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第四章 崩壊
第二十三話 解放
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ーー地獄の門が開かれた。
封印された藤堂源之助の監獄。万が一にも監獄が破られた場合、看守が目を覚ます。
奴らに気取られるな、死ぬまで追ってくるぞ。
奴らに見つかるな、魂を抜かれるぞ。
奴らに捕まるな、地獄に堕ちるぞ。
逃げて、隠れて、やり過ごせ。
看守は囚人を求め解き放たれる。
看守は邪魔するものに容赦がない。
看守は慈悲を与えない。
逃げて、隠れて、やり過ごせ。ーー
氷の大地”ゼロ”。
永久凍土とも呼ばれるこの場所は生き物が生息できない不毛の大地。
何者も寄せ付けなかったこの地に妖精種が侵入した。別名”ピクシー”と呼ばれる20cm程の小さな妖精が、より集まって話し合っている。
『確かなの?聞いてた兆候なんて無いようだけど?』
『ただの世迷い言さ。監獄が消えるはずがないもん』
ピクシーたちは辺境の地でクスクス笑いながら飛び回る。ここに来たのは水の精霊が『氷が解ける!』と一斉に騒ぎ始めたからだ。
水の精霊が”氷”という単語を用いる時は、この場所の事を指している。精霊界ではある種常識のようになっていた。
前述の通り、ここは永久凍土。
その理由として、ここの氷は呪いがかけられ決して解けることがないと古くから語り継がれている。ここの氷が万が一解ける場合は世界滅亡の危機だと云われていた。
夜の空に光の柱が出現し、水の精霊が騒ぐという真に迫った恐怖がピクシーたちを駆り立て、慌てて見に来る結果に繋がったが杞憂だった様だ。
ピクシーの中で少し背の高い女形の妖精、名はオリビア。
花のつぼみの様な髪に陶器の様な白い肌。透明な羽を忙しなくハチドリの様に羽ばたき、常に一定の位置で留まっている。白目の見えない真っ黒な目は虫の複眼のように見えるが、よく見れば黒真珠の様に綺麗な目をしている。人形みたいな特徴のない顔はエルフをそのまま小さくした様な綺麗な顔立ちをしている。
どのピクシーも同じような特徴のない綺麗な顔立ちをしているが、エルフと少し違うのは出ている所は出て引っ込むところは引っ込んでいる様な体のラインだろう。それぞれが分かるように男形や女形の体のラインと、髪形で個性を出している。
オリビアはキョロキョロ見渡し、特に代わり映えのない白と青い景色に目を向ける。他のピクシーたちは滅多に入ることの許されない大地を縦横無尽に飛び回り遊んでいる。
『静かなところね』
『それはそうだよ。だって誰も住んでないもん』
オリビアは同胞達の声以外、不気味に静まり返るこの場所に心身ともに寒気を感じ、さっさと踵を返す。
『あれれ?オリビア?もう帰っちゃうの?』
ピクシーたちはオリビアに目を向ける。
『帰るわ。だってここ、気味が悪いもの……』
オリビアは困った顔で片腕を擦る。そんなオリビアの周りにピクシーたちは集まってクスクス笑う。
『オリビアは弱虫だー』『弱虫―』『ちょっとくらい遊んだって良いじゃーん』とオリビアを煽る。
立ち入りを許可されたからこそ、ここにいることは確かだが、遊ぼうという気にはなれない。水の精霊に何ともなかったことを告げて、このちょっとした遠征に終わりを告げたい。
『あなたたちは遊んでれば?わたしはもう帰りたいから……』
それを聞くなり一斉にブーたれる。
『そんなことしたら確認が終わったことがバレちゃうじゃん!』
『それにオリビアだけ帰ったらわたしたちが一人ぼっちにしたって怒られちゃう!』
『遊ばなくてもいいからまだしばらく帰らないで!』
立ち入り禁止区域に侵入が許可された現状、もっと遊びたいのがピクシーたちの本音である。オリビアとて例にもれず不謹慎ながら楽しみに来ていた節もあったが、恐怖の方が勝ってしまったから仕方がない。今すぐ帰りたいが同胞たちの説得に絆されて留まる事にした。
