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第八章 地獄
第十三話 海
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「ビーチィ?それってつまり泳げるのぉ?」
「泳げるよ。他にも観光も出来るし、何なら宿だって借りられる。俺達の立場上考えられない厚遇だな」
空王との謁見を終えて要塞に帰宅したラルフとミーシャは、要塞内に散っていた仲間を集めて事の経緯を話した。エレノアが質問する。
「取り敢えず空王って人に敵意は無さそうだけどぉ、全面的に信用しちゃっても良いの?」
「んー……私は良い人だと思ったし、信じてみたいとは思うけど……」
ミーシャはエレノアの指摘に弱気ながらもふわっとした持論を返す。
「……信用に関してはどうとも言えないけどさ、信じてみる事しか出来なくないか?」
ラルフはミーシャの肩を持つ。内心エレノアの意見に共感しているが、警戒すれば逆に翼人族の気持ちを害する恐れがある。相手が気持ち良く手を差し伸べているのだから、敢えて手を取ることも大事だろうと考えた。
「川でなら何度か泳いでたけど、海って初めてです!!」
アルルが興奮気味に話しに入る。目をキラキラさせながら今すぐ泳ぎたいと嬉々としてアピールしている。その剣幕に押されたエレノアは微妙な顔をしながら「そ、そうなの?」と困惑気味に返答した。静観していたアンノウンはおもむろに口を開く。
「良いんじゃないかな。下手に疑わずに相手の出方を伺うのもまた策略ってもんだよ?」
ここでブレイドも口を挟む。
「しかしその策略の担保は俺達自身だと考えたら慎重になるのも当然でしょう。泳ぐとなれば裸同然。襲撃された場合は一溜まりもありませんよ?」
ブレイドはエレノア側だ。安心安全が完璧に保障されるまでは危険であると考える。アルルの気を削いでしまうことになるだろうが、命の方が大事。どちらも譲れない主張をし、どちらも捨てきれない説得力がある。そんな中にあって長女のメラが声をあげた。
「それではこういうのは如何でしょうか?まず何人かで海に泳ぎに行き、本当に敵対心はないのか、安全が保障されているのかを精査し、何事もなければ次の日は別のグループが泳ぎに行きますのよ。敵で無いなら襲うことはしませんから。無論、ラルフには全グループに参加してもらいますわ」
バードの目的がいまいち分からないなら確認してみようと、そういうことらしい。この案にも当然疑問が出る。
「えっ……何で俺が?」
「ここに招待されたのは本来ラルフだけ、ですわよね?となればあなたが狙われているだろうことは明白ですわ。それにあなたはまともに戦えないでしょう?捕獲が容易な相手を狙うのは当然。気を抜いた時に行動に移すでしょうし、裸同然というのはそれこそ襲撃の的。何もなければ信用にもつながりますから、アンノウンさんが仰った通り、こちらはこちらなりの策略で対抗するのが宜しいかと考慮いたします」
なるほど。元々はラルフが一人で来るようにアロンツォが身を呈して招待状を持ってきていた。何の為か定かではないが、ラルフを狙っていることは間違いがない。
「ラルフを案山子に使って敵を泳がせ、私達も泳ぐ。まさに二つの意味ってやつだね」
アンノウンが上手いこと言ったような空気で得意げになっている。
「モシ奴等ガ敵ナラ手薄ニナッタ要塞ヲ狙ウ可能性モアルケド、コノ作戦ナラドッチニモ戦力ヲ置ケルカラ大丈夫ネ」
「おっと魔障壁があルことを忘れとルんじゃないかえ?バード如きノ攻撃では要塞に傷つけルことも適うまい。そこは心配すルだけ無駄というもノじゃ」
ジュリアとベルフィアが睨み合う。「可能性ノ話デショウガ」と「それは物理的にありえん」の言い合いに発展していた。
「……そりゃまぁ良いとして、水着なんて持ってないぞ?俺という男がいる中にあって真っ裸ってわけにはいかねぇだろ」
