一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
212 / 718
第六章 戦争Ⅱ

第二十一話 予測可能、回避不可能

しおりを挟む
「いやっほ~~!行けーっドラゴーン!」

 バサァッと羽を羽ばたかせて宙空を舞うドラゴン。その背中にはミーシャとラルフとアンノウンが三人で乗って空中遊泳を楽しんでいた。ミーシャはラルフのお腹に手を回してきゃっきゃしている。自分が飛ぶのに比べれば遅いものの、何もせずに飛んでいるこの感覚が楽しい気持ちを湧き上がらせる。

「うおおっ!!マジかよ……むちゃくちゃ怖え……!!」

 ラルフは背中にあるコブのような突起に振り落とされないようにしがみつく。ほとんど半目開きで楽しむ余裕など存在しない。

「大丈夫!私が支えているからどうって事ないよ!」

 ドラゴンの召喚者アンノウンはラルフの草臥れたハットが飛ばないようにそっと手を置いている。

「確かに大事なものだけどそりゃちょっと違うんじゃねぇの!?」

 アンノウンの提案でこうして飛ぶ事になったが、軽く後悔していた。固定器具がないので手を離せば一巻の終わりという恐怖。アルルの浮遊魔法で浮かんでいる方が遥かに安全だし、地上で歩いて移動しているベルフィアたちが何倍も羨ましく感じる。背中にいるミーシャだけがラルフにとっての命綱だ。
 先程、ゼアルたちと一時は戦闘一歩手前まで睨み合ったが、ハンターが恩を返すという名目で場を丸く収めてくれた。ちょっとした小競り合いこそあったものの戦う事なくみんなで城を目指すこととなった。

「こんな経験本来あり得ないよ?少なくとも私の世界には無かった!楽しまなきゃ損さ!」

 その眩しい笑顔が目に入る。アンノウン。名前も存在すら謎めいた人物。守護者ガーディアンの中では一番大人びていて、どんな状況でも動じない芯の強さを感じさせる。
 だがこの時の顔は本当に楽しそうに笑う十代の若者を連想させた。きちんと年頃の子供だと安心する。この状況には全く安心出来ないが……。

「ん?……おい!あれなんだ!」

 ラルフは雲の上から急降下する人影を見た。天から舞い降りる天使の如き羽を生やしたその姿は翼人族バードだ。一見すると羽を傷付けて落ちて行くのを想像するが、槍を掲げて直下する姿は落ちる速度を利用した攻撃だと分かる。

「ああ!風神のアロンツォという白の騎士団の一人だろう!羽が生えていたのはあの人だけだったよ!」

 その名前を聞いて目を見開く。

「アロンツォって……あのアロンツォ=マッシモか!?デーモン小隊を一人で壊滅させた天空の覇者の!?」

 魔族が人族より強いのは周知の事実だ。軍の指南書には魔族一体に対し五、六人で囲むように書かれる程その差は歴然。特にデーモンは制空権を持つ面倒臭い魔族。地上戦ですら勝ち目がないのに、空中に飛ばれたら勝ち目など皆無。それに対しアロンツォは一騎駆けでおよそ二十体前後を死に追いやった。風神の名は伊達ではない。

「誰それ?」

「私も彼の自己紹介を受けただけでそこまでは知らないよ!やはり君は相当な情報を持っているみたいだね!」

 褒められるほどではない。この世界で生きていればこのくらいの知識は嫌でも入ってくるだろうと思っているからだ。ミーシャにはこんな知識は必要ないから何とも言えないが、ラルフにとって情報は武器であり力だ。知らないよりは知っている方が得することが多いので収集しているに過ぎない。

「それほどでも!……というかアロンツォが突撃してるってことはあそこに何かあるのか?」

「行ってみるかい?私たちの目的地は一応城だけども?」

「行ってみようよ!そんなに城から離れてないからそのまま歩いていけるし!」

 それはラルフにとって名案だった。ドラゴンの背中は不安定すぎてどうも落ち着かなかったから。

「ミーシャもこう言っていることだ!あそこに降りてくれ!」

「OK!」

 アンノウンはサムズアップで了承するとその場所まで急降下し始めた。

「ぎゃあああああっ!!」

 ジェットコースターに乗ったものなら誰でも体験するであろうあの浮遊感と速度を一身に受けたラルフはおもわず叫ぶ。(もうドラゴンの背中に乗るもんか!!)と心で固く誓った。



