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第五章 戦争
第四話 プランB
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「洗脳……ですか?」
「そうだ。洗脳だ」
ラルフが一晩考えて捻り出した案だ。
「いやぁ……考えていただいて何ですが、洗脳は無理があるんじゃ……」
この世界における精神系魔法はあまり発達していない。その分野を究めようとする者がいないのだ。魔族と人類が日夜生存圏を懸けて争い合っている歴史で、無駄な能力に割ける余裕など存在しない。
長寿であり国が秘匿されて常に安全な場所にいるはずのエルフが研究者に向いているが、この反応だと精神系の魔法などにはそもそも興味がないか、文献が少ないが故に修めるだけ無駄だと馬鹿にされているかのどちらかだろう。
「だからこそハッタリに使える」
その反応にニヤリと笑う。グレースもハンターもラルフの反応に疑問しか抱かない。二人で視線を交わし合い首を傾げる。
「こっちには特別すぎる魔道具がある設定で押し通すのさ。最初こそ脅されてたが教える気がなかったハンターとグレースは俺達に嘘を教えていた。でも聞けば聞くほどに整合性が取れず嘘だと気付いた俺がその魔道具を使って洗脳し、エルフの里を暴いたって寸法だ」
実に荒唐無稽だ。脅されて仕方なくというシナリオから発想を飛ばしたのだろうが、これは正直すぐにバレる。
「……分かりました。その洗脳が効いたとします。しかしどうやってそれを信じさせるんです?」
ハンターは一応乗ってみる。設定を汲んだとして、それを信じてもらえなければ意味がない。信じさせる何かがないとこの考え自体が御破算。大体、精神魔法に関する魔道具など存在しているのかも怪しいものをどうやって信じさせるのか?
「実はこの設定を考えついたのは俺の隣で寝ていたこいつのおかげなんだ」
そういうとミーシャの頭を撫でた。
「私?」
その様子を見てグレースも「あっ……」と思い当たる様な顔を見せた。自分の鞄に手を伸ばす。つい少し前、アルパザにて資料集めをしていたグレースの探査で行きついた仮説が精神感応や精神操作、鏖を操るかもしれない神域の魔道具の存在だった。
会ってみれば何の事も無い、信頼関係を気付いている仲間という感じだった。
(いや、それがそもそもおかしいのか……)
魔族と人類。ミーシャとラルフには深くて埋まらない溝があるはずなのに、どう言うわけか仲間であり世界を混乱に貶める要因となっている。
「……今聞くのも何なんですけど、お二人の出会いは?何故そこまでフランクに……」
気になるのも無理はない。ミーシャはラルフを見る。
「簡単に言えば命の恩人だね」
「死にかけていたミーシャを俺が助けた。その後は……まぁ色々だな」
おとぎ話の導入部分の様なヒロイックな話だ。史上最強の魔王を救う一般人。神域の魔道具も荒唐無稽だが、それ以上に荒唐無稽だと思える。
(そう考えれば魔道具って割とアリなのかも……?いや、この話を聞いてないと結局信じてもらえないや)
フッと鼻で笑って自分の考えを隅に追いやる。
「そう言う事でしたか。ウチもその話を聞くまではラルフさんが考えてくれた魔道具を正直疑ってました。これは森王に渡そうか迷っていた報告書です。単なる下書き程度ですが。もしこれを本気で考えていたというなら研究員の称号を剥奪されるかもしれませんね」
鞄を開いて報告書の束を出した。ラルフに手渡すとザッと目を通した。
「……おあつらえ向きの資料だな。これが下書きというのも実に良い」
グレースに返すとミーシャに向き直る。
「よしっミーシャ!少し演技をしよう。俺に操られている演技だ」
「え?え?どう言う事?」
肩をガシッと掴んで目を見るラルフ。理解が及ばず焦るミーシャ。
「何をしてるんです?」
そこにブレイドが戻ってきた。
「洗脳された奴の練習だ。お前もするか?」
アルルもウィーもまだ夢の中の現在、意味の分からない事を始めるラルフ。グレースはこの行動が理解できるだけに乗るべきか真剣に考える。ハンターは多少呆れ気味になった。
