名”ピクシー”と呼ばれる20cm程の小さな妖精が、より集まって話し合っている。

『確かなの?聞いてた兆候なんて無いようだけど?』

『ただの世迷い言さ。監獄が消えるはずがないもん』

ピクシーたちは辺境の地でクスクス笑いながら飛び回る。ここに来たのは水の精霊が『氷が解ける!』と一斉に騒ぎ始めたからだ。

水の精霊が”氷”という単語を用いる時は、この場所の事を指している。精霊界ではある種常識のようになっていた。

前述の通り、ここは永久凍土。

その理由として、ここの氷は呪いがかけられ決して解けることがないと古くから語り継がれている。ここの氷が万が一解ける場合は世界滅亡の危機だと云われていた。

夜の空に光の柱が出現し、水の精霊が騒ぐという真に迫った恐怖がピクシーたちを駆り立て、慌てて見に来る結果に繋がったが杞憂だった様だ。

ピクシーの中で少し背の高い女形の妖精、名はオリビア。

花のつぼみの様な髪に陶器の様な白い肌。透明な羽を忙しなくハチドリの様に羽ばたき、常に一定の位置で留まっている。白目の見えない真っ黒な目は虫の複眼のように見えるが、よく見れば黒真珠の様に綺麗な目をしている。人形みたいな特徴のない顔はエルフをそのまま小さくした様な綺麗な顔立ちをしている。

どのピクシーも同じような特徴のない綺麗な顔立ちをしているが、エルフと少し違うのは出ている所は出て引っ込むところは引っ込んでいる様な体のラインだろう。それぞれが分かるように男形や女形の体のラインと、髪形で個性を出している。

オリビアはキョロキョロ見渡し、特に代わり映えのない白と青い景色に目を向ける。他のピクシーたちは滅多に入ることの許されない大地を縦横無尽に飛び回り遊んでいる。

『静かなところね』

『それはそうだよ。だって誰も住んでないもん』

オリビアは同胞達の声以外、不気味に静まり返るこの場所に心身ともに寒気を感じ、さっさと踵を返す。

『あれれ?オリビア?もう帰っちゃうの?』

ピクシーたちはオリビアに目を向ける。

『帰るわ。だってここ、気味が悪いもの……』

オリビアは困った顔で片腕を擦る。そんなオリビアの周りにピクシーたちは集まってクスクス笑う。

『オリビアは弱虫だー』『弱虫―』『ちょっとくらい遊んだって良いじゃーん』とオリビアを煽る。

立ち入りを許可されたからこそ、ここにいることは確かだが、遊ぼうという気にはなれない。水の精霊に何ともなかったことを告げて、このちょっとした遠征に終わりを告げたい。

『あなたたちは遊んでれば?わたしはもう帰りたいから……』

それを聞くなり一斉にブーたれる。

『そんなことしたら確認が終わったことがバレちゃうじゃん!』

『それにオリビアだけ帰ったらわたしたちが一人ぼっちにしたって怒られちゃう!』

『遊ばなくてもいいからまだしばらく帰らないで!』

立ち入り禁止区域に侵入が許可された現状、もっと遊びたいのがピクシーたちの本音である。オリビアとて例にもれず不謹慎ながら楽しみに来ていた節もあったが、恐怖の方が勝ってしまったから仕方がない。今すぐ帰りたいが同胞たちの説得に絆されて留まる事にした。

『もう……少しだけだからね』

オリビアが諦めたのを確認するとピクシーはきゃっきゃ言いながらそこら中に離散した。氷と霜だけの世界で何が楽しいのか、ただただ飛び回ってみたり、鬼のいないかくれんぼで頭をひょこひょこ出して遊んでいる。

オリビアは羽を休めようとその辺の岩に腰かけようとするが、近付いただけで凍える程に寒い。何でこうも冷たい冷気に当てられながらあれだけ元気に遊んでいられるのか分からず、帰りたい気持ちがふつふつと湧いてくる。羽休めも諦めて元の一に戻っていく最中に、みんなの笑い声が消えていることに気付いた。

『?……みんな?』

目を離したわずか二秒くらいの間に、十体前後の同胞たちの姿が消える。キョロキョロ見渡すも誰も見当たらない。

『マット?ウィル?マルコ?』

仲の良かった妖精たちの名前を呼びながら飛び回る。しばらく飛んで、少し奥まった所に全員集まって何かを覗き込んでいる。

『みんなで何を見てるの?』

『しっ!オリビアこっち来て!』

大声を出さない様に声を落として、だが鋭く注意する。オリビアは危険な臭いを嗅ぎ取って皆の輪に加わる。今度はオリビアも声を落としてそっと聞く。

『……何見てるの?』

『あれだよ』

一人のピクシーが指をさす。その先には冷たい氷に覆われた湖があった。

『え!?』

ピクシーたちの視線の先には氷に覆われた湖の中に人が浮かんでいるのが見える。見たところ全部で八人。ボーリングのピンの様に並んでいる。1、3、4という人数の並びで水死体の様に揺らめいていた。