『もう……少しだけだからね』
オリビアが諦めたのを確認するとピクシーはきゃっきゃ言いながらそこら中に離散した。氷と霜だけの世界で何が楽しいのか、ただただ飛び回ってみたり、鬼のいないかくれんぼで頭をひょこひょこ出して遊んでいる。
オリビアは羽を休めようとその辺の岩に腰かけようとするが、近付いただけで凍える程に寒い。何でこうも冷たい冷気に当てられながらあれだけ元気に遊んでいられるのか分からず、帰りたい気持ちがふつふつと湧いてくる。羽休めも諦めて元の一に戻っていく最中に、みんなの笑い声が消えていることに気付いた。
『?……みんな?』
目を離したわずか二秒くらいの間に、十体前後の同胞たちの姿が消える。キョロキョロ見渡すも誰も見当たらない。
『マット?ウィル?マルコ?』
仲の良かった妖精たちの名前を呼びながら飛び回る。しばらく飛んで、少し奥まった所に全員集まって何かを覗き込んでいる。
『みんなで何を見てるの?』
『しっ!オリビアこっち来て!』
大声を出さない様に声を落として、だが鋭く注意する。オリビアは危険な臭いを嗅ぎ取って皆の輪に加わる。今度はオリビアも声を落としてそっと聞く。
『……何見てるの?』
『あれだよ』
一人のピクシーが指をさす。その先には冷たい氷に覆われた湖があった。
『え!?』
ピクシーたちの視線の先には氷に覆われた湖の中に人が浮かんでいるのが見える。見たところ全部で八人。ボーリングのピンの様に並んでいる。1、3、4という人数の並びで水死体の様に揺らめいていた。
『……死体?』
『変だと思わない?ここは呪いで氷が解けないと言われている場所だよ?それなのに湖は表面だけが氷が張ってる』
『でも元々凍ってなかったのかも?』
『それはないでしょ。ぼく思うんだけど水の精霊が言ってたのはここの事だったんじゃないかな?』
『ああっ!』と皆の顔に理解の色が宿る。そうだとして何故水の精霊がこの水死体に対して恐れ慄き、騒ぐ必要があったのか?そこでまた憶測が飛ぶ。この八体の死体はものすごく希少なもので、劣化させてはいけない説。この八体の死体は全く関係がなく、氷が解けること自体がヤバい説……。
とにかく水の精霊が言った通り氷は解けていた。この事については報告の必要がある。
『え?』
一人のピクシーが声を上げる。
『どうしたのマット?』
マットと呼ばれたピクシーは目を瞬かせる。
『え?いや……あれ』
一番前で揺らめく長身の男を指さす。見た所かなり年のいった男だ。短髪で、もみあげから顎までつながるヒゲ。獅子の様に厳つい顔つきは、きっと融通の利かない男だったのだろうと思わせる。和服と袴の和装で、その上に皮のジャケットを羽織るちぐはぐな衣装。腰には刀を帯刀している。
『あれがどうしたの?』
マットは目を離さず話す。
『今……目が動いた』
全員目を瞑って寝ているように浮いている。それを聞くなりピクシーたちは安堵の息を漏らす。
『ちょっとマット、ふざけないでよ。ビビっちゃったじゃん』
マットのおふざけだと思い込んだオリビアは皆の代わりに注意する。
『ふざけてないって……ほらっ!』
大声を出して湖を指さす。皆がそこに目をやるとおかしなことに気付いた。その男の目が開いている。それを見てドキッとする。軽いホラーを見せられているような気分になるが、それだけだ。目が開いたからなんだというのか。
『ほんとだ開いてる。なんか超怖いね……』
軽く流そうと思ったが、その目が心なしかこちらを睨んでいる気がしてそれ以上言葉が出なかった。と、その瞬間。
シャリンッ
氷が切られる音が一つ、辺り一面に木霊する。湖の氷の表面全てが内側から鋭利な切り口を残したまま細かい破片となって、”バガッ”と凄まじい音を出し、盛り上がって開く。
水しぶきが上がり中の様子が一切見えなくなる。
『わぁっ!!』『何!なんなの!?』
狼狽えるピクシーたち。
『逃げよう!!』
