一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第五章 戦争

第二十七話 塔内部

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「侵入されただと?!何故そんな事になる!!」

 灰燼かいじんは怒りに任せてダンッと近くにあった机を叩く。この空飛ぶ建造物は、自ら中に引き入れない限り入る事の出来ない難攻不落の要塞。その歴史に幕を閉じたのはみなごろしの襲撃からたった五分程度の短い時間だった。
 ベルフィアは含み笑いをしながら、その慌てぶりに愉悦を感じていた。それに気付いた灰燼はベルフィアに手をかざして魔力を薄く引き伸ばして作った不可視の刃でザクッと喉を切り裂いた。

「……かっ……」

 突然の攻撃に少々驚くが、それだけ余裕がないことを知らしめてるも同じ事。ニヤニヤ笑っている顔を崩さず憐れな老人を見た。

「貴様……」

 バッと手をかざし、無数の刃で顔を切り刻む。

 ザクザクッザクッ……

 肉が勢いよく切られる嫌な音が出る。ベルフィアの体もそれに会わせて跳ね、縛られた鎖がガシャッジャリンッとうるさい音を立てる。
 ある程度切り刻むと攻撃が止み、ガクッと項垂れるベルフィア。普通なら死んでいる。しかし相手は吸血鬼。この程度の傷はすぐに塞がる。数秒の後、何事もなかったように顔を上げた。

「……気は済んだかえ?」

 ベルフィア自身も落ち着いたのか、薄ら笑いで可哀そうな人を見る目に代わっていた。その顔に向けて手をかざすも、思い直して手を下ろす。魔力の無駄だと断じて八つ当たりを控えた。

「ふんっ……とにかく今は一刻を争う……」

 コツコツ……と数歩歩いてしばらく考える素振りを見せた後デスウィッチに目を向ける。

「ふむ、入られたからには仕方なかろうな……儂らの目的さえ達成出来れば良いのじゃ。となればここは事情を話し、奴の機嫌を取るのが良かろう……」

 敵対すれば死ぬ。第四魔王”紫炎しえん”はみなごろしと戦い、命を落とした。その上要塞の防御魔法を簡単に突破するような無茶苦茶な奴と相対すれば、下手すれば何もできずに消滅させられる事態になりかねない。「御意にございます……」老婆もコクリと頷いてその意見に賛同した。

「はっはぁっ!無様無様!!お主らがいくら頭を下げヨうとわらわに手をかけタ時点で終ワりじゃ!!」

「愉快っ愉快っ!」と高笑いをしている。その笑いを静かに見つめる灰燼。ある程度笑った後、ベルフィアは憐れな老人を見据えて言い放つ。

「しかしどうじゃ灰燼とやら…モノは相談じゃが、わらわを解放せぬか?わらわがミーシャ様に口利きしてやっても良いぞ?こノ建物にやって来タノはわらわを探しに来タからじゃ。わらわが無事に戻れば万事丸く収まルと思うが?」

 それを聞いてふっと顔を下げる。その状況を想像しているのだろう。

「ふむ、悪くない……悪くないが、しかし……」

 そうなると研究が一時的に止まってしまう。それは避けたい。この吸血鬼を返さず鏖が引き返す方法。

「……いえいえ、仲間を返さず撤退など……その様な方法ありませぬなぁ……これは正直に申し上げて……どちらかを諦めるしかございませぬ……」

「どちらか、とは?」

「研究の一時中断か……我らの消滅か……」

 ベルフィアは頭を振る。

「いいや、研究ノ永久停止かお主らノ消滅か、じゃ」

「……馬鹿な……」

 老婆は鼻で笑う。しかし灰燼はそれに対して顎に触れながら納得する。

「……いや、その通り。これを返せば今後二度と研究は出来ぬものと思わねばならん……これの所有者は自分の持ち物を手放したりしないじゃろうし、これを持ち帰れたのが奇跡じゃったと言える」

 布を取り去った白い美しい身体を上から下へ、下から上へ眺める。

「どうしタ?わらわに惚れタノかい?」

「婆や……皮膚を剥げ」

「?」何を言われたか一瞬考えたが、それを老婆が承諾した時ベルフィアが牙を剥く。

「寄ルな糞婆ぁ!!おどれら殺すぞ!!」

「へぇへぇ……怖くありませぬなぁ……じっとしててくださいまし……まぁすぐ終わりますので……」

叫び声と鎖の軋む音だけが通路に木霊した。



「……今の聞こえたか?」

 ラルフは耳を傾けて僅かな音を聞いていた。ウィーも目を閉じて探る。しかし、反響しすぎて位置を掴む事が出来ない。ウィーは困ったようにラルフを見上げる。

「駄目か……」

「とにかく進みましょう。中心に行ければもっと分かるでしょう」

 ブレイドは松明を掲げて前を照らす。コツコツ……と石畳を硬い靴で歩くと高い音が鳴る。

「何なんだこの建物は……空間が歪んでるのか?」

 外から見たら明らかに容量が無いように見える単なる塔でも中には無数の部屋が存在する。階段があったり長い通路を歩いてみたりと不思議な空間である。

「掃除大変そー」

 アルルは暗い部屋を覗き込みながら呑気な事を言っている。罠もなければ兵もいない。通路と部屋ばかりで緊張感がないせいだろう。

「アルル。悠長な事言ってないで集中してくれ」

 ブレイドも呆れてアルルを見る。その時ウィーがピタリと止まる。ラルフがそれに気付いて周りを確認し始めた。

「……来たな?」

「えっ?何も居ませんけど……」

「ウィーが反応している。すぐ来るぞ」

 ブレイドはガンブレイドを取り出す。アルルも魔槍を前に突き出す。

「まぁ待て、これだけ部屋があるんだ。何も迎撃だけが能じゃないぜ?」



 ミーシャは外の斬撃が鬱陶しくなってきて、近くの塔に乗り込んでみた。暗くて何も見えない空間。ふわっと白い光源を三つ放つ。外から見たらそこまで難しくないと思った探索も中に入れば大違いだと感じる。

「……こんなに部屋があるの?」

 その辺の扉を開けてみる。中には物があったり無かったりで、それなりに広い。幾らかはダミーだと思ったが、魔族の城や大きな建造物には大概術式を用いて内容量をでかくしたり、魔障壁を張ったりと忙しい。
 この要塞はそれに空飛ぶ機能と透明化を持っている。実に多彩な乗り物だ。第十魔王"白絶はくぜつ"の船"白い珊瑚ホワイトコーラル"以上に多彩かも知れない。ミーシャはため息を吐く。

「はぁ……これは骨が折れるわ……もうラルフ達に合流してこの乗り物を落としちゃおっかな……」

 段々面倒くさくなったミーシャはいつもの力業を考える。どうせ瓦礫の下敷きになってもベルフィアは死なない。ラルフ達を守れれば何と言う事はない。頭の中で整理しているとそれが良いアイデアだと思い始めた。

「……うん。悪くないんじゃない?あっちも中枢に向かってるはずだし、このまま私も行こっと。てゆーかこれに早く気付いていれば別れる必要なかったな……失敗失敗……」

 もう少し効率について考えるべきだった。今さら考えてもどうしようもない。後悔先に立たずだ。ミーシャは怖いものなしといった風にズンズン歩き出した。
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