「……あ?」

 特異能力が開花し、喜びから天を仰いだ銀爪の目に飛び込んできたのは紅く巨大な何か。よく見ればドラゴンであることが分かる。

「何でここにドラゴンが……」

 キィンッと目が虹色に光り、未来予知を発動させる。突如授かった能力故、まだ任意での操作は難しいが中々様になってきた。とは言え今回のは特に危ないことはない。どこに降り立つかが見えただけだった。

「なるほどね。俺に用があるらしい……」

 これからこの能力を駆使して白の騎士団の面々を駆逐しようとしていた矢先、つまらない乱入者がやってきたようだ。無敵と化した今の自分に怖いものなど存在しないが、この手の巨大な魔物と戦うのは骨が折れる。面倒この上ないが、未来予知の試運転には打って付けだろうと自分を慰めた。ドラゴンは銀爪と騎士団の間に割り込むように降り立った。

「ギュエアアァァッ!!」

 突然の襲来と咆哮に騎士団側は困惑を隠せない。アウルヴァングと正孝は耳を塞ぎ、強烈な鳴き声に耐える。

「……なんだぁ……?」

 体の痛みを感じつつ、ゆっくりと立ち上がるガノン。意味不明な現状を何とか理解しようと目を凝らす。ドラゴンの背中に乗る人影が三体。敵か味方か定かではないが、ふとこんな言葉が頭を過ぎる。

「ドラゴンライダー……お伽話だと思ってたが、実際いるんだな……」

 そんな詮無いことを考えつつ重たい足を引きずって戦いの場に赴く。ドラゴンが頭を振って銀爪を威嚇する中、呑気な声が聞こえてくる。

「あれ?正孝じゃないか。ここで戦っていたのか?どうりで居なかったわけだ」

「アンノウン!何でここに……てか何だよそれ!?」

 正孝はアンノウンの存在に対して忌避感を感じている。能力を見せないことは置いといても、自分を一切晒すことのない気味の悪い存在だ。そんな奴が突然ドラゴンで戦いの中に入り込んできたら声も大きくなる。アンノウンの隣には目を回している男と髪の長い女がドラゴンに跨っていた。

「……雑談は後にしろ」

 髪の長い女、もといミーシャはバッとドラゴンの背中から飛び降り、銀爪の前に降り立つと腕を組んで睨みつける。

「おいバカ息子。お前国を崩壊させるなんてバカなことしたもんだな」

「はっはぁ!みなごろしじゃねぇか!!ご無沙汰だったなぁおい!!」

 ミーシャは眉をピクリと持ち上げる。

「私を前に随分余裕じゃないか?……今回はお守りが居ないみたいだが、一人で勝てる自信でもあるのか?」

「たりめーだタコ!俺は無敵の銀爪様だぜ?俺に殺されたくなきゃ尻尾巻いて逃げるこったなぁ!ま、逃げられりゃぁの話だがよぉ!」

 髪が乱れて右頬と右肩に傷を負いながらもケタケタと笑う。周りを見渡した感じだと何人かの騎士団を相手に互角の戦いを繰り広げたと見える。一応一人は伸びているので銀爪が一歩リードといったところだ。

「余らの戦いに乱入するとは何者か?そこの魔王が鏖とほざいたが……まさか本物か?」

「おぉいコラ、唐揚げぇ……ママたちの会話に入ってくんじゃねぇよ。黙って成り行きを見守りな」

 銀爪はとにかく上から目線で煽り倒す。

「良い度胸だ……ここで死んでも文句はないな、銀爪……」

「ん~?つーことは逃げねぇのか?くだらねぇ意地張って死ぬこたぁねぇのに、よっと」

 キィンッ

 何度か使用するうちに特異能力の発動に慣れてきた。要はスイッチの切り替えだ。自分の能力さえ分かれば、その力を引き出すように精神の内側に訴えかける。これに慣れたら息をする様に能力の発動が可能となるだろう。自分の今後の可能性を考えてニヤニヤしていると幻視ヴィジョンが見えた。

「……ん?」

 その映像は全く好ましくないものだった。何が起こったか定かではないが、自分の腹がミーシャに貫かれている。

「スゥーッ……そんなはずは……」

 自分の動き出しを変えてみる。さっきの映像は多分調子付いた際の油断が生んだ隙を突かれたのだ。やられてしまう光景まで見えるとは精神が病みそうだが、これはかなり良いことだ。この瞬きの間に何度でも試すことが出来る。
 右から攻める。左から攻める。上から攻める。潜り込んで、遠距離で、フェイントを入れて……その後、十通りほど試して気付く。未来が変わらないことに。

「え?……あれ?嘘……え?」

 脂汗がにじむ。
 予知は示したのだ。
 銀爪はここで死ぬと……。

「……覚悟は良いか?銀爪っ!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...