「……ラルフさんは正気なのか?」
「そうだ。洗脳だ」
ラルフが一晩考えて捻り出した案だ。
「いやぁ……考えていただいて何ですが、洗脳は無理があるんじゃ……」
この世界における精神系魔法はあまり発達していない。その分野を究めようとする者がいないのだ。魔族と人類が日夜生存圏を懸けて争い合っている歴史で、無駄な能力に割ける余裕など存在しない。
長寿であり国が秘匿されて常に安全な場所にいるはずのエルフが研究者に向いているが、この反応だと精神系の魔法などにはそもそも興味がないか、文献が少ないが故に修めるだけ無駄だと馬鹿にされているかのどちらかだろう。
「だからこそハッタリに使える」
その反応にニヤリと笑う。グレースもハンターもラルフの反応に疑問しか抱かない。二人で視線を交わし合い首を傾げる。
「こっちには特別すぎる魔道具がある設定で押し通すのさ。最初こそ脅されてたが教える気がなかったハンターとグレースは俺達に嘘を教えていた。でも聞けば聞くほどに整合性が取れず嘘だと気付いた俺がその魔道具を使って洗脳し、エルフの里を暴いたって寸法だ」
実に荒唐無稽だ。脅されて仕方なくというシナリオから発想を飛ばしたのだろうが、これは正直すぐにバレる。
「……分かりました。その洗脳が効いたとします。しかしどうやってそれを信じさせるんです?」
ハンターは一応乗ってみる。設定を汲んだとして、それを信じてもらえなければ意味がない。信じさせる何かがないとこの考え自体が御破算。大体、精神魔法に関する魔道具など存在しているのかも怪しいものをどうやって信じさせるのか?
「実はこの設定を考えついたのは俺の隣で寝ていたこいつのおかげなんだ」
そういうとミーシャの頭を撫でた。
「私?」
その様子を見てグレースも「あっ……」と思い当たる様な顔を見せた。自分の鞄に手を伸ばす。つい少し前、アルパザにて資料集めをしていたグレースの探査で行きついた仮説が精神感応や精神操作、鏖を操るかもしれない神域の魔道具の存在だった。
会ってみれば何の事も無い、信頼関係を気付いている仲間という感じだった。
(いや、それがそもそもおかしいのか……)
魔族と人類。ミーシャとラルフには深くて埋まらない溝があるはずなのに、どう言うわけか仲間であり世界を混乱に貶める要因となっている。
「……今聞くのも何なんですけど、お二人の出会いは?何故そこまでフランクに……」
気になるのも無理はない。ミーシャはラルフを見る。
「簡単に言えば命の恩人だね」
「死にかけていたミーシャを俺が助けた。その後は……まぁ色々だな」
おとぎ話の導入部分の様なヒロイックな話だ。史上最強の魔王を救う一般人。神域の魔道具も荒唐無稽だが、それ以上に荒唐無稽だと思える。
(そう考えれば魔道具って割とアリなのかも……?いや、この話を聞いてないと結局信じてもらえないや)
フッと鼻で笑って自分の考えを隅に追いやる。
「そう言う事でしたか。ウチもその話を聞くまではラルフさんが考えてくれた魔道具を正直疑ってました。これは森王に渡そうか迷っていた報告書です。単なる下書き程度ですが。もしこれを本気で考えていたというなら研究員の称号を剥奪されるかもしれませんね」
鞄を開いて報告書の束を出した。ラルフに手渡すとザッと目を通した。
「……おあつらえ向きの資料だな。これが下書きというのも実に良い」
グレースに返すとミーシャに向き直る。
「よしっミーシャ!少し演技をしよう。俺に操られている演技だ」
「え?え?どう言う事?」
肩をガシッと掴んで目を見るラルフ。理解が及ばず焦るミーシャ。
「何をしてるんです?」
そこにブレイドが戻ってきた。
「洗脳された奴の練習だ。お前もするか?」
アルルもウィーもまだ夢の中の現在、意味の分からない事を始めるラルフ。グレースはこの行動が理解できるだけに乗るべきか真剣に考える。ハンターは多少呆れ気味になった。
「……ラルフさんは正気なのか?」
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