飛び立とうとする。が、その瞬間。ピクシーの中のおおよそ半分の体がズリュッと鈍い音を立てて真っ二つに斬れる。陶器の様に美しい肌は地面に落ちて氷のシミとなった。
『マット……ウィル……』
オリビアはそのシミの中にはいなかったが、よく遊んでいたピクシーたちは目の前で死に絶えた。
「羽虫……今の時代を教えろ……」
刀を抜いた男は切っ先をオリビアに向けて脅しにかかった。その後ろには目を開けてすらいなかった他七人の水死体たちが立っていた。生唾をごくりと飲んで敵意はないと両手を挙げるオリビア。
『ご、ごめんなさい……いつって言えばいいか分からなくて……』
怯えた様子で答えるオリビア。これだけ脅し倒して何も言えないと言う事は知らないのだ。男は刀を納刀すると、仲間と思われる七人に目を向けた。男が三人、女が三人と仮面とマントで姿形を隠す奇妙な人物が一人の構成。見た所年齢もバラバラで、上は七十前後、下は十代前半といったちぐはぐな連中だ。
「監獄が解かれた。我ら”八大地獄”が解放されるとは……世も末であるなぁ……」
しみじみと言った様子で語りかけている。オリビアはたまらず質問した。
『……あなたたちはいったい……』
男はオリビアを一瞥する。他のピクシーたちは怯えて縮こまっている。
「ふむ……」
男は振り向きざまに再度刀を納刀する。その行動に奇妙な違和感を感じるが、その答えはすぐに現れた。
メリッやミリッといった音が背後から聴こえる。音の方に目をやるとオリビアを除いたピクシーたち全員の体が真っ二つとなっていた。
あの一瞬で刀を抜き、見えない程の鋭い斬撃であっという間にオリビアを抜いたピクシーたちを切り殺してしまった。
「時代がわからぬというなら羽虫よ。我らをこの地より先の大地へ案内せよ。逆らえば切る。それらと共に地獄に行きたくなければ従え」
有無を言わさぬ命令。悲しむ暇も無いことを悟るオリビアに歯向かう意思はない。
『わ、分かりました……』
何者かも分からない人たちを前に半泣き状態で承諾する。水の精霊が恐怖した氷の融解。その一端を噛み締めながら案内のため、オリビアは男たちの前を飛んだ。
封印された藤堂源之助の監獄。万が一にも監獄が破られた場合、看守が目を覚ます。
奴らに気取られるな、死ぬまで追ってくるぞ。
奴らに見つかるな、魂を抜かれるぞ。
奴らに捕まるな、地獄に堕ちるぞ。
逃げて、隠れて、やり過ごせ。
看守は囚人を求め解き放たれる。
看守は邪魔するものに容赦がない。
看守は慈悲を与えない。
逃げて、隠れて、やり過ごせ。ーー
氷の大地”ゼロ”。
永久凍土とも呼ばれるこの場所は生き物が生息できない不毛の大地。
何者も寄せ付けなかったこの地に妖精種が侵入した。別名”ピクシー”と呼ばれる20cm程の小さな妖精が、より集まって話し合っている。
『確かなの?聞いてた兆候なんて無いようだけど?』
『ただの世迷い言さ。監獄が消えるはずがないもん』
ピクシーたちは辺境の地でクスクス笑いながら飛び回る。ここに来たのは水の精霊が『氷が解ける!』と一斉に騒ぎ始めたからだ。
水の精霊が”氷”という単語を用いる時は、この場所の事を指している。精霊界ではある種常識のようになっていた。
前述の通り、ここは永久凍土。
その理由として、ここの氷は呪いがかけられ決して解けることがないと古くから語り継がれている。ここの氷が万が一解ける場合は世界滅亡の危機だと云われていた。
夜の空に光の柱が出現し、水の精霊が騒ぐという真に迫った恐怖がピクシーたちを駆り立て、慌てて見に来る結果に繋がったが杞憂だった様だ。
ピクシーの中で少し背の高い女形の妖精、名はオリビア。
花のつぼみの様な髪に陶器の様な白い肌。透明な羽を忙しなくハチドリの様に羽ばたき、常に一定の位置で留まっている。白目の見えない真っ黒な目は虫の複眼のように見えるが、よく見れば黒真珠の様に綺麗な目をしている。人形みたいな特徴のない顔はエルフをそのまま小さくした様な綺麗な顔立ちをしている。