そりゃそうだ。姉妹達もラルフの視線を想像して体を抱くように守る態勢に入った。他の女性陣も同様で、恥ずかしさからラルフをジト目で見ている。ミーシャにまでそんな顔をされたのは心外だったが、女性である以上当然だろうと飲み込む。
「え?私は平気ですよ?」
アルルはキョトンとした顔でラルフを見た。アルルはまだ若い。男の悪意に晒されずに清く育ってきた彼女には然程の忌避感もない。泳ぐ場所が広大であるか否かくらいの考えしか持ってないだろう。その凶悪な肢体をワンピースの中に秘めながら性的無知を晒すのは、男の本能の部分が刺激されてしまう。
(落ち着け……相手は未来ある女の子だぞ……)
女ばかりの所で性処理に困っているのがこの興奮の大きな要因だろう。どこかで発散場を見つけないとそろそろ取り返しのつかないことになりそうだ。その点ブレイドは大丈夫なのだろうか?今度男同士の会話を提案すべきだと心のメモ帳に書き記した。
アルルの放った一言で静まり返った場の空気をアンノウンが破った。
「なになに?みんな気づいてなかったの?私が服屋で買った中に水着があったでしょう?」
「「「なっ……!?」」」
みんなの目が一斉に紙袋に集中する。気づいてなかったようだ。
「好きなの選んでよ。ただし喧嘩しないようにね」
*
「「海だー!!」」
アルルとミーシャは広大な海に魅了されて大はしゃぎで砂浜を駆け回る。アルルの姿はダボダボのTシャツにホットパンツの出で立ちだ。Tシャツの下にはサラシを巻いて水着の代わりにしている。
やはりというか、アルルに合った水着はなかった。胸が大き過ぎるのは難儀なもので、せっかくの可愛い水着達もそのサイズに悲鳴をあげるしか出来ない。無理して着ればアルルも水着も両方可哀想な事になっただろう。それでも泳ぎたかったアルルは半泣きで懇願し、アンノウンの提案とブレイドの機転で無事解決へと導かれた。この格好こそ、その象徴である。
「おいアルル!まずは荷物を何とかしないとだろ?!」
ブレイドが呼び掛けるも、波打ち際で二人共きゃっきゃしていてその声は届かない。「ふふふっ元気ねぇ」とエレノアも水着に身を包んで微笑む。
「……此処ハ アタシ ニ任セテ アノ子 ノ所ニ行キナヨ。アタシハ泳グ気無イカラ」
ジュリアはぶっきらぼうに呟いた。「いや、そんなの悪いですって……」と荷物を持ち直した。エレノアはそんなブレイドの荷物を肩からスルッと取って砂浜に置いた
「そんな頑なな事言わずに泳げばぁ?きっと気持ち良いと思うけどなぁ」
「イエ、アタシハ大丈夫デス。海ハ何度モ堪能シテイルノデ、荷物ノ番ヲサセテ下サイ」
先ほど海の家風の建物から借りたパラソルを開いて日陰を作る。人狼の姿にビビりまくっていたが、特に何かあったわけではないので、既にラルフ達の上陸は島中に知れ渡っているのだろう。が、安心を誘う目的からか、敵意は感じなかった。
(情報ガ少ナ過ギテ分カラナイ事ガ多イナ。マァ、何カシラ動キガアレバ アタシノ鼻ガ発見スル。ウン、特ニ心配ナイカ……)
警戒は解けないが、常時気を張っているのは精神的に辛いので、気を抜くのも大事だと心に呼びかける。遊ぶことはないが、潮風と砂浜を堪能しようとパラソルの下、体操座りで海の方角を眺める。
「あ、ラルフー!」
ミーシャは嬉しそうに手を振った。そこにはベルフィアとラルフとウィーが立っていた。ミーシャが海辺から急いでラルフに駆け寄る。
「えへへーっ見て見て!この水着可愛いでしょ?」
白いビキニにパレオを巻いている。褐色肌には白が良く映える。この水着をこの場所で見せたくて敢えて別々に移動してもらっていた。
「お、いいじゃん。似合ってるぜミーシャ」
「ええ、とてもお似合いです。ミーシャ様」
二人に褒められ、照れ臭そうにしている。ウィーはキラキラした宝石のような瞳で海を眺めている。これほど広大な水たまりに驚愕と好奇心が湧き上がる。ラルフの手を引いて早く海に行こうとせっついてきた。
「ウィー!!」