『……死体?』

『変だと思わない?ここは呪いで氷が解けないと言われている場所だよ?それなのに湖は表面だけが氷が張ってる』

『でも元々凍ってなかったのかも?』

『それはないでしょ。ぼく思うんだけど水の精霊が言ってたのはここの事だったんじゃないかな?』

『ああっ!』と皆の顔に理解の色が宿る。そうだとして何故水の精霊がこの水死体に対して恐れ慄き、騒ぐ必要があったのか?そこでまた憶測が飛ぶ。この八体の死体はものすごく希少なもので、劣化させてはいけない説。この八体の死体は全く関係がなく、氷が解けること自体がヤバい説……。

とにかく水の精霊が言った通り氷は解けていた。この事については報告の必要がある。

『え?』

一人のピクシーが声を上げる。

『どうしたのマット?』

マットと呼ばれたピクシーは目をしばたたかせる。

『え?いや……あれ』

一番前で揺らめく長身の男を指さす。見た所かなり年のいった男だ。短髪で、もみあげから顎までつながるヒゲ。獅子の様に厳つい顔つきは、きっと融通の利かない男だったのだろうと思わせる。和服と袴の和装で、その上に皮のジャケットを羽織るちぐはぐな衣装。腰には刀を帯刀している。

『あれがどうしたの?』

マットは目を離さず話す。

『今……目が動いた』

全員目を瞑って寝ているように浮いている。それを聞くなりピクシーたちは安堵の息を漏らす。

『ちょっとマット、ふざけないでよ。ビビっちゃったじゃん』

マットのおふざけだと思い込んだオリビアは皆の代わりに注意する。

『ふざけてないって……ほらっ!』

大声を出して湖を指さす。皆がそこに目をやるとおかしなことに気付いた。その男の目が開いている。それを見てドキッとする。軽いホラーを見せられているような気分になるが、それだけだ。目が開いたからなんだというのか。

『ほんとだ開いてる。なんか超怖いね……』

軽く流そうと思ったが、その目が心なしかこちらを睨んでいる気がしてそれ以上言葉が出なかった。と、その瞬間。

シャリンッ

氷が切られる音が一つ、辺り一面に木霊する。湖の氷の表面全てが内側から鋭利な切り口を残したまま細かい破片となって、”バガッ”と凄まじい音を出し、盛り上がって開く。

水しぶきが上がり中の様子が一切見えなくなる。

『わぁっ!!』『何!なんなの!?』

狼狽えるピクシーたち。

『逃げよう!!』

飛び立とうとする。が、その瞬間。ピクシーの中のおおよそ半分の体がズリュッと鈍い音を立てて真っ二つに斬れる。陶器の様に美しい肌は地面に落ちて氷のシミとなった。

『マット……ウィル……』

オリビアはそのシミの中にはいなかったが、よく遊んでいたピクシーたちは目の前で死に絶えた。

「羽虫……今の時代を教えろ……」

刀を抜いた男は切っ先をオリビアに向けて脅しにかかった。その後ろには目を開けてすらいなかった他七人の水死体たちが立っていた。生唾をごくりと飲んで敵意はないと両手を挙げるオリビア。

『ご、ごめんなさい……いつって言えばいいか分からなくて……』

怯えた様子で答えるオリビア。これだけ脅し倒して何も言えないと言う事は知らないのだ。男は刀を納刀すると、仲間と思われる七人に目を向けた。男が三人、女が三人と仮面とマントで姿形を隠す奇妙な人物が一人の構成。見た所年齢もバラバラで、上は七十前後、下は十代前半といったちぐはぐな連中だ。

「監獄が解かれた。我ら”八大地獄”が解放されるとは……世も末であるなぁ……」

しみじみと言った様子で語りかけている。オリビアはたまらず質問した。

『……あなたたちはいったい……』

男はオリビアを一瞥する。他のピクシーたちは怯えて縮こまっている。

「ふむ……」

男は振り向きざまに再度刀を納刀する。その行動に奇妙な違和感を感じるが、その答えはすぐに現れた。

メリッやミリッといった音が背後から聴こえる。音の方に目をやるとオリビアを除いたピクシーたち全員の体が真っ二つとなっていた。

あの一瞬で刀を抜き、見えない程の鋭い斬撃であっという間にオリビアを抜いたピクシーたちを切り殺してしまった。

「時代がわからぬというなら羽虫よ。我らをこの地より先の大地へ案内せよ。逆らえば切る。それらと共に地獄に行きたくなければ従え」

有無を言わさぬ命令。悲しむ暇も無いことを悟るオリビアに歯向かう意思はない。

『わ、分かりました……』

何者かも分からない人たちを前に半泣き状態で承諾する。水の精霊が恐怖した氷の融解。その一端を噛み締めながら案内のため、オリビアは男たちの前を飛んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...