どのピクシーも同じような特徴のない綺麗な顔立ちをしているが、エルフと少し違うのは出ている所は出て引っ込むところは引っ込んでいる様な体のラインだろう。それぞれが分かるように男形や女形の体のラインと、髪形で個性を出している。
オリビアはキョロキョロ見渡し、特に代わり映えのない白と青い景色に目を向ける。他のピクシーたちは滅多に入ることの許されない大地を縦横無尽に飛び回り遊んでいる。
『静かなところね』
『それはそうだよ。だって誰も住んでないもん』
オリビアは同胞達の声以外、不気味に静まり返るこの場所に心身ともに寒気を感じ、さっさと踵を返す。
『あれれ?オリビア?もう帰っちゃうの?』
ピクシーたちはオリビアに目を向ける。
『帰るわ。だってここ、気味が悪いもの……』
オリビアは困った顔で片腕を擦る。そんなオリビアの周りにピクシーたちは集まってクスクス笑う。
『オリビアは弱虫だー』『弱虫―』『ちょっとくらい遊んだって良いじゃーん』とオリビアを煽る。
立ち入りを許可されたからこそ、ここにいることは確かだが、遊ぼうという気にはなれない。水の精霊に何ともなかったことを告げて、このちょっとした遠征に終わりを告げたい。
『あなたたちは遊んでれば?わたしはもう帰りたいから……』
それを聞くなり一斉にブーたれる。
『そんなことしたら確認が終わったことがバレちゃうじゃん!』
『それにオリビアだけ帰ったらわたしたちが一人ぼっちにしたって怒られちゃう!』
『遊ばなくてもいいからまだしばらく帰らないで!』
立ち入り禁止区域に侵入が許可された現状、もっと遊びたいのがピクシーたちの本音である。オリビアとて例にもれず不謹慎ながら楽しみに来ていた節もあったが、恐怖の方が勝ってしまったから仕方がない。今すぐ帰りたいが同胞たちの説得に絆されて留まる事にした。
『もう……少しだけだからね』
オリビアが諦めたのを確認するとピクシーはきゃっきゃ言いながらそこら中に離散した。氷と霜だけの世界で何が楽しいのか、ただただ飛び回ってみたり、鬼のいないかくれんぼで頭をひょこひょこ出して遊んでいる。
オリビアは羽を休めようとその辺の岩に腰かけようとするが、近付いただけで凍える程に寒い。何でこうも冷たい冷気に当てられながらあれだけ元気に遊んでいられるのか分からず、帰りたい気持ちがふつふつと湧いてくる。羽休めも諦めて元の一に戻っていく最中に、みんなの笑い声が消えていることに気付いた。
『?……みんな?』
目を離したわずか二秒くらいの間に、十体前後の同胞たちの姿が消える。キョロキョロ見渡すも誰も見当たらない。
『マット?ウィル?マルコ?』
仲の良かった妖精たちの名前を呼びながら飛び回る。しばらく飛んで、少し奥まった所に全員集まって何かを覗き込んでいる。
『みんなで何を見てるの?』
『しっ!オリビアこっち来て!』
大声を出さない様に声を落として、だが鋭く注意する。オリビアは危険な臭いを嗅ぎ取って皆の輪に加わる。今度はオリビアも声を落としてそっと聞く。
『……何見てるの?』
『あれだよ』
一人のピクシーが指をさす。その先には冷たい氷に覆われた湖があった。
『え!?』
ピクシーたちの視線の先には氷に覆われた湖の中に人が浮かんでいるのが見える。見たところ全部で八人。ボーリングのピンの様に並んでいる。1、3、4という人数の並びで水死体の様に揺らめいていた。
『……死体?』
『変だと思わない?ここは呪いで氷が解けないと言われている場所だよ?それなのに湖は表面だけが氷が張ってる』
『でも元々凍ってなかったのかも?』
『それはないでしょ。ぼく思うんだけど水の精霊が言ってたのはここの事だったんじゃないかな?』
『ああっ!』と皆の顔に理解の色が宿る。そうだとして何故水の精霊がこの水死体に対して恐れ慄き、騒ぐ必要があったのか?そこでまた憶測が飛ぶ。この八体の死体はものすごく希少なもので、劣化させてはいけない説。この八体の死体は全く関係がなく、氷が解けること自体がヤバい説……。
