一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
196 / 718
第六章 戦争Ⅱ

第五話 内紛

しおりを挟む
 クレータゲート。銀爪の城に至る唯一の道に建つ関門。

 ここを守るは魔獣人に尊敬される英傑オルド。筋肉で盛り上がった二の腕を胸の前で組み、力を振るう時を待つ。この時ほど魔鳥人が壊滅状態で助かったと思う事はない。
 空から攻められたらこうしてこの場で食い止める様なことが出来なかった。特に「稲妻」は攻城戦に特化した合体魔法を用いるし、「竜巻」がいたら羽の生えた鰐”エアリゲーター”を食い止めるのにも苦心していた事だろう。
 その上、「牙狼」がやられた事で偵察も疎かになりがちであり、こちらが圧倒的に不利とは言え、反逆軍側の攻めはかなり鈍化している。この三部隊がいない事はせめてもの救いと言えた。

 そして幸運な事に虎の魔獣人部隊「王の護衛ロイヤルガード」と、武器武闘の達人集団である大猿の魔獣人部隊「岩拳」や、地上にて最強の熊の魔獣人部隊「豪傑」の所謂戦闘特化型部隊が軒並みこちらの味方という事。その他にも伝令係の蜥蜴の魔獣人部隊「壁走」や攻守ともにバランスの良い豹の魔獣人部隊「飛び牙」など「王を守る」という大義を持った兵士達が銀爪を守ってくれている。僅かばかりの魔鳥人が飛んで行っても銀爪に対峙するどころか顔すら見えぬ間に駆逐されているだろう。

 しかしまだまだ気が抜けない。向こうは自分たちの生活と愛国心を掲げて国民を扇動したのだ。そのせいで街に兵士を配備する間に抗議運動からの紛争勃発。城内でも分裂が生じて逃げ場を失い、籠城戦に追い込まれた。支援物資、外からの援軍が期待できない以上牽制されたらジリ貧は目に見えているが、反逆者の多くがこれを最上の機会と思い込んで攻めてきているので、図らずも互角の戦いとなっている。
 だが紛争が収束した時の事も考えると、あまり調子に乗って攻撃するなど出来ない。国民にはまた元の生活に戻ってもらわなければならないからだ。国は土地に出来るものではなく民が集まって出来るものである。それもあって戦闘特化の部隊を表に出せずに裏で腐らせていた。我慢を強いるのは酷だろうが、今後も銀爪の国である為に今は待たねばならないのだ。

 オルドは突き立てた斧を引き抜くと前方を見やる。見えたのは大きく羽を開いた鳥のマークに雷のマークをあしらった魔鳥人部隊「稲妻」の旗。鰐に翼の生えたエアリゲーターの旗に、ビルデ伯爵の似顔絵の旗など多くの旗が上がっていた。一番多かったのは稲妻の旗で、そこには反逆軍リーダーのシザーがオルドを睨みつけていた。

「久シ振リダナ、シザー。国ニ尽クシタ貴様ガ反旗ヲ翻ストハ夢ニモ思ワナカッタゾ」

「買い被りだなオルド殿。吾輩はリカルド様に忠誠を誓ったのだ。あのバカ息子などハナっからどうでも良かった。それを言うなら貴殿こそ何故未だあの半端者の尻拭いをしているのか理解に苦しむのだが、如何に?」

 その言葉を聞くなり斧を横薙ぎに振るう。それと同時に真空の刃が飛んでくる。砂塵が舞い上がり飛んでくる凄まじい衝撃波。相対する反逆軍は驚きのあまり固まってしまうが

「第一陣前へ!」

 シザーはその中にあってハッキリとした声で命令を下す。その声にビクッとなって前方にいた魔獣人達がさらに前に出た。彼らは羊の魔獣人。さっきまでビビって固まっていたとは思えないほどキビキビ動いてシザー達の目の前でひと塊りになった。

「硬化!!」

 その瞬間、言葉に合わせてフカフカの羊毛が鋼の様に黒く輝き、モコモコの鉄の塊が姿を現す。迫る衝撃波は羊毛に防がれて火花を散らしながら霧散した。

「第二陣狙え!」

 その言葉と共に鋼鉄の羊毛の影から杖が構えられる。杖を構えるのは山羊の魔獣人。「メェ~」と言う鳴き声に反応して杖の先端に埋め込まれた宝石が輝き始める。オルドも黙って見ていない。斧を背中に付くほど振り上げてジッと構える。カウンターを放つつもりなのか筋肉が盛り上がり全身から湯気の様に闘気が立ち上る。

「……放てっ!!」

 シザーの号令で一斉に火球の魔法を放つ。その数は十数個とあまり多く感じないが、威力が強いので知るものが見れば危険度も分かる。それを良く知るオルドは迫り来る火球に対して思い切り斧を振り下ろした。ドゴンッと凄まじい音を鳴らして砂塵を巻き起こし、砂の壁で火球を防いだ。勿論ただの砂塵ではない。魔法を止めるのは同威力以上の魔法だけなので、振り下ろした瞬間に魔力を地面に叩きつけて簡易的な魔障壁を作ったのだ。