「お?ははっ、ウィーも海に行きたいか?それじゃみんなで遊泳と洒落込みますか!」
ラルフが手を上にかざすとミーシャがそれに呼応して「おーっ!」と一人鬨の声を上げた。
ささやかな休息。ラルフ達は青く澄み渡る空の下、白い砂浜と水平線が眩しい蒼い海にその身を預けた。
「泳げるよ。他にも観光も出来るし、何なら宿だって借りられる。俺達の立場上考えられない厚遇だな」
空王との謁見を終えて要塞に帰宅したラルフとミーシャは、要塞内に散っていた仲間を集めて事の経緯を話した。エレノアが質問する。
「取り敢えず空王って人に敵意は無さそうだけどぉ、全面的に信用しちゃっても良いの?」
「んー……私は良い人だと思ったし、信じてみたいとは思うけど……」
ミーシャはエレノアの指摘に弱気ながらもふわっとした持論を返す。
「……信用に関してはどうとも言えないけどさ、信じてみる事しか出来なくないか?」
ラルフはミーシャの肩を持つ。内心エレノアの意見に共感しているが、警戒すれば逆に翼人族の気持ちを害する恐れがある。相手が気持ち良く手を差し伸べているのだから、敢えて手を取ることも大事だろうと考えた。
「川でなら何度か泳いでたけど、海って初めてです!!」
アルルが興奮気味に話しに入る。目をキラキラさせながら今すぐ泳ぎたいと嬉々としてアピールしている。その剣幕に押されたエレノアは微妙な顔をしながら「そ、そうなの?」と困惑気味に返答した。静観していたアンノウンはおもむろに口を開く。
「良いんじゃないかな。下手に疑わずに相手の出方を伺うのもまた策略ってもんだよ?」
ここでブレイドも口を挟む。
「しかしその策略の担保は俺達自身だと考えたら慎重になるのも当然でしょう。泳ぐとなれば裸同然。襲撃された場合は一溜まりもありませんよ?」
ブレイドはエレノア側だ。安心安全が完璧に保障されるまでは危険であると考える。アルルの気を削いでしまうことになるだろうが、命の方が大事。どちらも譲れない主張をし、どちらも捨てきれない説得力がある。そんな中にあって長女のメラが声をあげた。
「それではこういうのは如何でしょうか?まず何人かで海に泳ぎに行き、本当に敵対心はないのか、安全が保障されているのかを精査し、何事もなければ次の日は別のグループが泳ぎに行きますのよ。敵で無いなら襲うことはしませんから。無論、ラルフには全グループに参加してもらいますわ」
バードの目的がいまいち分からないなら確認してみようと、そういうことらしい。この案にも当然疑問が出る。
「えっ……何で俺が?」
「ここに招待されたのは本来ラルフだけ、ですわよね?となればあなたが狙われているだろうことは明白ですわ。それにあなたはまともに戦えないでしょう?捕獲が容易な相手を狙うのは当然。気を抜いた時に行動に移すでしょうし、裸同然というのはそれこそ襲撃の的。何もなければ信用にもつながりますから、アンノウンさんが仰った通り、こちらはこちらなりの策略で対抗するのが宜しいかと考慮いたします」
なるほど。元々はラルフが一人で来るようにアロンツォが身を呈して招待状を持ってきていた。何の為か定かではないが、ラルフを狙っていることは間違いがない。
「ラルフを案山子に使って敵を泳がせ、私達も泳ぐ。まさに二つの意味ってやつだね」
アンノウンが上手いこと言ったような空気で得意げになっている。
「モシ奴等ガ敵ナラ手薄ニナッタ要塞ヲ狙ウ可能性モアルケド、コノ作戦ナラドッチニモ戦力ヲ置ケルカラ大丈夫ネ」
「おっと魔障壁があルことを忘れとルんじゃないかえ?バード如きノ攻撃では要塞に傷つけルことも適うまい。そこは心配すルだけ無駄というもノじゃ」
ジュリアとベルフィアが睨み合う。「可能性ノ話デショウガ」と「それは物理的にありえん」の言い合いに発展していた。
「……そりゃまぁ良いとして、水着なんて持ってないぞ?俺という男がいる中にあって真っ裸ってわけにはいかねぇだろ」