とにかく水の精霊が言った通り氷は解けていた。この事については報告の必要がある。
『え?』
一人のピクシーが声を上げる。
『どうしたのマット?』
マットと呼ばれたピクシーは目を瞬かせる。
『え?いや……あれ』
一番前で揺らめく長身の男を指さす。見た所かなり年のいった男だ。短髪で、もみあげから顎までつながるヒゲ。獅子の様に厳つい顔つきは、きっと融通の利かない男だったのだろうと思わせる。和服と袴の和装で、その上に皮のジャケットを羽織るちぐはぐな衣装。腰には刀を帯刀している。
『あれがどうしたの?』
マットは目を離さず話す。
『今……目が動いた』
全員目を瞑って寝ているように浮いている。それを聞くなりピクシーたちは安堵の息を漏らす。
『ちょっとマット、ふざけないでよ。ビビっちゃったじゃん』
マットのおふざけだと思い込んだオリビアは皆の代わりに注意する。
『ふざけてないって……ほらっ!』
大声を出して湖を指さす。皆がそこに目をやるとおかしなことに気付いた。その男の目が開いている。それを見てドキッとする。軽いホラーを見せられているような気分になるが、それだけだ。目が開いたからなんだというのか。
『ほんとだ開いてる。なんか超怖いね……』
軽く流そうと思ったが、その目が心なしかこちらを睨んでいる気がしてそれ以上言葉が出なかった。と、その瞬間。
シャリンッ
氷が切られる音が一つ、辺り一面に木霊する。湖の氷の表面全てが内側から鋭利な切り口を残したまま細かい破片となって、”バガッ”と凄まじい音を出し、盛り上がって開く。
水しぶきが上がり中の様子が一切見えなくなる。
『わぁっ!!』『何!なんなの!?』
狼狽えるピクシーたち。
『逃げよう!!』
飛び立とうとする。が、その瞬間。ピクシーの中のおおよそ半分の体がズリュッと鈍い音を立てて真っ二つに斬れる。陶器の様に美しい肌は地面に落ちて氷のシミとなった。
『マット……ウィル……』
オリビアはそのシミの中にはいなかったが、よく遊んでいたピクシーたちは目の前で死に絶えた。
「羽虫……今の時代を教えろ……」
刀を抜いた男は切っ先をオリビアに向けて脅しにかかった。その後ろには目を開けてすらいなかった他七人の水死体たちが立っていた。生唾をごくりと飲んで敵意はないと両手を挙げるオリビア。
『ご、ごめんなさい……いつって言えばいいか分からなくて……』
怯えた様子で答えるオリビア。これだけ脅し倒して何も言えないと言う事は知らないのだ。男は刀を納刀すると、仲間と思われる七人に目を向けた。男が三人、女が三人と仮面とマントで姿形を隠す奇妙な人物が一人の構成。見た所年齢もバラバラで、上は七十前後、下は十代前半といったちぐはぐな連中だ。
「監獄が解かれた。我ら”八大地獄”が解放されるとは……世も末であるなぁ……」
しみじみと言った様子で語りかけている。オリビアはたまらず質問した。
『……あなたたちはいったい……』
男はオリビアを一瞥する。他のピクシーたちは怯えて縮こまっている。
「ふむ……」
男は振り向きざまに再度刀を納刀する。その行動に奇妙な違和感を感じるが、その答えはすぐに現れた。
メリッやミリッといった音が背後から聴こえる。音の方に目をやるとオリビアを除いたピクシーたち全員の体が真っ二つとなっていた。
あの一瞬で刀を抜き、見えない程の鋭い斬撃であっという間にオリビアを抜いたピクシーたちを切り殺してしまった。
「時代がわからぬというなら羽虫よ。我らをこの地より先の大地へ案内せよ。逆らえば切る。それらと共に地獄に行きたくなければ従え」
有無を言わさぬ命令。悲しむ暇も無いことを悟るオリビアに歯向かう意思はない。
『わ、分かりました……』
何者かも分からない人たちを前に半泣き状態で承諾する。水の精霊が恐怖した氷の融解。その一端を噛み締めながら案内のため、オリビアは男たちの前を飛んだ。
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