「全く……図体の割りに繊細な仕事ぶりに感服しますなぁ。……しかしっ!」

 シザーが手を前にかざすと後方から五体の回転する大きな玉が躍り出た。羊毛の壁の前に出ると、その玉から鋭い針が無数に飛ぶ。同時に山羊の魔獣人が次の魔法を放つ準備をし始める。砂塵のせいで前の見えないオルドに放った完璧な奇襲に思えたが、オルドの金色の目は砂塵を透かして全てを見ていた。

「ゴオォォォッ!!!」

 凄まじい咆哮とともに衝撃波が発生。その勢いに針の勢いが止まり、山羊の魔獣人は集中力が切れてせっかく準備していた魔法も打ち消された。
 一瞬耳が利かなくなり、さらに心胆から震え上がる恐怖は聴くもの全ての足を竦ませる。不味いと思ったシザーはすぐさま槍を構えて応戦に打って出る。しかしオルドは不動の構えで動く事なく佇んでいた。

「馬鹿な……完全な隙だったはず……ふっ、随分と余裕ですなぁオルド戦士長」

「顔ヲ付キ合ワセレバコウナル事クライ分カッテイタハズダ。オ前ノ指揮ヤ作戦ハ完璧ダトシテモ唯一絶対ノ個体ニハ勝テンノダ」

 斧を肩に担いで見下した態度をとる。

「……身につまされる思いだ……鏖との一戦を思い出す。それで……何故追撃の手を緩めたのかな?もしや弱すぎるが故、とでも言うつもりか?だとするなら不快極まりないが……」

 反逆軍は有り合わせの軍。統率が取れてなかったり攻撃にムラがあったりと色々あるものの、戦士としての矜持は少なからず存在する。シザーを固めるのはそれなりに強い部隊であり、オルドがいくら強いといっても言って良い事と悪い事があるというもの。

「待ッテイル」

 その答えは簡潔だったが、簡潔すぎて何を言いたいのか謎だった。

「……何を?」

 当然の答えが返ってくるもオルドは少し遠くを見つめたまま黙ってしまった。

「……埒が明かないな。まぁ、仕方がない……」

 スッと手を上げて攻撃の指示を下そうとするもその手が下りる事は無かった。

……ドォンッ

 遠くの方で何らかの爆発音が聞こえてくる。現在戦闘を開始しているのはここにいる部隊だけで他は牽制しているはずだし、何人か偵察に出してはいるが、勝手に戦うものなどいないはずだ。もっと言えば城に用があるのに、ここより後方の爆音は不可解極まりない。

「何事だ!?」

 驚きで声を荒げるシザー。しかしその問いに答えられる部下はいない。

「来タカ……」

 オルドは斧を地面に突き立てると腕を広げた。

「はっ!まさか挟撃か!?」

 オルドの反応を見て戦々恐々とするシザー。オルドはその問いに小さく首を振った。

「違ウ。俺達ガ小競リ合イヲシテイルノニ乗ジテ、アニマン共ガ攻撃ヲ仕掛ケタノダ」

「そんなはずはない……アニマンの動向は逐一報告を受けている。未だ国の境界線で手をこまねいているはずだ」

 アニマンは策を知らぬ猪突猛進タイプの蛮族。動き出せば子供でも動向を探れる。アニマンは魔獣人に匹敵する身体能力を持ち合わせる。正面から一対一で戦って遜色が無いのを良い事に戦略を重きに置いていないのか、それとも策を卑怯と断じて突っ込むのか。いずれにしても考えなしに来るので分かりやすい。

「”強力”ナ後ロ盾ガアレバドウダ?ソウダナ……例エバ”白ノ騎士団”、トカナ」

 あり得る話だ。この紛争を利用して魔獣人の絶滅に各国が動いた。

「だとしたら早すぎる。まるで図った様に……」

 内乱が始まったのはごく最近だし、アニマンが知らせたとして集合しようにも時間はそれなりに掛かる。この事態を想定して集まっていたとでも言うのか?

「……サァドウスル?我等ノ最大ノ敵ハ、果タシテドチラカナ?」

 オルドが突然斧を地面に突き立てたのは攻撃の意思は無いとアピールする為である。

「……これで終わったわけでは無い。必ずツケを払わせるぞ」

 シザーは踵を返して立ち去ろうとする。

「待テ。ココハ共闘スベキ所ダ。バラバラニ動イテハ奴等ノ思ウ壺ダ」

 その言葉にシザーはピタリと立ち止まる。部隊の面々も不安そうな顔でシザーを見るが、シザーはオルドを肩越しに見ると一言言い放つ。

「戦場で会おう」

 その言葉以降はもう振り返る事はない。オルドは当てが外れた事に落胆するも、結局は同じ方向を向いて戦うのだ。修正するだけだと自分に言い聞かせ斧を担いで門を開いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...