そりゃそうだ。姉妹達もラルフの視線を想像して体を抱くように守る態勢に入った。他の女性陣も同様で、恥ずかしさからラルフをジト目で見ている。ミーシャにまでそんな顔をされたのは心外だったが、女性である以上当然だろうと飲み込む。
「え?私は平気ですよ?」
アルルはキョトンとした顔でラルフを見た。アルルはまだ若い。男の悪意に晒されずに清く育ってきた彼女には然程の忌避感もない。泳ぐ場所が広大であるか否かくらいの考えしか持ってないだろう。その凶悪な肢体をワンピースの中に秘めながら性的無知を晒すのは、男の本能の部分が刺激されてしまう。
(落ち着け……相手は未来ある女の子だぞ……)
女ばかりの所で性処理に困っているのがこの興奮の大きな要因だろう。どこかで発散場を見つけないとそろそろ取り返しのつかないことになりそうだ。その点ブレイドは大丈夫なのだろうか?今度男同士の会話を提案すべきだと心のメモ帳に書き記した。
アルルの放った一言で静まり返った場の空気をアンノウンが破った。
「なになに?みんな気づいてなかったの?私が服屋で買った中に水着があったでしょう?」
「「「なっ……!?」」」
みんなの目が一斉に紙袋に集中する。気づいてなかったようだ。
「好きなの選んでよ。ただし喧嘩しないようにね」
*
「「海だー!!」」
アルルとミーシャは広大な海に魅了されて大はしゃぎで砂浜を駆け回る。アルルの姿はダボダボのTシャツにホットパンツの出で立ちだ。Tシャツの下にはサラシを巻いて水着の代わりにしている。
やはりというか、アルルに合った水着はなかった。胸が大き過ぎるのは難儀なもので、せっかくの可愛い水着達もそのサイズに悲鳴をあげるしか出来ない。無理して着ればアルルも水着も両方可哀想な事になっただろう。それでも泳ぎたかったアルルは半泣きで懇願し、アンノウンの提案とブレイドの機転で無事解決へと導かれた。この格好こそ、その象徴である。
「おいアルル!まずは荷物を何とかしないとだろ?!」
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「……此処ハ アタシ ニ任セテ アノ子 ノ所ニ行キナヨ。アタシハ泳グ気無イカラ」
ジュリアはぶっきらぼうに呟いた。「いや、そんなの悪いですって……」と荷物を持ち直した。エレノアはそんなブレイドの荷物を肩からスルッと取って砂浜に置いた
「そんな頑なな事言わずに泳げばぁ?きっと気持ち良いと思うけどなぁ」
「イエ、アタシハ大丈夫デス。海ハ何度モ堪能シテイルノデ、荷物ノ番ヲサセテ下サイ」
先ほど海の家風の建物から借りたパラソルを開いて日陰を作る。人狼の姿にビビりまくっていたが、特に何かあったわけではないので、既にラルフ達の上陸は島中に知れ渡っているのだろう。が、安心を誘う目的からか、敵意は感じなかった。
(情報ガ少ナ過ギテ分カラナイ事ガ多イナ。マァ、何カシラ動キガアレバ アタシノ鼻ガ発見スル。ウン、特ニ心配ナイカ……)
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「あ、ラルフー!」
ミーシャは嬉しそうに手を振った。そこにはベルフィアとラルフとウィーが立っていた。ミーシャが海辺から急いでラルフに駆け寄る。
「えへへーっ見て見て!この水着可愛いでしょ?」
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「お、いいじゃん。似合ってるぜミーシャ」
「ええ、とてもお似合いです。ミーシャ様」
二人に褒められ、照れ臭そうにしている。ウィーはキラキラした宝石のような瞳で海を眺めている。これほど広大な水たまりに驚愕と好奇心が湧き上がる。ラルフの手を引いて早く海に行こうとせっついてきた。
「ウィー!!」
「お?ははっ、ウィーも海に行きたいか?それじゃみんなで遊泳と洒落込みますか!」
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