一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第八章 地獄

第六話 面倒と不自由

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 アルパザ上空にフワフワと浮きながら町の違和感を探るブレイドとアルル。小さな町だ。浮いていればさっきの騎士達の様に人が集まっているのが見れそうなものだが、建物が邪魔をして見られる範囲が狭いからか、そもそも見ている箇所が違うのか、見つけるのに難儀していた。考えていても始まらないのでとにかく目を動かす。

「……ん?ねぇブレイド。あれって私達を取り囲んでた人達かな?」

 アルルの指差す方に目をやると同じ連中かは断定出来ないものの、大勢で走って行くのが見えた。もしこっちで取り囲んでいた騎士達なのだとしたら、見当違いの所に走って行っているので完全に巻いたと見るべき。だがどうも様子がおかしい。どこに行くのか確認すると……。

「あっ見ろ!あそこじゃないか?」

 騎士と思われる連中が集まっている。きっとアンノウンとリーシャはあそこで戦っている事だろう。となれば下で走っているのは、あの二人に手こずっている騎士の加勢であると思われる。

「急ごう」

 アルルは浮遊魔法でフヨフヨと旋回する。推進力が無いからゆっくりと進み出した。アルルは真剣な顔をしているが、ブレイドは呆れた顔でため息を吐いた。

「……急ごうってば」

「やってるよ。早く飛べないだけで」

「そうか、じゃあ降ろしてくれ」



(撤退する気は無しか……でも攻撃するつもりも無い。一定の距離を保ちながらプレッシャーを与えて、時間が過ぎるのを待っている?)

 アンノウンは騎士達の動向を探りながら一つの仮説を導き出した。

「……加勢が来る?それはちょっと面倒かも……」

 自分達に加勢が期待出来ない以上、ジリ貧になる可能性が高い。今いる人数を相手にするくらいなら準備運動程度に遊んでも良かったが、そういうわけにはいかなくなった。勿論ただの仮説なので、もたもたしているのが何か別の作戦かもしれない。が、加勢の可能性がある以上時間を掛けてはいられない。

「リーシャ!私の所まで来て!」

 アンノウンは膠着状態となったこの場で、より一層響き渡る声を張り上げた。リーシャはその声に初めて敵から視線を逸らした。ハッとして敵を見るが、敵は近付こうとする気配もない。不思議に思いながらサッと後退し、アンノウンに合流した。

「絶対逃すなよっ!」

 騎士達は囲いを狭めてにじり寄る。しかし適切な距離を保ちながら間合いには入らない。

「良いよ良いよ。そのまま近寄んないでよ……」

 アンノウンはボソッと独り言を呟く。リーシャは驚愕して気持ち離れる。

「いや、リーシャは良いんだよ。私の真後ろに居て」

 ホッとして気持ち近寄る。それを尻目にアンノウンは手を地面にかざし、一種のトランス状態に入る。体の奥底に眠る力の根源に手を伸ばし、自分が「こうあって欲しい」想像の生物を形作る。この作業は3DCGの作成に似ている。頭で想像するだけなので一緒にするのは根本的に間違っているが、モデリングや骨格の形成など大体似ている。
 頭の中で全ての工程を終えると、いよいよ召喚だ。自身が持つ魔力をベースに思い通りの魔物を創造する。自分に絶対忠誠の可愛いペット。

 ズオッ……

 アンノウンのかざした手を中心に魔法陣が形成される。驚いた騎士達は後ずさりして魔法陣の円の外に出る。何らかの攻撃を想定していての事だ。もし魔障壁なら下がったのは間違いだと言える。魔力が尽きるまで手が出せなくなるからだ。時間を無為に使うのは避けたい。時間を掛ければ新たな脅威が待ち構えているかもしれないからだ。
 そんな不安は魔法陣から這い上がる怪物によって恐怖に書き換えられた。

「こいつは……なんだ……!?」

「何って?私のワイバーンだよ」

 ヌゥッと鎌首をもたげた翼竜は、鼻息荒く騎士達を睨みつけた。息を思いっきり吸い込むと顎が外れるんじゃ無いかと思えるほど大きく口を開けた。

「ギィアアアアァァッ!!」

 心胆が震える感覚は何度経験しても慣れないものだ。見上げる程大きなドラゴンを前に恐怖で萎縮し、動きたくても動けない金縛り状態となる。その内にアンノウンはワイバーンの背中に飛び乗った。

「さぁリーシャ、行こう。長居は無用だよ」

 リーシャはアンノウンが差し出した手を見て頷いた。軽やかに飛び乗ると、ワイバーンが動き出す。猫のようにしなやかな体は一歩助走をつけて飛び上がった。

「危ない!!」

 助走の動線上にいた騎士は回避を行い、その隙に舞い上がったワイバーンを見送る以外道はなかった。結局、加勢が間に合う事なく二人を取り逃がしてしまった。いや、しかしこればかりは仕方がない。何をどうやったのか定かではないが、魔物を地面から出現させて飛び立つなど誰も予想しようがない。
 アイテムや装備すら整っていれば、あの大きさの魔物と対峙することは出来る。または団長である「魔断のゼアル」がこの場に居れば勝てたかもしれない。
 全ては無い物ねだりだ。今はどう足掻いても指をくわえて見ている事しか出来ない。部隊長がおもむろに兜を外し、力一杯地面に叩きつけた。

「くそっ!!」

 ガシャッと金属がぶつかり、擦れ合う音が辺りに響く。怒りから鼻息荒く肩で息をしている。その様子に誰も近寄れず、自分達もお手上げといった感じで肩を竦ませていると、ようやく第四部隊が到着した。

「何があった!?さっきの鳴き声はいったい……」

 第四部隊の部隊長だろう人が第二部隊長に声を掛けた。第二部隊長は頭を振って気持ちを落ち着けると第四部隊に報告する。

「奴らに逃げられた。どうやったかは分からんが魔物を侵入させていた。呆気にとられている間に空の上だ」

「なんっ……すぐに上層部に報告を……!」

「それは俺がする。第四部隊は引き続き侵入者の捜索に当たってくれ」

 第四部隊は先ほど侵入者二名を取り逃がしている。顔を知っているのはこの部隊なので当然の指示だろう。

「……了解、俺達は引き続き捜索に当たる。なぁ大丈夫か?」

 側から心配される程の顔付きだった。気持ちこそ落ち着いていたが表情は正直だった。

「ああ、少しおちょくられた様に感じて苛立っただけだ。大した事はない。大丈夫だ」

 今から一連の流れを報告するのかと億劫になりながら、叩きつけた兜を拾った。それを遠巻きに見ていたブレイドとアルルは内心ホッとしながら顔を見合わせていた。

「良かった。何とも無かった様だな。……俺達も戻ろう」

「え~……まだ観光したかったなぁ……」

 アンノウンとリーシャ、ブレイドとアルル。この町とは縁もゆかりもなく、知られていなかった二組が狙われた現状を鑑みれば、もう自由に買い物など出来ようはずもない。アルルはがっくりと肩を落とした。

「いずれまた自由に買い物出来る日が来るさ。その時こそみんなで観光しよう。それまでは我慢だ」

 自ら選んだ境遇だ。立場が好転するまでは辛抱せざるを得ない。

「……分かってる。早く帰ろう」

 ブレイドとアルルはこそこそと路地裏に入った。アルパザの底を目指す間、手を繋いで歩く二人の背中は不自由と物足りなさで哀愁が漂っていた。「また次がある」それを心の拠り所にし、顔を上げて拠点に戻っていった。
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