一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第五章 戦争

第六話 エルフェニア

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『……これは……』

エルフェニアを代表する伝説の樹"天樹"。
その巨大樹のうろにある祭壇でエルフの巫女がエメラルドの御神体を前に何かに気付いた。巫女の口から発せられる声は元々の女の声と、その外見とはかけ離れた低音の男の声が混じって聞こえる。

映像を見つめるこの巫女は創造神アトム。この世界を創造した神々の内の一柱。

現在このエルフの体を媒介にしてこの世界に顕現している。

『……おい、そこの』

その声に反応したのは巫女の身辺の世話をする侍女。

「お呼びでございますか?アトム様」

『この国で一番強き者は誰だ?』

侍女は頭を下げる。

「白の騎士団が一人”光弓こうきゅう”でございます。我らの軍で最強の小隊”グリーンケープ”の隊長でもございます」

『ならばその光弓……いや、グリーンケープは動かせる状態なのか?』

「はい。グリーンケープはエルフェニアに常駐しております。森王様の命令があればすぐにでも……」

跪いていた侍女の一人が顔を上げた。

『ならばすぐに森王を呼べ。侵入者だ』

エメラルドのご神体から目を話すこともなく何やら苦々しい顔で何かを見ている。

「はっ、すぐに……」

スッと立って侍女の一人はその場を後にした。エメラルドに映った虚像を観ながら手を固く握る。そこに映るのはミーシャ。元第二魔王”みなごろし”。

――――――――――――――――――――――――

ラルフたちはグレースとハンターに案内されて人通りの少ない所を進んで行く。

ちらほらエルフの民とすれ違うも、ハンターを前にすれば素通りだ。ハンターがいるなら安心だというような風潮がエルフの民の表情からうかがい知れた。

「ハンターは信頼されているんだな」

遠くからではあるがハンターに手を上げて挨拶するような国民もいるくらいだ。

「エ、エルフェニアでは今一番話題の人物ですからね……国民で彼を知らないのはいませんよ……」

グレースは若干背を丸めて隠れるようにコソコソ動いている。ラルフに対する返答も自信無さげだ。

「で、グレースさんは何してるんです?」

アルルはその動きに疑問符を浮かべる。それもそうだろう。ラルフたちの間に入るように身を隠しているのだから。まるで同胞に見られたくないと言っているみたいに。

「な……なんでもない……よ」

この国に入ってから様子がおかしい。さっきまで流暢に喋っていたのに急にどもったり、人陰に隠れようとしてみたり、グレースのこの行動は挙動不審としか言えない。その雰囲気に触れてはいけない者じゃないかと察したラルフが声を上げる。

「しっかし、この国は本当に爽やかだな。こういう平和な国で生まれてたら子供時代も楽しかったろうに……」

昔の自分を思い出しながらため息交じりに周りを見渡す。

「広くて大きくて争いもないような気持ちのいい所ですからね。もし世界がこんな感じだったら戦いで死ぬ人もいないでしょうに」

ブレイドもそれに乗って木漏れ日の映える風景をホッと一息つく様に見ている。洗濯物が良く乾きそうな日の光、物干し竿に干された衣類やシーツがゆったりと風に揺れる。散歩しているエルフやおもちゃで遊ぶ子供など、見ているだけで癒される。

ウィーもミーシャと手をつなぎながらキョロキョロと輝くような光景を見渡している。ゴブリンの丘ではこれほど綺麗な光景を見られなかったからだろう。見ていて微笑ましい。できればこういう平和な所でウィーには安全に暮らしてほしいが、ゴブリンとエルフではうまくいきっこない。ラルフはその考えをすぐさま頭から捨て去る。

天樹に向かって歩くが中々着かない。ミーシャも物珍しさから見渡していたが段々イラついてくる。

「もっと早く行けないの?そろそろ面倒になって来たわ」

その苛立ちは仕方がないと言える。というのもさっきから遠回りして辿り着く意思がないのでないかと思えるからだ。これにはグレースもおかしいと思い始めていた。チラッとハンターを見ると、困ったように頬を掻いた。

「はい……何だかさっきからおかしいんですよ。僕らが入って来た場所は恥ずかしながら最も警備が手薄な所だったんです。なので知らせない限りは気付くはずないんですけどね……」

その話を聞いた途端にブレイドが警戒態勢を取った。背を丸めていつでも走れるように少し膝も屈み気味になる。ガンブレイドの柄を握ると木の枝の上を見ている。それに呼応するかのように枝が揺れる。それを見てハンターがため息交じりに呆れたような声を出した。

「あ~……やりましたね……」

訝しんだのはブレイドだ。自分の行動が何だというのか?ウィーはハンターの言葉の後でミーシャの手に縋りつく。「ウィ~……」と何か言いたげな顔で怖がっていた。

「おい、まさか……」

それにラルフも気づいた。いつの間にか囲まれている。投げナイフをそっと二本取り出す。掌で覆うように隠すと木の枝を注視する。木の上に溶け込むように緑のマントでカモフラージュしているのが見て取れた。同化していたのでぱっと見では分からなかったが、確実にそこにいる。

「一応監視くらいで警戒されていなかったんですけどね。ブレイドくんの動きで色が変わりましたね……」

何の事かと思ったが、つまりブレイドが武器を持ったせいで敵視されてしまったようだ。ここに入った以上仕方ない事だが、戦端を開いたのはこちら側になったようだ。

「……グリーンケープ?!な、なんで……」

グレースもようやく気付いた。そのマントは正にエルフ最強の部隊、”グリーンケープ”の物であると。

「さーて、ラルフさん頼みますよ。例の奴でしっかり騙してくださいね」

ハンターは余裕面でラルフに軽口を叩くが、頬から伝う汗に内心を隠しきれていない事がうかがえる。

「いきなり正念場かよ……勘弁してくれ」
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